2007,08,07, Tuesday
『明治天皇と日露大戦争』(1957年・S32)
斜陽の会社を(一時的に)救った、初のアラカン天皇物にして大ヒット作。開戦からバルチック艦隊壊滅までの道のりが明治天皇(嵐寛寿郎)を軸にしたドキュメンタリー・タッチで描かれており、悲劇的要素が強い史実を、お涙頂戴ドラマに偏りすぎることなく淡々と映像化しているあたりにリアルさが感じられた。 前回見た日清戦争(『天皇・皇后と日清戦争』←製作年は1年後)同様、宇津井健は海で豪快に、高島忠夫は死亡フラグを立てまくりながら陸で戦死、丹波哲郎はどこかエラそうな海軍将校、細川俊夫はアラカン天皇の忠実な侍従長だったのだが、下関会議の邪魔をしたもみあげ狙撃犯(=天っちゃん)はというと、開始5分ほどで両腕を大きく広げて(長い指先がステキ)「二千年の歴史を守れー!」などと屋外で群集をアジっている背広姿の代議士センセイ(やはり明治なロングもみあげ&お髭付き)のひとりであった。出番がなかなか回ってこないのも困るが、2時間あまりの超大作でこんなに速攻で出てこられても後を見る気力が萎えるので考えモノである。 *代議士センセイが出席していそうな国民大会の様子が途中に何度も挿入されているが、壇上に座っていそうでいないあたりがもどかしかった(それにしても、ものすごい人数が画面にあふれている映画だ!)
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2007,08,04, Saturday
『天皇・皇后と日清戦争』(1958年・S33)
若いときから傲岸不遜な丹波哲郎のせいで(おい)交渉決裂、日本は清国と開戦。農村に年老いた婆ちゃんひとりを残して高島忠夫が死亡フラグをがんがん立てながら出兵、海では宇津井健が豪快に吹っ飛び、寒い陸地では中山昭二や和田桂之助がバタバタ倒れる一方、神々しいアラカン天皇&高倉みゆきが下々の者たちと心の交流を図るオールカラー超大作。 目を凝らすこと1時間30分後、下関で講和談判中の清国全権大使・李鴻章(勝見庸太郎)の一行を鋭い目つきで睨みつけるロングなもみあげの男・小山六太郎(天知茂)が登場。ふところから銃を取り出しやおら李氏の輿に駆け寄った小山は銃をぶっ放す。弾は李氏の顔面を直撃、小山はただちに取り押さえられ「李鴻章を倒すんだ〜っ!」と叫びながらフェイドアウト。あとすこしで平和裏に条約が締結できるという時だっただけに、日本サイドはこの浅薄行為に大迷惑。温和なアラカン天皇にさえ「犯人は厳罰に処すべし」と言われていた。 *厳罰ってどんなのだろう、銃殺刑?磔獄門?などと色々コワイものを想像してしまったのだが、史実によれば小山(史実には「六之助」とある)は無期懲役で網走に送られた後、恩赦で出所、獄中での体験記(「活地獄」)をしたためた上に昭和の時代(78歳)まで長生きしたのだそうだ。 *なお彼の手記と夏目漱石の「坊ちゃん」を融合させた「牢屋の坊ちゃん」という小説(山田風太郎著)があるようだ(「明治バベルの塔―万朝報暗号戦」に収録)。たしかに坊ちゃんチックな風体だった(もみあげ長いけど←そればっか)
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2007,07,30, Monday
シリーズ一のヘタレ作と評判の高い本作、じっくり見てみると雰囲気はそれなりです。ロケ多いし、アクション多いし、お色気もたっぷりだし、どんでん返しもあるし。ただ何が駄目なのかというと、黄金仮面の節操の無さ(いくら富士子さんがそうなったからってその行動はどうなんですか)、そして前回同様、後手に回ることが多かった明智センセイのヘタレ(にみえる)推理かと(変装力も負けてますし)。せめて1勝1敗にして欲しかった気がします。特に後半は、もう少し違う展開で見てみたかったなあ。
もっとも、恒例(?)となった「危ない明智センセイ!シーン」のド迫力はおそらく本作がベストだと思います。あれは死ぬでしょ、フツー。 その他明智センセイ的に気になったことといえば、髪型が、ちょっと・・・。 (ハッ、なにか言ってはいけないことを口走ってしまったような・・・!) 【明智先生ファッション劇場】:センセイの服装をキャプチャーしてみました(いつもに比べて背広率が低めです)
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2007,07,27, Friday
「三ツ角段平」(1972年・S47・12月13日OA)
隈の半左親分(石山健二郎)の右腕代貸・三ツ角の段平(天知茂)は顔良し・腕良し・器量良しのくだけた男(のっけから笹の葉くわえてナマ足全開で舟こいでたり、縁日の喧嘩を丸く収めたりのくだけっぷりを披露)。彼がいるおかげで半左のライバル・鷹の茂十親分(天津敏)も迂闊に隈一家に喧嘩をふっかけられないでいた。しかし、半左親分が年甲斐もなく若い芸者の花吉(野川由美子)と所帯を持ちたいとゴネ出したことから、思わぬ亀裂が生じる。 親分のたっての頼みで花吉を身請けに行った段平に、おかみのお百(木暮実千代)は弱り顔。花吉には心に決めた相手がいて、先にあった茂十親分の誘いも断っているのだという。なさぬ仲の鷹一家には渡すまじと余計に勢い込む段平の前にその茂十が現われ、花吉は譲ってやる、ただし必ず半左の嫁にしろ、出来なかったら俺の言うことをなんでも聞けよとの奇妙な条件を提示した。無論そのつもりだと胸を張って承諾する段平だったが、実は花吉の想い人とは他でもない段平自身(だが本人はまるっきり無自覚)。それを知った茂十が、半左と段平の仲をこじれさせようと一芝居打ったのだった。 段平が半左との婚姻を勧めていると知ってショックを受けた花吉は、半左親分の執拗かつ強引な責めに逢い、とうとう想い人の名前を打ち明けてしまう。半左は嫉妬に燃え、何も知らない(知らなさすぎの)段平をウソの理由で数日間遠ざけてその間に花吉を手篭めにしてしまおうと画策。旅立つ直前にお百と茂十から真相を聞かされた段平だが、親分大事の彼は涙目の花吉を前にしながら何も言えずにその場を去る。 そして数日後、戻ってきた段平に、半左親分は「花吉はお前にくれてやる」と言って彼女の亡骸を指差した。花吉はほぼ片思いの段平への愛のために頑として半左を拒み続け、折檻の途中で死んでしまったのだ。これにはさすがの段平も堪忍袋の緒が切れたらしく、半左との親子の盃を割り、冷たくなった花吉をお姫様抱っこして家路に着いた。これで諍いが起こせると嬉々として手下を引き連れ迫ってきた茂十親分&手下たちを難なくやっつけ、隈一家に手を出すなとクギを刺した段平は、死化粧して横たわる花吉と祝言をあげ、いずこともなく去っていくのだった…。 *渡世人としては優等生だが女心に疎すぎる段平をいなせに好演。でも必要以上に型にはまりすぎているというか、見ていてどこかしらもどかしい不自然さも。1930年代に高田浩吉さん、はたまた片岡千恵蔵御大の主演で映画化されているので触手が動いたのかもしれないが、あまり似あう役柄ではないような気がする(でも本人は楽しそうだったからまあいいか)。 *脚本は宮川一郎さん。原作の結末を変えたのは、天っちゃんのキャラを生かしたかったが故なのだろうか(おかげで「正直者には福がある」的な話がとことん報われなくなっていたが)
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2007,07,22, Sunday
『主水之介三番勝負』(1965年・S40)
紀州家指南役の座を巡り、亡き義父の親友で天地自念流の片倉一閑斎(内田朝雄)と競うことになった鏡心流大塚道場の若先生・大塚玄蕃(天知茂)。技術不足を謀略(と金)でカバーして今の地位を築いてきた彼は、腕がすこぶる立つがちょっと問題児の元師範代・木島弥十郎(近衛十四郎)と仲間達に一閑斎殺害を依頼。目論見どおり一閑斎を再起不能にすることに成功するが、夢殿主水之介(主役:大川橋蔵)という自分には無い剣の腕前とライトな性格を纏った小憎らしい男が帰ってきたせいで歯車が狂い始める。 主水之介はライバル・片倉道場のかつての精鋭で、玄蕃の妻・美緒(桜町弘子)の元恋人。3年前、流派の違いもなんのその、人目をはばからずイチャイチャする相思相愛の関係だったのを、同じく“お嬢さん”に惚れ抜いていた玄蕃が姦計を巡らせて仲を引き裂き、破門に追いやった男だった。案の定、愛しい恋人の帰還を知り、お揃いの鈴をチリリンと身につけて浮き足立つ美緒に玄蕃は激しくジェラシー。おまけに一閑斎事件の真相を聞きつけた美緒は彼を思いっきり毛嫌いし始め、肌すら合わせてくれない。 進退窮まった玄蕃は主水之介をも抹殺してしまおうと計画するのだが、生粋の剣オタクである弥十郎は「あいつと勝負するのはオレだ、それまでは誰にも触れさせん!」と子分達をぶった切る始末で、仕方なく意地とプライドを賭けて御前試合で主水之介と対戦する羽目に。だが爽やかな主演オーラを放つ主水之介に勝てるはずもなく、玄蕃は破れた。弱り目に祟り目といおうか、怪我を負い伏せっているところへ弥十郎がやってきて造反、お前の役目はもう終わった、道場の3代目はこのワシだ、ついでに美緒も貰ってやるから安心しろハッハッハとぶったためにカッときて刀を握った瞬間、障子ごとばさーっとやられて一巻の終わり。享年32歳(←墓石による)、無器用な愛に生き、愛ゆえに死に急いだ脆い男であった。 *この種のヤな男、新東宝時代ならものすごく憎らしげに演じてくれたはずなのだが、ここではイヤミぶりよりも一人の女に尽くしまくる(でも報われない)哀しい一途さが印象的で、色気たっぷりのルックスの良さも手伝って思わず同情したくなる場面がちらほら。 *また美緒さんが、初恋を大事にする純情な乙女、というよりは家や体裁を気にする下心が見え隠れする女性なので余計に玄蕃が哀れだった。最期も「どこにも行かないでくれ・・・!」と美緒に縋って例の鈴を手にしたところで弥十郎襲来、そのまま鈴を握って事切れたのだが、ラストではなぜかお互いの鈴を交換しているいちゃいちゃカップル。美緒さん、せめて鈴くらい握らせたまま葬ってあげなよ!
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2007,07,19, Thursday
#109「兇悪の壁」(1975年・S50・11月13日OA)
会田(天知茂)の休暇願いをあっさり受諾した矢部警視(山村聡)はにこやかにお小遣い(20万円!)までフンパツ。ただし条件は、ある女性と過ごすこと。彼女の写真を見て会田は驚いた。近ごろ世間を震撼させた某国政治家の拉致事件の目撃者で、命を狙われ公安で身柄を保護しているはずの重要人物だったのだ。そんな女性と一緒にいたら気の休まる暇がない、とぶーたれる会田をよそに、矢部は「彼(=会田)は独身で女性の扱いにも慣れていますから安心ですよ」などと良く分からない理屈で“鈴木よし子”(矢部さんが付けた仮名:吉行和子)を引き合わせる。 「この方が安全だからって矢部さんが」とのことで仕方なく“よし子”の真っ赤なスポーツカーで自宅マンションへ向かう会田だったが、さっそく尾行車が現われ、立ち寄った喫茶店でも胡散臭い男たちに絡まれる(喫茶店の食材を全部くれとウエイトレスに頼む会田もたいがい胡散臭いがそれはさておき)。そしてマンションで会田のお手製料理を堪能し落ち着いたのも束の間、森山周一郎声で掛かってくる脅迫電話。怯える“よし子”を力強く励ます会田、ふたりの身体は自然に重なり合うのだった(だからどこが安心なんですか>矢部さん)。 翌日、ほんわか新婚さん気分に浸っていた彼らの元へ、不審な小包が届けられる。最悪の事態に備えて必死に浴槽内で解体したそれは幸い単なる脅しに過ぎなかったのだが、敵の包囲網の狭まりを感じて迂闊に動けないでいるうちに数日が過ぎ、気が付いたときにはライフラインを全て絶たれてしまっていた。何よりも食料が底を衝いたことにイラついた(推定)会田は“よし子”を連れて車に乗り込むが、大型ダンプの挟み撃ちに遭う。銃撃戦を制した会田の眼に飛び込んできたのは、被弾した“よし子”の姿。 ――自分は本当の目撃者ではない、敵を欺くには、私が死ねばそれでいい。 虫の息で真相を語り息絶えた彼女を前に、会田はなすすべもなかった。 何もかも承知で自分に彼女を預けた矢部に掴みかからんばかりに詰め寄る会田だが、殺すつもりはなかったと返されては言葉が無い。「せめて、彼女の本当の名前を・・・!」会田の懇願にも、明かさぬことが約束だからと冷静に告げて矢部警視は去った。立ち尽くす会田ひとりを残して…(昭和ブルースは3番)。 *実際に起こった金大中事件がモデル。原作(「兇悪の眼」収録)の“鈴木さん”は男性なので会田と寝食を共にしても違和感がなかったが、独身かつ女に甘い会田に彼女を預ける矢部さんの真意は謎である。謎といえば、電話やら電気やら、すべてのライフラインを絶たれるまで何もせず部屋に引きこもっていた会田も不自然(原作だと食料だけが無くなったので買出しにいこう、ってことで外へ出る)。だがその「なんかおかしいよなあ」を払拭してあまりある無情のラストがいい。 *彼女がシャワー中にちゃっちゃと料理を作ってしまう会田。帰宅後すぐ「先にハムは冷蔵庫に入れなきゃ悪くなる」とか言って冷蔵庫に肉類を突っ込む主婦のカガミのようなマメさが可笑しい。 *毎回ゲストと寝ているような印象のある会田だが、ラブシーン自体は珍しいそうだ。これにしても、重なり合って画面がぐるぐるしてるだけなので拍子抜けする(←何を期待しているのか)
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| TVドラマ(現代劇)::非情のライセンス2 | 03:55 PM | comments (x) | trackback (x) | |
2007,07,17, Tuesday
「第三の女: 箱根富士山~マドリッド古城、謎の殺人契約~愛されて死にたい」(1982年・S56・9月4日OA)
マドリッドで食品衛生学を研究する大学助教授・大湖浩平(天知茂)には、殺したいほど憎悪する相手がいる。有害物質入りの菓子を販売する企業と癒着してデータを改ざんし、子供たちが毒のせいで亡くなっていくのを黙殺する上司・吉見教授(山形勲)だ。 今日もフラメンコを上下の階で見ながら吉見を瞬殺しそうな目つきで睨んでいた大湖だったが、凝り固まりすぎた考え(と眉間)をほぐすため、バルセロナ近郊の友人の古城へと車を走らせた。だが友人宅では賑やかな仮面舞踏会の真っ最中。仕方なく黒いマスク(二十面相風)を付けて所在無さげに佇んでいたその時、運命の女性に出会う。サメジマフミコと名乗った赤い仮面のその女性もまた、ある人物の死を願っていた。互いの胸の裡を一瞬にして理解しあったふたりは(土ワイの当時のお約束どおり開始10分あまりで)身体を重ね、仮面のまま別れる。 ほどなくして、吉見教授が自宅で毒殺された。地元警察のマンリーケ警部(ポール・狼男・ナッチィ)となぜか明智センセイ&波越警部のようにマンリーケとつるんでいる私立探偵のマリア・サラサール(ラ・ポーチャ)は、吉見と確執があった大湖を疑うが、彼にはフミコによって用意された鉄壁のアリバイが。そして、フミコが自分の代わりに吉見を殺害したことを確信した大湖の元に、一枚の絵葉書が届く。富士山を抱く箱根・芦ノ湖畔――それは、今度は貴方の番よとのフミコからのメッセージだった。 大湖はマンリーケ警部らの監視をかいくぐって箱根へと赴き、フミコのターゲット・永原翠(樋口可南子)を誘い出してネクタイで絞殺した。バルセロナの夜が忘れられない彼は“交換殺人”が完了したと告げるためにもフミコとコンタクトを取りたいと願うのだが、誰がフミコなのかが分からない。かつて翠に夫を殺されたと信じる久米悠子(あべ静江)か? それとも翠の異母妹・茜(樋口二役)なのか? 日本・スペインの捜査網が狭まる中、大湖が見つける驚愕の真相とは果たして…?(いちおうサスペンスなのでネタバレはここらで自粛) 土曜ワイド劇場5周年記念番組、らしい。82年といえば、正月2日放送の「天国と地獄の美女」から始まって「化粧台の美女」(4月)「湖底の美女」(10月)と、美女シリーズが圧倒的な勢いを誇っていた時期であり(ちなみに私がリアルタイムで美女シリーズを見始めたのもまさにこの年の「天国…」からだった)天知茂=明智小五郎という印象が非常に強いため、外見・性格がほぼ明智センセイなプロフェッサー・大湖が人を殺めたり2度もラブシーンをこなしたりする姿には正直驚かされる。しかしその“偏見”が幸いしてか、原作(夏樹静子著)では欲を抑えきれず暴走したりもするトホホな面がある大湖が、ここでは患者の子供たちから渦中の女性陣、はたまた探偵のマリアさんに至るまで皆にモテまくる上、人間的にも大層立派な人物に見えたのも確かだ。 *日本サイドの警部は加藤武さん。でも「よおし、分かった!」とかは言わないし(当たり前だ)、天っちゃんとの絡みは皆無だった。 *問題(?)のラブシーン、アダルトかつアーティスティックな雰囲気で(攻める箇所がまた原作のポイントをうまく押さえていて)なかなかよろしゅうございました。
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2007,07,08, Sunday
『天下の鬼夜叉姫』(1957年・S32)
将軍綱吉のご時世。豊臣方の生き残り・鶴姫(宇治みさ子)たちは曲芸一座に身をやつすかたわら、夜は鬼面をつけて幕府要人を血祭りに挙げる暗躍を繰り広げていた。ところが旅の途中での難儀を救ってくれた編み笠侍・露木丈太郎(明智十三郎)に鶴姫がフォーリン・ラブ。丈太郎が徳川サイドの隠密だったことから、恋と使命の間で板ばさみになる鶴姫、だけど守役の藤蔵(丹波哲郎)以下残党たちは許しちゃくれない、すったもんだの末、結局お姫様はお咎めなしだよってことで、残党は全員討死したにもかかわらずハッピーエンドという、“女剣士スタア・宇治みさ子”を楽しむことのみに意義があるといわんばかりのあっけらかんとした作品だった。 さて我等が天っちゃんの役どころは、反体制派の島津藩お抱え侍・蒲生重之進。曲芸一座(=鶴姫一行)を助けた後、のん気に街道をゆく丈太郎(キャラはなんとなくウツイ系)の目の前に、藩をスパイしていた怪しい鳥追い女(天っちゃんと悲劇の怪談カップルになる2年前の若杉嘉津子)を追って刀を振り上げながら飛び出したはいいが、どうみてもただの鳥追いではなさそうな女を庇った丈太郎に対峙され、腕をばっさり斬られ谷底へまっさかさま。実は彼女・お綱は丈太郎と同じく、松平伊豆守(江川宇礼雄)配下の隠密だったのだ。 だがブレイク寸前の天っちゃん(しかも新婚)がそれしきのこと(?)で死ぬはずがない。右腕を失った重之進は同じく打倒・幕府に燃える鶴姫の曲芸一座に用心棒として雇われ、すっかりニヒルが板についた浪人になりきっていた。例のごとく丹波さんに良いように使われつつもにっくきお綱を捕らえると、天井から吊り下げて歪んだ愛情を滲ませながら粘着質に苛め抜く重之進。しかし、さあこれからというときにまたしても丈太郎が現われて対決、「地獄へ行け!」と叫んで自分が地獄へ旅立ってしまうのだった。 *いつものようにどんな役でも一生懸命こなしている天っちゃん(左手一本での殺陣も見事)のおかげで楽しめた、ともいえるが、ベースが単純明快なヒーロー・ヒロインの活劇映画だけに、サブキャラのお綱さんに執着しまくる彼の場違いに濃厚なオーラがかえってストーリーを散漫にしているかのような印象を受けた。せめて責める相手が鶴姫だったら良かったんだが。
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2007,06,25, Monday
東映TVドラマ主題歌大全集 2 現代劇篇
昭和45年~56年の今ではかなりレアなTV現代劇のOP・EDタイトル(主に第1話)がどっさり収められているLD。同種のものがビデオでも出ているが、LDの方が収録数が多いようだ。 天っちゃん関連作品では、 野望(1977年主演作) 非情のライセンス(第2・第3シリーズ) 白昼の死角(1979年特別出演作) のOPが見られる。ただ「白昼の死角」は名前のみ、非ライはエンディング(つまり「昭和ブルース」)が入っておらず、おまけに第2・3シリーズ第1話OPでの会田率は1%未満なので残念なのだが、目玉はとにかく「野望」ED、これに尽きる。 伊部晴美さんの物哀しいギターの音色とともに現われるのが、白いハンチングを被った主人公(青空の下、白いヨットでセーリング中の天知茂)のアップ。まぶしそうに見つめる先には、赤いバンダナが鮮やかな三田佳子。よくみると手首にリストカットの痕があり、さっそく眉間にシワを寄せる天っちゃん(というカットが2度ほど繰り返され、ぼけーっと見ている視聴者でも何があったんだコイツら、とちゃんと不思議がれる仕組になっている)。 一方、高層ビルの1室に集まってなにやら渋い顔を突き合わせている山形勲・内田朝雄・内藤武敏の中に、慌てた様子で飛び込んでくる根上淳。この物騒なメンツの役割は果たして何なのか。そして再びヨット上。演歌チックな「流れの雲に」(作詞:川内康範センセイ、歌うはもちろん主役本人)が濃厚な雰囲気をバックアップする中、キャストの最後尾に「天知茂」のテロップ。そして協力:アマチプロゼ。天っちゃんの思い入れがガンガン伝わってくる熱いEDだ。 しかしながら『青い空とヨット』という爽やかアイテムが似合わないヒトであることも露見。というより、どの角度から映っても綱持ったまま微動だにしないので「・・・もしかして、怖いのか?」と余計なことを考えてしまうのであった。 *東京12chの「江戸川乱歩シリーズ」のOP・EDが美女シリーズに負けず劣らず濃厚で面白そうだった(ちなみに山村聡さんが“平井教授”で出ている) *(2009.1.27追記)収録の「野望」はOPではなくEDだったので修正。
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2007,06,17, Sunday
地獄の左門十手無頼帖2 将軍暗殺!(1983年・S58・1月21日OA)
またもや冒頭から盗っ人相手に華麗なる地獄の舞を披露してくれた南町与力・神山左門さま(十手は何のためにあるのでしょうか:天知茂)だが、帰宅途中に屈強な侍たちに拉致された。連れて行かれた先はラスボス、じゃなくて善人サイドの老中・阿部伊勢守(丹波哲郎)の館。金の力で幕府を食いモノにし始めた河内屋親子(幸田宗丸&岸田森)の増長を阻止するため、通り名通り地獄へ行ってくれと頼まれた左門さま、丹波さんを前にすると新東宝時代の習性でついパシってしまうのか二つ返事で承諾、“神山左門”の葬式を出して“武州無宿の左平次”に身をやつし、まずは伝馬町牢屋に潜入する。 身振り手振りはなり切っているが顔が顔だけに早速「おメェ、岡っ引きだろ!」と皆にヤキを入れられかけた左門さま=左平次に、三次という男(石橋蓮司)が助け舟を出してくれた。実はこの三次こそ、河内屋の抜け荷の証拠を掴むためにコンタクトを取ろうとしていた男。上手い具合に当の本人からアニキ~♪と相当に惚れられてしまった左門さま=左平次は、ムショを出たあと彼と妹・おぶん(佐藤万理)が住む長屋に身を寄せることにした。そこへ、ならず者(福本清三さん他)に追われていたナゾの女・おあき(あべ静江)まで転がり込んできて同居する羽目に。 三次に紹介してもらった“仕事場”には、荒くれ男たち(宮口二朗さんら天知ファミリー)が揃っていた。で、ここでも「左門の旦那じゃないですかあ」と超高速で正体がバレる左門さま=左平次(だからその顔が問題なんですってば)。見かねてフォローしてくれた、既に潜伏中の伊勢守の密偵はそのために身分が暴かれあっさり抹殺されたものの、河内屋の用心棒(元は大塩の残党)・倉沢(原田大二郎)らの疑惑をかろうじて晴らした左門さま=左平次は抜け荷の現場を突き止め伊勢守に報告。しかし急行した目付は倉沢に消され、イッてる河内屋ジュニア・仙之助(岸田さん)は証拠隠滅のために三次を含む人足たちを銃殺、小屋に火をつけて皆殺しにしてしまう。 虫の息で長屋へ辿り付いた三次は、おぶんに河内屋を頼るよう言い残して絶命。彼のおかげでようやく黒幕を断定できた左門さま=左平次は河内屋へ乗り込むが、墓暴きまでして疑っていた親子に捕らえられ、気分が良くなりなんでも自白してしまうという怪しげな薬をかがされピンチ到来。だがそこはダテに地獄を見ていない左門さま、あくまで左平次だとシラを切り通し、証拠の台帳までちゃっかり頂戴して伊勢守宅まで無事に逃げ帰った。 進退窮まった河内屋親子は将軍暗殺という大胆な策に打って出た。菩提寺参拝に来た上さまに毒入り茶を持ってきたのは、仙之助の命令で左門さま=左平次の身辺を探っていたおあき。だがいつしか左門さまと恋に落ちてしまった彼女の心は揺れていた。それを見越して天井から上さまを銃で狙う仙之助。さあどうするどうなる・・・! と、そこへ正装に戻って警備中の左門さまがダッシュしてきて上さまに冑(?)をぶん投げお茶を阻止、天井や地下からの攻撃を難なくかわして(上さまを放り投げたりもして)またもや地獄の舞を繰り広げ、暗殺を防いだ。しかし被弾したおあきは、左門さまの腕の中で静かに息を引き取るのだった・・・。 *潜入捜査、というより本来の自分を殺してまで左平次になりきった、気合MAXの左門さま。腰を落とした重厚な殺陣に加え、おあきさんとの絡みや麻薬でぼーっとなっているときの色っぽい表情などが見どころである。モチ肌露出度も高い。 *でもやはり左門さまは「大岡越前」のときのクールで落ち着いた風情が好きなんだよなあ。
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| TVドラマ(時代劇)::地獄の左門 十手無頼帖 | 12:11 AM | comments (x) | trackback (x) | |