2007,05,04, Friday
『斬る』(1962年・S37)
(新文芸坐にて鑑賞) 数奇な運命の下に生まれた青年・高倉信吾(市川雷蔵)を軸に、“斬る”という行為が織り成すさまざまな哀しい人生模様を描き出した逸品。 天っちゃんの役どころは信吾の実父・多田草司。たまたま使者として逗留していた藩において、殿様を色香で惑わす妾を家老の命を受け暗殺し拘束された侍女・藤子(藤村志保)の身柄を拉致して子を作ってくれと頼まれた彼は、颯爽と馬を駆り藤子を奪い、1年後に信吾を授かった。 しかし、1年も経って子供もいれば殿様の怒りも収まるだろうとの家老の読みは外れ、藤子は再び捕らえられ処刑されることに。誰も彼女を斬りたがらない中、役目を請け負ったのは草司だった。清め刀を前にして、微笑みを交わす夫婦の姿が切なくも美しい。 信吾は養父・高倉に預けられ、彼の実の子として明るく育っていたのだが、近所の同僚のジェラシーによって養父と義妹が惨殺され、父の今際の言葉によって出生の秘密を知る。訪ねあてた廃屋には僧服姿の実父・草司がいた。独りで寂しくはないのかと問う信吾に、お前のお母さん(←「お前の母」でも「お前の母上」でもなく、「お母さん」)といつも一緒だ、墓に入ればそのときこそ二人で生きられる、そう思うと心がほのぼのしてくるのだ、とかなんとか、大部分この世のものではなくなったような風情で語る父。自分の居場所はここにはないと悟った信吾は、さすらいの旅へと出て行くのだった…。 その後の信吾にはいろいろと辛いことが起こるわけだがそこは(もう天っちゃんもいないので)省略するとして、この薄幸な息子の巻き込まれ型悲劇人パパが言葉すくなに心情を表現するさまは、映画自体の様式美とあわせて見どころのひとつである。 ただ何度見ても、信吾が訪ねてきたときの「お前のお母さん」という台詞(2度ばかりある)が時代劇らしくなくて耳に残る。天っちゃんうまく「母(ハハ)」っていえなくて台詞変えたのか?などと失礼なことをいろいろ考えてしまったのだが、もしかすると草司パパの時間は愛妻を斬った瞬間に止まってしまい、もうあっちの世界に住んじゃってるから、育った信吾も赤ん坊にしか見えず、それで噛んで含めるような「お母さん」になったのかもしれない。
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2007,05,01, Tuesday
#192「兇悪の砂・事故死を運ぶ女」(1980年・S55・9月11日OA)
黒眼鏡の井川(森次晃嗣)率いる司土建の面々と、ダンプかあちゃん(赤座美代子)の仲間達(岡部さんなど)が採石場で小競り合いを繰り広げる中、突如ダンプで乗りつけ仲裁に入ったのは、よれよれ帽子にカーキ色Tシャツ・白ズボン(「首無し島」風)の男・会田(天知茂)。 「やめときゃ〜て。よわぁ女に手をだしちゃ〜いかんわぁ〜」 キュートかつ脱力系の名古屋弁(本場モノ)を駆使する彼は、司土建の傘下に入らぬトラック運転手たちが巧妙な方法で消されている事件を探るため、名古屋からきたダンプの運ちゃん・“はぐれ星の健さん”に扮して内偵を開始しているのだ。 特捜部の同僚たちの協力もあって、司土建の社長(神田隆)の背後に、運輸局の役人(新東宝の同期:松本朝夫)がいることを突き止めたのはいいが、麗しい名古屋弁を駆使して橘警部(渡辺文雄)を殴り倒したり浦さん(取り立て屋に扮装:左とん平)に凄まれほっぺをペシペシされたりの涙ぐましい小細工も、あっけなく司サイドにばれてしまった(ばれると恥ずかしいだけじゃないのか会田よ)。 一方、仲間が次々にヘッドハンティング、あるいは事故死させられ、弱小グループを束ねるかあちゃんは窮地に陥っていた。おまけに怪我をして入院中のダンナの容態が悪化し、高額な手術代が必要となったかあちゃんは、井川にそそのかされて“健さん”に睡眠薬を飲ませる羽目に。それを知ってか知らずか会田は薬入りのお茶をすっかり飲み干すとダンプ(井川によってブレーキに細工済み)で曲がりくねった道を走行、かの明智センセイでもさすがにそこまでは、ってな断崖から豪快に転落してしまう。 井川は彼女も口封じのために消そうとしていた。危うしかあちゃん!という瞬間、部屋に飛び込んできたのは無傷の“健さん”。刑事の身分がばれているのでいつもの口調に戻って井川を撃退した会田は、かあちゃんをダンナの元へと連れて行った後、戦闘服(=スーツ)でビシッとキメてダンプに乗り、なんだかよくわからないダンプ・チェイスの攻防の果てに井川(こっちは乗用車)を弾き飛ばしたかと思うと、司土建に殴りこんで社長に手錠をかける大活躍をみせた。 朝、道路脇で煙草を一服するスーツ姿の会田。そこへずらっとやってくるダンプの群れ。運送会社を設立したダンプかあちゃんの仲間達が一斉に手をふり去っていくのを、会田は笑顔で見送るのだった。(昭和ブルース新録1番) *とにかくほとんど全編名古屋弁で喋ってる会田が見どころなのだが(ひとたびスーツを脱ぐと単なる気のいい小柄なおっちゃんになってしまう天っちゃんの不思議にも迫れるわけだが)、そのほかにも、明智センセイ・チック(つまりシュール)な生還劇など、らしからぬ場面が多い作品だなと思った。さすが第3シリーズ、というべきか?
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2007,04,29, Sunday
『青い指紋』(1952年・S27)
「日本映画戦後黄金時代 13:新東宝の監督」「19:新東宝の主役」(日本ブックライブラリー)という本をゲット(全30巻のうちの2冊)。19巻の解説に、天っちゃんのことが書いてあるのだが、そのなかに デビューは「青い指紋」(S27・青戸隆幸監督)という買取り小品の犯人役ではなかったかとの一文が。制作:理研映画、白黒・64分のこの作品(“犯罪ドキュメンタリー”という副題つき)、東京国立近代美術館フィルムセンターに所蔵されていて98年に上映もされているようだが、果たして・・・?
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2007,04,22, Sunday
「死斗・男たちの挽歌」(1980年・S55・3月25日OA)
――若年寄・岩倉忠敬(平田昭彦)の手によって正体を暴かれた江戸の牙にかつてない危機が!(↑まさにそのまんまの展開なので予告編引用) 金の力で老中に成り上がろうとする岩倉は、異を唱える軍兵衛さまが邪魔。そこでさしたる証拠もなく、今評判の「江戸の牙」の黒幕が彼で、実行犯は本所方だあ!とでっち上げた。しかしそれがズバッと大当たりだったせいでメンバー全員大弱り。 岩倉の動きを見越して、新米同心ズだけは南町へと栄転させておいた軍兵衛さまだが、剣さん・半さん(坂上二郎)・兵さん(藤村俊二)は徒(=かち)目付に捕らえられてしまう。だが伝さん(若林豪)が槍やらバズーカやら白装束やらを囲炉裏の下に隠してから捕まったので、岩倉の腹心・檜垣(山本麟一)ら徒目付は証拠を見つけることができない。 それぞれ別部屋に囚われる4人。DVDのあらすじには「江戸の牙には過酷な拷問が加えられる」なんて文言も入っていたので「つ、剣さんがあんなことやこんなことに・・・?」と、何かこう美女シリーズっぽいものを想像してドキドキしたが、一番頑丈そうな伝さんがスタンダードな“竹刀でビシバシ”を一手に引き受けてくれて後のメンバーは無傷だった。そして次は兵さん、というところで脱獄を決行(このシーンの剣さんは珍しいことにものすごく焦っており、自分は何もせず他のメンバーを急かしまくっている)、難を逃れていた志乃さん(白都真理)の助力を得て、蟄居を命ぜられている軍兵衛さま宅から軍兵衛さまと雪さん(竹下景子)を救い出した。 面目丸つぶれの岩倉はニセ江戸の牙を暗躍させ、軍兵衛さまの朋輩・秋月(幸田宗丸)を殺害したり、罪の無い町人たちを襲うという作戦に出た。すっかり評判が地に落ちてしまった江戸の牙。一同を集めて先の台詞を口にする軍兵衛さまに対し、それは岩倉を殺ってからだ、それまで命はお預けしますと反論する4人だが、軍兵衛さまはダメだと言う。なぜならそれは「ワシも行く」からだった・・・! 父の身を案じる一方で「これを剣さまへ」と大事なお守りをことづてた雪さん(ワシにはないのか←軍兵衛さまの心の声)は、先に志乃さんと江戸を脱出。牙たちはツートップで岩倉邸へと歩みを進めるのだが、既に牙対策を練っていた岩倉の槍攻撃やら無差別鉄砲攻撃でかなりピンチに。しかしあわやというところで、一緒に来たはずなのになぜか姿が見えなかった軍兵衛さまが颯爽と現われ、形勢逆転。第1話の岸田森さんを髣髴させる往生際の平田さん(=岩倉)を地獄に送ったメンバーは、哀愁を帯びたムード歌謡(「過去」)をBGMに、いづこともなく去ってゆくのだった…。 *戦隊モノの最終回っぽく(?)予定調和で華麗に大団円。とはいえ、普通は先にニセ牙を出して本物をおびき寄せ捕縛、というのが王道パターンだと思うのだが、最初に理由もなく捕まって(でも実際は理由オオアリなので)なんだか話がムダに込み入っていたような気もした。
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| TVドラマ(時代劇)::江戸の牙 | 10:43 PM | comments (x) | trackback (x) | |
2007,04,22, Sunday
Part2(DVD-BOX2下巻)には、#1「炎上!赤馬を斬れ」など計8本を担当したメイン監督、池広一夫氏(映画では「女妖剣」「悪女狩り」などの眠狂四郎シリーズや若親分シリーズ等で有名)のインタビューが収録されている。
まず『天知さんの思い出』として、とにかく真面目で、そのくせお酒が飲めないのに照れない人だったと、明智シリーズを例に挙げてエンターテインメントに徹していた姿を強調しておられた。後にシリーズを担当したが(北大路版第1作「妖しいメロディの美女」)「あれは照れるとダメだね」とのこと。 ただ、天っちゃんは真面目すぎて面白味が無いので、周りでもって弾ませて作ったのだとか。家に呼ばれる機会があったものの、相手が飲めないのに行ってもねえ、とお酒好きらしいコメントも。彼は自分が飲めないのに人を集めて、映画や芝居の話をするのが好きだったそうである。 他のメンバーでは、(若林)豪ちゃんも真面目で、天っちゃんといろいろと張り合っていたこと、特に殺陣師が天っちゃん御用達の人(安川勝人さん)だったのが豪さん的にはちょっと気に入らなくて、立ち回りの区別にうるさかったことを語っておられた(あと額の横スジを気にする余り、後家人鬘ではなくムシリになったということも)。 殺陣に関しては、監督自身は二刀流は型になっちゃうので好きじゃないんだけど天っちゃんがやりたがった、でも殺陣はショウタイムだと思っていたので、キザな立ち回りでも許容したのだそうである。 *坂上二郎さんは結構デリケートで、おひょいさん(藤村俊二さん)と張り合っていたらしいけれど、チームワークは良かったとのこと。 *新米同心ズでは、京本政樹が若いくせに走るのが遅かったり男っぽくなかったりで一番ダメだと思ってたそうな。 *Part1(DVD-BOX1下巻)の松尾監督同様、池広監督も「非情のライセンス」第3シリーズで2本監督を請け負っている。
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2007,04,16, Monday
「瓦版・醜聞を追え!」(1980年・S55・3月18日OA)
これをモノにできれば瓦版の売り上げ倍増まちがいなし、といわれる最近のネタは“菊と刀”ならぬ(むろん“菊とバット”でもなく)“菊と牙”。菊は人気女形の菊之丞(大出俊)、牙はもちろん江戸の牙である。 ゴシップをダシにして金を揺する悪名高い瓦版書きの寺岡祥風(青木義朗)は、このふたつを執拗に追いかけていた。茶店で偶然会った際、彼の日頃のアコギな振る舞いを軽くいなした剣さん(天知茂)に対し、祥風は「俺がほんとに書きたいのは江戸の牙ですよ、義賊だ世直しだと騒がれているが、しょせん奴等はただの人殺しだ。意地にかけても正体を暴いてみせるぜ!」とふてぶてしく言ってのける。それに少なからずムカッときたらしい剣さんは「果たして、おめぇさんに出来るかな…?」と思わず宣戦布告、かえって祥風の探索範囲を絞る結果に。 またタイミングの悪い(良い?)ことに本所界隈にいた雪さん(竹下景子)を発見した祥風は、彼女の父、大番頭・朝比奈軍兵衛(三船敏郎←今回も不在)と本所方(=剣さん)の関係にピンとくる。だが、祥風一味に詰め寄られピンチの雪さんを「どこのお嬢さんか知らないが早くお行きなさい」と白々しく庇って雑魚を釣り具で(文字通り)釣り上げた剣さんは祥風に言い放った。「江戸の牙がただの人殺しなら、おめえさんたちはただのゴロツキだ。本所方をなめるんじゃねえぜ! 俺の獲物はな、もっとでけえものだ。・・・江戸の牙よ。」この壮大な変化球攻撃に、さすがの祥風も言葉がない(しかし結局、朝比奈との“祖父の代からの主従筋”を調べられては撹乱にすらなっていないと思うのだが)。 一方、菊之丞の方は、かつての刃傷沙汰を掘り返され、当時その場にいた芸者で、今は呉服問屋の内儀に収まっているおせい(二宮さよ子)との関係をスキャンダラスに書き立てられて休業を余儀なくされていた。おまけにおせいに金をせびった祥風は、二百両を持ってきた彼女を力づくで犯す。 翌日、おせいは冷たい骸となって川に浮かんでいた。当時の刃傷事件を担当し、菊之丞とおせいの身を案じていた半さん(坂上二郎)の怒りは爆発。「俺と半さんで十分だ」という剣さんと共に、ふたりだけで祥風の元へと乗り込むのだった。 短筒で対抗する祥風だったが、あっさり半さんの槍でかわされ、瓦版舞い散る中で斬られ地に伏した。「俺は書けなかったが、てめえらの正体は必ずばれるときがくる・・・」そう捨て台詞を吐きながら。 *・・・で、最終回に突入するという訳だ。 *普段着を脱ぐと白装束(袴ナシ)。 *祥風のネタ控えによれば、剣さんの父上の名前は「精太郎」。 *「わたくしはもう、剣さまと会わぬほうがよいのでしょうか・・・」切ない恋心を露わにして去ってゆく雪さんの背中を、じっとみつめる剣さん。ポーカーフェイスすぎて心情がわかりません。
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2007,04,15, Sunday
『座頭市物語』(1962年・S37)
京都文化博物館・映像ホール(映画美術監督内藤昭・追悼特集)にて、当時を懐かしむ年齢層に囲まれての鑑賞。 いつもDVDの“チャプター見”(平手さん集中)をしていたせいで通しで見るのは初めてだったのだが、飯岡・笹川の両親分、それに群がる子分達の外道なふるまいを知るにつけ(笹川の親分が病床の平手さんを訪ねたのは、わざと彼を決闘場へと誘い出すための魂胆があったからと知って今さらながら相当ムカついた)、市っつあんと平手さんの束の間の友情の清らかさが際立って胸が熱くなった。 ルックス的にも状況的にも実に絶妙な時期に平手さんを演じたのだなあと、改めて天っちゃんの薄幸の美人ぶりに感嘆。セリフ回しもギリギリOKだ。 *映像ホール横のギャラリーで、本編をいいとこどりしたダイジェスト映像が見られたのは眼福。 *同じくギャラリーに飾ってあった、口の端に血糊をつけて懐紙片手にこっちを向いてニヤリと笑っている未見のスチール写真(スナップ?)もやたらと眼福。 *原作(ノヴェライズ本)について 子母澤寛の原作を元にした、映画の座頭市シリーズの第1作目~4作目までのノヴェライズ本。巻頭に第1作目の映画スチール(平手造酒=天知茂のスチールもちゃんと1枚有り←釣りのシーン)と、勝新さんの序文。 子母澤氏の原作自体はとても短く、平手造酒は座頭市と絡むこともなく「出入りで死亡」くらいしか書かれていないが、第1作目の脚本から書き下ろしたらしい「心友を斬る」は、映画の名場面を思い出しつつじっくり味わえた。
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2007,04,14, Saturday
「栄光 なにするものぞ」(1980年・S55・3月11日OA)
油問屋の赤城屋(内田稔)に拾われ養子になった弥一郎(佐藤仁哉)は、エリート出世コースの登竜門である昌平坂学問所のナンバー2の秀才。ある日トップの学生・美濃部が辻斬りに遭い命を落としたことから、ナンバー1に躍り出た。 弥一郎には恋仲のお美津(三浦リカ)がいるのだが、お美津の父・同じく油問屋の近江屋(加賀邦男)は、ウチと赤城屋とは格が違う、あんな男と付き合うな、と猛反対していた。しかし赤城屋の姦計により、近江屋は不正疑惑でしょっぴかれ拷問死、弥一郎は養父とつるんでいる勘定吟味役・横森(田口計)の養女との婚約を強引に迫られ、お美津に会うことも叶わなくなる。 弥一郎が婿入りすると知り、河原で自害しようとするお美津。そこへ赤城屋の雇ったごろつきが現われて弄ばれそうになるが、近江屋の件を調べるために小田原へ行っていたはずの剣さん(天知茂)がナイスなタイミングで登場、事なきを得た。 だが赤城屋は弥一郎に「お美津は死んだ」と告げ、ナンバー1のハクを付けて婿入りさせてやるんだ有り難く思えと祝言の日取りをさっさと決めてくる。近江屋の獄死、そして美濃部の横死が赤城屋の仕業であること、しかも新妻・お万(関根世津子)が養父である横森の夜伽をさせられていたことを知った弥一郎は、養父と横森に刃を向けた・・・。 と、別に牙メンバーがいなくても話がさくさく進んでいくのだが、美濃部殺害の現場に居合わせて口封じのために殺された学生がたまたま新米同心ズの友達、それからお美津が志乃さんの知り合いだった、という伏線があるので、あわや返り討ちに遭いかけた弥一郎は志乃さんに助けられ(最近アクションづいてる志乃さんだ)、まさに鬼畜な悪党コンビはさっくり地獄へと送られておしまい。 *戦闘中、剣さんの“すちゃちゃちゃ納刀”の真似をして、納刀せずに後ろの敵を刺しちゃってウケてる兵さん(藤村俊二)が可笑しかった。 *ラスボスが死ぬ間際に油倉庫の蝋燭を落っことし、地面に流れた油に火が付いちゃってかなりやばい状況になっていたのだが、いつもながら悠長かつ華麗に納刀する剣さんの落ち着きぶりはさすがというべきか(いや少しは焦ったほうがいいんじゃないかと)
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2007,04,14, Saturday
「冥土の便り」(1966年・S41年・12月14日OA)
午(うま)の日、越後屋の愛妻が自害した。平次(大川橋蔵)の調べでは死因に不審な点は見当たらなかったが、涙に暮れる越後屋の元へ複数の字を切り貼りした奇妙な手紙が届く。思い知ったかざまあみろ、めいどより(内容は誇張)と書かれたその手紙を届けにきたのは、眼光するどい素浪人・田波和之助(天知茂)。手紙は女に預かっただけだ、丸顔で面長の(←ありえない)、などと風貌に輪をかけて胡散臭いことを言ってのける田波を、もちろん平次は怪しい奴として完全マーク。 次の午の日。上州屋の娘が、参拝に出かけたお稲荷さんの狐石と鳥居の下敷きになり死亡。これも事故死と思われたが、平次は先の越後屋の件と関わりがあると睨んだ。またそれを見越したかのように田波が現われ、お前には命をかけて愛する者がいるか、その者が殺されたらどうする、などと深い問答をふっかけて怪しさを倍増させる。そして再び表れる切り貼り手紙。寺子屋も開いていて(だから複数の字の切り貼りも余裕で可能)どこから見ても容疑者然とした田波は、それでも悪びれる様子はない。 調べを進めた平次は、田波には江戸詰め時代に清香という名の恋仲の芸者がおり、その彼女が1年前の午の日、舟遊び中に溺死したことを知る。同舟していた3人の男が戯れに船を揺らしたせいで清香が落ちたのだと、当時の船頭は証言した。その3人のうち2人が先の越後屋、上州屋だったことまで掴んだ平次は、最後のひとり・武蔵屋に直行、愛娘の身辺の警護を強化する。 また午の日がやってきた。池に落ちた石は掬えるが、それが砂ならばどうする、お前たち(=お上)には掬えまい、とまた濃密な問答を繰り広げつつ、ちゃっかり平次を土蔵に閉じ込めて武蔵屋に向かった田波だったが、思いいれたっぷりに歩みを進めていたためか、抜け出した平次に先回りされ襲撃は未遂、投げ銭をかわして遁走する羽目に。 そしてまた次の午の日。お札参りに出かけた武蔵屋の娘を今度こそ襲った田波。越後屋の妻は心理戦で自害に追い込み、上州屋の娘は朽ちた鳥居を上手く利用し事故死に見せかけた知能犯のはずの彼、なぜか彼女にだけはストレートに辻斬りを敢行するのだが、お品さん(宮園純子)の投げ縄と平次の連続投げ銭に阻まれた。俺が(お上の)犬ならお前は化け物だ、愛する(した)者の霊を傷つけているだけじゃないか! 平次の叫びに、問答好きの田波の手がはたと止まる。「あいつ(=清香)は喜ばないというのか…」虚ろな目で背を向けた田波は腹に刀を突き刺し、愛しい女の名を口にしながら川へ飛び込むのだった…。 *平次VS田波の濃厚なやりとりが続く脚本は、天っちゃん御用達の宮川一郎氏。不必要に(いやファンにとっては必要だが)アップが多いカメラワークも嬉しい。 *復讐に燃える男というよりは、愛する女の死霊に憑りつかれたかのような、どこか精神的な危うささえ漂わせる男・田波。伊右衛門@四谷怪談といい、同時期(66年11月公開)の愛染@無頼剣といい、ステロタイプではない悪を演じさせると絶品だなと思う。 *「冥土」とつくと死亡するわけだな<#339「冥土の土産」参照(#284「白い粉」は死んでないので)
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| TVドラマ(時代劇)::銭形平次 | 12:29 AM | comments (x) | trackback (x) | |
2007,04,10, Tuesday
「笑って泣いて 長屋の恋の物語」(1980年・S55・3月4日OA)
お咲さん(山村葉子)の小料理屋で一杯やってる剣さん(天知茂)の背後で、眼帯の用心棒・鬼丸(八名信夫)が気の弱そうな若者・伊之(永井秀和)に何か良からぬことを強要していた(この段階で剣さんがもっと彼等の話を真剣に盗み聞きしていればこの後の惨劇は防げたのではないか、というツッコミはなしとしよう)。 そしてその夜。番頭・伊之の手引きによって西海屋に強盗が押し入り、一家を斬殺したうえ放火。殺すなんて約束が違うと鬼丸を詰った伊之は一味に監禁されてしまった。一方、伊之と夫婦になって西海屋を継ぐ予定だった女中頭・およね(瞳順子)は殺しの一部始終を目撃し辛くも逃げのびたのだが、恋しい伊之も死んだと思い入水しかける。 と、それを助けたのが本所方御用達の八百屋・一心太助ならぬ佐助(なべおさみ)。気はいいが慌て者の佐助はおよねを長屋に連れ帰り何くれとなく世話を焼き、すっかり夫婦気分。町で鬼丸に追われるおよねを助けた剣さんが本所方へ誘うも、佐助の過剰な親切ぶりで気が晴れるらしいおよねちゃんは長屋に腰を落ち着けた。 彼女のために強くなりたいと願った佐助は道場へヤットウを習いに行くが、実はそこは当の鬼丸たちのアジトだった。偶然にも隠し部屋に監禁されている伊之を発見、それがおよねちゃんのイイ人だと知らずにいつもの親切心から連れ帰ったことで、晴れて恋人たちは涙の再会を果たす。だが伊之を逃がしたことが鬼丸たちにバレ、身も心もズタズタにされる佐助(でも死なない)。 西海屋襲撃は、ライバルの南蛮屋(外山高士)が長崎奉行の大草(大ボス:早川雄三)とつるんで画策したものだと判明。西海屋跡地にちゃっかり店を建てた南蛮屋の祝いの席に、寒参りの太鼓と共に、ゆらゆらゆれる南無妙法蓮華経の文字が現われた…。 *皆で南無妙法蓮華経を見せながら後ろ向きで口上。最近凝ってるなあ。(でも内容自体は“魚河岸の政”のマイルド・バージョンといった感じで少々ぬるい)。
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| TVドラマ(時代劇)::江戸の牙 | 10:47 PM | comments (x) | trackback (x) | |