2006,10,15, Sunday
『昭和おんな博徒』(1972年・S47)
向島の大田原一家にわらじを脱いでいるさすらいの侠客・島崎勇三(天知茂)は、堀川一家の次期組長・巽(松方弘樹)を消すよう大田原(山本麟一)に命じられた。先の長くない堀川一家の組長は巽を跡目に選んだのだが、兄貴分の森戸(渡辺文雄)が納得せず、シマを乗っ取ろうという下心のあった大田原は森戸に助力を申し出たのだ。労咳を患う妻・絹枝(松平純子)を看病しながら組に厄介になっている島崎には断れない仕事だった。 争いを好まない巽が森戸を説得しようと単身訪れたところへ、サシの勝負を挑む島崎。だが森戸とその子分達が巽を騙し討ちにしてしまった。彼の骸を自宅まで律儀に送り届けた島崎は、泣き崩れる妻・藤子(こっちが主人公:江波杏子)に殺したのは自分だとこれまた律儀に告げ、その場を後にした。自分を拾ってくれた巽の人柄に惹かれ、同じ龍の彫物を背負うことでカタギを捨てた矢先だった藤子は、最愛の男を死に追いやった島崎たちへの復讐に燃え、「巽のお藤」として渡世の道を突き進むことになる。 そして二年後。絹枝の実家・島原に近い九州の加倉井一家(組長・嵐寛寿郎)の元に身を寄せ、妻の世話を甲斐甲斐しく続けていた律儀な島崎は、お藤が自分を探してここまできている事をアラカンさんから告げられた。絹枝をサナトリウムへ送った後、人気の無い墓地でお藤に対峙した島崎は、真相が知りたいという彼女の問いに沈黙を守る(しつこいが律儀に)。火を噴くお藤の拳銃(飛び道具ってのはちょっと卑怯だよお藤さん)。と、そこに絹枝が現われてやおら島崎に覆いかぶさった。殺すなら二人一緒にと嘆願する絹枝の捨て身の愛に、お藤は引き下がらざるを得なかった。 ところが、いまや関東一円を牛耳ろうとしている大田原は、巽暗殺のカラクリを知る島崎を消しにかかった。突如襲い掛かってきた刺客に絹枝を殺されてしまった島崎は上京、巽の墓前でお藤に協力を誓う(ここで「あっしの命、使い捨てにしておくんなせぇ・・・あっしにはもう、失うものは何もねぇ・・・どうか気になさらずに」の名台詞登場 )。 気になさらずと言われても気になっただろうがとりあえず律儀さ天下一品の頼もしい同志を得たお藤は、巽殺しを示唆した張本人・大田原を親分衆が集う席で糾弾、大乱闘の末、見事夫の仇を討ち果たした。だが当時無敵の致死率を誇る天っちゃんもとい島崎は深手を負い、「これで絹枝に会えますぜ・・・」と微かに笑みを浮かべて目を閉じたのだった・・・。 *今まで見たキャラクターの中でおそらく一番の愛妻家(そもそも奥さんいない設定多いし)。病身の奥さんに薬買ってきたり精がつくよう鯉を貰ってきたりのまめまめしい態度に胸が熱くなった。熊本弁の奥さんが可憐でいじらしい。 *弱いんだか強いんだかよく分からない人だったが、太モモをさらけ出しての立ち回りは眼福(また死に顔がなんともキレイでこちらも眼福)。
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2006,09,15, Friday
『修羅の群れ』(1984年・S59)
侠客・稲原龍二(松方弘樹)の昭和初期からの出世苦労物語。のっけからサブちゃん(北島三郎)が熱唱してるし、BGMは大袈裟だし、それに輪をかけて大袈裟な演技が繰り広げられるしナレーションは小池朝雄さんだしで、東映オールスター・漢(おとこ)祭りとでも言いたくなる賑々しい勢いだ。 しかし我らが天っちゃんは、いちおう単発クレジットで名前がどどーんと出てきたものの、丹波さん、鶴田さん、若山トミーさん、サブちゃん、文太アニィ、欣也さんなど、当時の東映系大物が次々と出てくる中、1時間経ってもまだ姿が見えない。そのうち二世俳優もわんさか出てきて、図らずも宮内洋氏まで見つけたのに、出てこない。賭場なんかで画面の隅までチェックしてみるが、いない(昔じゃあるまいし、そんな片隅にいるわけがないのだが)。まったく気を持たせる男である。 アニキィ! オヤジィ! うお~!と暑苦しい修羅(=おっさん)の群ればかり追うのがさすがにしんどくなってきた1時間50分後(本編終了13分前)、唐突に場面は高級クラブの片隅に。ピアノの音色をバックに両手に花状態でどっかと腰掛け、ブロンド女性からYou're very handsome man!と言われていやあ、あっはっはとまんざらではない様子で頭をなでなでしてやりながら一杯やってる映画の雰囲気的に場違いな男。彼こそが、天知茂(役名:大島英五郎)! 他の大物さん達のような着流し姿が見たかった気がするが、いかにも夜の街でブイブイいわせてそうな紺スーツに色眼鏡の胡散臭さが堂に入っている。 と、そこへ文太アニィ(松方の兄弟分だが言うこと聞かずに暴走、鶴田のおじきにどつかれて改心したばかり)が登場。 「あにき、八州会の大島会長(=天っちゃん)がお見えになってますぜ」 なんだか知らないが色眼鏡のおじさんはその筋では偉い人らしい。 弟分がそっと耳打ちすると、文太はふふんと鼻で笑って席に近づいてきた。 「よお、大島く~ん!」 実に態度のデカい軽口を受けた大島は、煙草片手にニヒルに言い放つ。 「・・・おめぇさんに『くん』呼ばわりされる覚えはねえな」 内輪ネタともとれるこの台詞に新東宝フリークのお父さんたちはウケたに違いない(っていうか私が非常にウケた)。 部下同士が一触即発になるが、拳銃を取り出した子分をしばいた文太は何をするでもなくプイと消え(貫禄負けか?←たぶん違う)、大島会長は「稲原(=松方)って男はそんな(俺に楯突くほど)馬鹿じゃねえよ」といきまく部下を止めて、おしまい。おそらくビッグネームの皆さんの誰よりもショートな出番だというのに、文太とのやり取りが映画予告編にもちゃんと入ってるところが凄すぎる天っちゃんだ。…それとも、予告編作った時にはここしか撮影していなかったと見るべきか? *喧嘩にすらなってなかったと思うのだが、かつてのセンパイに冷たくされて悲しかったのか(そりゃ内輪の話)、「大島が喧嘩吹っかけてきた。やるぜ!」と松方の指示も仰がず勝手に若い衆を煽って戦争をしかけようとした文太、今度はほんとに破門にされた。 *個人的に主演の松方氏がどうにもニガテなので辛かったのもあるが、天っちゃんってのは(胡散臭さはたっぷりあるが)暑苦しさとかむさ苦しさを感じさせない人だったんだなあと、出てこない間にその存在の貴重さをしみじみ感じた。 *この映画、顔見せがメインなのでかどうかは分からないが、時代がどんどん進んでも登場人物がまったく年を取らないのでややこしい。19歳から同じ顔の松方氏を筆頭に、鶴田さんなどは30年くらい経過しても全然変わってないのはどういうわけだ。 *予告編でずらずらっと出てくる主要人物一覧。他の人は映画からのスナップっぽいのに、ひとりだけブロマイド風の天っちゃんがヘンだ(しかもなんか若くないか?) (2011.2.14追記)原作について 「八州会の大島英五郎」は出て来ないのだが、後編の中盤で「東方会の町村広行」なる人物が登場し、同じ状況で井沢(文太)とひと揉めしていた(韓国籍でその方面に人脈がある、云々の設定はストーリー上要らなかったので名前が変わったのかもしれない)。町村会長は「目鼻立ちの鋭い、背の高い六尺近い偉丈夫」で、怒って手錠をひきちぎるほど気性が激しく「銀座の虎」と恐れられていたらしい。で、井沢に「町村くーん」と言われて 町村は、静かだが力のこもった声で言った。(本文引用)となるわけだが、この一言を文太に放てるうってつけの人物、ということで必然性のあるキャスティングとみてよさそうだ。
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2006,09,07, Thursday
『あゝ同期の桜』(1967年・S42)
勉学半ばで学徒動員により戦地へ駆り出され、若き命を散らせていった海軍飛行予備学生たちの実話に基づく準・記録映画。 “同期の桜”である白鳥(松方弘樹)・半沢(最初「半蔵」と聞こえて「いつもその名か!」と突っ込みかけた:千葉真一)らのかわいらしい水兵服に笑いがこみ上げたりするのも束の間、話(と戦局)はどんどん悪化してゆく。 燃料がないので空を飛べず、地上で穴掘り訓練中(?)の白鳥たち予備学生と、兵学校出の若者たちとの間で諍いが起こった。大学で遊んでたくせに態度デカイぞお前らあ!と兵学校サイドの猛者たちが予備学生に気合を入れまくっている最中、ちょっと高級そうな黒い車が遠方から到着。軍服の上から白衣を纏った男が駆けて来た(途中で姿が見えなくなるのだが、コケたのではなく地面がでこぼこのせい) 「待てぃ!」 ドスの効いた声を合図に、「十戒」の海割れシーンのようにざざーっと両側に分かれる若者たち。 「殴るほうも元気がいいが、殴られるほうも頑丈にできとるもんだのう」 現われたのは小柄なモーゼ・間宮軍医長(天知茂)。 まだぶつぶつ言ってる兵学校出の連中に「まあそういきりたつな、元気がなくなる注射をしてやろうか?」と冗談めかすあたり、しょぼくれ刑事@犬シリーズが軍人になったような雰囲気である。 「兵学校を出たものも、シャバの大学から来たものも、同じニッポンの若者じゃないか」 お前たちと同期の奴らはフィリピンでほぼ全員が戦死したんだ、冥福を祈ってやれ。 双方をなだめてから最後に暗いニュースを告げると、人の波をかき分けて軍医長は去っていった。 あと、エライさんたちの会議の場(鶴田浩二さんようやくの登場シーン)でちらっと映った以外は出番がないのは少々残念。クレジット(一番下)で並列だった西村晃さん(従卒役)の方がインパクトがあったような気がする(もっとも西村さんは実際に特攻隊員だったので、それだけ情感がこもっていたのかもしれない)。
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2006,08,24, Thursday
『二百三高地』(1980年・S55)
ロシアとの勝算薄い闘いに挑もうとしていた日本。戦争の長期化・泥沼化を防ぐためにアメリカを抱き込む算段の伊藤博文(森繁久弥)は、時の大統領セオドア・ルーズベルトとハーバード大で同窓だった貴族院議員の金子堅太郎(肩書きとお髭が立派な天知茂)に仲立ちを依頼した。 ところが面相の割には控えめかつ消極的な金子。アメリカはロシアと縁が深く、日本有利に事を運ぶ可能性は、政治上、経済上、社交上非常に低い、せめて半分くらいの見込みがなければ到底無理ですごめんなさい、と顔を伏せる。 しかし、その自信なさげな様子に業を煮やした伊藤博文から「ダメだ! 君はね、成功しようと思うからだめなんだよ。命を賭してやるんだよ、金子く~ん!」とタバコを投げつけられ両肩を3度ほどがしっと掴まれゆさゆさ揺すぶられたおかげで「閣下・・・!」と感極まって(手荒い扱われ方に、ではないはずだが)アメリカ行きを決意。『金子はただちにアメリカに向かって旅立った―』というナレーションと共に映画からも旅立ってしまった金子くんだった(出番短いよ!) *おそらく『デマカセ紳士』以来の森繁さんとの絡み。25年の月日を経ても、(森繁さんに)良い様にあしらわれる、という力関係はあまりかわっていないようだった *『デマカセ紳士』並みにショートな出番だったにもかかわらず、DVD表紙ではやたらと目立った位置にいる金子くん(こんな感じ)。これぞネームバリュー? *天っちゃん出演作で唯一リアルタイムに映画館で観た映画(当時9歳)なのだが、さすがに彼の出番は記憶になかった。途中でこれでもかと畳み掛けるさだまさしの『防人の詩』、今だと気恥ずかしい、というよりむしろ少々あざとさを感じてしまうけれど、当時は心にぐさぐさ突き刺さったのをしっかり覚えている(そして今も条件反射で泣けてきたりする)
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2006,08,05, Saturday
『まむしの兄弟 懲役十三回』(1972年・S47)
昭和11年・神戸。刑期を終えたゴロ政(菅原文太)は、彼の帰りを待ちわびていた弟分の不死身の勝(川地民夫)と共に、刑務所で知り合った“金スジをバッサリ斬ったハクい兄弟分”を訪ねて東京は浅草方面へと繰り出した。のだが、単純で騙されやすい(つまりバカ)な二人はスリにあったり殺し屋と間違えられたり、散々な目に遭う(でもバカなのでそれなりに順応して楽しんでいる模様)。 吉原を牛耳っている東竜会の組長・岩淵(goo映画のあらすじでは天津敏となっているが小池朝雄)にひょんなことから見込まれた政は、なさぬ仲の菊村一家の連中を痛めつけてくれと頼まれる。しかし、政がムショ内で兄弟分の盃を交わした男・弥之助(通称ヤノ:渋い和服の天知茂)は、その菊村一家の代貸となっていた。東竜会とうちはもとは一つの組、何の問題も起こっていないと言う弥之助だったが、本家である菊村の親分が病の床に付いているのを良いことに、先代の追善興行の件で分家の東竜会が(自分たちが仕切りたいために)嫌がらせを続けていることを政たちは聞き知る。 兄弟・ヤノの窮地を救おうと政たちはバカなりに頑張るのだが、その行為は、事を荒立てずに済ませたい弥之助の立場を却って悪くするものばかり。面と向かって「オマエら余計なことしすぎなんじゃい!」と怒鳴ったり出来ない、顔は怖いが相当控えめな弥之助は「神戸へ帰ってくれねぇか、兄弟・・・」とオブラートに包んだ物言いをしてみるものの、バカには通じず、「俺らのこと、バカにしてるんやろ!」と逆ギレされてしまう。 政たちは神戸に帰るどころか、馴染みになった子持ちダンサーが男(村井国夫)に捨てられた挙句借金のカタに吉原(=東竜会)へ売られたことを知り、彼女を足抜けさせるという暴挙に出た。その知らせを受けた弥之助の眉間の皺は縦横にMAX。岩淵の元へ赴いて小指をつめるも「おめえの指なんざ何の値打ちもねえ」と撥ね付けられ、興行権を譲れと迫られる。苦痛を堪えつつそれだけはきっぱり断り(カッコ良さからいうとたぶんここらへんが最大の見せ場)、出て行こうとしたその背に、卑怯にも銃弾が。 政と勝が駆けつけたときには満身創痍で瀕死の弥之助だったが、この落とし前は俺がつける、と(たぶんバカ二人に任せたらロクなことにならないと踏んだせいだと思う)最後の力を振り絞って岩淵を道連れに絶命。兄弟分の死にぶちキレた政たちは「皆殺しや~!」と叫んで文字通り東竜会の皆殺しを敢行、警察が来た気配に「サツが怖うてニンジンが食えるか」と迷言を吐きながら底抜けに明るいテーマ曲(皆殺しのときから鳴りっ放し)と共に去っていった。 *このテの映画では悪人・善人役を問わず死亡率が異様に高い天っちゃんなので免疫はついているが、やはり善人役なのに死なれるのは辛い。しかも主役二人に殺されたようなもんだもんなあ。新東宝時代の恩(?)を忘れたのか、文太! タメ口きくとはいい根性しとるな、文太! 赤ん坊(ダンサーに置いてけぼりにされた)なんか手馴れた天っちゃんに任せておけばいいんだ、文太! *親分は病弱、分家の叔父貴は性悪、そして押しかけ兄弟分はバカ、と辛いことばかりのヤノさんだったが、ひとりだけ強い味方がいた。分家をたしなめ、追善興行を全面的にバックアップしようと申し出てくれた関西の大親分、演じるは嵐寛寿郎。アラカンさんありがとう(でもすぐ大阪に帰ってしまわれた)
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2006,08,02, Wednesday
『顔役』(1965年・S40)
冒頭、大勢のその筋の皆さんが一同に会する中、半オクターブほど高め(軽め)の声でやおら仕切りだすのが、関東は檜山一家のエリート幹部・花岡章(天知茂)。造成地にまつわる関西ヤクザとのいざこざをスライドを交えて長々と説明する独壇場に、ちょっと目立ちすぎじゃないのかと思ったのは我々だけではなかった(いや私は嬉しいが)。殺人の罪で懲役を終えて出所したばかりの檜山一家の最古参・中神正治(主役:鶴田浩二)を差し置いたふてぶてしい花岡の態度が、中神の舎弟で血の気の多い早見恭一(準主役:高倉健)は面白くない。 組の為に臭い飯を喰ってきた中神がまた組長から損な役回り(=関西勢を牽制し、土地所有者を丸め込んで土地を買い占める)を押し付けられたことも早見にとっては実に面白くないのだが、とにかく中神兄さんはめいっぱい辛い目に遭って(小指まで失くして)も黙って耐える。だがどさくさに紛れて檜山組長が関西のヒットマンに射殺されてしまったせいで、跡目争いが浮上。当然のように後釜に座り、弔い合戦を指揮しようとしたちゃっかり屋の花岡だが、さすがに中神はストップをかけた。だが、舎弟の早見が檜山組長と懇意だった社長を土地のことで脅した件が問題視され、組の相談役たちに「早見をやって(=殺して)落とし前をつけろ」と迫られる。 上の命令には絶対服従の中神だったが、さすがに可愛い舎弟は殺し難く(本人も嫌がっているし)、かくなるうえは相討ちでと思うのだが「バカになって俺と死んでくれ」「俺ぁあんな組のために死ぬのはイヤだ」の平行線、ついでに早見の元カノ(三田佳子)が飛び出してきたりでうまくいかない。とそこへ、「いつまでママゴトやってんだい」クールなセリフと大勢の部下を引っさげて花岡が颯爽と(とはいえ暗いので良く分からないが)登場。二人の死体を関西勢に引き渡そうという魂胆の彼と中神たちは撃ち合いを繰り広げた。 だが「出て来い、花岡!」中神の一声(名づけて鶴の一声)に「なにい!」といきり立ちドラム缶の陰から飛び出した途端、撃たれて絶命。名前呼ばれたからってドンパチの最中に立ち上がるウッカリ者とは知らなかったぞ花岡。周りの部下もびっくりの急逝ぶりに加えて、前のめりに倒れた際、ドラム缶が身体(上半身)の上にがらんごろんと落ちてくるという、いろいろとイタイタしい最期だった(気合入りすぎだ天っちゃん)。 関西VS関東のやーさん達がずらりと睨み合う中、中神と早見は向き合って銃を撃ち合った。(gooのあらすじでは二人とも死んだことになっているが)倒れたのは、最愛の兄貴を撃てなかった早見だけ。彼の死をムダにしないでくれ、ってことで手打ちとなり、完。しかし、もう少し待っていれば跡目の座が転がり込んできたんじゃないのか花岡よ(やはりウッカリ者か)。 *早見が中神の赤ちゃんをあやすシーンがあるのだが、健さんの不器用極まりない抱き方を観ているといかに天っちゃんが手馴れているのかよく分かる(この映画では抱っこシーンはないが) *中神と行動を共にする部下に待田京介(わんこやホステス絡みのメルヘンなエピソードが秀逸)、江原真二郎(花岡=天っちゃん側のスパイ)ら。
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2006,07,18, Tuesday
『女番長(すけばん)ブルース 牝蜂の逆襲』(1971年・S46)
敵対する組の組長をバラしてムショに5年いた、「人斬りマサ」こと土居政也(シガレット・ホルダー使いのおシャレさん:天知茂)が秋本組に戻ってきた。本来なら代貸(=組のナンバー2)として迎えたいところだが今はヤクザも金儲けが出来なきゃなあ、と浦島なオマエは足手まといだと言わんばかりの組長(安部徹)、ほれ兄貴、当座の10万ですぜと札入り封筒を地面にわざと投げ落とす現ナンバー2のやり手男・紺野(林彰太郎)を前にして土居の表情は陰鬱の度合いを増すのだが、昔の女・梨絵(弓恵子)が新しいパトロンを見つけてクラブを開いていること、小さな子供がいることを聞いてますます眉間の皺が深まる。 問題のクラブを訪れ、ピーター(本人)のナマ歌を聴きながらアンニュイに飲酒していると、オレ土居さんのこと尊敬してるんです!と若い衆が寄って来た。いつかは秋本組の傘下に入ることを夢見る、地元の愚連隊ボス・次郎の熱い眼差しに、土居は腕力だけで生きてきた武骨なかつての自分の姿を重ねて苦笑いを浮かべる。とそこへママ・梨絵がパトロンと姿を見せた。「子供は幾つだ」尋ねる土居に梨絵は「あなたの子じゃありません」とにべもない。 だが後日、幼い娘・和子を連れた梨絵は土居を遊園地へ誘った。パトロンの前では口に出来なかった謝りの言葉を紡ぐ彼女を土居は許し、和子に請われて束の間の『親娘』の交流を果たした。黒い丸首シャツ・白い背広&グラサンといういかにもなコワモテの土居(初対面)に「おじちゃん、メリーゴーランド乗せて~」とフレンドリーに駆け寄る和子ちゃん、さすがに血は争えないが、メリーゴーランドだけでなくモノレールやらコーヒーカップやらに和子ちゃん以上の笑顔で興じる土居のニヤケっぷりが微笑ましい(素になりすぎだよ天っちゃん) 腐れきった秋本組に嫌気がさし、また和子が自分の娘だと確信した土居は、カタギになって家族と暮らそうと決心する。それじゃ最後にオマエにしか出来ない仕事をやってくれ、500万やるからと組長が持ちかけてきたのは、製薬会社から覚せい剤の原料を人質(=社長のバカ息子)と交換に譲り受ける役目。指定された場所で無事ヤクを受け取った土居だが、待っていた秋本組組長たちに銃を突きつけられる。証拠隠滅のため、彼は最初から消される運命だったのだ。 「ホームドラマはお前の柄じゃねえと言ったはずだぜ」(←まったくだ)あざわらう組長に「お前らの薄汚ねえ任侠より、俺はホームドラマで結構だ!」とタンカを切り応戦する土居だったが、紺野と相討ちとなる。駆けつけた土居さん命の次郎(=いろいろあって秋本組から見放されヒモ状態)も組長にやられ、これでオレも男が立ちましたよ、と呟き絶命。「大馬鹿野郎だ、お前も俺も・・・」傍らで冷たくなった次郎に手を伸ばし、土居はこときれた。梨絵と和子の写真を血で染めながら・・・。 *トメ位置にクレジットされていた天っちゃん、ダンディーだが不器用なやーさんを映画の本筋とはなんら関係ないところで熱演。え?女番長はどこって? オートバイ○ックスはって? そんな話は知りません(おい) *梨絵役の弓恵子さんは愛弟子・宮口二朗さん@ゾル大佐の奥さま(だったのかな、もう?) *音楽は鏑木創@美女シリーズ *カメラワークか本人の努力の賜物か、普段は作品の中であまり小粒さを感じさせないビッグな天っちゃんだが、今回はあるシーン(取引を終えて車を降りた途端、組の連中に囲まれるシーン)で迂闊にも(?)周りとの身長差を露呈していた(思わず「・・・小さっ!」と突っ込んでしまった←失礼)
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2006,07,09, Sunday
『賞金首 一瞬八人斬り』(1972年・S47)
消えた幕府の御用金を狙う浪人、と見せかけて実は尾張藩の隠し目付の頭領・薊(=あざみ)弥十郎(天知茂)。メキシコあたりの剛毅な用心棒に見えなくもない主人公(実は医者)・錣(=しころ)市兵衛(若山富三郎)とは出会ったときから張り合っていて、色々対照的な二人の言動も面白い(ホット vs クール、でっかい vs ちっちゃいとか←おい)『六死美人』から16年、おおきくなったものだ。 この弥十郎さん、颯爽と馬で登場するなり、お尋ね者の首をトマホーク片手投げでチョッキンして周囲をびびらせる。金の在り処を知る男・夜叉狼の妹だというので狙われた娘・飛び天童(←兄も兄なら妹も妹な名前)をさりげなく救ってやり、市兵衛さんが彼女の兄貴を牢から連れ出したのをちゃっかり横取りしようと計画するも、失敗すると平気で撃ち殺したり(しかも妹に「アイツ(=市兵衛)は血も涙もない奴だ、お前の兄貴を殺しちまったぜ」とか言っちゃうんだなこれが。そりゃアンタだよ!)、挙句には今まで連れ立っていた飛び天童を荒くれ男の渦に投げ込み、その悲鳴を耳にしても顔色一つ変えなかったり、悪人メイクをしているわけではないのに心底得たいの知れない悪人に見えてしまう、まさに「色悪(いろあく)」の権化。善人も悪人も当たり前のようにこなしていて、観ている方もそんな彼に違和感がないというのは凄いことだなあと思う(そりゃ善人のときでも「わあ怖い顔だよ天っちゃん」とは突っ込んでいるけど) ただ、アダルト一般の扱いはすこぶる悪い彼だが、子供に対してはほんの少しだけ情が動く(というか地が出る?)とみえて、子供の命と引き換えに金持って来い!などと非情なことを口走りつつ、相手が必ず来ることを見越して言ってるし、「ガキの命など、どうでもいい」といいながら子供をなんとなく優しく下ろしてあげてるあたりも見どころのひとつだ。 なんだかんだ言っても日食時にばっさりやられちゃう弥十郎(だって若山トミーさんってば、あの体躯でトンボ切るんだもんな!)だが、彼が一番のワルではなかったことが後から判明、東映らしい不条理な世界が繰り広げられてエンドマークと相成った。(何も子供まで殺さなくてもいいじゃないか>内藤武敏) *この作品を最後に、天っちゃんはしばらく映画から遠ざかる(次の出演作は1979年の『白昼の死角』)。たぶんテレビが忙しくなったんだろう。
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2006,04,08, Saturday
『侠客道』(1967年・S42)
石田組と城西会傘下の寺光組との小競り合いが続いている大阪に、東京からやってきた凄腕検事・中上啓介(天知茂)。実は彼、今は石田組の若頭になっている伊吹(安藤昇)と共に組に拾われ世話になっていたことがあるのだが、12年前、組長の娘と恋仲になったことでカタギにも関わらず小指を落とされてしまい(回想シーン有り。モノクロ・無音ながら、むっちゃ痛そう!)、その私怨が暴力団追放の原動力となっている、暗い翳を引きずる非情の男である。 久々に会えて懐かしがる組長(石山健二郎:もろに気のいい大阪のおっちゃん風)を「暴力団は罪人と同じだ、違いますか!」 とドスのきいた低音で冷たくあしらい(「その暴力団のメシ喰うて大学でられたんとちゃうんか!」とつっこまれてもめげる彼ではない)、予科練で同期だった親友の伊吹をも避け続ける中上検事。心痛する妻(=組長の娘:小畑絹子)が「担当を代わってもらったら・・・」と勧めるが、「ヤクザのくだらなさを知っている私でなければ(駄目なんだ)・・・!」と欠けた小指を見つめながら一層瞳に暗い情念を燃やしている。周囲には恩知らずと思われているけれど、検察側が極道と関係していたらマズイもんなあ、普通は。 中上の偏った締め付けのせいかどうか、組長は寺光(渡辺文雄)の謀略で惨殺、遺言により解散した石田組の面々と地元の人々は、のさばってきた寺光組の横暴に窮地に立たされた。組長の死が、子分・北見(小池朝雄)の裏切りによるものと知った伊吹は、一度は捨てた代紋を背負い、北見と寺光の兄弟固めの盃の場に乗り込む。そして中上もまた、事なかれ主義の上司の制止を振り切って現場に急行する・・・。 石田組の若頭・伊吹さんメインの任侠映画。安藤氏はかつてホンモノのそのスジの人だっただけあって、静かな佇まいの中にも(台詞回しもそう上手くないにも関わらず)一味違う迫力が漂っていた。 ただ天っちゃんも負けていない。同じ土俵に立っていたなら多少は分が悪かったかもしれないが、対極の立場にいるが故に個性が強烈に光り、屈折しつつも内に熱い心を宿した男・中上が大変魅力的な人物に仕上がっていた。満員のクラブで他の客そっちのけで大喧嘩&熱く語るシーンや、ラストの和解シーン等、二人の絡みはかなり見ごたえあり(身長的にも小粒さん同士でピッタリ←双方に失礼)。
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