2008,09,01, Monday
「四谷怪談」(1972年・S47・7月21日OA)
浪人だがこざっぱりした色男・民谷伊右衛門(天知茂)は、友人の秋山長兵衛(戸浦六宏)の勧めで伊藤家のお梅(吉岡ゆり)と対面する。食事も喉を通らぬほど伊右衛門に恋い焦がれているお梅のために、乳母のお槇(高森和子)が長兵衛と図ったのだ。 按摩の宅悦(殿山泰司)の口添えで雇った小者の小平(北町嘉朗)は民谷家伝来の印籠をちょろまかすわ、男の子を産んだ妻のお岩(円山理映子)は産後の肥立ちが悪いわ赤ん坊は泣きわめくわ、おまけに借金取りの茂助(鮎川浩)は金を催促しに来るわで、伊右衛門の不快指数は上昇の一途。と、そこへ現れたお槇が金を用立ててくれたばかりか、お岩に伊藤家伝来の秘薬まで持ってきてくれた。この“秘薬”がまさか物騒なシロモノだとは全く知らない伊右衛門は丁寧に礼を述べ、お岩も「伊藤様のお宅へお礼に行ってねアナタ」と夫を快く送り出す。 ところが長兵衛と共に伊藤宅に向かうと、お梅の父・喜兵衛(見明凡太朗)が「どうか娘を貰ってはくれまいか」と切り出すではないか。願ってもない話とはいえ、妻子ある身故さすがにそれは…と固辞する伊右衛門だったが、さっきのあの薬は奥方の容貌を変えちゃう毒だから、これを機に追い出してしまえと唆されたうえ、お梅が失恋ショックで自害しかけたこともあって、自分と長兵衛の仕官を条件に、つい承諾してしまう。 帰宅すると、お岩の顔は無残に崩れ始めていた。一瞬驚いたものの、すぐに冷酷な表情になり「金が要る」とお岩の着物をくるくる剥ぎ、蚊帳と一緒に質屋へ持って行く伊右衛門。そしてその後入ってきた宅悦に事の真相を知らされてお岩は逆上、柱に刺さった刀ではずみで喉を切ってしまい、「恨めしや伊右衛門どの〜」と呪詛を吐いて事切れた。まもなく帰ってきた伊右衛門は、お岩の死にびっくりするが、これ幸いとばかりに、(納戸へ縛っておいた)小平を斬り捨て、不義密通の事実をでっち上げて戸板にくくりつけるのだった。 そして祝言の夜、お岩&小平の活躍(?)で伊藤家の面々は伊右衛門の手に掛かり皆殺し。赤ん坊の声が耳について離れない伊右衛門は悪夢に苛まれ、浄念(明石潮)の寺に駆け込んだ。浄念は、宅悦が連れて逃げた伊右衛門の子が寺にいることを告げ、子供に会いたいという彼の願いを却下、お前はもう死んだのだ、かくなるうえは頭を丸めて菩提を弔えと、庭の真ん中にどーんと置いてある「俗名 民谷伊右衛門」と記された墓を指さす。 だが、そんな都合の良い展開は許さないわよッ!と再び現れたお岩の亡霊を追い払っている内に、役人を引き連れた長兵衛が寺にやってくる。狂乱の内に長兵衛と相討ちになり、自分の墓の前で伊右衛門は絶命した。「お岩…許せ…」と呟きながら。 *脚本は宮川一郎さん、監督は山田達雄さん(新東宝な方々)。「伊右衛門は薬の中身を知らなかった」「致死性の毒ではなかったが、お岩さんは自分で死んだ」など、鶴屋南北の原作に沿ったつくりになっているのだが、中川信夫監督のあの傑作と比べてしまうと少々物足りなさを感じてしまった。伊右衛門がどっしり構えすぎていて(←いろんな意味でどっしり)、お岩さんへの罪の意識などが希薄だったように思う。ただ、崩れ顔のお岩さんを初めて見るシーン、あっと驚いた後にだんだんクールな三白眼になっていく表情の変化は、色悪の面目躍如といった感じで絶品。
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2008,08,30, Saturday
「追われ者の掟」(1973年・S48・1月18日OA)
腹痛で倒れた河童の喜八(「き」は七三つの「き」:左とん平)は、「私は医者じゃない」と言いながらどう見てもそれらしき風貌の男・小川宗順(天知茂)に救われた。百姓や寺子屋の子供たちから「せんせ〜い♪」と慕われ懐かれているこの宗順、医術の腕もたいしたもので、喜八と落ち合えた秋月隼人(主役:高橋秀樹)も目を見張った。ところが侍を見かけると周囲が過剰反応、「せんせいはワシらだけのせんせいじゃ!」「せんせいを護るんだー!」と彼を必死に匿おうとする。 実は宗順は、さる藩で御典医を務めていたのだが、そこでもたぶんモテモテだったのだろう、ひとりの女性を巡ってある武士の反感を買い、斬りかかられたところを逆に斬り殺してしまい、武士の弟二人に仇として追われる羽目になったのだ(問題の女性は自害したとのこと)。行き倒れたおゆき(光川環世)を救ったことで村に居ついた宗順自身は、ライフワークである蘭学書の翻訳が済むまでは死ねないと思いつつ、いつの日か仇討たれる運命を享受していた(そしてそんなストイックな宗順におゆきさんはもうメロメロ)。 一方、諸国見廻役である隼人が今回この地を訪れたのは、病弱の幼き藩主に代わって親族でもある自分が実権を握りたい、との家老・溝口光貞(神田隆)の申し出の是非を調べるためであった。なんの支障もなさそうだったが、「殿様は毒を盛られているのでは…」と疑問を持っている藩主付きの老女の願いを聞き、薬湯茶碗を喜八に盗ませて、宗順の元へ持って行かせる。 茶碗に付着した成分を調べた宗順は、患者(それが殿様だと彼は知らない)を連れて来いと喜八を急かした。隼人は溝口の目を巧みにくらませて殿様を城から拉致、宗順に診せたところ、腸がねじれて緊急手術が必要だという。設備もないこんな場所で、と一度は渋った宗順だが隼人たちの励ましで手術を決行。しかし、彼を長兄の仇とつけ狙う日引兄弟(兄の裕太郎役は江守徹)、そして溝口率いる刺客たちも村に迫っていた。 手術の場に乱入した日引兄弟は、人助けに懸命な宗順に躊躇し(ついでに村人たちに捕縛され)、溝口たちは(いちおう主役なので)隼人がひとりでばっさばっさと成敗。そうこうしているうちに殿様の手術も(マスクなし・焼酎ぶっかけ・麻酔なし・ギャラリー大勢という凄まじい条件のなか)無事成功した。 手術を終えた宗順は「もう何も思い残すことはない」と、ようやく完成させた翻訳本をおゆきに手渡し、日引兄弟との果たし合いに臨む。しかし喘息の発作に襲われた兄・裕太郎(江守さん)が薬湯の世話になったうえ、先ほどの件もあって兄弟の剣は重い(「さあ、どこからでもかかってきなさい!」と言いつつまるで隙のない構えを取ってる相手のせいもある)。 と、そこへ隼人が颯爽と現れ、おもむろに宗順の髷を切り落とした。これを持って国に帰れ、そう諭す隼人に兄弟はほっとしたように頷き、おゆきを筆頭とする村人たちは、大切なせんせいの無事に心から安堵するのだった(ラストは、命を救われた殿様からの御典医の勧めを断って、村の医者として子供たちと仲良く戯れている宗順が映っておしまい)。 *脚本がいつもの宮川一郎さんだけに、とにかくせんせい、モテすぎ。 みんな寄ってきて離してくれないんだもんなあ。まあ良い漢だから仕方がない(←贔屓目)。ただ追われ者になった経緯は、「宗順、おしのさんをワシに譲ってくれい」「いや、おしのさんは…」「お前なんかに渡すものかあ!(シャキーン)」「お、おやめ下さい! あっ(ぶすっ)」「おのれ…宗順(がくっ)」ってな風にジェラシーMAXの日引長兄のひとり相撲だったのだが、肝心の宗順のおしのさんとやらへの愛の有無がはっきりしていないのでいきなり感が漂っていた(彼女が自害したのは、もしかして日引兄が好きだったからという可能性もあったりして)。 *せんせい恋しさのあまり、彼を殺しにきた日引兄弟にメスを持って突っ込んでいった情熱家のおゆきさん。光川さんってどこかで見たことあるなあ…と記憶を手繰ったら非ライ第1シリーズ#31「兇悪の報酬」の「殺してやるわ、会田を…!」のあの彼女だった。なんだか納得。(非ライの方が数か月後)。
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2008,08,28, Thursday
『初笑い寛永御前試合』(1953年・S43)
綺麗どころと踊り三昧の家光公は、ご意見番の大久保彦左(古川ロッパ)に諌められ、免許皆伝のツワモノたちを募って御前試合を催すことに。 免許がないがズル賢さは人一倍ある穴沢玄達(益田キートン)は、試合に勝って生駒一心斉(江川宇礼雄)の道場と一人娘・弥生(光岡早苗)をゲットするために策略を巡らせ、小柄勝負で一心斉の右手を使えなくしたほか、上京してきた侍・竹内直人(森川信)の免許状をスリの勘八(堺駿二)に狙わせた。 ところが竹内の免許状は、ひょんなことから一心斉の愛弟子・布袋市兵衛(花菱アチャコ)の手に。人の難儀を放っておけない市兵衛は竹内捜しに奔走、それを追う玄達一味やら竹内と訳アリの女スリ・お浜(藤間紫)、そして勘八の母(清川虹子)などが入り乱れ、むちゃくちゃでござりまするがな〜な展開が幕を開ける…! 一心太助がマイク持って宣伝カーに乗ってたり、ジンギスカンVS猿飛佐助なんていう試合があったり、時代考証そっちのけのストーリー展開に脱力(でも面白い)。 ところで柳生役で出ているらしい天っちゃんだが、確かにクレジットのほぼ最後あたりに名前が出てきたものの(こちら)、試合のジャッジ・柳生飛騨守(こちら)はどう見ても別人だ。それではと目を凝らしてみたところ、応援団の中にそれらしい姿を発見した(ほとんど同じショットだが、とりあえず3枚: その1・その2・その3)。 しかし、クレジットされてて出番がコレだけというのも解せないのでもう一度見直してみると、どうやら冒頭で「殿、大久保様がおみえになりました」と告げに来る家来がそうなのではないかという気がしてきた(その1・その2)。顔はほとんど分からないが、ちょっぴり胡散臭げな鼻にかかった声がそれらしいなあと。 どちらにせよ、まだまだ仕出しクンなのであった。
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2008,08,27, Wednesday
#168「狂宴」(1977年・S52・1月27日OA)
本庁からの帰り、なぜか土手をガンガン走っていた会田(天知茂)の車は正面から来た対向車に当て逃げされた。やる気かコラと(嘘)近づいたところ、その車はいきなり炎上。地面には、児玉正子(白川望美)の学生証が落ちていた。 学生証を届けに児玉邸を訪れた会田は、そこへ一課が乗り込んでいるのを知る。橘(渡辺文雄)は黙秘するが、ブン屋の秋山(二瓶正也)によれば、なんでも娘の正子が誘拐され脅迫状が新聞社と自宅に舞い込んだのだという。正子の父・児島光(鈴木瑞穂)は、あこぎな商売でのし上がってきた沢渡泰造(嵯峨善兵)の子飼いで、政治家などへの賄賂の受け渡し役を務めていた。その事実を手記として新聞に公表せよ、というのが犯人の要求だった。もしやあの車の中の焼死体は…と気になった会田は橘にカマをかけたところ、死体は身元不明の男性であることが分かった。 真相を手記にするなどもってのほかだ!と激怒する沢渡に対し、娘の命が心配な児島は手記をしたため、そのおかげで正子は元過激派の学生・前尾晴夫のアパートで無事発見された。誘拐犯は前尾と断定されたが、正子は彼こそが正義を貫いたのだと庇う。 一方会田は、前尾のアパートにあった恋人・陽子(宇治知美)のハガキを拝借して彼女を訪ね、前尾が陽子と結婚するために過激派と縁を切り、全うに歩み始めていた事実をつかむ。そして、前尾の身体的特徴は、焼死体のそれと一致していた。 助け出された正子は、かつて母がひき逃げされたときも不在だった、いつでも沢渡の言いなりの父を容赦なく責め立てる。翌日、児島は“手記は嘘だった”と記された遺書をしたため睡眠薬で自殺、それを会田から聞いた正子は、「君がお父さんを殺したんだ」と言われても涙ひとつ流さなかった。 児島の父が服用した薬、正子が眠らされていた薬、そして、焼死体から検出された薬はどれも同じ種類の睡眠薬。そして新聞社に届いた手紙の筆跡から、誘拐事件は正子自身が仕組んだもので、前尾に罪を着せて殺したのも彼女だと会田は見抜く。なぜ前尾を殺す必要があったのかとの問いに正子は、彼は母を轢いた犯人だったことを打ち明けるのだった(昭和ブルースは4番) *「法律というものは、正義まで裁いてしまうのですね…」 母の恨み(おそらくそれは捨て置かれた自分自身の恨みでもある)を晴らすため、不甲斐ない父とそのボスに制裁を加えようとした正子。結局、ボスの沢渡がどうなったのかは分からずじまいだったのが少し中途半端に思えた。沢渡をボコ殴りついでに捕まえるほどには、会田が正子に感情移入していなかったせいかもしれない。 *とりあえず、どうして車で1本道っぽい土手(というか、ススキに覆われてるところ)なんかを走ってたのかが一番のナゾだ<会田 *ラスト付近、正子と会田のフォーカス切り替えがえらく雑だった(わざとか?)
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2008,08,26, Tuesday
#167「女一人」(1977年・S52・1月20日OA)
会田(天知茂)は手紙を読んでいる。 毎年一度だけ近況を寄せてくる森下咲子(福田公子)からの手紙である。10年前、彼女の夫・和男(小笠原弘)は麻薬密造の容疑で会田に追い詰められて彼を撃ち、逮捕されたのだが、そのとき「娘を殺人者の子にしないで!」と夫の前に立ちふさがって会田を庇い、手術が必要な彼に輸血を申し出てくれたのが咲子だった。 “10年前は幼かった娘も20歳になり、東京の病院で働くようになりました”そんな便りにほんわかしていた矢先、2週間前からマークしていたチンピラの梶山(五野上力)が殺されたとの連絡が舞い込んだ。第一発見者の名前を橘(渡辺文雄)から聞かされた会田はハッとした。それは咲子の娘・淳子(日野麗子)だったからだ。おまけに現場に落ちていた鼈甲の帯留めとペアになっているイヤリングを持っていた彼女は容疑者として取り調べを受けることになり、会田は母の咲子から事情を聞こうと長崎へ飛ぶ。 バーのママをしている咲子は会田の訪問を歓迎し、梶山が夫のかつてのボス・西浜(藤山浩二)と一緒にバーへ来たことは告げたものの、淳子と梶山の関係は頑なに否定した。夫が出所後に詰らぬいざこざで死んでから、女手ひとつで娘を育ててきた彼女を会田は信じるのだが、同じく長崎へ来た橘は、帯留めは母のものだとの淳子の証言から、咲子を重要容疑者とみなす。 過去の経緯があるせいで「彼女(=咲子)は人を殺せるような人じゃない!」と橘に言い切った会田は、滝(篠ヒロコ)と共に咲子のアリバイ探しに奔走するが、事件当日、長崎-東京の直行便に咲子が搭乗していた事実が図らずも判明。梶山を自分に紹介したのは母だという淳子の証言も、咲子の言葉とはまるで違っていた。 咲子の無実を証明するつもりが、逆に罪を暴くことになってしまった会田は苦悩しながらも咲子の店を訪れ、彼女は梶山殺しを認めた。夫がヤクザだったことを娘に隠してきた彼女は、それをバラすと西浜に脅されて梶山を娘に紹介したのだが、かつての自分同様、娘に麻薬密造の片棒をかつがせようとしていることを知り犯行に及んだのだ。すべてを打ち明けた後、たった一人でも嘘の言葉を信じようとしてくれた人がいただけで充分だと、咲子は会田の前で号泣した。 母の存在を重荷に感じていた淳子も、咲子の自分への愛に気づき、手錠に繋がれた母を涙ながらに抱擁した。そんな薄幸母娘の様子を辛そうに見ていた会田は、兇悪な形相で西浜の事務所を襲い、すべての元凶である西浜を力任せにボコ殴りするのだった(昭和ブルース1番のあと、咲子の手紙のモノローグが流れて終わり) *#112と同じく長崎ロケ編。ただ歩いてくるだけとか、たばこをくわえるだけなのだが、黒コートの会田の仕草がいちいちキマっていてかっこいい。例のもこもこ上着が出てこないだけでこれほど違うとは! *ラストの昭和ブルースは2番(♪この世に産んだ お母さん〜)のほうが似合うと思ったんだけどなあ。
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2008,08,19, Tuesday
#164「島原哀歌」(1976年・S51・12月30日OA)
都心のビルに爆弾を仕掛けて逃走中の工藤(北村晃一)と北見(高林謙)を追って長崎に飛んだ会田(黒コートの天知茂)と浮田(松山英太郎)。病院からモルヒネを持ち出し換金した砂田マキ(鮎川いづみ)が恋人の工藤に現金を手渡すと睨み、すでに滝(篠ヒロコ)は島原の観光バスに乗り込んだマキを監視していた。 マキはカモフラージュのため津川万作(須藤健)という中年男性と同行。背中の痛みのためにモルヒネを欠かせない津川から換金先を教えてもらい、500万を工藤に渡そうとするのだが、そこを滝に現行犯で捕らえられた。しかし相棒の北見が自家製の時限爆弾をかざし乗客たちを脅したため、滝は逆に手錠をかけられてしまう。 ところが、なんと津川が北見から時限爆弾を奪い、バスを乗っ取った。彼と娘はビル爆破に巻き込まれ、右足を切断した婚期間近の娘は看病疲れの母親と自殺。津川は犯人の工藤たちへの復讐に燃え、彼の方からわざとマキに近づいたのだ。 車中からのSOSを傍受した会田は、バスの車輪を浮田に撃たせ、御丁寧に黒コートを例のもこもこ毛皮ジャケットに着替えてから、“バッテリーがあがって道端で難儀している旅の男”を装ってバスの中に入り込む。しかし津川はそのタイミングの良さから「あんた刑事でしょう!」と速攻で正体を見破り(会田、着替えた意味ナッシング)、工藤&北見と心中する覚悟でバスを走らせる。 津川は乗客と運転手、それにマキを下ろし、バスの中は津川と居残りを志願した会田、そして手錠で繋がれた工藤&北見の4人になった。極限状態の中、単なる爆弾魔の工藤とそれなりの思想を持っている北見が仲間割れ。その隙に爆破装置を外へ放り投げた会田は津川を連れてバスを出る。同じく外へ出た工藤は、逃げたい北見に手首を切断されながらも爆破装置を拾って狂ったように走り、会田に撃たれた拍子に自爆した。 「あんたはどれだけ非情なんだ…!」無理心中がかなわず力を落とす津川に、会田は鞄(妻と娘の骨壺入り)を手渡し、奥さんと娘さん(の骨)も島原のおばあちゃんに会いたがっているんじゃないかな、とさりげなく励ました。「あの人(=津川)、大丈夫かしら」心配する浮田や滝に会田は言う。あれだけのことをしたんだから、俺たちよりよっぽど強いかもしれない、と(昭和ブルースは1番) *島原への慰安旅行ついでに撮影しちゃいましたな雰囲気の回。とにかくあそこで着替える必要はあったのか(しかも#74「兇悪のフェニックス」で登場したアレに)、ということだけが最後まで気にかかった。…そうか、防寒も防弾も(爆弾の)防風もできる万能ジャケットなのだな(こじつけ)
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2008,08,16, Saturday
#162「刑事妻」(1976年・S51・12月16日OA)
売春組織の黒幕を探るためアポロ芸能に潜入していた山本刑事(安宅忍)が射殺体で発見された。身元がバレて井上(黒部進)&岡部(岡部征純)の用心棒コンビに消されたのだ。幼い息子をかかえた未亡人・房子(宮園純子)宅を訪れた会田(トレンチ復活:天知茂)は、自分が山本刑事の後を引き継ぐことになったと報告し、 「奥さん、刑事ってものは殺されちゃいけないんです。絶対に殺されちゃ…。我々はそんな安っぽい命は持ち合わせちゃいないんです。…生きなきゃいけない。生きることだけが、この世の中の犯罪防止に繋がっていくんです!」 などと矢部さん譲りの主張を旦那を殺されたばかりの刑事妻に力説。“彼の死を無駄にしないために頑張りますから!”ということを言いたかったらしいのだが、「それじゃ主人は犬死にだと(おっしゃるんですか)!?」とツッコんだ房子は、自ら売春婦としてアポロ芸能に入り込み、先に潜入していた滝(篠ヒロコ)を驚かせる。 会田の説得にも耳を貸さない房子は用心棒ズを尾行して事務所にたどり着き、乗り込もうとしたところを滝に止められた。結局、用心棒ズの留守に忍び込むことにしたふたりは、山本が盗もうとして果たせなかった、黒幕の名前や取引先が書かれたマル秘手帳を発見。そこを帰ってきた用心棒ズと黒幕の高村(戸浦六宏)に見つかってしまうが、間一髪で会田と浮田(松山英太郎)が駆け付け事なきを得た。 高村は山本夫妻に家をあっせんした馴染みの不動産屋だった。夫の仇とばかりに銃を向ける房子。銃はすぐに滝が奪い取ったが、「夫を返して!」と高村に泣いて掴みかかる房子を会田は好きなようにさせるのだった(昭和ブルースは4番) *「刑事は殺されちゃいかん」はどこかの回で矢部さんが熱く語っていたが、今回のシチュエーションで会田がこれを口にすると誤解を招くような感じだった(実際招いていたように思う) *滝さんが売春婦になってあんなことやこんなことを…!とえらく取り乱してる浮田に「それじゃお前がコレ(手をしなっと顎にあててオカマのふり)やるか?」と会田。どうせなら二人でやったらどうだろう(って考えただけで怖くなったが)。
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2008,08,16, Saturday
#163「破局」(1976年・S51・12月23日OA)
殺人罪で服役中の五十嵐(和崎俊哉)が警備の(というよりパン屋の)隙をつき脱獄した。妻の花恵(原良子)を張っていた堀(財津一郎)は「脱獄囚に情けは無用。ピストルで撃ち殺してよ!」と言い放つ彼女に呆れ果て、あんな女の元へ五十嵐が戻るわけがないとマークを打ち切るのだが、矢部警視(山村総)に「言うことがまるで焼鳥屋のオヤジじゃねえか!」と毒づかれ(実際焼鳥屋のオヤジを兼業してるのだが<堀さん)、なぜ五十嵐夫婦の仲が冷え切ったのかを調べ直せと宿題を出される。 花恵のバーに戻った堀は先に来ていた会田(天知茂)から「女房がツノを出すのは妻の座を脅かされるときだ」と経験者めいたアドバイスと五十嵐の愛人の名前を教えてもらい、愛人・村田ふみ(左時枝)を見張ることにした。 先に愛人関係まで調べていたにも関わらず堀に譲った会田に「仲間同士でべたべたした付き合いはやめろ!」と部長はカンカンだが、会田の狙いは別枠にあった。不動産屋を営んでいた五十嵐は、土地の件でいちゃもんをつけにきたヤクザの組長をはずみで撲殺したのだが、その手下たちが五十嵐を追うだろうと会田は踏んだのだ。会田の読み通り、組長を殺された兵頭(石橋雅史)は、ダンナの土地を狙う花恵とも共謀し、自分たちの手で五十嵐を抹殺しようとしていた。 五十嵐はふみに助けを求めた。彼女は自腹を切って偽造パスポートを用意してやり、香港へ逃がすことに。だが彼から電話が掛ってきた時に居合わせた堀により、犯人蔵匿の現行犯で連行された。ふみを罪に問いたくない堀は、彼女の自白で五十嵐を逮捕したいのだが、五十嵐を愛するふみは黙秘を続け、彼を困らせる。 一方、五十嵐が組長の命日に墓参するのではと睨み寺へ向かった会田は、そこで彼が手向けた花(御丁寧に名刺つき)を見つける。ところが会田をこっそり尾行していた兵頭たちは五十嵐本人をそこで発見、後をつけて潜伏場所で彼を殺そうとする。あわや、という時に駆け付けた会田が兵頭たちをボコ殴りしているうちに逃げようとした五十嵐だが、胸元に入れたはずのパスポートが無い。 落としたパスポートは会田が拾っていた。ふみが警察にいると聞かされた五十嵐は、拳銃とパスポートを渡せば俺がすぐにでも自白させてやると掛けあい、会田は承諾する。電話口に出たふみに「お前に金を出させるために寝てやっただけだ!」と辛辣な言葉を浴びせる五十嵐。ショックを受けたふみは、香港行の件を打ち明けた。 されるがままの会田に「目つきの割にはチョロイぞ」と銃を突き付ける五十嵐だが、(五十嵐はけだものではないという)村田ふみの言葉を信じたからだ、と言われて肩を落とし、彼女の自白通りに空港で逮捕されるよう会田に護衛を頼むのだった。 無罪放免になったふみに五十嵐逮捕を報告に向かった会田と堀は、そこで睡眠薬自殺を図った彼女の骸と対面する。人の亭主を盗ったのだから当然よ、と悪びれない花恵に平手打ちを喰らわせる堀。ふみの死を知らされ「俺は涙なんか流さない、悪党を貫いてやる!」と強がった五十嵐が護送車の中で慟哭する様子を、会田はただ黙って見送った(昭和ブルースは4番) *人を救うとはどういうことかを考えさせてくれた、非ライ的にナイスなこの脚本はシリーズ初登場の須崎勝弥さん(『風流交番日記』や『あゝ同期の桜』の人と同一人物なんだろうか?) *会田が堀さんと仲良くするのが矢部さんは気に入らないらしい。特捜のチームワークのなさは矢部さんが原因か。
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2008,08,15, Friday
#161「被写体」(1976年・S51・12月9日OA)
「まったく近頃の若い奴は…!」 “自然を保護する会”を主催する老教授・津田(久松保夫)の不審な転落死を調べろとの命令に「なんで僕がわざわざ」と反対した浮田(松山英太郎)にたいそうご立腹の矢部警視(山村総)。結局、年齢的に中間管理職な会田(天知茂)が仲を取って調べを進めることに。 だが、ふてくされて自宅で写真雑誌をめくっていた浮田は、事件当日の現場で撮影されたグラビアを発見、おまけにそのカメラマンが知人の下山泰子(紀比呂子)だったことから、久々に彼女に連絡を取った。津田と懇意だったという泰子は事件現場に花を手向け、かなり憔悴している様子で、前から好きだった彼女の力になりたい浮田は俄然はりきって捜査に乗り出した。 ある日、「グラビアの写真をネガごと全部譲ってくれ」という広告会社の営業部長・武井(鮎川浩)が泰子にコンタクトを図ってきた。不審に思った泰子がネガを調べると、怪しげなボートが写っていた。実はそのボートに乗っていた人物、津田に林道工事を反対された北日本建設の専務・宇垣(富田浩太郎)こそが津田を殺した犯人で、武井は彼に命じられた部下だった。容疑者として浮上した宇垣のアリバイを崩すため、会田も泰子のネガに着目するのだが、なぜか彼女は会田には「ネガは焼いてしまった」とウソをつく。 そのころ浮田は、死んだ津田が泰子と不倫関係にあったことを知りショックを受けていた。自宅でやけ酒を飲む彼の元を訪れた泰子は、砂防ダムの決壊で両親を失って以来親代わりだった津田を男として愛するようになったことを正直に告白。浮田は何もかも納得した上で「結婚しよう」と告げ、彼の優しさに「来て良かった…!」と泰子は涙ぐむ。 だが泰子は、津田を殺した男であり、両親を殺したダム決壊の元凶となる工事をしていた男でもある宇垣に復讐しようとしていた。武井を張っていた会田は、「責任者(=宇垣)とふたりきりで会わせてほしい」と電話してきた泰子の要求を呑むように武井に指示(というより脅しをかけ)、浮田を誘って彼女の指定場所(=津田が死んだ場所)へと向かう。 姿を見せた宇垣は、ネガに自分のボートが写っていたと知り、泰子を絞殺しようとする。会田たちが到着する寸前、泰子はもがきながらナイフを彼の足に突き刺し水中に突き落した。かくして宇垣と北日本建設の悪事は白日の下にさらされたが、泰子は仮釈放中に姿を消す。会田に励まされ、泰子を追うため駆け出す浮田。だが彼女は、思い出が詰まった南アルプス(塩見岳)で津田の姿を見ていた…(昭和ブルース4番に添って、某番組の若手デカのように全力で走る浮田、津田を笑顔で追いかけ崖からダイブする泰子、渋い顔で煙草をくゆらす会田が映っておわり) *まさかエンディングでそんな救われない展開になるとは思ってなかったので軽くトラウマ。山で行方不明になるくらいでいいのに、おっこちちゃうんだもんなあ…。 *新東宝の先輩、鮎川浩さんとの絡みあり。なんでも鮎川さんという人はあんな顔なのに(失礼)新宿の顔役で武闘派だったらしいので(丹波哲郎さんの本「好きな奴嫌いな奴」参照)、泰子の電話を聞くシーンで「彼女(=泰子)は何も言ってない!」「いや、俺が言ってるんだ。文句あるか」といういかにも会田らしい台詞の「文句あるか」がちょこっとだけ小声になってたのは遠慮プラスそのへんの事情もあったのかしらんと邪推。
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2008,08,14, Thursday
#160「未練心」(1976年・S51・12月2日OA)
過激派・橋口富夫(峰岸徹)が焼死体で発見された。御丁寧に遺書までしたためてあったが、橘(渡辺文雄)も会田(天知茂)も(そして冒頭でカラクリを見た我々も)それが橋口本人だとは到底信じられない。特に、3年前に部下2人を橋口の手榴弾で失った橘の彼への執念はすさまじく、あと10日あまりで警視への昇進が決まってるんだからケチをつけるな、ととりなす会田に「あいつは俺の手でしょっぴく。たとえ射殺してもな…!」などとお株を奪うような言葉を口にする。 そんな折、焼死体を確認にきた女がいた。三枝敬子(北林早苗)――かつての学生運動の闘士で、橋口の元カノ。橋口の死に疑問を抱く敬子は、警察(=会田)を利用してまで、もう一度彼に会おうとしていた。わざとらしく行き場所を残して勝浦に向かった敬子を、会田と滝(篠ヒロコ)、そして橘たちが追う。 橋口と連絡がついた敬子に、会田は滝を使って橘を煙に巻き、ひとり同行する。5分だけ二人きりにしてほしい、そう懇願する彼女に3分与えた会田だったが、敬子はナイフを取り出して橋口を刺そうとし、逆に発砲され負傷。会田も手榴弾で動きを封じられているうちに、橋口にまんまと逃げられてしまった。 敬子は学生時代、バリケード内で橋口の同意の下で輪姦された辛い経験を持っていた。あいつ(=橋口)は今では思想も何もない金塊密輸業者だ、それなのになぜ――憎しみは愛情の裏返しだと言う会田に、敬子は「女って、ひどい仕打ちをされればされるほど燃えてくるんです」と橋口への未練心を吐露する。 一方、橘の執念にほだされた滝は、彼と共に橋口と暴力団幹部・花井(中田博久)との密談場所を突き止めるのだが、狙撃され崖から転落、行方不明に。徹夜続きでテンパっている橘にこれ以上任せちゃおけんと会田は「俺に指揮権を与えろ!」と掛け合い、橋口たちが来るであろう取引場所へと急行する。実は無傷だった滝も元気な姿を見せ、大乱闘の末に橋口を逮捕、敬子のために会田から1発(もっと?)、女の敵として滝から1発くらった橋口は、最後に駆け付けた橘にボコ殴りの憂き目にあった。それでもまだ足りず、拳銃を取り出して今にも撃ちそうになった橘を、会田は「昇進できないぞ」と逮捕者と請求者欄に(自分ではなく)橘の名前を記した逮捕状をかざして諌めた。 後日、橘は捜査一課長に任命されたが、まだまだ現場を飛び回っていたいとこれを固辞。 「変わってるな」 「お前さんほどじゃないよ」 道ですれ違った変わり者ふたり(会田&橘)は、互いを理解しながらまたそれぞれの方向へ歩いてゆくのだった(昭和ブルースは1番) *敬子さんの橋口への「未練心」がメインテーマかもしれないが、とにかく橘班長さんが会田レベルで熱い(むしろ今回、会田が負けている)のが印象的な回。立場は違えども、芯の部分ではたいそう似通ったおふたりさんである。 *橘さんのフルネームは「橘文雄」。そのまんまだったのか。 *どことなく暗い影を引きずっていた滝さんだが、会田と軽口を叩き合ったりしてほんのり良い雰囲気に。
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| TVドラマ(現代劇)::非情のライセンス2 | 10:19 PM | comments (x) | trackback (x) | |