2014,01,06, Monday
アメリカ暗黒街のボスの代理人として、津吹徹(鶴田浩二)は15年ぶりに日本の土を踏んだ。それを出迎えたのは黒眼鏡の鏑木辰夫(天知茂)、東海興業の社長である。政界の大物・田所剛造(内田朝雄)をパトロンにつけている鏑木は、さっそくサーキット場建設の契約を交わそうとするのだが、高額なコミッションを要求する津吹に苦い顔、交渉は中断してしまう。
一方、津吹をライフルの銃口と尾行で出迎えた国友会(鏑木も属する日本の暗黒街組織)の会長は、奇遇にも津吹のかつての兄貴分・銭村健一(丹波哲郎)だった。再会を喜び合う二人。しかし、ライバルの鏑木ではなくうちと契約しろと迫る銭村とも交渉はまとまらない。 なぜ津吹はコミッションにこだわるのか? それは15年前に別れた冴子(南田洋子)を探し出し、アメリカで新しい生活を手に入れるために必要な金だったのだ。しかし津吹は、当の冴子が今では銭村に囲われていることを知らなかった。 田所の軟禁騒動やら、津吹を恩人と慕うレーサーの丈治(アイ・ジョージ)を巻き込んだ賭けサーキットやらを経て、当初の予定通り、鏑木サイドと契約することを決める津吹。ところがその間に、ブンヤの庄司(内田良平)を使い津吹を調べたソツのない鏑木(銭村を蹴落として会長の座も入手したソツのなさ)は、津吹がボスに黙ってコミッションを受け取ろうとしていることを突き、代理人を解除すると言い出した。 帰りの飛行機代だと投げつけられた紙幣にキレた津吹は、田所を利用して鏑木を脅し、無理やり契約書にサインさせたあげくに有り金をすべて奪って逃走。未練にも冴子の家に行くも、待ち構えていた銭村の「(鏑木に対抗して会長職を取り戻したいから)俺に金を置いていけ」にまたキレて、15年前に兄貴の殺しを肩代わりしたのが間違いだった、もう友情なんて糞食らえだと吼えていたところへ、何の落ち度もないのに札束ビンタまでされて怒り心頭の鏑木と子分たちが到着、銃撃戦となる。 津吹に加勢した銭村が倒れ、「出て来い!」と言っても出てこない津吹に業を煮やして自分が出てしまった鏑木は津吹の銃弾で即死。銭村に縋って泣く冴子から逃げるように外に出た津吹もまた、鏑木の部下たちとの死闘の末、息絶えるのだった。 *冒頭からキレ者ヤクザな雰囲気をぷんぷん醸し出していた(単に醸していただけともいえる出番の地味さだったが)鏑木とはいえ、この手の作品でのインテリ系の末路は悲惨なもの。途中からしっちゃかめっちゃかな言動に出る津吹に完敗だった。鶴田さん酷すぎだ。 *鶴田さんが丹波さんに「アニキ!」って…!とびっくりしたが、実年齢的にも丹波さんが二つ上だったとは知らなかった。 *丹波さんと共演すると、もれなくパシリ仕様になってしまう天っちゃんだが、今回は最後まで張り合っていた(たしか銭村を撃ったのも鏑木)。 *ニンニクとかそこらの花とかを丸かじりしてた待田京介さん(鏑木の子分)の存在感が半端じゃなかった。
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2011,08,05, Friday
『関東やくざ嵐』 (1966年・S41)
梵天一家の小頭・尾形菊治(鶴田浩二)は、敵対する組の親分の愛娘・お絹(桜町弘子)と恋仲だったが、それが災いしていざこざが起き、彼女の目の前で父親を刺殺する羽目になって刑務所へ。6年後、務めを終えて戻ってみるとお絹は消息不明、亀吉親分(加藤嘉)が寝たきりの梵天一家は、背広を着こんだクールな代貸・柳五郎(天知茂)が跡目を継いでいた。 金に糸目をつけぬ柳は余所を蹴散らして土木業を発展させていたが、その強引なやり口と古参の子分をないがしろにするやり口にカチンときた菊治は杯を返上。亀吉の口利きで、人徳者で知られる丸高組の親分(村田英雄)の元に草鞋を脱いだ彼は、文字通りガテン系の世話役・ゴンさん(山本麟一)とやりあったりして汗と泥にまみれて仕事に精を出す。 そんな頃、対照的にインドア派の柳は料亭でお絹をじわじわと口説いていた。借金がある上に弟・勇(金光満樹)からの金の無心も続き困惑していたお絹だが、愛しの菊治と再会、今度こそ駆け落ちをと願うものの、渡世の義理に絡められた菊治が煮え切らないでいるうちに、柳に連れ去られてしまう。着流しの上から豪奢なガウンを羽織った柳に(見えない位置でだが)襲われて泣き崩れるお絹。不憫に思う亀吉親分は彼女を逃がそうとするが、柳に爺さん呼ばわりされた挙句、枕への華麗な蹴りを決められてショック死した(だがさすがにそんなダルマ落としで死んでしまうとは思ってなかったらしく「い、医者を呼べ!」とひどく狼狽している小物っぷりが可笑しい柳である)。 丸高組から奪いそこねた仕事を巡ってドンパチを仕掛けてきた梵天サイドとの揉めごと真っ最中の菊治は、お絹と親分のことを聞いて怒り心頭。柳の命令で菊治を狙いに来てゴンさんの妹(宮園純子)を撃ってしまい動揺する勇と、ライフルを腰に差して戦闘態勢のゴンさんを引き連れ梵天一家の本部へと向かう。 (天津敏さん以下)コワモテな手下をそろえて準備万端のはずの柳だったが、菊治との最初の一発で相撃ちになり、最後は二度刺しされて絶命するのだった(後のお絹姉弟とのなんやかんやのシーンで転がっている死体は本人かどうか不明)。 *『博徒』のネオ博徒ぶりと『顔役』のちゃっかりウッカリぶりを足して二で割ったような梵天一家の三代目。出番は少なめとはいえ、悪役の務めをしっかり果たしていた。…しかし鶴田さん、殺すときはいつも容赦ないなあ。
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2009,10,04, Sunday
『博徒』(1964年・S39)
三組の博徒一家がシマを張る明治の大阪にて、盛大な襲名披露で阿倍野一家の二代目に収まったのは藤松米太郎(東映デビュー:天知茂)。紋付き袴だけでなく洋装や電気マッチ(あとは馬車など)も良く似合う藤松は“関東から流れてきた、御家人崩れの成り上がりモン”としてナニワの古株博徒たちから毛嫌いされるが、彼には市会議員になるという野望があり、目的達成のために財界の大物たちの頼みごとを引きうけて足場を固めてゆく。 博徒を馬鹿にしているくせに彼の資金や組織にちゃっかり頼ってくる連中を見返すため、社会的地位を得ようとしているかのような藤松。しかし昔堅気の任侠道を説く高田一家の伊三郎(主役:鶴田浩二)を筆頭に、血の気の多い子分・卯之吉(松方弘樹)、弟分・安之助(里見浩太朗)たちがなんだかんだと足を引っ張ってくる。 鉄道会社に請われ、貧民窟(あくまで自分のシマ内)の一掃を仕切っていた藤松に「堅気さんを泣かすんかワレー!」と突っかかってきたのが伊三郎。立ち退き拒否のおっさんが死んだせいで子分連中が乱闘となり死者が出るが、両一家の手打ちでとりあえず収まった。「そんな(死なせる)つもりはなかったんだ」と弁解した藤松だが、子分を失った伊三郎は、博徒らしからぬ行動を続ける彼に敵意を抱くようになる。 一方、安之助が属する八軒山一家は親分がヘタレ、その親分を叩き斬って安之助が刑務所入りしている間に、甲斐性の無い代貸が「わしらの賭場、預かってくれまへんか」と藤松に泣きついた(別に藤松がシマを乗っ取ろうとしたわけではない)。だが出所した安之助から事情を聞いた伊三郎がまたしても激怒して阿倍野一家に乗り込み、藤松を泥棒呼ばわりして詰った。 伊三郎なんかやっちまいましょうぜ、と憤る子分たちを前に無言で思案中の藤松のところへ、高田一家を破門になった五郎七(遠藤辰雄)が現れ、高田の親分(月形龍之介)をバラすから女と逃げる資金をくれと持ちかけてきた(別に藤松が親分をバラせとけしかけたわけではない)。ところがその女というのが卯之吉と相思相愛の女郎・小里(藤純子)。小里を返せー!と猟銃持ってなだれこんできた物騒な卯之吉を仕方なく藤松は一発で始末。「卯之さんは阿倍野の親分にブッ殺されたあ~!」と泣き叫ぶ小里の言葉にアンチ藤松度数が上昇する伊三郎、おまけに高田の親分を刺して一家に捕まった五郎七が「(親分殺しは)藤松の差し金だー!」と大ボラ吹いたおかげで完全にブチ切れてしまい、藤松に果たし状を叩きつけた。 多分にお門違いな憎悪を向けられた藤松は果たし状にも動じず、「俺は無駄な喧嘩はしない」と警察に連絡。だが、博徒風情の市政参加を快く思っていなかった警察署長は、相討ちさせる魂胆で馬車で殴り込みをかけた伊三郎と安之助を止めなかった。たった二人にばっさばっさやられて倒れる阿倍野一家の面々。かくして、何発ぶち込んでも向かってくる(主役ですから)伊三郎と彼を捨て身で守った安之助の連携プレーにより、伊三郎のドスをくらってしまった藤松は「貴様、邪魔ばかり…!」と本音を吐いて倒れ伏すのだった(おまけに間抜け呼ばわりされて止めを刺され、足を突っ張らせて絶命)。 *ドス持ちの鶴田さんに拳銃向けてるスチールからどんな悪人なんだと思っていたら、gooあらすじにあるようなイカサマ博打もなく、単に近代的な博徒の道を模索しようとしていただけ(にみえる)藤松。なのになんでそこまで憎むんだ伊三郎!と鶴田さんの暴走ぶりが少々恨めしくなる作品。まあ、大阪で標準語しゃべって済ましてるヤロウってだけでムカつく気持ちは分かるんだが(←そんな問題ではないと思う)。 *初の東映作品なので花を持たせてもらったのかどうか、松方弘樹や里見浩太朗を簡単にやっつける姿がまたカッコいい。 *襲名披露とか、手打ち式とか、博徒の仕来たりが極上のモデル(=天っちゃん)つきで分かる、プロモーション映画としての面白さもある(「博徒 せいたい早わかり表」なるミニ冊子が存在し、そこにも襲名披露の写真なども入っている)
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2007,07,22, Sunday
『主水之介三番勝負』(1965年・S40)
紀州家指南役の座を巡り、亡き義父の親友で天地自念流の片倉一閑斎(内田朝雄)と競うことになった鏡心流大塚道場の若先生・大塚玄蕃(天知茂)。技術不足を謀略(と金)でカバーして今の地位を築いてきた彼は、腕がすこぶる立つがちょっと問題児の元師範代・木島弥十郎(近衛十四郎)と仲間達に一閑斎殺害を依頼。目論見どおり一閑斎を再起不能にすることに成功するが、夢殿主水之介(主役:大川橋蔵)という自分には無い剣の腕前とライトな性格を纏った小憎らしい男が帰ってきたせいで歯車が狂い始める。 主水之介はライバル・片倉道場のかつての精鋭で、玄蕃の妻・美緒(桜町弘子)の元恋人。3年前、流派の違いもなんのその、人目をはばからずイチャイチャする相思相愛の関係だったのを、同じく“お嬢さん”に惚れ抜いていた玄蕃が姦計を巡らせて仲を引き裂き、破門に追いやった男だった。案の定、愛しい恋人の帰還を知り、お揃いの鈴をチリリンと身につけて浮き足立つ美緒に玄蕃は激しくジェラシー。おまけに一閑斎事件の真相を聞きつけた美緒は彼を思いっきり毛嫌いし始め、肌すら合わせてくれない。 進退窮まった玄蕃は主水之介をも抹殺してしまおうと計画するのだが、生粋の剣オタクである弥十郎は「あいつと勝負するのはオレだ、それまでは誰にも触れさせん!」と子分達をぶった切る始末で、仕方なく意地とプライドを賭けて御前試合で主水之介と対戦する羽目に。だが爽やかな主演オーラを放つ主水之介に勝てるはずもなく、玄蕃は破れた。弱り目に祟り目といおうか、怪我を負い伏せっているところへ弥十郎がやってきて造反、お前の役目はもう終わった、道場の3代目はこのワシだ、ついでに美緒も貰ってやるから安心しろハッハッハとぶったためにカッときて刀を握った瞬間、障子ごとばさーっとやられて一巻の終わり。享年32歳(←墓石による)、無器用な愛に生き、愛ゆえに死に急いだ脆い男であった。 *この種のヤな男、新東宝時代ならものすごく憎らしげに演じてくれたはずなのだが、ここではイヤミぶりよりも一人の女に尽くしまくる(でも報われない)哀しい一途さが印象的で、色気たっぷりのルックスの良さも手伝って思わず同情したくなる場面がちらほら。 *また美緒さんが、初恋を大事にする純情な乙女、というよりは家や体裁を気にする下心が見え隠れする女性なので余計に玄蕃が哀れだった。最期も「どこにも行かないでくれ・・・!」と美緒に縋って例の鈴を手にしたところで弥十郎襲来、そのまま鈴を握って事切れたのだが、ラストではなぜかお互いの鈴を交換しているいちゃいちゃカップル。美緒さん、せめて鈴くらい握らせたまま葬ってあげなよ!
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2007,02,06, Tuesday
『竜虎一代』(1964年・S39)
文明開化の音が聞こえ始めた北九州。川船頭を束ねる石岡一家に拾われ、親方(山本礼三郎)の後継者として育てられた組頭・縄手清治(天知茂)には、親方の友人の娘・雪子(藤純子)という美しい許嫁がいる。しかし雪子の父・松橋(柳永二郎)が川船頭の敵といえる鉄道事業を興したことから家同士の関係が悪化、祝言は延び延びになっていた。 そんな折、松橋が何者かに襲撃され死亡。父の跡を継がねばならぬ雪子は、商売敵となってしまう清治に婚約解消を申し出た。お互いの手に愛のペア・リングが光ったまま、次第に疎遠になってしまう二人。石岡一家を父の仇と付け狙う(実はその通りなのだが、清治だけが知らされていない)血の気の多すぎる雪子の弟・新一(千葉真一)、また雪子の側にのほほんと居座っているワケありの流れ者・草刈信次郎(主役:鶴田浩二)の存在も、清治にとっては心穏やかではない(実は信次郎にはおくみさん=佐久間良子というイイ女がいるのだが、清治が知る由もない)。 松橋の死により潰えるかと思われた鉄道工事は意外に順調に進んでいき、仕事を奪われる立場の川船頭たちの動揺は広がる一方だった。彼らの生活を守るため、清治は船と鉄道の共存を市役所に懸命に掛け合うのだが、おエライさん連中は彼の提案を無視(彼らが鉄道で金儲けを目論んでいることを清治は知らない)。石岡親方は清治の青い理想論に堪忍袋の緒を切らし、彼を遠ざけて鉄道工事の妨害を企てようとする。 石岡一家の若い衆が線路にダイナマイトを仕掛けたことを知った清治は、投げ文でそれを雪子に伝えた。だがその後馬で現場に駆けつけると一足遅く、橋は爆破、新一は刺され重態。清治は彼を抱えて暴走する機関車から飛び降りたのだが、介抱の甲斐なく新一は命を落とした。清治がその場にいたことで、線路爆破は石岡一家の(というより清治の)仕業だと断定されてしまう。 おまけに、工事を手伝う内にすっかり鉄道にハマっていた信次郎(主役)がキレて石岡一家に乗り込んできた。松橋襲撃の際に居合わせた彼、唯一見かけた般若の刺青の男を見つけるとずばーっと斬り伏せ、そのまま石岡親方に刃を向けた。親方を庇って信次郎の前に立ちふさがった清治は、彼にサシの勝負を挑む。 清治と雪子がいまだに愛し合っていることを知っているはずの信次郎だから(それにやはり鶴田さんだから)なんかこう丸く収まるような態度に出てくれるんだろうかとの期待も空しく、やるかやられるかの極限の中、信次郎のドスが何の落ち度もない清治を貫いた。リングが光る右手を地に這わせて、殺される理由は何一つないのに清治は絶命。信次郎は東京から彼を追ってきた刑事(加藤武)に捕縛され、「縄手…すまん」と呟いて親方はピストル自殺。 後日。護送される信次郎の側を、鉄道完成を祝う機関車が過ぎていった。そこには、指のリングをじっと見つめる雪子の姿があった…。 *勇ましい船頭の若親方ルックでも(薪割りなんかもやってたけれど)どことなく線の細い書生風の清治。親方を大事にし、船頭たちにも親切で、雪子の死んだ父の霊を灯篭流しでそっと供養してやるような良い男振りなのに、親方や子分達、はたまたフィアンセの雪ちゃんにも、ウラの事情をまったく教えてもらえない可哀相な奴であった(愛されすぎてか?)。しかしなにもこんな悩める薄幸青年を二度も刺して殺しちゃうことないだろ鶴田さん(信次郎)! それに石岡の親方も、彼にすまながって自殺するくらいならタイマン勝負の時に止めてやれよ! *鶴田さんに虎の刺青があったから、タイトルから察するにてっきり天っちゃんには竜の刺青があるのかと思っていたのだが、最後まで脱いでくれることはなくて残念だった。 *資料本にはドスを抜いた千葉ちゃんと対峙するスチールが2枚ほどあるが、そういうシーンはなかった(まだまだボーヤな千葉ちゃんなので器が違ったというべきか)。
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2007,02,04, Sunday
『男の勝負 仁王の刺青』(1967年・S42)
喧嘩っ早さが元で破門された九州男児の浪曲師、“暴れマサ”こと菊地政五郎(村田英雄)は、兄弟子(中山昭二)と別れ来阪。押しかけ女房のお袖(藤純子)と職を探すが、破門された者を雇ってくれる興行師はいない。そんな折に地元侠客の山根組とねんごろになり、ヤクザの世界に入ることを決意する。 大阪を仕切る侠客には、山根(明石潮)のほか、石津(天津敏)、石津の弟分の浦辺(名和弘)、そして滝井伊三郎(先のメンツに比べると、親分というよりは呉服屋の若旦那のような雰囲気の天知茂)がいた。自分ちの若い衆をボコボコにした政五郎とサシの勝負に出たり、ある時はクレーンで吊り下げてリンチしたりと、最初は対立していた伊三郎だが、政五郎の漢(オトコ)気に感心したらしく、いつしか心を許す関係に。 政五郎が米騒動の責任を取りムショ入りしている間に、山根組のシマを乗っ取りたい石津と浦辺が、山根のゴミ船の人足を囲い込み営業停止に追い込むという嫌がらせに出た。進退窮まったお袖ら山根一家に救いの手を差し伸べたのが伊三郎。彼はやがて出所してきた政五郎と義兄弟の盃を交わし、山根組襲名披露のために奔走してやるのだった。 政五郎のかつての師匠や兄弟子も招かれ、芝居道楽な若旦那もとい伊三郎親分が企画した浪花節興行は襲名披露と相俟って盛大に開催された。が、心労が祟ってお袖が急死、おまけに石津&浦辺の極悪コンビが出席予定の芸人を拉致監禁、興行はたちまち途中キャンセルの危機に陥る。愛妻を失い傷心の政五郎に事情は告げられぬと、伊三郎は単身で石津の下へ掛け合いに向かった。 ところが、証拠がないとうそぶかれた揚句「眼ぇ三角にしよってからに、大層なこっちゃなあ」と軽くいなされ(元々そんな眼なんだから堪忍したって下さい>天津さん)静かにブチ切れた紋付袴の若旦那(親分)、ワイは命を張ってきたんや、オノレが死ぬかワイが死ぬかじゃあ!と匕首を抜いてテーブル越しに石津に襲い掛かった…!のだが、彼のリーチよりテーブル幅の方がはるかに広く失敗(も少し考えてから襲えよ)、かくして石津や浦辺の子分らと乱闘になり、かなり善戦したものの数には勝てず、四方八方からメッタ突きの憂き目に遭ってしまう。 床に倒れてからも踏まれたり蹴られたり、瀕死のカメ状態の伊三郎に、浦島太郎ならぬ小浪竜次郎(政五郎に恩義のある、石津一家の客分:鶴田浩二)が見兼ねて助け舟を出した。彼の説得に石津はしぶしぶ芸人を渡すことを承諾し、それを聞いた伊三郎は竜次郎の腕の中で安堵したように息を引き取った。今度はオマエが政五郎をヤる番だぜとの言葉を背に、竜次郎は伊三郎の亡骸を背負って静かに部屋を後にした…。 その後、仁王の刺青を引っさげて政五郎が弔い合戦に向かい、渡世のしがらみに縛られた竜次郎とのひと悶着を乗り越えて、二人して(あ、サブちゃんもいたなあ)にっくき石津たちを斬り捨て(石津と相討ちになった竜次郎は仁侠映画っぽい台詞を吐きながら雪の中で絶命)、政五郎は息子たちとの涙の別れを経てお縄となるのだった。 *前作「男の勝負」の弁次郎は陽気な二枚目半だったが、どこかインテリ臭を漂わせるキレ者の伊三郎親分。冷静沈着で、いざというとき頼り甲斐があり、友(きょうだい)思い。そんなすこぶるイイ人のなで肩の若旦那を一人で敵地へ行かせるってのはどういうことだよ子分衆! *ようやく「誰かに抱かれて死ぬ」天っちゃんに遭遇できたわけだが、ずっと見てたんならも少し早くなんとかしてやって下さいよ鶴田さん(泣)
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2007,01,15, Monday
『男の勝負』(1966年・S41)
荒れ地だった千日前@大阪。ひょんなことから山田一家の婿養子・重助(村田英雄)を救った香具師の奥田弁次郎(天知茂)は、彼の人柄に惚れ込み、協力し合って千日前開発に精を出すことになった。 二人の尽力、そして弁次郎の愛妻・扶美(南田洋子)のバックアップなどで千日前には客が押し寄せるのだが、千日前を自分のものにしようと企む五十路親分(天津敏)の計略により、弁次郎の子分・銀二郎(北島三郎)と重助サイドの倉吉(=実は山田一家の親分の隠し子:林真一郎)の諍いが、山田VS奥田の一家上げての抗争に発展してしまう。 奥田一家に喧嘩状を送り、子分を連れて指定場所で待機する重助の下へ、弁次郎はたったひとりで現われた。約束が違うと詰問する重助に、着物をバッと脱ぎ捨て背中の観音様(刺青)を見せた弁次郎はこう申し出る: どうかサシで勝負してほしい、俺たちの血が流れるだけなら観音様も許してくれるだろうから――。 それを重助は受け、ドスを交え始める本当は闘いたくない二人。しかし途中から子分が入り乱れ、さらに弁次郎のかつての親分(弁次郎は彼の元を出て、ヤクザではなく香具師になりたいと諸国を放浪していたのだが、その間もずっと目をかけてくれていた)・中村(中村竹弥)が仲立ちに現われたことで、両一家はめでたく手打ちとなった。 1年後。懲りない五十路親分は倉吉をそそのかして千日前乗っ取りを図っており、身をもって制そうとした病身の山田親分を斬殺、ついでに邪魔になった倉吉もバラして山田一家へ投げ込んだ。二度とドスは抜かないと誓った弁次郎&重助だったが、二人で五十路一家へ乗り込むことを決意。 しかし五十路の屋敷ではすでに、山田一家に病身の妻(藤純子)ともども世話になっていた千住小太郎(高倉健)が一足お先に良いとこ取りをして華々しく命を散らしていた。その後始末のような立ち回りのあとで見事五十路を討ち取り、頼りになる中村親分が再び出てきてくれたことで騒動は終結をみるのだった・・・。 *軽めの大阪弁が二枚目半の仕草によく似合っていた弁次郎。子分(師匠とおんなじ髪型の宮口二郎さんら)に慕われ、嫁さんに好かれ(面と向かって「ええヨメはんやね!」なんて言っちゃうあたりも好感度大か)、おまけにかつての親分さんにもずいぶんと可愛がられ、珍しく周りに人が大勢集まっている人気者だ。良い人だと十中八九死ぬのが東映での天っちゃんの黄金パターンだが、日ごろの十八番を健さんが引き受けてくれたおかげで死ぬのを免れた模様(ありがとう健さん)。ただその健さんが美味しいところをかっさらってしまったので、主題がぼやけてしまった感があるのは残念だった。 *村田英雄、北島三郎(あと藤山寛美とか)と一緒の画面に収まると、天っちゃんは背が高くてやたらと男前に見えてしまうからお得である(いや、そうでなくても男前には違いないが←苦悩しつつも決闘に赴くシーンのカッコよさは必見)。
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2006,11,27, Monday
『孤独の賭け』(1965年・S40)
*ラピュタ阿佐ヶ谷にて鑑賞(2006.11.25) あらすじはほぼ原作をなぞっているので省略。 資金繰りに奔走しているかと思えば女を口説いてるか抱いてるか脱いでるかな(って女絡みが多いが)実に忙しい千種梯二郎(天知茂)。34歳という天っちゃんの実年齢とルックスは成り上がりの若き野心家を体現するにはまさにうってつけで、新東宝時代の名残のような台詞回しのそこはかとない軽さすらも、詰めの甘さで道を誤まる千種の末路を見越しているかのようだった(うなじの手入れの詰めの甘さもそうか?←それはたぶん違う) 1話の後半でようやく登場したドラマ版とは違って実にサクサクと話が展開するのだが、サクサク進みすぎて百子(佐久間良子)はもとより千種の内面描写やバックグラウンドの掘り下げが浅くなっていたのが勿体無かった(原作好きの弊害か)。もっとこう、最底辺から這いのぼってきたんだぜ!というギラギラした姿も見たかったなあ。 ただ、秘書の中川京子(小林千登勢)と百子の色男・千種を巡る女の争いはビジュアルで見るほうがインパクト大。佐久間さんに百子チックな「毒気」や「執念」をあまり感じなかったせいで(「おんな太閤記」や「細雪」等のふんわかイメージが強いので)、おとなしそうな顔をして私はどこまでも社長にお供しますわオーラをがんがん放出させ、ラストに見事(?)千種をモノにした京子=千登勢さんの手腕が際立っていたように思えた。 *あんなに地味な梅宮辰夫をみたのは初めてかもしれない(メガネ姿の千種の右腕役)。←プレ不良番長時代だからか *(2006.5.28)原作について 最底辺の生活から這い上がった野望多きひとりの男・千種梯二郎。 自分を不幸に陥れた親類への復讐に燃えるひとりの女・乾百子。 偶然出会った二人は似た境遇と互いの持つ力に本能的に惹かれ合う。男は女の夢に投資し、やがて二人で歩むことを望む。女は男を認め愛しつつ、自立の道を模索する。 借金だらけで突き進む男の夢(=パノラマ島作り)は叶うのか、自立心の強い女はどこまでのし上がれるのか。そして人生の賭けに勝つのはどっちか。メリハリの効いた短文調でなかなか読ませてくれた。 1963年(S38)に本が出るなり天知茂主演でドラマ化され、乾百子には小川(黒蜥蜴)真由美。その後、1965年には映画が作られ、このときの百子は佐久間良子。そして1978年に再度ドラマ化されている。 天っちゃんを念頭に置いているせいでどうしても千種メインで読んでしまっていたのだが、従属を嫌う百子の生き方には共感する部分が多かった。特にラスト(以下ネタバレ失礼)、甘さが抜けなかったというか、うぬぼれが強すぎて千種が自滅し、金の無心のために(それも自分の愛人兼秘書のための金を無心するために!)百子を訪ねるくだりには、彼女でなくても今までの理想像がガラガラと崩壊する気分を味わった。ドラマや映画もこのラスト通りなのだとしたら、かなりカッコ悪いよ天っちゃん(=千種)。 *気になることがひとつ。1978年版キャストをデータベースで調べてみると、 天知茂、五十嵐めぐみ、浅野温子、園まり、白石奈緒美、伊藤雄之助 という面々の名前があるのだが、順番からすると五十嵐さんが百子役だったのだろうか? 78年だからもうすでに初代文代さんと明智センセイだったわけで、その二人の絡み…ってどうなんだろうなあ。 *「首無し島」のときもなんだかなあと思ったものだが<文代さん&センセイ
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2006,11,12, Sunday
『白昼の死角』(1979年・S54)
立ち上げた金融会社・太陽クラブが失敗し発狂、歌い踊りながら焼死した友人・隅田(学生服姿や白塗り野球小僧姿まで何もかも怪演:岸田森)の二の舞はごめんだと、世間に対して挑戦状を突きつける鶴岡七郎(夏木=現・夏八木=勲)。巧妙かつ大胆に法の目をかいくぐり、次々と企業を騙して大金を手に入れる鶴岡の前に立ちふさがるのが、東大法科の先輩でもあるキレ者検事・福永(天知茂)だった・・・! 騙す側(竜崎勝・中尾彬・千葉真一 etc)、騙される側(長門勇・佐藤慶・成田三樹夫 etc)ともにディープな面々で、おまけにアクセントとして丹波哲郎・内田朝雄なんていう重鎮も拝めてまさに東映オールスター祭り(ちなみに天っちゃんの周辺には室田日出男・伊吹吾郎。こちらも濃い)。普段とは少々異なる役柄を嬉々として演じている方が多い中、天っちゃんは7年の映画出演ブランクの間にTVドラマで培った、「打倒・悪」イメージを踏襲した法の番人役を好演していた。ステロタイプといってしまえばそれまでだが、「判例がなければ、この私がこれから作る!」なんていうキメ台詞を鋭い目つきでビシィッ!と鶴岡に投げつけられるのはやはり彼しかいない(もっとも、マフィアのボスみたいな見た目のシーンもあるとはいえ)。 *のちに村川透監督は井上梅次監督の後を継いで美女シリーズを担当することになる(「天使と悪魔の美女」など)。・・・出世? *現代の悪を体現する鶴岡役は、もう10年ほど早ければ天っちゃん自身が好んでやっていそうな役だと思った(その場合、隅田は沼田曜一さんでどうだろう←それじゃ「もう20年ほど早ければ」か) *天っちゃん(特別出演)のクレジット位置は千葉真一と丹波哲郎(トメ:同じく特別出演)の前。出番の多かった千葉ちゃんはともかく、丹波さんには勝てない(たぶん勝つ気もない)天っちゃんだった
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2006,11,05, Sunday
『傷だらけの人生 古い奴でござんす』(1972年・S47)
図らずも敵対する組に分かれてしまった実の兄弟、大西栄次郎(鶴田浩二)・竜三(若山富三郎)の間に立ってひとり気を揉む、竜三サイドの心優しき代貸・神田良吉(天知茂)。若山トミーさんのいるところ必ず背後に控えており、血の気の多い竜三親分の一挙手一投足に黙って付き従いつつもハラハラしている様子が手に取るように分かる忠義者だ(もっともこっちはこっちで、敵地に香典を届けに単身乗り込んだり、出入りに参加したりする度にいつ死んじゃうのかとハラハラしどおしなのだが)。 最初のうちは出番はあってもほとんど目立たない控えめな良吉さんだが、後半、あわや兄弟間で血の雨が!という緊迫したシーンで「待っておくんなはれ! やるならワイを先に・・・!」(←しょぼくれ刑事@犬シリーズより流暢な大阪弁)とドスを持った鶴田アニキの前に半泣きで飛び出し双方の動きを情で止める、といった、ビッグスターの年上のおふたり(鶴田さんが7歳上でトミーさんが2歳上)に平等に可愛がられていたらしい天っちゃんにしか出来なさそうな見どころがあって楽しめた。 しかし、やはりと言うかなんというか、こんな良い人は長生きはしない。黒幕の憲兵(天津敏)に刃向かった竜三親分が撃たれてしまった。それでもまだ捨て台詞を吐く親分に向かって発射された弾を、咄嗟に親分に覆いかぶさって自分の身体で受け止めた忠義者の良吉さんは、乱闘になってバッサバッサ斬られながらも栄次郎に電話を掛け、最後の力を振り絞ってひとりを血祭りに上げてから仰向けに絶命。急行した鶴田アニキとまだ生きていたトミーさんが傷だらけの人生ロードを歩むラストシーンで唐突に死に顔が数秒間アップになるというオマケもついていて、悲しい最期(と遺体の虚ろな瞳)に泣ける作品だった。 *1972年ってのは映画の致死率100%の年(4作全部で死亡)だと判明
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