2007,06,08, Friday
『色競べ五人女』(1958年・S33)
類まれなる美貌ゆえに女性にモテモテの花形役者・丑之助(和田桂之助)は、嫉妬に狂った男に誤って父を殺され意気消沈。そこへ義母・お袖(山下明子)が言い寄ってきたから大慌て、間の悪いことに番頭に咎められ、もみ合う内に彼を階段から突き落としてしまう。 数年後、出家して日当(=にっとう)と名を改めた彼が身を寄せる延命院に、現場を目撃していた悪党・長十郎(小倉繁)が転がり込んできた。過去をばらされたくなければ云う通りにしろと日当を脅した長十郎改め柳全は、現上人を殺して日当を後釜に据え、彼の容姿目当てに寺を訪れる女性達から金をせしめたり、怪しげな井戸水を売りつけたりする商売を軌道に乗せる。日当の熱狂的サポーターのひとりに大奥で羽振りの良い老女・久米村(荒川さつき)がいることから、お上の権力をもかさにきて延命院はやりたい放題。 そこへ立ち上がったのが、新たに寺社奉行に就任した脇坂淡路守(着物が豪華:天知茂)。正義感溢れる彼は、久米村の遠まわしの脅迫もなんのその、かつて下働きだった熱々カップル・久助(中村竜三郎)とおよし(日比野恵子)の助力を得て、延命院の「秘法」のからくりを見破るのだった。 柳全、久米村は自刃。日当は操り人形だった己を恥じ、からくり仕掛けの蓮の花の上で首を掻き切った。役者時代から恋仲で、いまは久米村の侍女となっていたお梅(北沢典子)もまた彼に寄り添うように蓮華の中に消え、淡路守は「すべては御仏の裁きのままじゃ・・・」と合掌しながら見送った。 *タイトルの「五人」は、お梅・お袖・久米村・およしと、寺を訪ねてきたお袖さんと日当を巡るキャットファイトを繰り広げ二人で井戸に落ちたおむら(三原葉子ねえさん)の5人を指すと思われる。(おとっつぁんの病気平癒祈願に来て、秘密部屋で陵辱され川へ浮かんだおふじちゃん=橘美千子が入るのかどうかは不明) *珍しく非のうちようがない善人かつエライ人を演じている天っちゃん。久助&およしの災難を機転を利かせて庇ってやったり、久米村のイヤミ攻撃をイヤミで跳ね返したりといった見どころは多少あれど、あまりに出番が真っ当すぎて物足りなかったのも確かだ(贅沢な悩み)。
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| 映画::新東宝 | 10:50 PM | comments (x) | trackback (x) | |
2007,06,08, Friday
『勝利者の復讐』(1958年・S33)
タイトルバックからすでに強盗殺人を冷酷に実行中の深沢正夫(タイトルより先に眼元のアップが登場、目立ちまくる天知茂)は、表では国際商事の社長としてふんぞりかえりつつ、裏では再び人相の悪そうな仲間達と宝石店を襲う計画を立てていた。なにしろ彼には、右眉の傷痕までそっくりに整えさせた一卵性双生児の弟・登(名字は「西村」:天知二役)という格好の切り札まである。 おまけに手下のひとり・森田(鮎川浩)の兄貴分で天才的な錠前破りの腕を持つ前島(細川俊夫)が国際商事に入社。ムショ帰りの前島は、美人妻・房江(小畠絹子)と幼い娘のためにも真っ当な職を探すが、世間の冷たい拒絶に遭い、つい森田を頼ってしまったのだ。深沢はさっそく渋る前島を伴って某宝石店へ押し入り、奪うだけ奪った後で店員たちを皆殺しにした。 しかし、逃走途中で前島だけが捕まってしまった。自白を懸念する深沢は、彼の家族の身柄を拘束して口封じを図ろうとする。房江を社長室へ呼び、自慢の銃で散々弄ぶ鬼畜な深沢。だが夫への済まなさと絶望のあまり、房江は一瞬の隙をつき窓から身を投じた。人情派の皆川警部(沼田曜一)の計らいで房江の最期を看取った前島は、沈黙を破って深沢の所業を洗いざらい告白、深沢は警察へ連行された。 ところが彼には、事件当夜だけでなく房江の一件でも鉄壁のアリバイが。彼に扮した弟の登が人目につく場所で別行動をとっていたのである。証拠不十分で不起訴となり勝ち誇る深沢は、裏切り者の前島に復讐を誓う。その前に今まで聞き分けの良かった自分そっくりの弟が「こんな(兄さんの身替りの)役、もうごめんだよお」とぼやき出すが、倉庫へ連れ込みあっさり絞殺、木箱に押し込んでしまった。 自分と娘を狙う陰湿な“勝利者(=深沢)の復讐”に対抗するには、深沢を殺人の現行犯で逮捕するしかないと悟り、前島は死を覚悟して彼の呼びかけに応じる。だが抜け目ない深沢は自らの手を汚さず、手下たちに前島の抹殺を命じた。土壇場で森田が前島サイドに付き、内輪で揉めている間に警察が到着。銃撃戦で思わずキレて前島を撃ってしまった深沢は、ニヒルに自殺を試みたものの、前島の決死の一発で銃を弾き飛ばされた。「お前に命を救われるとは皮肉だな」そう呟くと、深沢はヒステリックな笑い声をあげながら連行されていった(前島は一命をとりとめ、皆川警部や娘と歓談してエンドマーク)。 *クレジット上ではいちおう主役は細川さん・小畠さんの二枚看板だが、実は天っちゃん主導のギャング映画。冷酷非道かつスタイリッシュな深沢(兄)と、どこかしらおぼっちゃん気質の登(弟)のギャップが面白い(特に、兄貴に金でカラダを買われたという登クンの従順で素直そうな弟キャラは、ウスイ家の薫兄さんでなくても愛でたくなるラブリーさだ)。そのほか、アブノーマルなキャハハ笑い(by 深沢)というウルトラ・レアなものまでお目にかかれる、かなりのお値打ち作品である。
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| 映画::新東宝 | 10:47 PM | comments (x) | trackback (x) | |
2007,06,02, Saturday
『夜の勲章』(1965年・S40)
兵役にとられていた松音組の血気盛んな若い衆・榊原安太郎(背中に虎の刺青:田宮二郎)が終戦2年後に遅い帰国を果たしたところ、羽振りの良かった組は跡形もなく、親分(見明凡太朗)は病の床、兄貴分たちはライバルの笠野組に取り込まれていた。密かにホの字だった親分の一人娘・恵(だが既にフィアンセあり:林千鶴)のためにもと、松音組再建を誓って大いに気を吐く安太郎は、裏切った兄貴分たちをボコボコにし、笠野組に宣戦布告。 その夜、酔って泊まった安宿で、行き倒れを供養する日乾寺住職・日草(=にっそう:天知茂)の甲高い読経の声で起こされた(*読経は似ても似つかない声質のアフレコ)。怒鳴りに行ったはずが「おお、ホトケがお前さんに運んでほしいと言うとるぞ」などと上手い具合にこき使われる。 一方、因縁浅からぬ彼の生還を知った組長の笠野(須賀不二男)は、子分の山口(成田三樹夫)を松音の親分の家に差し向け、安太郎を出せと迫っていた。激昂した拍子になんと親分が発作で急死(ワルなのにひどくうろたえる成田ミッキーの表情が小物っぽくてよい)。事の顛末を知った安太郎は単身で笠野組へ殴りこみをかけるが、撃たれたあげくに笠野に逃げられ、這々の体で日草の寺に倒れこんだ。 日乾寺に匿われ傷を癒すことになった安太郎の元へ、冒頭のいざこざ(戦前の話)で安太郎に腕を斬られ笠野組を破門になって以来、彼を執拗に追ってきた中西(河野秋武)が出現。再び刃傷沙汰になりかけるが、止めに入った日草の熱い説得で事なきを得る。自らも戦場で修羅場をくぐってきたらしい日草の言葉に「それこそが任侠道や!うまいこと言うやんけ、しょぼくれ!(*鴨井@犬シリーズ調に変換←実際の安太郎は標準語です)」とすっかり惚れこんだ安太郎は、“仏門組”用心棒を名乗って日草を親分と慕うようになる(「二人で街をぶらぶらしよう」と言われてホイホイ頷いたら托鉢だったなど、相変わらず日草がうわ手)。 日草は寺近辺の商店街の人々に無償で土地を貸していた。そこへアミューズメント施設建設を目論む笠野組は商店街に立ち退きを要求、日草に土地の譲渡を迫ってきた。“親分”を護ろうと笠野組の連中に姿をさらした安太郎を心配した日草は、彼に好意を寄せるようになっていた寺住まいの千代(かつて戦場で日草を庇って死んだ部下の未亡人:渡辺美佐子)と一緒に寺を出るよう取り計らった。 安太郎を出せと寺に乗り込んできた笠野組の連中を、毅然と突っぱねる日草。ムカついた山口が襲い掛かった瞬間、安太郎への復讐の念を消そうと寺に逗留中だった中西がよせばいいのに援護に入った。結局、3人で揉み合う内に山口のドスが日草の腹部にクリティカル・ヒット(またしてもひどくうろたえて逃げ帰るミッキー)、帰って来た安太郎に「これからは仏の道を行け」と遺言を残し、日草は還らぬ人となってしまった。 法衣を着て商店街のために奮闘する安太郎だったが、ニセ坊主と総スカンを喰らう。一緒に街を出ようと千代に諭されても、笠野を消すことが日草の供養、ひいては人々の幸せになる、これがホトケの道(任侠の道)なのだと頑なに言い切る安太郎はとうとう笠野を刺殺、手錠を掛けられて寺を後にするのだった。 *監督(村野鐵太郎)、脚本(藤本義一)そしてキャスト(坂本スミ子も同じ関西弁キャラで健在)と、犬シリーズそのままのメンバーが使われているせいか、突っ込む田宮、すっとぼけつつ手玉にとる天知という“鴨井&しょぼくれ(木村)”を彷彿させてくれるユーモラスなシーンがいくつかあり、任侠モノとはいえカラッとした面白さがあった。ただしょぼくれ刑事は死なないけれど和尚さんは他界されて残念無念。65年といえばイイ男真っ盛りなのに(思わずキャプチャー)、もったいない! *そういえば、畳の上(布団の中)でのご臨終シーンを観たのはこれが初めてのような気がする(普段はロクな死に方してないからなあ) *タイトルの意図するところが結局よくわからなかった・・・何か隠された意味があったのだろうか。
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| 映画::大映with田宮二郎 | 11:44 PM | comments (x) | trackback (x) | |
2007,05,27, Sunday
#40「兇悪の望郷」(1974年・S49・1月3日OA)
暴力団・真中組への融資を検討する金融会社の調査員・金山三郎になりすまして組を内偵中の会田(チェック柄のトレンチ着用:天知茂)。組長(加藤嘉)の下には、武闘派の上野(山岡徹也)らと対立する経済面担当のやり手・戸塚(今井健二)がいて一触即発状態。“金山さん”こと会田はそこを上手く突き、内部分裂を図ろうというのだ。 一方、戸塚の部下・須藤(倉岡伸太朗)を探して街に来た松井(帽子とベージュのトレンチがきまっている正義と真実の使徒:片岡千恵蔵)とひょんなことから知り合いになった会田は、お互いに身分は明かさぬまま、タダモノではない気配を感じ取り牽制しあう。松井は刑事だった須藤の元上司。当時から戸塚の言いなりだった須藤のせいで部下2名が殉職、さらに彼に騙された愛娘の洋子(大川栄子)が自殺に追いやられていた。そんな理由があるため、しばらく須藤には手を出さないでほしい、と言われても大人しく引き下がる松井ではない。 洋子と瓜二つのホステス・秋子(大川栄子:二役)が須藤と繋がっていることを突き止めた松井は、須藤が彼女のアパートに押しかけた現場を取り押さえる。だがそこに、須藤をつけていた会田が現われた。任務のため真中組との取引を円滑に進めねばならない会田は須藤を逃がし、松井に銃を向ける。抵抗しなかった彼に安堵し背を向けた会田をふいに呼び止める松井。殺気を感じ振り向いた際の咄嗟の構えから会田を同業だと見抜いた松井は、あんまり無茶はするなよと余裕のコメントを送るのだった。 会田の切り崩し作戦が功を奏し、戸塚と組長サイドの対立は決定的に。襲ってきた上野らを射殺し逃走しようとする戸塚の前に、会田、そして、彼を尾行して本当の宿敵の居場所を知った松井が姿を見せる。いくら撃っても弾が当たらない(のは多羅尾伴内からのお約束の)せいか、お前の娘を利用したのはオレだ、ざまあみろと、半ばヤケになりペラペラと喋りまくって彼を挑発する戸塚だったが、会田の放った銃弾で転落死。それは、復讐のためとはいえ松井に罪を犯させまいとした会田の温情だった。 須藤と縁を切って故郷へ帰る秋子に娘の形見をことづけ、自らはあてのない旅に出発する松井(トラックで)を、会田はあたたかく見送った(昭和ブルースは4番) *既に舞台では何度も共演している千恵蔵御大と天っちゃん。髪型も似ている(それは言うな)。それにしても、センパイ役者さんとの絡みになるときまって舎弟キャラが顔を出すというか、表情がどこか和むのが興味深い(もちろん、銃を構えてハッと向き直ったときの真剣そのものの顔もこれまたカッコいいのだが) *事件後、千恵蔵御大と静かに飲んでいる最中に、クリーニング屋の太郎さん(左とん平)が登場。御大を見て「どこかで見たことあるんだよなあ・・・あっ、多羅尾伴内だ!」と叫ぶタロさんにぺしっと裏拳でツッコむ会田、ナイスタイミング。
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| TVドラマ(現代劇)::非情のライセンス1 | 12:06 AM | comments (x) | trackback (x) | |
2007,05,21, Monday
『若き日の啄木 雲は天才である』(1954年・S29)
(台本を入手) かの『東海道四谷怪談』『地獄』を世に生み出した中川信夫監督との最初の出会いを、天っちゃんは『人形佐七捕物帖 妖艶六死美人』(1956年)だと語っていたが(「地獄でヨーイ、ハイ!」参照)、実は端役での出演ながら、その2年前に本作がある。 強烈な個性ゆえに郷里を追われ北海道に向かった石川啄木(岡田英次)は、親友の世話で新聞記者の職を得るが、ここでもまた周囲と衝突し、とうとう東京行きを決意するのだった…という展開を、有名な句を織り交ぜながら映像化した文芸作品で、北海道(釧路)で啄木を出迎える(パシリ扱いの)同僚新聞記者・小松というのが天知茂。三面記事担当の彼と共同で記事を書けと言われた啄木は早速「オレは二面がいい」などとわがままを言うのだが、編集長そして小松クンたち若い連中(松本朝夫氏ら)は尊敬の念を込めて温かく見守ってくれるシチュエーションらしい。セリフはほとんど無いものの、啄木と行動を共にすることがしばしばあり、画面にはけっこう映っているのではないかと期待している。 *対立紙の記者(ヒール)に丹波さん。 *(2007.8.9追記)本編を見た。 天才肌ゆえの傍若無人さが災いして故郷を追われるように去り、親友・宮川(細川俊夫)のいる函館でもうまく行かず、小樽でエラそうさでは五分五分な新聞社の主筆(丹波哲郎)とひと悶着起こした揚句に退社、釧路まで流れてきた石川啄木(岡田英次)。理解ある社長(佐々木孝丸)や同郷の先輩(山形勲)、人のいい芸者・小奴(角梨枝子)たちに囲まれ記者として軌道に乗ったのも束の間、またもや周囲と諍いを起こし、今度こそは真剣に文学に取り組もうと北の地を後にするのだった・・・というストーリーが有名な句を織り交ぜて描かれている。貧乏+姑に耐え忍んでる嫁さんを置き去りにして自分の夢を追い続ける啄木に感情移入しづらいせいで、なんだか必要以上にしんどさを感じる映画である。 初の主演映画『恐怖のカービン銃』の3ヶ月前に封切られているこの作品での天っちゃんの役柄は、釧路新報の小松記者(台本による。残念ながら本編で名前を呼ばれることは無かった)。釧路に着いたばかりの啄木と人力車で新聞社の玄関へ降り立ち、意外に雪が少ないですねえとの啄木の言葉に「ああ、しかし寒いですよ」とインバネスをひるがえしながら社内へ入り主筆に紹介するシーンが初お目見えで、着込んでいるからかもしれないが、新東宝時代の彼にしては体格がまずまず良かったのが印象的。正面きってのアップは一度もないものの、こまごまとしたシーンでさりげなく映っていて、さりげなくセリフを言っている姿を発見するのが楽しかった。 *愛国婦人会主催のかるた大会(啄木の隣には小松記者もいる)の司会進行役として三原葉子ねえさんがちょこっと登場。 *岡田英次さんと天っちゃん、四半世紀あまり経つと「エマニエルの美女」になるのだなあと思うと実に感慨深い(それを引き合いに出すのはどうか)。
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2007,05,20, Sunday
洋楽バンド・クイーンの初期の曲「Sheer Heart Attack」のPV(「Queen Rocks」収録)に、来日した際にスタッフ(かメンバー)が日本のTVから録画した映像が挿入されているのだが、そこに天知版の「雲霧…」らしきアイキャッチが紛れ込んでいる。
YouTubeに映像があったので、興味がおありの方はどうぞ(1:09あたりと、ラストにほんの少し): http://www.youtube.com/watch?v=oXc_z5x5oQY *この映像自体は90年代に、来日時に録画した映像の切り貼りで作られたもの。クイーンの来日は1985年が最後なので、時期的に山崎版ではありえない・・・が、もしかしたら映画版(をTV放映したときのもの)かも? *ちなみに別番組っぽいが、他の映像のちょんまげ姿の伊吹吾郎さんはくっきり分かる *どうでもいいが、バンド内で個人的イチオシのベーシストの画面に映る時間が「雲霧」アイキャッチ並みなのがちと寂しいPVではある (2009.11.13追記)やっぱり天知版「雲霧…」のアイキャッチだった(初回レビュー参照)
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2007,05,20, Sunday
#39「兇悪のライフル」(1973年・S48・12月27日OA)
射撃クラブにて。県警で1、2を争うライフルマン・三上(神太郎)の指導をしていた会田(ピンクと黒の縞々ネッカチーフで1、2を争うお洒落さん:天知茂)は、隣にやってきた青年・戸崎(松橋登)の天才肌の腕前に目を見張った。戸崎は貧しい工員で、長期月賦で手に入れたライフルを愛でるのが唯一の楽しみ。馴染みの銃器店で戸崎に再会、彼が殺生を嫌う純粋な青年と知った会田は、売り切れた弾を貸す名目で自宅マンションに誘い、一人暮らしは寂しいもんだよ、メシ食ってかないか、こう見えてもメシ作るのうまいんだ等々、オタク仲間を得た嬉しさいっぱいに応対する。しかし、いつになくフレンドリーで饒舌な会田にドン引きした、というよりも「どんな理由から銃を? 恋人は?」と(彼にとって)痛いことを聞かれた戸崎は早々に立ち去った。 ところが戸崎が下宿に帰ると、愛しいライフルが部屋から消えていた。同じ下宿にいるチンピラの岩佐(島田茂)が銃を盗み、質屋に押し入ったのだ。現場近くにあった銃から戸崎の名前が浮上し、彼は三上のいる署に連行された。射撃クラブでの一件で、一介の工員が刑事の自分よりも凄腕なこと、おまけにセンパイ・会田の関心が自分より戸崎に向けられたことに激しく嫉妬していた三上は、ここぞとばかりに戸崎を責め立て自白を強要。三上から泥だらけになった愛銃を目の前に突きつけられショックを受けた戸崎は、事件を聞いて駆けつけた会田にも心を閉ざし、岩佐への復讐を誓って留置所から脱走してしまう。 逃亡の際ライフルを取り戻した戸崎は、あろうことか会田のマンションに忍び込んで実弾を持ち出した。なぜ奴が貴方のマンションを知っているんですかあ!と再びジェラシーの炎を燃え上がらせた三上に詰られる会田だったが、マンションに呼ばれたらしい銃器店の主人(小松方正)が会田に味方。同郷の彼女を銃の暴発で失った戸崎が、憎しみを越えていかにあのライフルを愛するようになったのかを語るのだった。 岩佐を見つけた戸崎は、ガスタンクの上から彼を狙撃しようとする。しかし間一髪で警官隊が岩佐を保護、三上と戸崎はそれぞれライフルを構えて睨み合った。お互いの指が引き金に掛かった時、「待ってくれ!」と会田が登場、強風が吹きすさぶ円筒形のガスタンク屋上へと登っていく。「来るなー! それ以上来ないでくれ会田さん!(髪が、髪がぁ〜!)」叫ぶ戸崎(&我々視聴者の心の声)をものともせずに屋上にたどり着いた会田の熱い説得によって、戸崎は空に向かって発砲した後、屋上からライフルを落とし、会田にすがって泣き崩れた――(昭和ブルースは1番)。 *クライマックスの会田、なにやら非常に良いことを語りかけているようなのだが、何度見ても目が頭部に釘付けになってしまう。実に危険なシチュエーションだ。ちなみに結構高いところなので、さりげなくではあるが手すりをずっと持ったままの天っちゃん、内心怖がってそうだった。 *会田の自宅の机には、特捜部の壁に掛かっているのと同じモジリアーニのポストカードサイズの絵が飾られていた。よほど好きらしい。 *「氷柱の美女」「大時計の美女」でもアブノーマルな魅力をふりまいていた松橋さん(「砂の惑星」や「ヒドゥン」など、TP以前のK・マクラクランの吹替も印象的)。ライフルをなでなでするあやうい様が板についていた。会田を見て「刑事さん? 僕は銀行の方かと」と言うあたりも一味違う。あんなコワモテの銀行員はいやだろう、っていうか銃器店のおやじさんも「でしょう、会田さんを見て刑事の印象が変わりましたよ」とか言ってたし。それを聞いて「人は見かけによらないってことかな」とまんざらでもない会田、どう見ても見かけ通りにしか見えんと思うのだが。
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| TVドラマ(現代劇)::非情のライセンス1 | 12:07 AM | comments (x) | trackback (x) | |
2007,05,12, Saturday
『警察官』(1957年・S32)
パトロール中の警官が不審車を尋問中に射殺された。捜査を進める内、国際的なスパイ組織の存在が浮上。捜査課長(細川俊夫)は制服警官の山口俊介(宇津井健)を、組織に関連ありと思われるクラブ社長・長谷川(沢井三郎)の元へと潜入させる。 長谷川の信頼を得て運転手として雇われた俊介は、組織の中枢である南隆貿易の社長(のっけから外国人と英語でやりとりしている蝶ネクタイの男:丹波哲郎)に接近するが、俊介に胡散臭いものを感じた丹波社長の腹心・吉田でなく吉野(デキるNo.2というよりはダークサイドの小林少年といった風情の天知茂)はそれとなくストーカー行為を続け、彼が老練刑事・久野(竜崎一郎)の娘・純子(池内淳子)と恋仲であることを突き止め正体を見破った。 南隆貿易に偵察に来た久野と共に捕縛されピンチの俊介。しかし周りは既に援軍の警察官で取り囲まれていた。初期捜査のミスを引きずりナーバスになっていた木村刑事(中山昭二)が単身乗り込み、丹波社長と凄まじい乱闘を繰り広げて命を落とし(その前に吉野は木村刑事と撃ち合いになりあっけなく死亡)、丹波さんが地下室もろともどっかーんと爆死して事件は解決。俊介は純子の前で、木村の分まで頑張ることを誓うのだった。 *頭脳派の実悪ぶりが板についていた(ヤク中の江見さんに長谷川社長を殺させ、そのあとで銃を向ける非道な態度がこれまた渋い)丹波さんの側で張り切っていた吉野くん。ただ有能秘書というにはうら若く、用心棒にしては華奢、その筋のおねーさんには頬をしばかれ、拳銃の腕もいまひとつという、ボスに比べるとなんとも可愛らしい面が目につく不思議な青年だった。 *おまけに運転も出来ない(役柄)らしいのだが、荒っぽい運転手(=宇津井さん)に向かって助手席でぽわんぽわんと揺れながらいろいろ突っ込んでいる姿が笑えた。 *「ベッドハウス」(=連れ込み宿の一種か)の住民・サッチャン役で、当時まもなく挙式予定の奥様=森悠子さんが登場、朗らかで逞しそうなその筋の女性を演じておられた。天っちゃんとは中盤にニアミスしていたような(宇津井さんをストーキング中にベッドハウスの階段を上がっていった時に出てきた、後ろ向きの女性がそうだったのではないかと)。
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2007,05,06, Sunday
*前々ブログ記事引用
土曜ワイド劇場の美女シリーズ(天知版)は全25作。そのうちリアルタイムで見たのが後半7作で、後は再放送を録画して見た分が結構あって、DVDを買ってから初めて見たという作品はほんの数作なのだが、この「大時計の美女」(10作目)は今まで一度も見ていなかったことに夕べ気づいた。こんな夜中に笑い死にしそうな話を見逃していたなんて不覚だ。 大時計のある旧家に夜毎現れるナゾの老婆。その正体は? 時計に隠された財宝の秘密とは? ・・・という少々オカルト仕立てな作品だが、老婆の出現に大袈裟に怯えまくる当主(横内正)がかなり笑える。定番のお色気シーンが控えめな分(旧家だからお風呂も古いし)謎解きにウェイトが置かれ、明智センセイの探偵として至極まっとうな変装術や尾行術が拝めて(オーダーメイドのこじゃれたワイシャツ&ノータイ姿なんかも拝めたりもして)、いつもと違った面白さがあるのだが、噴き出さずにはいられないのがうら若きヒロインの本名。ずばり「和田ぎん」。原作(幽霊塔)の「ぎん子」も大概なものだがそれ以上だ。いつの時代の乙女の名前なんだ、ぎん。 珍しくハッピーエンドを迎える話で、外国へ行くというヒロイン(結城しのぶ)と海辺で別れる明智センセイが「アキコさん・・・!(=ヒロイン)」と呼び止めるのだが、「私、もうアキコじゃなくて和田ぎんですのよ」と返され「お幸せに、・・・ぎんさん」と言い直すラストシーン、「この家には本当に幽霊が出るのです!」と新東宝仕込の怖い真顔で犯人を脅していたさすがの天っちゃんも、このときばかりは表情が微妙に揺らいでいた。なんとなく分かるよその気持ち。 *全国のぎんさんすみません 【明智先生ファッション劇場】:センセイの服装をキャプチャーしてみました(華麗なる尾行術も堪能できます)
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2007,05,05, Saturday
「海外逃亡を阻止せよ!」 (1978年・S53・7月24日OA)
放送ライブラリ@横浜にて鑑賞(出演者欄が「天地茂」表記なので検索の時はご注意を) 銀行から1億5千万を強奪、金を海外へ流したものの自分は新東京国際空港(現・成田空港)で加賀警視(鶴田浩二)率いる空港特捜部に見つかってしまった男・滝(中尾彬)は、空港長の沢田(池部良)の娘・京子を誘拐、海外逃亡を認めるよう取引を迫ってきた。空港長としての権限を私事で利用するわけにはいかないと頑なに要求を拒む沢田。彼の戦友である加賀はなんとか京子を救い出そうと奔走する・・・。 空港職員との連携不足から部下(中村雅俊)がいったん滝を逃してしまったことで加賀は課長から大目玉を喰らう、という話の流れで出てくるのが課長ではなく係長の三井(パリパリスーツの天知茂)。大目玉どころか、格下であるはずの加賀にさん付けで敬語を使って舎弟オーラを放つ“良き協力者”カテゴリの人だった。加賀には当然のように「三井クン」呼ばわりされつつパシリ的な調査にも快く応じ、彼の大胆な空港閉鎖策に「加賀さんの好きなようにやってください。責任は私が取ります」と自ら防波堤役をかって出る徹底ぶり。戦中派(鶴田&池部)と戦後派(中村さんやら緒方さんやらの特捜部員たち)に挟まれて役職・年齢ともに中途半端な位置づけとはいえ、天っちゃんでないとこなせないキャラクターといえた。 *ただ出番は非常に少ないので、いくら脚本・監督が井上梅次さんだからといってOKサインをなかなか出さなかったのも頷ける(「テレビドラマ 伝説の時代」に詳細あり) *結局課長は誰なんだろう *美女シリーズ(鏡地獄の美女)のとき同様、天っちゃんの少し人と違うイントネーションの「香港」の発音が数回聞ける(大抵のひとはホン↓コン↓なのだが、彼はホン↑コン↑と上昇気流なのだ) *(2008.5.12追記)ホームドラマchの放送分で確認、「課長から大目玉」じゃなくて「本庁から」だった(どんな耳をしているのだ>自分)。警察庁国際刑事課の係長である三井さんは、国際刑事課直属の空港特捜部の人事権を握っているらしく、(部下のポカのせいで犯人を逃がした件で)「部下が悪いのなら、替えましょうか」と加賀警視(=鶴田さん)にクールに持ちかける人でもあった。ってことは相当エライ人なわけだが、ここで加賀さんをちっとも責めないあたりの舎弟キャラが味である。
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| TVドラマ(現代劇)::大空港 | 08:36 PM | comments (x) | trackback (x) | |