2006,06,25, Sunday
「十六文からす堂2」~初夜は死の匂い~ (1983年・S58)
お紺さん(浅茅陽子)との祝言を夜に控えたからす堂(天知茂)。仕事帰りに弟のいる本家へ寄り、新婦のお紺さん他お仲間が待つ長屋に急ぎ戻ろうとしたところ、複数の浪人たちに襲われる若い男女に遭遇した。襲った連中は、昼間からす堂の元へ来ていた兇悪な人相の男たち(主役に匹敵するコワモテ・山本昌平ら)。若侍(高岡健二)は肩を切られて川へ転落、女は駆けつけたからす堂の胸の中で「オオツ・・・」と呟き絶命してしまう。 番屋へ届けたからす堂先生だが、「女を殺したのはからす堂」などと書かれた文が投げ込まれたりして、なかなか返してもらえない。一方、待ちぼうけを喰らったお紺さんの元へ、川へ落ちた瀕死の若侍が転がり込んできた。傷のショックで記憶を失くしてしまったという男だったが、番屋で女の死体に対面したときの表情の揺れをからす堂は不審に思う。そんな折、タイミングよく大津屋(久米明)と名乗る男から観相の依頼を受けたことで、事件の真相が明らかになった。 若侍・光一郎は亀山藩主の長子なのだが、家老の鮫島(高橋長英)が自らの妹である今の正室の幼子・光三郎を推していることから藩内の意見が割れ、やがて命を狙われるようになった。光一郎を慕う峰村はひとまず実家の大津屋へ光一郎を匿おうと、手だれの部下・おはるを付けて密かに屋敷を抜けさせたのだった。 戻りたくないと言う光一郎を説得し、からす堂は屋敷に向かった。 死相が表れている家老。藩主不在というのに、艶やかな色気を醸す正室。 そして、隠居の身という、藩主の弟(内藤武敏)にも死相が・・・。 光一郎を襲った連中の雇い主・「首筋に痣のある男」の正体は? 事件の本当の黒幕は誰なのか? 前回よりミステリ仕立てで、からす堂先生以下長屋の皆さんたちが協力して真相に迫っていく様子がテンポ良く描かれていた。からす堂先生の、静から動への変化がこれまた素晴らしい。冷静な推理力を働かせる前半、びしぃっ!とキマった(今回は槍までぶんぶん振り回す)立ち回りを披露してくれる後半、それからもちろん、お紺ねえさんとの微笑ましいやりとり。どこをきっても魅力満載だ(褒めすぎか)。 *高橋長英氏の迫真の毒殺演技(ネタバレ)がすごかった・・・その前に同じ場所でお茶点ててもらって飲んでたからす堂先生がああならなくてよかった(そりゃ主役だから) *首筋に痣のある男、意味深に顔を隠しているようなので誰なのかと期待したら・・・「どうりでまだ見てないと思ったよ!」な人だった(すみませんゾル大佐←またネタバレ)
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2006,06,22, Thursday
「顔を焼かれた女」(1981年・S56・9月8日OA)
田沼の口利きで新たに南町の筆頭与力に就任した中山帯刀と部下の岡部(若い!けどあんまり変わらない阿藤海)により、闇狩り詮議が一段と厳しくなった。安斉さん(山城新伍)の情報を探ろうとして失敗した小料理屋の女将をあっさり消し、さらに、アンチ田沼の商人たちをわざと中山の家紋をちらつかせて白昼惨殺、闇狩人を誘い出そうとする中山&岡部だが、それが罠だと気付いた新さん(今回はまた「静」のひと:天知茂)は動こうとしない。 そんな中、新さんをこっそり付ける御高祖頭巾の女がいた。下手人は中山たちだと書かれた投げ文の達筆文字を見た新さんは、ひとりの女を思い出す。「しのぶさんだ・・・」いきなり言われてもそれ誰だよ知らないよ!と画面にツッコんだ視聴者(=私)のために、話は3ヶ月前にさかのぼる。 夜の街角で男たちに襲われていた米問屋・越後屋の娘を助けた際、耳が不自由な彼女は筆談でお礼を書いてくれた。小料理屋で同席し、まるでどこぞの探偵さんのように「美しいひとだ・・・」と彼女にうっとりしまくる新さんだったが、越後屋が火事との知らせに急ぎ駆けつけると、彼女の両親や番頭は、何者か(=実はこれも中山&岡部の仕業)に斬られて死んでいた。幼い弟(たぶん殺された模様)を探し、新さんの制止を振り切って半狂乱で炎の中へ飛び込んだきり行方がしれなかったその娘こそ、しのぶさんだったというわけだ。「でもなぜそのひとは顔を見せないんです?」そう問う哲三(三浦浩一)に「美しかったからなあ・・・」と意味深に呟く新さん。 一方、小唄の師匠・渚さん(坂口良子)にゾッコンの同心・山村(穂積隆信)は彼女に付きまとっているうちに、渚さんが闇狩人の一員ではないかとの疑いを濃くしていた。だが根が単純なせいで、たいてい渚さんやかつての先輩・安斉さんがうまく丸め込んでいたのだが、ある日、山村の上司・岡部は渚さんを強引に拉致してしまった。 渚さんの身を案じる哲三や安斉さんは気が気ではないが、新さんの腰は相当重い。しかしそこへ頭巾のしのぶさんから、渚さんは中山の屋敷に連れて行かれたとの文が届いた。今度はすだれの陰から姿を現してくれたせいで「あんたのカタキは俺たちが討つ」とすっかりその気になった新さんは闇狩りに一直線。彼らを待ち受けていたはずなのになぜかしょぼしょぼな警護をかいくぐって渚さんを救出(by 哲三)、岡部を爆殺(by 安斉さん)。新さんは久々にキメ台詞途中の「その闇に差す一条の光!」でキラ〜ンと刀を光らせてザコをばさばさ退治、大ボス・中山をみね打ち(というより柄や素手でボコボコに)してから、しのぶさんに止めを刺させてあげた。 両親たちの仇を討ち、頭巾を取ったしのぶさんは仏門をくぐった。 涼しげな風鈴の音色を聞きながら長屋でアンニュイに寝転ぶ新さんの胸に去来したものは何だったのか・・・。 *序盤は渚さんの周辺で話が進んでいたので、しのぶさんの唐突な出現には戸惑った。しかも新さん、全然動いてなかったくせにイイトコ取りしてるし。まったく効率の良い男だ(主役の特権か) *中山に止めを刺す際、火事で焼け爛れた顔が露出してしまったしのぶさんを見ないように、そっと背を向ける新さんがオトコマエ *だがやっぱり人間の味方には非情のライセンスだったりするんだな *ところで「顔を焼かれた」のは、火事の際に制止しきれなかった(しかも安否確認せずに立ち去ってしまったらしい)新さんに、という意味にもとれないかこのタイトル
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2006,06,18, Sunday
「十六文からす堂1」~江戸占い 謎を斬る~ (1982年・S57)
深編み笠に黒の着流しの浪人・からす堂(天知茂)は江戸で評判の手相・人相見。ぴたりとよく当たるのはもちろん、見料を取り損ねるウッカリさんでもあることが人気の秘訣だ。そんなからす堂にゾッコンなのが、芸者を辞めて小料理屋「たつみ」を切り盛りしているお紺さん(浅茅陽子)。彼もお紺ねえさんを憎からず思っているようだが、彼女の熱~い眼差しと誘いをすっとぼけてかわしてしまう毎日。 ある日「たつみ」に、深編み笠の青年・二ノ宮豊作(金田賢一)が転がり込んできた。ならず者たち(リーダーは宮口二郎)に襲われていた瀕死の男・文吉を偶然助け、五十両を預かった彼は、金を奪わんとするその男たち(高利貸の用心棒)に追われていたのである。文吉は、昼間からす堂の元へ来たおたねという女の息子。からす堂はお紺さんの協力を得てならず者を捕縛、悪徳高利貸(北町史朗)に一泡吹かせた。 江戸に来たのは23年前に毒殺された父親の仇討ちのためだという二ノ宮は、からす堂の腕を見込んで助太刀を頼む。彼と同じ妾腹の子であると言うからす堂はシンパシーを感じ快く引き受けるが、彼の身を案じるお紺さんは気が気ではない。折りしも、からす堂の長屋へ身なりの良い腰元が現われ『屋敷へ戻ってくれ』と懇願するのを立ち聞きしたという小料理屋の板前・多吉っつぁん(茶川一郎)から「所詮は身分違い、諦めなせえ」と実におせっかいな忠告を受けたお紺さん、ショックを受けて小料理屋を出、芸者に舞い戻ってしまう。 しかし、多吉っつぁんが見た腰元はからす堂(本名・唐津栄三郎)の妹で、正妻の子である弟・新之助に家督を譲るために浪人になった兄を頼ってきたのだということをからす堂本人から打ち明けられ(さらに嬉しいプロポーズの言葉までもらって)、お紺さん大安心。 突然上役から蟄居を命ぜられた弟・新之助を見舞ってくれと妹に頼まれたからす堂は実家へ出向く。奥祐筆・大串(御木本伸介)の元に配属された新之助は、大串が内緒で貰ってきた賄賂をうっかり落として周囲にバラしてしまったことを告白(ウッカリ・ブラザーズかこいつら)。実はこの大串(にちゃっかり成りすましていた悪党・西川)と、今は廻船問屋の主人に納まっている大黒(待田京介)こそが、二ノ宮が探している父殺しの下手人だった。 ふたりを集め、自分の首を賭けて勝負に出るからす堂。 「おふたりに死相がでております。命はあと五日」 だが唐津家との関係を知られ、弟が更に苦境に陥る。 からす堂は決定的証拠を握れるのか? 二ノ宮はうまく仇を討てるのか? 運命の刻限が迫る! ・・・って、別にそこからスリリングかつハードな展開にはならないのだが、ならず者→悪徳高利貸→大黒→大串という悪人連鎖を探り当ててゆくところは推理モノとして楽しめた。しかしからす堂先生、黒いほっかむりして奉行所へ忍び込むのはどうかと(原作を知らなかったときは、「この人は公儀隠密か何かなのか?」と思ったもの)。 *落ち着き払って実にイヤミな(でもって負けるときは心底悔しそうにしてくれる)待田京介さんとの対決は実に面白い(「魅せられた美女」も好き!) *からす堂先生の殺陣は、刀を頭上でくるくるっと回したりと、スマート&スピーディー。でも「きゃ~、先生~、逃げて~!」ともれなくお紺ねえさんがしがみついてきたりもするので、彼女を守るのにちょっと大変そうだ(笑)
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2006,06,18, Sunday
「逃亡街道」(1973年・S48・12月15日OA)
雨のために渡しが止められた川近くの宿場。迫り来る黒い影たち。標的はゲン(天知茂)か、それともワケあり風の男女か? 人懐っこく近寄ってくる大阪弁の薬売り・仙太(ジェリー藤尾)の正体は・・・? 忍び時代の習性か、単純に人を信じることが出来ない自分を責めるゲンだが、ワケありカップルの心中を止めたり、逃亡を手伝ってやるうちに、情に打たれて心から明るい笑顔をみせるようになった。しかしそれはラストで無残に打ち砕かれる。心を許し始めていた仙太が、ゲンを倒して陰の里へ返り咲こうとしていた抜け忍だったのだ。裏切られたことへの驚きと悲しみが入り混じった表情で刀を構えるゲン。殺らねば、殺られる。 「人間らしい心が動いたら気をつけろ。命取りになる」 お前が見せた一瞬のスキがその左腕の傷だ―― 倒れた仙太の言葉を胸に刻み、ゲンはまた独り、旅を続ける。 宮川一郎さん脚本3部作(勝手に命名)の1作目。 とにかくラストの天っちゃんの表情の変化がたまらない。人間らしく生きたいと願って抜けたはずなのに、人間らしくなることで命を落とすかもしれない・・・ジレンマを抱えながら、それでも「人間になりたい」ゲンは、ピノキオというよりは妖怪人間ベムなのか(でも彼にはベラもベロもいない分孤独だ←その喩えはどうか)。 *製作順でいうと、この話は第2話目にあたるらしい。だから途中で現われるきらら(松岡きっこ)は切ない目をして「陰の里へ帰れ、ゲン!」と言っているわけなんだな。
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2006,06,18, Sunday
「追いつめる」(1973年・S48・12月22日OA)
徳川家の娘を嫁に貰うことになった高槻藩。途中の宿で一行と鉢合わせたゲン(天知茂)は、陰公方の命で「陰」に狙われる姫を救うが、腰元が一人命を失った。実は彼女こそ本物。替え玉・かえでと側近は「陰」の一員だった。それを目撃した宿屋の主人は、幼い娘を遺して殺されてしまう。 少し前のこと、この宿に、陰の里から逃れてきたさと(宇津宮雅代)が身を寄せていた。娘・ちずが持っていた赤い簪からそれを察したゲンは、かえでから「月ヶ瀬」という地名を聞きだし、雲十郎(西村晃)の待つ陰の里へと乗り込んでゆく。 すでにさとは陰公方のもとへ連れ去られていた。古寺で雲十郎と対決し、致命傷を負わせたゲン。「陰公方とは何者なのだ?」だが雲十郎もまた、上からの指示を仰ぐだけの何も知らない男に過ぎなかった・・・。 宮川一郎さん脚本3部作の2作目。 久々に雲十郎が登場するし、さとも出てくるし、さすが最終回前だから佳境に入ってるなあと思いきや、製作ナンバー第6話、となっているので、#10「蒼い人魂火」(製作順では第11話)より前の話。お頭、早死にしすぎ。ワケのわからない「陰公方」の存在云々よりも、雲十郎との対決を最終回にもってきていればまだカタルシスもあっただろうに(しかも最終話、アレだもんなあ)。 *柘植のゲンだの、名張のなんとかだの、そして今回の月ヶ瀬だの、地元の名前がてんこもりでそれはなんだか嬉しい(実は私、伊賀モノなので) *初回のちこちゃんに続き、ちずちゃんにもすっかり懐かれていたゲン。天っちゃんの子供にモテるオーラのせいか?
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2006,06,18, Sunday
「ふたり幻之介」(1973年・S48・12月29日OA)
側室の子か、部屋住みの若衆か。相続争いかまびすしい城下で、ご丁寧に「斬 幻之介」と書いた紙を残す、幻之介(=ゲン:天知茂)の名を騙った仮面の辻斬りが発生していた。息子を擁立せんとする側室・お松の方が家老と共謀し、兵馬(千波丈太郎)という男に実行させていたのだ。 実はお松と兵馬は陰の里からの抜け忍。お松を逃す際に額に抜け忍の烙印を捺された兵馬は、抜け忍でありながら自由に表を闊歩しているゲンに激しい憎悪を抱いていた。一方ゲンは、ニセ・幻之介を追う途中、辻斬りで亡くなった者の屋敷の前で祈りを捧げる女・おふゆと出会う。彼女は兵馬の恋人で、隠れキリシタンでもあった。 事が成就すれば、領内の小島を貰い受け、同じく里から連れて来た恋人(=おふゆ)と静かに過ごしたいと願う兵馬。だがお松は秘密を知る彼の排除を望んでいて、捕らえたゲンに兵馬暗殺をもちかける。 闘いたくないというゲンに刀を向ける兵馬。それを止めようとしたおふゆが、現われた家老の凶弾に倒れた。お松をも抹殺した家老に襲い掛かり、相討ちで倒れた兵馬にゲンは駆け寄る。 馬鹿な奴だ・・・忍び崩れという奴は 人より早く走り 人より隠れるのが上手かろうと それが何ほどのことがあろう・・・ 虫の息の兵馬を目にし、抜け忍の哀れに思いを馳せるゲン。 お前だけは逃げ抜いてくれ、そう言って兵馬はゲンの腕の中で息絶えた。 空しさを噛み締めながら、ゲンは城下を後にした。朝焼けに向かって・・・。 *宮川一郎さん脚本第3作目にして、シリーズ最終話(製作順も同じ)。 ・・・あらすじを追うとたいそうシリアスな感じがするかもしれないが、とにかくツッコミどころ満載というか、(これが最終話なんて、色んな意味で)もったいない!としみじみ思う回だ。 のっけから仮面の辻斬りが笑わせてくれる。ふつう、こういう状況でヒョットコなんか被るか? しかもゲンまでヒョットコお面被って出てくるし。兵馬の恋人と遭遇して問い詰めるくだりもヒョットコのまま。最後に兵馬と対峙するときはさすがに般若面に変えていたが、ヒョットコと般若の対決ってのもどうかと(最後のセリフのときは素顔です念のため)。 その他、幻之介の人相書きの似てなさ(どこのおっさんだよ)にも苦笑したが、一番のディープ・インパクトは兵馬の抜け忍の烙印。眉間にでっかく、○に「抜」の字。あんたは筋肉マンか? たしかにこんな間抜け(文字通り)な烙印を捺されてしまってはヒョットコでも被るほかなかったのかもしれない。 これが仮に、雲十郎の死からずいぶん経過し、裏で操ってた怪しい爺さん連中もぽっくり逝っちゃっていて、「陰」たちもゲンひとりに構ってる場合じゃなくなった、というずうっと後の話だというなら別として、ゲンが分別臭くなってしまっているのも悲しい。彼はやっぱり「おのれ陰公方!」とピュアな瞳を燃やしながらびしばし追っ手を蹴散らしていて欲しかった(あれじゃあ眠狂四郎と変わらんじゃないか)。 宮川一郎さんは天っちゃんの魅せ方が滅法上手い脚本家ではあるのだが、エンタメ路線というか、土曜ワイド的というか、やっぱり根は新東宝なんだなあと思わせるある種の「クサミ」が滲み出てしまう場合があるような気がする。それはそれで好きなんだが、「無宿侍」でそんなテイストは出してほしくなかった。このシリーズで(しかも最終話で)「いやそれってどうよ!」と突っ込み笑いなんかしたくなかったもの。 ともあれ、他のシリーズと比べれば格段にハイレベルなテンションを保った13回だったことは確かだ。見られてよかった! *ゲンが出会った鳥追いの女(正体は公儀隠密)の存在理由がいまひとつよくわからなかった。今回の事件の証人、ということなのか?
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2006,06,15, Thursday
「血にぬれた母子草」(1981年・S56・9月1日OA)
夜。ぱりっとした紫の着物でエエトコ出の蘭学者みたいな新さん(実は長屋住まいの素浪人:天知茂)が読書をしていると、外に怪しい男たちの気配。だが彼らが探っていたのは新さんではなく、長屋に新しく越してきた梨絵(=なしえ:甲にしき)&長一郎親子だった。 長一郎の正体は、田沼ジュニア(原田大二郎)が遠州(静岡)で放蕩三昧していた頃の落としだね。身体が弱く余命幾ばくも無いと宣告された息子をひとめ父親に会わせようと、証拠の品である印籠と証書を持って江戸へ来た梨絵さんだが、側近に阻まれて面会すら叶わない。 一方、梨絵親子の住居に忍んで証拠品を奪おうとして失敗したジュニアの側近たちは、偶然にも同じ長屋に闇狩人ヘッドらしき男・鳥飼(=新さん)がいるのに気づき、父子の面会を条件に、新さんの身辺を探ってこいと梨絵さんに強要した。しかしフルネームまで分かってて、墓暴きまでしてたのに、まだ決定的証拠がつかめていないとはどうなっとるんだ田沼(どっちの味方だ>自分)。 長一郎は発作が続き、タイムリミットが迫っていた。そんな梨絵さんの苦境を知り、先に「聞きたいことがあるなら聞くがいい。何なりと力になろう」と直球勝負に出る新さん。「じゃあ、あなた闇狩人?」「仲間は誰と誰?」なんて聞かれることなど微塵もないと信じている自信家(もしくはマダム・キラー)ぶりだ。案の定、新さんの真正直さにころっと参った梨絵さんは、彼が一刀流の使い手(闇狩人ヘッドもそうだという情報は伝わっているらしい)であるということしか探れなかった。 *ここで「そんなに知りたいならお見せしよう」と言うや否やスパーン!(=手近の板を切った音)・スチャッ!(=さやを持ち上げて刀を納める音)と剣の腕を披露する新さんがカッコいい 梨絵さんの情報など「あわよくば」程度にしか思っていなかった田沼側近たちは、屋敷を訪れた梨絵さんに労いの言葉をかけるフリをして惨殺。だが、うすうすそうなる運命を察していた彼女は、証拠の印籠と証書を新さんに託していた。同じ頃、病の床についている長一郎が苦しい息の下でまだ見ぬ父を呼び続けているのを知った新さん、「万一のときは、代わりに父親として振舞ってほしい」との梨絵さんの遺言どおり、彼の手を握り「父はここにいるぞ!」と力強く励ました・・・のだが、その言葉を聞いて長一郎は安心して息を引き取ってしまう(なんだか新さんが殺したような気もしないでもない)。怒りに燃えた新さん一味は薄幸な親子の仇討ちのために田沼側近たちを斬り、印籠だけ突き返して闇狩りを終えた。 *ラスト、いきつけの居酒屋で酒を飲んでいる新さんの元に渚さんが「ねえ旦那、もうあそこの長屋引っ越したほうがいいですよ(バレそうだし)」と忠告しにくるシーンのBGMがやたら明るく、渚さんの表情もなんだか嬉しげで、悲惨な話の締めとしてはちょっと場違いだった(「なんならアタシの家に来ませんか?」とくるのか思ったらそうでもないし)・・・あれはなんだったのやら *井戸に落ちて以来姿が見えなかった花沢さん(仮名)、復活。新さんの洗濯物を梨絵さんから奪い取っていた
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2006,06,11, Sunday
「恋慕娘無残」(1973年・S48・12月1日OA)
襲い来る「陰」たちに目をやられたゲン(天知茂)は獣の罠に掛かり、気が付くと関所の牢屋にいた。とある重罪人を捕まえんがため、不審者は手当たり次第に牢に放り込まれていたのだ。どこからか逃げてきたらしい女、駆け落ちカップルらと脱出を試たゲンだが、最初に逃亡を提案したはずの女が叫ぶ。「牢破りです!」 混乱に乗じてひとり裏口から逃げた女をゲンは追う。他人を犠牲にしてまで生き延びたいのかと詰るゲンに対し、人は所詮ひとり、逃げ延びられなかったほうが悪いのだと言い返す女・阿茶(二本柳敏恵)。彼女こそが、藩と陰公方の駆け引きの犠牲となった貿易商・平戸屋の生き残りで、証拠となる海上通行証を持ったまま姿をくらまし双方から追われている‘重罪人'だった。 元使用人・権爺と合流した阿茶は、牢に隠してきた通行証を権爺に頼むが、彼は途中で「陰」の一員に殺された。家族を陥れた者への阿茶の激しい憎悪の心に惹かれたゲンは、彼女と共に牢に引き返す。「陰」や公儀が入り乱れるなか、関所小屋は爆発、なにもかもが燃えてしまった。遠いルソンの海を想いながら、阿茶はゲンの腕の中で息絶えた。 *身体を差し出すから命は助けてくれ、と地面に横たわった阿茶の胸元に手を差し込んだだけで「おぬし、生娘だな」と言い放つゲン、いろいろ学習したんだな。 *しかし、目に良いからと権爺が差し出したお茶(実は痺れ薬入り)を大人しくこくんと飲んでぱったり倒れるあたり、ちっとは疑わなきゃ死ぬよ!(そこがピュアで良いとはいえ) *ラストはお姫様抱っこ。河原なので足元が少々危なっかしそうだった。 *脚本:小山内美江子
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2006,06,11, Sunday
「蒼い人魂火」(1973年・S48・12月8日OA)
アル中農夫・為吉の一人息子、豊松が行方不明になった。「陰」に攫われたと睨んだものの、深入りを恐れて立ち去るゲンだが、女郎に身をおとした母親・お澄が息子を心配するあまりに足抜けし、女衒たちに殺されたのを目の当たりにして、豊松探しに協力する。だが為吉もまた、「陰」の一員(宮口二朗)の謀略によってあえなく命を落とした。 「陰」の集団に襲われ深手を負ったゲンは、とある寺に葬られたお澄の墓を訪れた。その横に「藤」の字が刻まれた塔婆を発見、弥藤次(山崎努)の面影が胸をよぎる。「お前がなぜここに・・・」そこへ住職の仙蔵と共に現れたのは、忘れえぬ女性・さと(宇津宮雅代)。 「・・・人殺し!」 かつてと同じ叱責の言葉を聞きながら、ゲンは意識を失った。 妹を殺され、自らも「陰」に追われたさとは、身投げしようとしたところを仙蔵に助けられ、寺に匿われていた。床に伏したゲンに懐剣を向けるさと。百姓として静かに暮らしたいと願った弥藤太をなぜ斬ったのかと詰られたゲンは呟く。 「本当に斬られたのは、この俺だ・・・」 弥藤次と自分にぐっさり‘斬られ’(=目を覚ましてもらって)抜け忍になったというゲンを、さとは刺せなかった。 「仇を討てと言って、弥藤次・・・!」 翌朝、墓前で彼に問いかけるさとの前に姿を見せたゲンは、供養のために弥藤次とお澄の墓前で打倒・陰公方の誓いを立てさせてくれと頼む。 だが突如現れた仙蔵がゲンに襲い掛かる。彼は40年もの間人知れず潜んでいた、陰公方の隠し目付けだったのだ。長い間掟に縛られた己を哀れに思わなかったのかと問うゲンに仙蔵は答える。「俺が掟よ!」丸腰のゲンの窮地に、さとは咄嗟に懐剣を投げ与えた。ゲンに倒された仙蔵は、さとと過ごした数日が夢のようだったと打ち明け、「ゲン、お前の荷は重過ぎる」解放された表情でそう言うと息を引き取った。 ―誓いを守って。 さともまた、ゲンの前から再び姿を消した。 豊松を盾に迫った「陰」のくの一・アカネをかわし、無事に豊松を救い出したゲンは、再び歩き始める・・・。 *かつて暗殺した男の娘には殺される覚悟だったにもかかわらず(#5)、さとさんが迫ってくると「まあ待て」「まあ聞け」と少し往生際の悪いゲンだった。そりゃ毎度夢でうなされるくらい気になってたひとだから、落ち着かんわなあ。 *ゲンは寺に預けたと言っていたが、ちこちゃん(さとの妹)、殺されてたのか〜(泣) *豊松くんという連れを見つけてなんだか嬉しそうなゲンだが、豊松もちこちゃんと同じ運命を辿りそうな気がして心配。
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2006,06,10, Saturday
「暮坂峠への疾走」(1972年・S47・3月18日OA)
「竜が舞うほど足が速い」のでその名がついたという、竜舞(=りゅうまい)の銀次(天知茂)。渡世人にしては人が善すぎるのか、受けた頼みは断り切れないタイプの彼は、通りすがりの旅人やら村の衆やらに良い様に使われたり騙されたり散々な目に遭っていて、とうとう相棒まで亡くしてしまった。 可哀相な相棒の墓を作ってやっているところへ、「国定忠治の首を盗んできてくれ」と頼みに来た男が二人。さすがに懲りた銀次は二人を追い返すが、ちょっと好奇心に駆られて(それが彼のイカンところだと思うわけだが)処刑場近くまで足を伸ばし、泊まった農家で相部屋になったいかにもワケありげな若い女性・おしず(梶芽衣子)が親の遺言とかで忠治の首を切望していることを知ると、やる気モード全開になってしまう。 処刑場から首をかっさらい、待ち合わせの峠まで猛ダッシュしてきた銀次を待っていたのは、物騒な手下をしたがえた先の男たちと、小奇麗な衣装に身を纏ったおしずさん。実は彼らはグルだったのだ。やっぱり騙され利用されたと知った銀次は、おしずさんに哀しい瞳を向けながら、口封じに襲いかかる男たちに対峙するのだった・・・。 原作とは違う展開なのが救いといえば救いだが、なにやら昭和ブルースが聞こえてきそうなラストではあった。 忠治の首を背負った銀次、待ち合わせ場所の暮坂峠までとにかく走る、走る、走る。・・・しかし、竜が舞うのは観たことがないとはいえ、ああいう走りをいうのかどうかは正直微妙だ。おまけにどうやらスタントさんっぽい疾走シーンもあって、一番の見せ所(だってタイトルがそうだから)がえらくあっさりしていたのが難点か。だいたい、「足速そう」なんていう形容は、「爽やかそう」と同じでどの時代の天っちゃんにも当てはまらないのではないだろうか?(失礼) しかし、気が良いせいで頼みごとはつい引き受けてしまうあたりは「素」でいけそうで、合っているといえば合っていた。 *原作について (主人公の描写) 長身で、大柄な身体である。表情を引き締めると、端正な顔に凄みが漂う。後半はともかく前半はどうよといったところだが、ドラマはほぼ原作通り。 ただラストが決定的に違っていた。そこが改変されていたからこそ、ドラマの方はいまひとつしっくりこなかったのかもしれない。しかし50年〜60年代の死ぬか逃げるか捕まるかな天っちゃんならともかく、(前に「ダーク」がつきそうでも)ヒーロー役者に変貌していた彼にはちょっと似合わないかもなあ、原作は。 *それにしても、70年代以降で、天っちゃんが劇中で死んでしまうような作品ってあるのだろうか?(あっ、ネタバレ)
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| TVドラマ(時代劇)::その他(単発など) | 12:49 AM | comments (x) | trackback (x) | |