2006,07,28, Friday
『獣(けだもの)の剣』(1965年・S40:松竹)
安政四年十月、飯富宿に浪人平木弦之助がやって来た。彼は人材登用藩政改革の藩論を覆えせると判断し、城代家老山岡監物を斬った。だがこれは次席家老星野頼母の策略であった。……(goo映画あらすじ より) 弦之助(平幹二朗)ら下級武士のいる家屋にふらりと雨宿りに立ち寄り、他所では下積みの若い衆が藩論を改革しているそうだ、うちもお前たちが奮起して城代家老さえ黙らせれば改革が進むだろう、などと暗に家老抹殺をそそのかしたにも関わらず、口車に乗って家老を斬ってしまった弦之助に「馬鹿なことを。城代家老ひとりを殺しても藩論は覆るまい」と無情に言い放つ冷徹な策士・星野頼母(天知茂)。進退窮まっている弦之助とは裏腹に、のんびりお茶など点てながら顔色ひとつ動かさず知らぬ存ぜぬを決め込むあたりの冷血漢ぶりが実に絵になっていて、出番はあっという間なのに妙なインパクトがあった。 監督は五社英雄氏(シナリオも共同執筆)。弦之助メインの話に加え、藩のために働きながら藩に殺される薄幸の武士夫婦(加藤剛&岩下志麻)たちのエピソードも挿入されているのだが、弦之助がピュアな瞳を燃やして彼らの仇を討つあたりなどはどこか「無宿侍」を髣髴させてくれた(あれの原型か?)。主演が天っちゃんでも面白かったかもしれない。 *三原葉子ねえさんも十八番のお色気を取り混ぜながら熱演していた(天っちゃんとの絡みは無い)
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2006,07,25, Tuesday
東映TVドラマ主題歌大全集(1) 現代編
全29収録作品中、天知作品は 孤独の賭け(1963年主演作) 廃虚の唇(1964年主演作) 悪魔のようなすてきな奴(1964年友情出演作) 悪の紋章(1965年主演作) のOP映像が入っている。表紙が表紙だけに(下記参照)否が応にも期待が高まったが、「孤独…」は格子柄の編みかごのような背景に名前が出てくるだけ。「廃虚…」はジャズ調のテーマソングを歌ってくれているものの、背景は岩みたいなのがぐるぐる、そして「悪魔の…」はマッスルなおにいさんの肉体がぐるぐるしているだけのシンプルさ。 本編が見られないのにこれじゃあんまり寂しすぎるなあ、と思っていたら、誰かさんの怖い片目から始まる「悪の紋章」は激渋な静止画像(手錠さげて睨み聞かせてたり、檻の中に入っていたり、タバコくゆらせていたり)がてんこもりの実にナイスなOPで眼福だった。口笛から始まる切ないメロディー(by伊部晴美氏)もぐっとくる。いつか中身も見たい!
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2006,07,19, Wednesday
『陽気な殿様』(1962年・S37)
名の知れた剣の使い手でありながら、介錯した男の顔が苦痛に満ちていたせいで「生まれたときが悪いのか、それともオレが悪いのか」(違)と己の腕に疑念を抱き、納得いく死に顔に出会えるまで人を斬りまくらずにはおれないという、かなりイッてる素浪人・挙手田(=こてだ)多門(天知茂)。だが自分と同格、あるいは強そうな相手と見るや剣を収めてさっさと通りすぎるあたり、まるっきりの狂人ではないようだ。 国許目指して漫遊中の若殿・隼之介(市川雷蔵)と道中すれ違い、相手の腕を見抜くとあっさり引き下がった多門だが、なぜかストーカーを始めたくなったらしく、隼之介君の行く先々で突如顔を見せ、斬らなくて良い連中を「ここは俺にまかせろ!」と誰も頼んでないのにガシガシ斬って捨てる迷惑千万な行為にはしる。 それもひとつの原因で松平長七郎(宇津井健)の誤解を被り、隼之介は小柄使いの刺客・角右衛門と闘わねばならない羽目に陥る。隼之介に対峙した自信満々の角衛門だが、いきなり呻いて絶命。ススキ野原から現われたのはまたしても多門だった。なんだコイツ、苦しそうな顔も幸せそうな顔もしとらんなーとその場の空気なぞ気にもせず自分の世界に浸っているうちに、とうとうキレた隼之介に決闘を挑まれ、あえなく地に伏し一巻の終わり。どこまでも陽気で軽い作品にシュールな深刻さを振りまき、逆に笑いを誘ってくれた天っちゃんだった。 *原作について 映画ではストーカーじみた狂気の人・挙手田(=こてだ)多門だが、原作では主人公・隼之介君の元・剣術指南の二刀流使い。人斬りオタクな彼をなんとか落ち着かせようと隼之介君が嫁を世話するくだりがあったり(愛する嫁を斬れば狂気が収まるだろう、という鬼畜な理由だが)、多門が隼之介君に忠義を尽くす場面が何度もあったり、得体は知れないがなかなか味のある人物として描かれていた。 映画ほど殿様(=隼之介)や周囲が陽気ではなく、主だった人物がバタバタ死んでいくシリアスな展開。それ故か、多門の存在が大きなウエイトを占めていて読み甲斐があった。が、文章のキレが重いというか、次の行で全く違う話から遠まわしに入っていくような(そういうしているうちにまた違う展開になっていたりもして)まどろっこしい書き方で細切れ時間に読むのは少々ホネだった。
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| 映画::大映with市川雷蔵 | 11:55 PM | comments (x) | trackback (x) | |
2006,07,18, Tuesday
『女番長(すけばん)ブルース 牝蜂の逆襲』(1971年・S46)
敵対する組の組長をバラしてムショに5年いた、「人斬りマサ」こと土居政也(シガレット・ホルダー使いのおシャレさん:天知茂)が秋本組に戻ってきた。本来なら代貸(=組のナンバー2)として迎えたいところだが今はヤクザも金儲けが出来なきゃなあ、と浦島なオマエは足手まといだと言わんばかりの組長(安部徹)、ほれ兄貴、当座の10万ですぜと札入り封筒を地面にわざと投げ落とす現ナンバー2のやり手男・紺野(林彰太郎)を前にして土居の表情は陰鬱の度合いを増すのだが、昔の女・梨絵(弓恵子)が新しいパトロンを見つけてクラブを開いていること、小さな子供がいることを聞いてますます眉間の皺が深まる。 問題のクラブを訪れ、ピーター(本人)のナマ歌を聴きながらアンニュイに飲酒していると、オレ土居さんのこと尊敬してるんです!と若い衆が寄って来た。いつかは秋本組の傘下に入ることを夢見る、地元の愚連隊ボス・次郎の熱い眼差しに、土居は腕力だけで生きてきた武骨なかつての自分の姿を重ねて苦笑いを浮かべる。とそこへママ・梨絵がパトロンと姿を見せた。「子供は幾つだ」尋ねる土居に梨絵は「あなたの子じゃありません」とにべもない。 だが後日、幼い娘・和子を連れた梨絵は土居を遊園地へ誘った。パトロンの前では口に出来なかった謝りの言葉を紡ぐ彼女を土居は許し、和子に請われて束の間の『親娘』の交流を果たした。黒い丸首シャツ・白い背広&グラサンといういかにもなコワモテの土居(初対面)に「おじちゃん、メリーゴーランド乗せて~」とフレンドリーに駆け寄る和子ちゃん、さすがに血は争えないが、メリーゴーランドだけでなくモノレールやらコーヒーカップやらに和子ちゃん以上の笑顔で興じる土居のニヤケっぷりが微笑ましい(素になりすぎだよ天っちゃん) 腐れきった秋本組に嫌気がさし、また和子が自分の娘だと確信した土居は、カタギになって家族と暮らそうと決心する。それじゃ最後にオマエにしか出来ない仕事をやってくれ、500万やるからと組長が持ちかけてきたのは、製薬会社から覚せい剤の原料を人質(=社長のバカ息子)と交換に譲り受ける役目。指定された場所で無事ヤクを受け取った土居だが、待っていた秋本組組長たちに銃を突きつけられる。証拠隠滅のため、彼は最初から消される運命だったのだ。 「ホームドラマはお前の柄じゃねえと言ったはずだぜ」(←まったくだ)あざわらう組長に「お前らの薄汚ねえ任侠より、俺はホームドラマで結構だ!」とタンカを切り応戦する土居だったが、紺野と相討ちとなる。駆けつけた土居さん命の次郎(=いろいろあって秋本組から見放されヒモ状態)も組長にやられ、これでオレも男が立ちましたよ、と呟き絶命。「大馬鹿野郎だ、お前も俺も・・・」傍らで冷たくなった次郎に手を伸ばし、土居はこときれた。梨絵と和子の写真を血で染めながら・・・。 *トメ位置にクレジットされていた天っちゃん、ダンディーだが不器用なやーさんを映画の本筋とはなんら関係ないところで熱演。え?女番長はどこって? オートバイ○ックスはって? そんな話は知りません(おい) *梨絵役の弓恵子さんは愛弟子・宮口二朗さん@ゾル大佐の奥さま(だったのかな、もう?) *音楽は鏑木創@美女シリーズ *カメラワークか本人の努力の賜物か、普段は作品の中であまり小粒さを感じさせないビッグな天っちゃんだが、今回はあるシーン(取引を終えて車を降りた途端、組の連中に囲まれるシーン)で迂闊にも(?)周りとの身長差を露呈していた(思わず「・・・小さっ!」と突っ込んでしまった←失礼)
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2006,07,13, Thursday
「田沼意次没落の日」(1981年・S56・9月29日OA)
溺愛していたジュニア・意知(原田大二郎)の横死に動転する田沼意次(三國連太郎)。お前らが側に付いていながらどういうことじゃあ!腹を切れえ!と家来をベシベシどつきまくり、棺に抱きつき泣き崩れる半狂乱のダディを見ていると、前回ジュニアをぶった切った新さん(天知茂)がすこぶる悪いヤツに思えてきたりもする(それくらい三國氏の演技が濃いのだ)。 だがそこは天下の田沼意次。登城の際に愁傷に(というかしらじらしく)お悔やみを述べる闇狩人の総元締めの白河藩主・松平定信(沖雅也)にチクリと釘刺すのを忘れないばかりか、大目付に過去の行状を調べられそうになるとすべてジュニアの責任にして罪を逃れ、一方で精鋭部隊を呼び寄せて「死人(=しびと)狩り」(=闇狩人たちの抹殺)を命じる老獪さを披露してくれる。 追求の目がよりいっそう厳しくなったものの、ここまで来たら打倒・意次も果たさねば!と意気込む安斉さん(山城新伍)たちだったが、殿(=定信公)からOKサインが出ないうちは下手に動くな、ひとまず言われた通り江戸を離れようと新さんは(自分も悔しそうだが)仲間を諌める。 だが精鋭部隊は容赦なく彼らに迫っていた。夜、長屋にいるところを急襲された新さんは腕を射られてちょっとピンチ。咄嗟に逃げ込んだ民家には、ひとりの女性(松坂慶子)がいた。「まあ、新次郎さま」「おしのさん!」そうか良かったね知り合いで、って誰。 どうやら第2話目に出てきた人らしい(見逃してるっちゅうねん) 馴染の女性に傷の手当をしてもらって思い出話に花を咲かせている運の良い新さんとは裏腹に、安斉さんは江戸を離れる前に渚さんとしっぽり、などと不埒な考えを起こしたせいで渚さんの家の前で田沼精鋭にとっ掴まってしまい、えぐい拷問(=両足に釘刺して蝋燭ともして逆さづり、という気合の入りよう)を受ける羽目に。覚悟を決めた安斉さんは忍んできた哲三(三浦浩一)の助けを断り、彼を逃がすために自害して果てた。 だが屋敷を出る際に銃弾を受けた哲三も、いつもの寄り合い場所に着くなり倒れた。「お嬢さん(=渚さん)と海が見たかった」と呟き、渚さんの腕の中で息を引き取った哲。ちょっぴり手持ち無沙汰な新さんは安斉さんと彼の死にただ嘆くばかりだ。そして哲三の亡骸を船に乗せて海へ流そうとした二人だが、水中から表れた精鋭部隊に襲われ、渚さんがあえなく落命。哲と二人、仲良く手をつないで海へと旅立つことになってしまった。 仲間をほんの数分の内にバタバタと亡くした新さんは、最愛の(?)隠密わんこ・火山をおしのさんに預けると、数十メートル先から殺人オーラを振りまきつつ田沼意次の駕籠を急襲し、命を落とそうとする。のだが、他でもない松平定信公から止めが入ってしまう。ダディを無傷のまま(駕籠から出しもしないで)引き返させた定信公に詰め寄る新さん(そうだよな、せめて顔くらい見たいよな)。老中である田沼を殺れば政局が乱れて幕府が立ち行かなくなる、とすこぶる正論な(だが闇狩人たちの存在意義を真っ向から否定するような)理屈を並べる定信公、いざとなったら及び腰である(城内でダディ毒気に中てられたのか?それともポスト田沼を狙うが故の姦計か?) 死に場所を求める新さん、かくなるうえは将軍さまに直訴しようと向かった休憩所に、時の将軍・徳川家治さまがしずしずとおな〜り〜。演じているのはなんと天っちゃんだ(なんと、といってもオープニング映像の中で既に「家治:二役」と出てくるネタばらしの速いことといったら)。訴状を受け取ってもらえて(自分に)、やっと切腹しようとしたら将軍さま(自分)からも止めが入ってやっぱり死ねない。死人が二度も死んでどうする、生きてその身を役立てるようにと優しい言葉を(自分に)掛けてもらった新さんは、もう一度白河藩に戻って欲しいという定信公の頼みを断り、市井に生きる決心をして、おしのさんや火山に見送られながらいずこともなく去っていった(海岸を歩いていただけかもしれないが)。 そのしばらく後、田沼意次は失脚、松平定信が老中になりましたとさ、のナレーションでお終い。 *仲間が全員死ぬ、というのは「テレビドラマ 伝説の時代」で読んで知っていたのだが、前々から「目的達成のためには犠牲はやむを得ない」という新さんのスタンスが全面に押し出されていたせいもあってか、皆さんなんだかあっけなく逝ってしまわれた。やっぱり仲間はわんこだけで充分だったのかもしれない(失礼) *しかし将軍さまと二役ってのはさすがに驚いた。画面がディープすぎてそれまでの展開を忘れそうになったほどだ。天っちゃんを説得する大事な役をこなせるのは天っちゃんしかいなかったというわけか。でも将軍さまと瓜二つだったら、他に闇狩人活動の仕方があったろうになあ。 *その将軍さま(=家治)、史実では田沼失脚より先に謎の病死を遂げているそうだ。やっぱり新さんに関わるとロクなことはなかったりして。 *とにかく、最終回でお腹いっぱいにさせてくれた新さん(天っちゃん)にアプローズ(=拍手)。楽しめました!
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| TVドラマ(時代劇)::闇を斬れ | 11:26 PM | comments (x) | trackback (x) | |
2006,07,09, Sunday
『賞金首 一瞬八人斬り』(1972年・S47)
消えた幕府の御用金を狙う浪人、と見せかけて実は尾張藩の隠し目付の頭領・薊(=あざみ)弥十郎(天知茂)。メキシコあたりの剛毅な用心棒に見えなくもない主人公(実は医者)・錣(=しころ)市兵衛(若山富三郎)とは出会ったときから張り合っていて、色々対照的な二人の言動も面白い(ホット vs クール、でっかい vs ちっちゃいとか←おい)『六死美人』から16年、おおきくなったものだ。 この弥十郎さん、颯爽と馬で登場するなり、お尋ね者の首をトマホーク片手投げでチョッキンして周囲をびびらせる。金の在り処を知る男・夜叉狼の妹だというので狙われた娘・飛び天童(←兄も兄なら妹も妹な名前)をさりげなく救ってやり、市兵衛さんが彼女の兄貴を牢から連れ出したのをちゃっかり横取りしようと計画するも、失敗すると平気で撃ち殺したり(しかも妹に「アイツ(=市兵衛)は血も涙もない奴だ、お前の兄貴を殺しちまったぜ」とか言っちゃうんだなこれが。そりゃアンタだよ!)、挙句には今まで連れ立っていた飛び天童を荒くれ男の渦に投げ込み、その悲鳴を耳にしても顔色一つ変えなかったり、悪人メイクをしているわけではないのに心底得たいの知れない悪人に見えてしまう、まさに「色悪(いろあく)」の権化。善人も悪人も当たり前のようにこなしていて、観ている方もそんな彼に違和感がないというのは凄いことだなあと思う(そりゃ善人のときでも「わあ怖い顔だよ天っちゃん」とは突っ込んでいるけど) ただ、アダルト一般の扱いはすこぶる悪い彼だが、子供に対してはほんの少しだけ情が動く(というか地が出る?)とみえて、子供の命と引き換えに金持って来い!などと非情なことを口走りつつ、相手が必ず来ることを見越して言ってるし、「ガキの命など、どうでもいい」といいながら子供をなんとなく優しく下ろしてあげてるあたりも見どころのひとつだ。 なんだかんだ言っても日食時にばっさりやられちゃう弥十郎(だって若山トミーさんってば、あの体躯でトンボ切るんだもんな!)だが、彼が一番のワルではなかったことが後から判明、東映らしい不条理な世界が繰り広げられてエンドマークと相成った。(何も子供まで殺さなくてもいいじゃないか>内藤武敏) *この作品を最後に、天っちゃんはしばらく映画から遠ざかる(次の出演作は1979年の『白昼の死角』)。たぶんテレビが忙しくなったんだろう。
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2006,07,07, Friday
「暗殺・血染めの死闘」(1981年・S56・9月22日OA)
冒頭、新さん(天知茂)ら闇狩人たちの今までの仕事ぶりがフラッシュバックされ、気付いたら(話が一つできそうな展開だったのにえらくあっさりと)また無実の藩がお取り壊しの憂き目に遭っていたりして、とうとう白河藩のお殿様から「意知(=田沼ジュニア:原田大二郎)斬るべし」の命が下った(怪我を負いながら文を新さんの長屋まで届けにきた隠密わんこ・火山、おつかれさま)。 しかし田沼ジュニアが黙って討たれるのを待つ訳はない。闇狩人周辺の唯一のウィークポイントともいえた、安斉さん(山城新伍)の愛妻・おまささん(結城しのぶ)を拉致、無事に返して欲しければ鳥飼新次郎(=新さん)を倒してこい!と安斉さんに迫る。かくして天っちゃん VS 山城さんの闘いが2度に渡って繰り広げられるのだが、お互い斬る気ナッシングなので形ばかり剣を合わせてぐだぐだやっているうち、おまささんは凶弾に倒れ、安斉さんの腕の中で息を引き取ってしまった。 怒りに燃えた闇狩人たちは田沼ジュニアが乗った駕籠を急襲するが、駕籠の中の人物は影武者だった。屋敷に乗り込み、田沼配下の者たちと剣を交えながら本物を探す一行。あっいた!と思ったらまた偽者だ(いちいち断末魔の表情で殺される原田氏、ナイス演技)。ジュニアの匂いを覚えているらしい隠密わんこ・火山の助けを借りて、奥座敷で茶を啜って余裕ぶっこいている本命を発見した黒衣装・袴履きの新さんは、すっと腰を下ろすと刀を背中に回し(ゲン@無宿侍!)、にっくきジュニアと対峙する。その鋭利な格好の良さだけでも眼福だというのに、あとがまた天っちゃん独壇場といおうか、あくまでふてぶてしいジュニアを前にして、刀をぐさっと畳に突き刺す! がばっと上着を脱いだら白装束(お経@江戸の牙は書いてありません)! 渾身のキメ台詞「今の世の中真っ暗闇よぉ・・・(中略)・・・闇を、斬るっ!」のあとずばーっと殺陣! のフルコースで魅せてくれた。死闘というほどのもんじゃないとはいえ(血染めも無いし) いちおう後ろに控えていた安斉さん以下お仲間たちからもそれぞれ太刀を浴び、「父上〜」と呟きながらジュニアは絶命した。「次は意次(三國連太郎)の白髪首を必ず・・・!」兼子様&千草さんの墓前で眉根のクレバスも濃厚に誓いを立てる新さん。次回はとうとう最終話。どうなる、どうする闇狩人! *史実ではジュニア意知は江戸城内で旗本・佐野政言に私情で斬られて落命、それがきっかけでダディ意次は失脚・謹慎となって家督を次男に譲るそうだ。ということは、ジュニアが死んだ時点で「これがきっかけで田沼時代は終わりを告げる云々」とナレーションを入れて大団円にすればけっこうスッキリと収まっていたと思うのだが、もういっちょ行くらしい(苦笑) *腐れきっているとはいえ、仮にも「政治家」を暗殺するってどうなんだろうなあと思ったりするとこのシリーズの意味自体があやしくなるから深く考えないでおこう
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| TVドラマ(時代劇)::闇を斬れ | 11:27 PM | comments (x) | trackback (x) | |
2006,07,03, Monday
『東海道四谷怪談』(1959年・S34)
ワルで、色っぽくて、苦しみ悶える伊右衛門さま。天知茂の真骨頂。 伊右衛門視点で観てしまうからかもしれないが、実は彼、根っからの極悪人ではない。お岩さんの父親を斬ったのだって、一度は交わした婚姻の約束をオマエは浪人だからと反故にされ、面と向かって散々バカにされたせいで衝動的にバッサリやっちゃったのだし(「松の廊下」風)、江戸でお梅さんと出会うきっかけはお岩さんの粘着質な愚痴のせいだし(まあ彼女の言い分は尤もなのだが、伊右衛門でなくても正直「くどい!」と突っ込みたくなる)、殺人計画はすべて直助主導だし。 伊右衛門という男の罪はただひとつ、いざというときの優柔不断さに尽きる。その心の揺れにつけこんだのが直助であり、(亡霊となった)お岩さんだったのではないか。伊右衛門の後半の狂乱は、自分自身の心の闇との闘いとも受け取れ、半・自決と「お岩、許せ」でようやく魂の平安を得たと解釈してもいいのかもしれない(その割には白目向いて死んでたけど)。 とにかく、自分で伊右衛門役に立候補しただけあって、天っちゃんの揺れる演技(前半クールに、後半アツアツ)は極上だと思う。 *1972年にTVでも「四谷怪談」をやっているそうだが、若さ故の狂気が感じられた28歳時と比べて、40過ぎた彼がどういう方向でもう一度伊右衛門を演じたのか気になるところだ *(2008.9.1追記)TV版を見てみた。
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2006,07,02, Sunday
「高倉キャップを消せ!」(1966年・S41年・7月15日OA)
高倉キャップ(宇津井健)以下ガードマンの面々が警備している会社・ナニワ産業の周辺を、黒い背広&サングラスのヤーさんスタイルの胡散臭い男がうろついていた。彼はムショ帰りの佐野(通称ジョー:天知茂)。バーテンだった弟・清二の事故死がナニワ産業によって仕組まれたものだと疑う彼は、弟が働いていたクラブにドラマーとして潜入、証拠を掴もうとするのだが…。 ジョーは復讐に燃える孤高の嵐を呼ぶ男(ドラム・ソロは吹き替えだったようだが、顔では立派になりきっていた)。サングラス姿もドラマー姿もやたらとカッコいいのだが、周りの言葉にコロッと騙されていいように使われる、ちょっと単細胞なヤツだ(天っちゃんが眉根のクレバスを深めて必死になる分、余計に微笑ましくなるというか)。とにかくナニワ産業の社長(戸浦六宏)が悪いと信じ込まされ、彼を襲おうとするもガードマンたちに阻まれ、邪魔するんならオマエからやってやる!と高倉キャップに宣戦布告。 顔はひたすら物騒なので部下たちは警戒するが、高倉キャップだけは初めから「あれでなかなか可愛いじゃないか」などと、付き合いが長くなければ到底言えないようなセリフを口にしてジョーを擁護、狙撃されかけた時も、彼の仕業ではないと言い切る信頼ぶりを見せていた。ラスト、何もかもうまく収まってから「オレはオマエが好きだ。友達になろう!」とか言っちゃう宇津井氏の(いつもの)一本気な愛情表現にたじたじしながら、一発アゴにパンチをくらわせる天っちゃんがいい味出していた(またお返しに一本背負いをくらって大げさに倒れてやるあたりもナイス友情)。 放映は1966年(S41)7月。前年は「孤独の賭け」や「ミスターシャネル」などのTV番組(どっちもすごく観たい!)で主役を張っていたとはいえ、やくざ映画で死にまくっていた頃でもあり、色んな意味でどっちに転ぶか判らないきわどさのようなものが独特の魅力を醸し出している天っちゃん35歳だった。 *そういえば「泣いてたまるか」も同時期だが・・・雰囲気が全然違うからビックリだ!
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| TVドラマ(現代劇)::ザ・ガードマン | 08:14 PM | comments (x) | trackback (x) | |
2006,06,29, Thursday
「大江戸・浪人皆殺し」(1981年・S56・9月15日OA)
一刀流の達人・川野十蔵(名前もじってますな:川辺久造)は要人の暗殺計画に加わり、妻子を国許に残して江戸へ出奔した男。胸を患って寺に厄介になっているうち、田沼派の某悪徳商人に腕を見込まれ、仕官のクチを世話してやるから8名の浪人たちを消してくれと依頼された。同じく雇われた男たちと次々に(とはいえ刀は既に竹ミツなのでただ居るだけなのだが)浪人を殺めていく十蔵。 そんな折、街で見かけた金魚屋(=哲三:三浦浩一)が提げていた折り紙がハッと目に留まった。その特徴のある折り方はもしやと思い尋ねると、母が死んだため、父を頼って上京してきた長一郎という少年が折ったのだという。それは息子の名前に間違いなかった。だが少し前、白昼で罪無き浪人を追いつめて惨殺したのをじっと見つめていた少年の存在を彼は思い出した。まさかあれが息子だったのか・・・? 悲惨な己の姿を顧み、父子再会を逡巡するうち、十蔵は浪人襲撃を妨害する小奇麗な身なりの深編み笠の浪人に出くわす。男は笠を取ると、オレの顔に見覚えがあるならこんなことは止めろ、熱い正義感に満ちていた頃を思い出せと迫った。果たして、その顔を見て十蔵は驚いた。かつて町道場で共に剣を学んだ白河藩士・鳥居ショウジロウだったからだ!(うわあビックリ(嘘):天知茂)。今までの浪人襲撃は、すべてこの8人目、闇狩人のリーダーと目される彼をおびき出すために仕組まれたことだと知り、揺れる十蔵。息子が世話になったという、死んだ妻に瓜二つの小唄の師匠(=渚さん:坂口良子)や、咳の発作で苦しんでいた際に偶然助けてくれた按摩(=新さんに頼まれた安斉さん:山城新伍)の親切な言葉で、ようやく足を洗う決心をつけた十蔵だが、様子が怪しいと悟られ、長一郎を人質に捕られてしまった。 「息子を返してもらいたければ、鳥飼(=新さん)を斬ってこい」 刀を貰い、長屋で鳥飼に対峙した十蔵は、果たして彼を斬ることが出来るのか・・・? ・・・とはいってもこの十蔵さん、登場したときから既に「ワケあり浪人かつ労咳もち」という薄幸オーラを振りまいていたこともあって、まるで勝負にならなかった。何しろ相手は、たとえ罪無き浪人たちや子供の命が掛かっていても「オレは今ここで殺されるわけにはいかん!」と打倒・田沼の大義に燃えまくってる男なのだから始末が悪いったらありゃしない(だからどっちの味方だよ>自分)。もう判ったからホラあっち行って! ってな具合に扱われ、よろめいているところを元・仲間の浪人連中にぐさっとやられた可哀相な十蔵さんは、駆けつけた息子の顔を見てから息を引き取った(合掌)。 *旦那(=新さん)は相変わらず何考えてるのかわかりゃしねえ(まったくだ)とぼやく哲に渚さんは、「(旦那は)命を捨てる日をじっと待ってるんだよ」と優しく諭す。で、来週そろそろなわけか。 *ラスト、安斉さんに預けていた隠密わんこ・火山が自分で長屋に戻ってきたときの新さんの嬉しそうな顔ったらなかった(「素」だ、素!)
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