2012,02,23, Thursday
「蛇の目傘の女」(1970年・S45・8月24日OA)
2年前に起きた、“さみだれの弥助”一味による強盗事件。小頭の召し取りをきっかけに一網打尽にされた一味だが、牢屋にいた小頭が何者かに毒殺され、隠し金の在り処がうやむやになったままなのを、担当主任・神山左門(天知茂)はいまだに気にかけていた。 そんなある日、当時の牢番の吉蔵(小田部通麿)が江戸に舞い戻っていると聞いた左門さまは、妙に金回りが良くなっている吉蔵に「お前が小頭を毒殺したんじゃないのか!?」と軽くヤキを入れにいく。もみ合っている内にうっかり印籠をもぎ取られてしまった左門さまはそれに気づかずに帰ったのだが、その後吉蔵が印籠を握りしめて死んでいたせいで、北町の同心に呼び出される。驚く左門さまだが、犯行時刻は夕立の後だと聞いてひと安心。なぜならその頃は居酒屋の軒で雨宿り中で、しかも蛇の目傘の女・おみの(大原麗子)の誘いを受けていたからだ。 ところがおみのは「あたし、旦那を知りません」と左門さまと会ったことを完全否定、アリバイが無くなってしまう。「神山を北町には渡さん!」とかばってくれるお奉行様(今回は完全サブ・加藤剛)、無実を疑わず協力してくれる源さん(大坂志郎)や辰(高橋元太郎)などフォロー手厚い南町チームとは裏腹に、北町の岡っ引き・箕輪の軍次(高原駿雄)だけが「旦那は人殺しでぃ!おてんとうさまはお見通しだ!」などとネチネチ絡んできた。その言い様に思わず刀の柄に手をかけた左門さまだったが、軍次の執拗な粘着ぶりと、闇討ちを仕掛けてきた相手の刀が旗本邸からの盗品であったことから、軍次がさみだれ一味の隠し金と何らかの関係があると睨んだものの、確証には至らない。 一方、渡り酌婦で家無しのおみのを懇意の荒物屋夫婦に託した左門さまは、「早いとこしょっぴいて吐かせちまったらいいんだ!」と仏らしからぬ物騒な物言いをする源さん(左門さまが心配というより“若=お奉行”命)をよそに、頑ななおみのの気持ちをゆっくりほぐそうと、十手を返上して力を尽くす。その真摯な優しさに心が揺らぎだすおみのは、実は牢で死んだ小頭の妹。兄を拷問で殺したのは左門さまだと、兄の友人だった軍次にそそのかされ、復讐の一念での行為だった。 2年前の事件を目安箱へチクったのが軍次だと分かれば――。左手で書かれた投げ文の筆跡を再現させようと、酔っ払いに扮して軍次の右手を折る源さんと辰(今回、過激すぎ)。あとは軍次に字を書かせるだけだが、おみのにそれを仄めかし「これっきり会えないかもしれないが、達者でな」とさりげなく去る左門さま。軍次から左門さまは切腹だと聞かされ(切腹シーンを想像したりして)、ショックを受けたおみのは、軍次に字を書かせて番屋へ走るのだった。 *職務に忠実で、心身共にめっぽう強くて人に優しい左門さまが堪能できる回。加えて、そもそも印籠をその場で見つけていればこういう展開にはならなかったような気がするので、案外ウッカリ者な左門さまも堪能できる。 *「俺は役人であることをかさにきたことなどない。だが、お前の心の傷が何のためなのか、きっと解いてみせる」とか「死にたきゃ勝手に死ねばいい。お前は俺の生き死にを握っているつもりでいるらしいが、俺はそんなに弱くはない」とかあの顔と声で言われたら、おみのちゃんでなくてもイチコロですわー! *闇討ちされたときは十手でびしばし、後のVS軍次戦でも峰打ちでびしばし、実に与力らしい左門さまにもイチコロ(オリジナル左門さまは決して「地獄の舞」なんて披露しません)。 *画像はラスト、おみのに会いに行くんでしょ、と言われて照れる左門さま。
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2009,03,03, Tuesday
「地獄の使者」(1970年・S45・6月15日OA)
行き倒れ男の死因は阿片中毒だった。抜け買いの横行を憂う源さん(大坂志郎)は潜入捜査を申し出るが、名物男の源さんは敵にすぐ知れるから、とお奉行様は首を縦に振らない。頼みの綱は密偵中の隠密廻り・足立(池田駿介)だが、その頃彼は身元がばれてメッタ突きの憂き目にあっていた。瀕死で逃げ帰った足立を発見、今わの際に言い残した言葉を聞いたのは、敏腕与力の神山左門(天知茂)であった。 (自分もある意味名物男だろうに、きっと凶悪な面相でお奉行様を押し切ったに違いない)左門さまは武州無宿の左平に姿を変え、足立が言った源七という男を探すため大番屋へ潜入する。案の定、速攻で「こいつ町方だー!」と期待を裏切らないバレ方をするものの、そこは用意周到な左門さま、二の腕の島帰りの刺青と賄賂で事なきを得た。そして牢内で血を吐いて倒れた男を介抱したところ、それが源七(北町嘉朗)と判明。重病の源七は「妹に渡してくれ」と抜け買いの割符を左平=左門さまに託して死んだ。 お白州に引き出され、「神山様にソックリだ!」と同僚に驚かれつつ(当たり前)お奉行様から無罪放免を言い渡された左平=左門さまに、怪しい男たちが接触を図ってきた。目隠しで連れられた先は川沿いの倉庫。そこのボスに割符を渡せと迫られ、源七の妹に金を遣るという目的で仲間になることに。次の取引の日時を盗み聞きし、大事に懐に忍ばせていたお江戸の新兵器・伝書鳩で(小林君@少年探偵団のように)源さん達に知らせる左平=左門さまの不審な挙動を、下働きのおすずちゃん(長谷川峯子)は目撃しながら知らぬ振りをしてくれた(さすが未来の恋女房@大忠臣蔵)。 しかし今回は取引ではなく“イヌ”を排除するためのものだと現場で言われてたじろぐ左平=左門さま。見張っていた源さんを(うまいぐあいに十手付近に刀を当てて)川に落として急場を凌ぐが、倉庫に戻ると「イヌが分かったぜ」と顔色の悪い用心棒(石橋雅史)が刀を手に迫ってきた!と思いきや、「女に会いにいって、博打で稼いだ金だああ」小判をじゃらじゃら落としながら隣の男がばっさり斬られ、身代わりで御臨終。 源さんが手拭から尾張屋を割り出したり、源七の家族がたまたま伊織(竹脇無我)と知り合いで、無実の罪を着せられ百叩きに遭って以来身体を壊した父親にお奉行様が謝ったり、というサイドストーリー(いや、こっちがメインか)があって黒幕は判明した。あとは抜け買いの現場を押さえるだけ。炙り出しの手紙をおすずちゃんに託した左平=左門さまは、用済みのボスを斬った用心棒を倒し、「俺が頭だ、文句はねえだろうな!」と荒くれ者を率先して次の取引先へと向かい、首尾よく一味をお奉行様に引き渡すことができたのだった(荷物の中をまだ確認していないのに「観念せい、尾張屋!」とビシッと言い切って観念させたお奉行様のやり方に「お奉行、なかなかのハッタリだぜ…!」と呟いてニヤリとする左平=左門さまがステキ〜!←完全贔屓目) 最後は与力姿でおすずちゃんを迎えにきてエンド。姿が変わると性格までころっと変わってしまう左門さまが堪能できる回である(脚本は宮川一郎さん)。 *写真左は牢名主に罪状を聞かれて「ちょっと、喧嘩しちまってよぉ」と恥ずかしそうに言う左平さん。右は「だってあんたならあたしを助けてくれると信じてたんだもん」とおすずちゃんにコクられた(?)ときの左門さま。
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2009,03,01, Sunday
「血の直訴状」(1970年・S45・4月13日OA)
#4で遭遇した、かつてのフィアンセ(=源さんの早世した長女)に激似の女性(宇津宮雅代)が忘れられないお奉行様(加藤剛)のため、人探しに精を出す辰(高橋元太郎)と源さん(大坂志郎)。件の女性を町で見かけ、辻駕籠に乗ったことを突き止めたは良いが、その駕籠かきの一人が何者かに斬殺され、もう一人は行方不明になった。 まさか、あの女性がそんな血生臭い事件と関わりがあるなんて……と信じられないお奉行様と源さんだが、事件を聞いた左門さま(天知茂)は「吟味の筋道に先入観は禁物だ」、もしかするとその女性が下手人かもしれぬぞ、と客観的かつクールな言葉を放って源さんをちょっとむくれさせる(女性を追う理由を口ごもる源さんにわざと食い下がる好奇心旺盛な左門さまがお茶目)。 幸いなことに、もう一人の駕籠かきはからくも逃げ帰ってきた。彼によれば下手人は女性の直前に乗せた若侍。駕籠に忘れた何か重大なものを探していたという。若侍の他にも怪しい浪人がやはり何かを探しに来たが、駕籠の中には何もなかった。やはり、行き当たるのは例の女性。ようやく分かったかの人の素性は、本当は見合いするはずだった娘――大番頭・吉本作左ヱ門の養女・雪絵であった。 実は雪絵は、若侍・勝之進(長谷川哲夫)が駕籠に忘れた血の直訴状を拾っていた。早速彼女に事情を聞きたいお奉行様だが、父(片岡千恵蔵)と作左ヱ門がつまらぬことで喧嘩して見合いが御破算になった経緯があり、なかなか事が運ばない。うーん困ったな、と悩む(お奉行様と)源さんに、いつでも切れ味鋭いカミソリ左門さまは、何をそんなに迷っている、娘の身に危険が迫ってからでは遅いぞ!と、吉本家を警護するよう的確なアドバイスをするのであった。 陰謀により切腹させられた父の汚名を晴らす大事な直訴状を落としたばかりか人まで斬ってしまったウッカリ侍・勝之進は、父の仇が雇った荒くれ者たちに襲われた。そこへたまたま通りがかった左門さまは数人のザコを十手だけでビシバシどつき、退散させる。彼が与力と知った勝之進はあろうことか恩人の左門さまに斬りかかろうとするが力尽き、親切な左門さまに奉行所に運ばれた。 …その後左門さまの懸命なる手当(←お奉行様談)の甲斐なく勝之進は死んでしまい、彼の姉さんも仇の一人と相討ちで果て、上様は直訴を取り上げることはなかったが目安箱を新たに設置、お奉行様は晴れて雪絵さんとラブラブに、という展開。 *このドラマにしては人が空しく死んでいく率が高く、一番の大物には(この話の時点では)手出しが出来ない、というもどかしさが残るシビアな結末。左門さまは事件の深部まで推測するいつも通りのキレ者だったものの、それと知らずに勝之進と遭遇した程度で正面から関わってくれなかったので残念だ。 *画像は「さすがはカミソリと言われるお方だ」と源さんに褒められて(これでも)ちょっと照れてる左門さま。
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2006,03,30, Thursday
「町火消誕生」(1970年・S45・3月23日OA)
火事場で見かけた不審者を問い正したところ、突然斬りかかられる左門さま(天知茂)。十手を弾かれてしまいピンチ。危ない!あっ刀を抜いた!と思ったら相手あっさり死んじゃったよ! さすがはカミソリ与力、切れ味抜群って訳ですな(何か違う)。 ところが斬った相手は直参旗本、それも幕府の定火消(=じょうびけし)取締役の甥だったからさあ大変。町火消設立の許可を取り付けるためお偉方に掛け合おうとしていた矢先の忠相(加藤剛)は、それどころではなくなってしまう。だがお偉方の嫌味を物ともせずに「町方与力、慰みに人は斬らぬもの」と不肖の部下を庇う、相変わらず立派なお奉行様は見ていてウットリ。 不審者を捕らえずに斬ったのはどう考えても俺の落ち度だと、処分の沙汰を待つために自主的に屋敷に引きこもる左門さま。何もそこまでせんでも、とお奉行の命を受けて訪れた源さん(大坂志郎)の言葉にもまるで耳を貸さない。 「ご自分に向かっても情け容赦はしねえ。・・・あなたってお人は、鬼だねえ」 (源さん) 「損な性分だ。しかし、今さら自分にだけ仏では通らんだろう」 フ・・・ッと自嘲的な笑みを浮かべながらそう呟くあたり、むちゃくちゃニヒルー!(崩壊中) とうとうお奉行様にまで腰を上げさせてしまい、(実はこれが目当てだったかのように)ちゃっかり書状をしたためてもらって、左門さまは殺した旗本の叔父の家へ出向く。実は不審者はもうひとりいて、そいつが逃げ帰っていないか確かめるためだったのだが、徒労に終わる。 源さんや岡っ引きの辰三(高橋元太郎)も逃げた男・与六を必死に探すが、まるで行方が分からない。みな左門さまの為に苦労しているわけだが、「泣き言は与六を捕まえてから言え!」なんてエラそうに、いや、自分も他人も同じように厳しく戒める左門さま。まあそのうち上手い具合に事が運んで、左門さまもお奉行さまも万々歳な結果に終わるのだが、死人の元結い(=もっとい)に隠された証文に気づくなど、明智ばりの推理も冴えていた(ちなみにまだ美女シリーズは始まってません)。 【追記】画像は旗本の叔父の家に向かったときのもの。「大岡といい貴様といい、(正面から出向いてくるとは)たいした度胸だ」と言われて「恐れ入ります」と愁傷ぶる左門さまだが、叔父いわく: 「恐れ入った面とは思えん!」 ナイスツッコミ。 【追記その2】連日の捜査が不発に終わり、「少し痩せたな」(by お奉行様)とか「目ばかりになっちまって怖いくらいで」(by 辰三)とか心配されている左門さまだが、当時(1970年)の天っちゃんはかなり恰幅の良い方なのでとてもそうは見えず、普段と変わらずふてぶてしかったのがなんともいえない。
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2006,03,28, Tuesday
「大岡越前」(1970年・S45・3月16日OA)
放送禁止用語のせいで地上波で再放送がされなかったらしい幻の第一話。本放映時はさすがにまだ生まれてないので見たことがなかった。 伊勢・山田奉行だった若き忠相(加藤剛)と紀州大納言(=当時)・吉宗(山口崇)とのひと悶着。それが原因で江戸へ還される忠相と、彼に従う親友の医師・榊原伊織(竹脇無我)。鳶の伊三郎(中村竹弥)との遭遇。両親(片岡千恵蔵&加藤治子)や懐かしい人々(大坂志郎&土田早苗)との再会。そして吉宗から下された命とは・・・。 いやもう、みんな若くて美しい(凛々しい)のなんの。特に清廉潔白を絵に描いた様な忠相と、友思いの熱い血がたぎっている伊織のコンビは眼福極まりない。でも何か物足りないんですけど、と思っていたら、40分あまり経ってようやく真打が登場した。世間の「忠相バンザーイ」な喧騒を他所に黙々と仕事をこなす、かみそりとあだ名された敏腕の与力・神山(=こうやま)左門(天知茂)。与力なので袴履きです。朱房の十手がまぶしいです。落ち着き払ってえらそうです。 神山さまは冷たすぎますよ、と同心の源さん(大坂志郎)に突っ込まれた左門さまはアップになって(画像参照)重々しくのたまう。 「与力というものはな、お奉行に仕えるのではない、奉行所に仕えるのだ。たとえ奉行に万石の大名がこようと、俺の仕事は変わらん。それが、俺の覚悟なのだ」 か、かっこええ!(すみません理性とんでます) クールなキャラを保ったまま、お奉行様の初お白州を背後で見つめる左門さまだったが、忠相の手腕の鮮やかさに「ほお、なかなかやるな」って顔して、「でしょでしょ、私が言ったとおりでしょ?」と嬉しそうな源さんと目配せしあう場面は微笑ましかった。
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