2007,09,18, Tuesday
『剣豪相馬武勇伝 檜山大騒動』(1956年・S31)
国境の桧山を巡って争う南部藩と津軽藩。あるとき、ココ俺らのもんな、と勝手に看板を立てていた津軽藩に文句を言いに行った南部藩家老が殺された(実はこのとき、家老の背後に天っちゃんの姿が見えるのだが、台詞もなくオタオタしてるだけですぐにフェイドアウト。だがありがたいことに出番はこれだけではない)。 ふたつの藩のいがみ合いのニュースは江戸にも届く。「何、父上が殺された!」と驚いたのは家老の嫡男・秀之助(どっちが父上か分からない五十路の嵐寛寿郎)。老中にうまくとりいって優位に立つ津軽藩に一矢報いて父の敵を討たんと、秀之助は「相馬大作」と名前を変えて津軽藩に馬番として潜入、藩主・土佐守に桧山返還を迫る。だが煮え切らぬ態度を取った彼をばっさり刺殺、それだけに飽き足らず、次の藩主に選ばれた越中守(バカ殿演技もうまい沼田曜一)をも執拗につけ狙うのだった。 津軽藩も黙ってはいない(むしろこっちが被害者のような雰囲気)。忍び(細川俊夫)を使ったりして大作と助手の関(小笠原竜三郎)を追いつめ、関くんは負傷。それを知った恋人・千代さん(日比野恵子)はひとりで恋人の元へ向かった。しかし途中で雲助たちに襲われ大ピンチ。あわや…という場面で突如現れた股旅姿の男、道中合羽を颯爽とひるがえして雲助を蹴散らした! この非常においしい役どころの股旅男・弥太郎(天知茂)は、ちょうど千代さんが頼ろうとしていた伊達の親分の下っ端だったというのも都合の良い話だが、これで千代さんは無事に関くんと再会を果たすことができた。 温泉で傷を癒すため、関くんと千代さんは大作センセイと分かれて出発。ひとりでスタスタ歩いていた大作センセイを、津軽藩の刺客が取り囲む。と、そこへ馬で駆けてくる(…というシーンはなかったが、馬から降りたっぽい)瀕死の弥太郎。関くんたちも襲われているんです、と虫の息で伝えて大作センセイの腕の中でこと切れてしまった。(そのあとまたまた大作センセイ大暴れで大団円) 子供の時からの憧れ・アラカンさんと初の共演。「その日は興奮して寝られなかった」そうなので、しっかりせい弥太郎!と励まされながらパッタリ、という最期が嬉しくてたまらなかったに違いない。 *千代さんを救うシーンも嬉しい役どころだったと思うが、「お嬢さん、どちらまで」と笠を取りながら尋ねる口調がどことなく胡散臭げで、もしやコイツ、今度は自分が襲うのか?と疑ってしまった。ありがちだし。 *スタントなしで水中アクションもこなしたアラカンさん(泳ぎが達者)、さすがである。ちなみに水面にぶすぶす刺さっていたのは実弾らしい(「鞍馬天狗のおじさんは」より)
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2007,09,14, Friday
「夜伽女の怨みぶし」(1981年・S56・4月21日OA)
隠密わんこ・火山が運んできた兼子様(尾上松禄)からの密書には、達筆でひとこと「日光例幣使」。日光東照宮へ金幣を奉納する京都の勅使のことだが、今度の勅使・綾小路公友(白塗り・マロ眉の中尾彬)は田沼と懇意なのを良いことに、あちこちの宿場で取りたい放題ヤリたい放題の愚行を繰り返しているらしい。 新さん(天知茂)ら闇狩人メンバーは様子を探るうち、村の娘たちを夜伽に差し出せと強制され憤る百姓たちに遭遇した。なんとか彼女らを救ってくれと懇願された新さんだが、無言で放置。後日、娘たちは綾小路らの慰み者にされた挙句に自殺した。もう勘弁ならねぇ、例幣使を殺るぜ!と怒る安斉さん(山城新伍)や渚さん(坂口良子)をよそに、新さんは「俺達の使命は人助けではない。世直しだ」 と慎重を促す。それに今襲えば、警護を担当している愛しの殿様・松平定信公(沖雅也)に迷惑がかかるから、という理由も大きいらしい。 それなら警護の切り替えが行われる地点で、などと悠長な計画を立てている内に、定信公もへったくれもない件の百姓たちは綾小路の駕籠を急襲、新さんたちの目の前で皆殺しにされてしまった。許婚のおミッちゃんを失った利吉どん(本郷直樹)が握りしめていた血染めの娘たちの署名状を手に、新さん(紫頭巾&風林火山の白装束)はようやく綾小路を叩き斬るのだった。 *大義のためには多少の犠牲はやむを得ない、という新さんの徹底した非情の志、これが番組のオリジナリティのひとつだと思うのだが、結局いつも田沼というラスボスは放置したままなのだから、世直しを語るよりまずは「小さなことからコツコツと(←西川きよし風)」じゃないのか!と突っ込んでしまうのも確かだ。今回も「死んでいった者たちの恨み、思い知れ!」とか言ってばさーっとマロ中尾を斬っていたが、彼らを見殺しにした新さんへの恨みも相当詰まっているとみた。 *戦闘時の紫頭巾、初登場。どうも好きじゃなかったらしく(オープニングには毎回登場するが)しばらくしたら消滅の憂き目に。 *お色気路線も初登場(山城さんがウハウハ)。美女シリーズの井上梅次監督、さすがの手腕である。
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2007,09,13, Thursday
#67「兇悪の故郷(ふるさと)」(1975年・S50・1月9日OA)
ハドソン財閥夫人・和子(赤座美代子)が突然帰国した。病弱な父親(野々村潔)を見舞うという名目だが、バーにいた彼女をハドソン氏に引き合わせてから勢いづいたという東日通商のガードは必要以上に強固だ。そんな中、かつての恋人・寺崎(宗近晴見)が和子の前に出現。しかし東日通商の連中は寺崎に手切れ金を持ちかけ、断わられると暴力を振い出した。そこを助けたのが、訳あって帰国時から和子をマークしていて寺崎の後をつけてきた会田(肩章付きトレンチの襟を立てた天知茂)。 何かあったら電話をくれと名刺らしきものを渡して寺崎のアパートを出た会田だが、その夜、寺崎は電話する間もなく何者かに撲殺されてしまった。「ははーん、先を越されたね」捜査一課の橘警部(渡辺文雄)の言葉がチクチク刺さる上に、アパートを慌てて去る姿が目撃されたとして和子までも先に橘に連行されてしまい、後手に回りっぱなしの会田は少々おカンムリ。 会田が追っているのは、5年前に起きた捜査員殺害事件。鍵を握るとされながら渡米してしまった和子の証言をどうしても取りたかったのだ。橘警部の取り調べに割り込み、ペアで攻めた結果、和子は寺崎殺しのほうを自供。だがそれは偽りだと見抜いた会田は、父親に事の次第を話してわざと“自白”させ、彼女の動揺を誘う作戦に出た。ところが橘はさっさと父親を釈放、和子に喋られては困る東日通商一味(←こいつらが黒幕)は父親を人質にとり彼女に早期出国を迫る。橘警部の真意は? 果たして会田は彼女の証言を取れるのか…? 反目しあいながらも悪を憎む気持ちは共通項の会田と橘警部。互いの奮闘を認めつつ、外見上はあくまでドライな大人の関係を築いているふたりが実にいい味を醸し出していた(昭和ブルースは4番) *東日通商の連中とのカーチェイスの末、やおら車を降り、ハコ乗りで両サイドからパンパン撃ってくる相手に颯爽と銃を構えて対峙する会田。当然のように全員がやられて車は身体スレスレの位置で停止、というベタすぎる展開に笑う。 *会田が送った、和子さんの父親への見舞いの花束は当然バラ。
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2007,09,12, Wednesday
「春風に泣いた血汐花」(1981年・S56・4月14日OA)
#1〜#3を見逃していた前回放映時、闇狩人メンバーがどういう絆でまとまっているのかが分からずもどかしい思いをしたのだが、どうも最初からうやむやではないのかという疑問が生じた。 隠密わんこ・火山が運んできた兼子様(尾上松禄)からの今回の指令は、市中を自分の足で見て回りたいという松平定信公(沖雅也)の警護。田沼の悪政を正すってんで仲間になったんだ、俺ァ定信なんざ知らねえぜ、と取り合わない安斉さん(山城新伍)と、私だって定信公なんか知らない、でも新さん(鳥居庄次郎あらため鳥飼新次郎:天知茂)のことは信じてるから協力するわ、と言う渚さん(坂口良子)&哲三(三浦浩一)が早速不穏な雰囲気。兼子様の言う打倒・田沼はすべて定信公のためであり、殿さま命の新さんも無論それに追随しているのだが、どうやら新さん、メンバーにはそこのところをはっきり説明していないらしい。ただ単に新さん自身がイイやつだからいっちょ一肌脱いでやるか、なボランティア仲間っぽいのだ闇狩人は(しかも「奥方になる人は自害しちゃって、お家は取り潰され、旦那(=新さん)には帰るところがねぇんですよ!(by 哲三)」と思いっきり同情されているリーダーってどうなんだろう)。 それはさておき、今回は最終話(#26)で重要な役割を果たすことになるおしのさん(松坂慶子)が登場。賄賂を嫌う心正しき米問屋の父は同業者に疎まれ、濡れ衣を着せられてスピード処刑。跡取りの弟・清太郎(佐藤仁哉)はしっかり者の姉に気後れしてか放蕩三昧、そこをつけ込まれてピンチに陥っている。 たまたま知り合った新さんとたいそう良い仲になっていたおしのさんはある日「刀の使い方を教えて下さい」と決死の表情で彼に頼み込む。身体を張って刀を教えた新さんだが、後日おしのさんがエイヤーと突きかかった相手はなんと定信公だった。「殿だけは斬らせるわけにはいかん。どうしてもというのなら、あなたを斬る…!」と新さん大慌てで愛しの殿をカバー。捕まった弟の命と引き換えに脅迫されていたおしのさんは、私いったいどうしたらいいんですかあと泣き崩れた(もっともだ)。 米問屋連中と勘定奉行が田沼ジュニア(原田大二郎)の意向によって米価釣り上げを画策、邪魔な定信とも懇意だったおしのさんの父を罠に嵌めたことが分かり(もっとも田沼ジュニアとの繋がりが見えないうちから「おのれ田沼め…!」と眉間を険しくしていた人が約1名いたが)、おしのさんが好みの顔だという理由だけで「俺も乗るぜ新の字」と安斉さんが加わって闇狩は実行された。 闇狩人の正体を知ったものは死なねばならない――メンバーはなあなあの関係なのにどこからそんな厳しい掟が飛び出してくるのか不明だが、図らずもメンバー全員と定信公の関係を知ってしまったおしのさんを成敗しようとする新さん、覚悟はできていますと眼を閉じた彼女に刀を振り上げる。 …血しぶきの代わりにハラハラと舞い落ちたのは、桜の花びら。「あなたはもう死人(しびと)だ」 粋なセリフと共におしのさんは救われた。いつか貴方がたのお仲間に…と言う彼女に、新さんは優しく頷くのだった。 *決め台詞「今の世の中真っ暗闇…その闇の世に刺す一条の光(キラン♪)…闇を、斬る!」初登場。どうしても「江戸の牙」の強烈なのと比べてしまうので地味さは否めない。 *「妻は死にました…私もその時死んだんです」そう言いながら嬉しそうにおしのさんに付き添って甘酒御馳走になってる新さん。そうですか死人だから何でもアリですか。
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2007,09,11, Tuesday
「桜が呼んだ死人(しびと)たち」(1981年・S56・4月7日OA)
白河藩主・松平定信公(沖雅也)の乳兄弟ながら、あくまで影の存在としてひっそりとわんこ(=甲斐犬)のお守に精を出している鳥居庄次郎(まだまっとうなサムライ姿の天知茂)。きょうも犬笛をぴろぴろ吹いてわんこの火山と戯れている庄次郎さんだが、私もあなたの犬になりたいワとじゃれ寄ってくる可愛いフィアンセ・千草さん(范文雀)がいたりなんかして結構幸せ。そんな様子を温かく見守る、千草さんのパパで白河藩公用人の兼子八郎左衛門様(尾上松禄)も嬉しそうだ。 時は田沼意次(三国連太郎)親子の全盛時代。清廉潔癖で上様の覚えもめでたい定信公が鼻についてきた田沼ジュニア・意知(原田大二郎)は、ダディのような老獪な余裕に欠けるため、さっさと定信公を亡きものにしようと画策。それを受けた大目付の牧野(早川純一)は、口入屋の坪辰(稲葉義男)に定信暗殺を命じた。 一方、編み笠姿で町をぶらついていた庄次郎さんは、南町奉行所の玄関でひとりの同心が身ぐるみ剥がれ髷を切られた挙句に鞭打たれている場面に遭遇、おまけに逆恨み連中に付けられているのを見てとり助力を申し出るのだが、彼・荒谷龍之介(後に安斉と改名:山城新伍)は余計なお世話だとつれない。しかし危ないところを救った縁で仲間意識が芽生えることに。 坪辰の息がかかった刺客が次々に定信公の周囲に現れては失敗。ある晩忍び込んできて風林(←定信公のお気に入りわんこで、火山の親)や火山に阻まれ庄次郎さんに捕えられた女・渚(坂口良子)は、武田忍びの末裔でありながら今は斜陽の身で坪辰に使われていた。お嬢さんを助けてほしい、と捨て身で躍り出た同じく忍びの哲三(三浦浩一)にほだされた庄次郎さんは彼女の縄を解き、坪辰殺しを請け負う。 安斉さんと合流し坪辰へ夜討をかける庄次郎さん一行。定信公暗殺の依頼人・牧野の姿を見て驚く庄次郎さんだが、鬼と化して牧野もろともぶったぎった。しかし追及の手が白河藩に及ぶことを危惧した兼子様は、乱心のうえ切腹したことに見せかけ、別人として裏街道を歩んでくれと庄次郎さんに懇願する。鳥居家は断絶、野垂れ死にだけがお前の道だと言われても心得たとばかりにニヤリと不敵に笑って承知する庄次郎さんだが、ふたりの会話を隣で聞いていた千草さんは何を先走ったのか「先に死人(しびと)になります…」と自刃。兼子様の介添えで虫の息の彼女と夫婦になった庄次郎さんは、亡骸に取りすがって涙にくれるのだった…。 *前回放映時は4話目から見たので、謎だった人間関係がこれで一挙に判明して何よりだった。が、打倒・田沼の動機が薄かった(攻撃は最大の防御、ってことでつまりは先にやっちまいますぜなノリみたいだし)のと、メンバー同士、特に庄次郎さんと安斉さんの行き当たりばったりな仲間関係は意外。 *さらに意外といえばラストの千草さん。最愛の人(=庄次郎さん)が死人にされちゃって結ばれないショックはあるかもしれないが、ほんとに死ぬわけじゃないんだから、何も自害するこたあないだろうに。いくらあの世で待ってても彼はだなあ…!(最終回を知っているだけにツッコミたくもなる)。 *偽名・鳥飼新次郎は兼子様の命名。安直なネーミングにも眉根のクレバスをぴくりとも動かさないシリアスな庄次郎さんだった。 *「今の世の中真っ暗闇よぉ」の決め台詞はまだ。「何者だ貴様!」と言われて「鬼だよ」と名乗っていた(他にもなんとなく江戸の牙チックなことを言っていたような)
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2007,09,11, Tuesday
『女賭博師 花の切り札』(1969年・S44)
さすらいの女賭博師・大滝銀子(江波杏子)は、旧知の三田村組の代理としてシマと代紋を賭けた一戦で無残に敗退。なにしろ相手方の兼松(成田三樹夫)が立てたのは、クールで非情な凄腕賭博師・素走りの浅造(天知茂)だったのだから仕方がない。 師匠兼マネージャーの政吉(船越英二)と共に修行の旅に出た銀子はある晩、賭場荒らしに遭遇した。なんと彼らは三田村組の子分衆。例の一件で親分は自殺、その三回忌にのみ開催を許される「供養盆」の資金すらままならない状況に陥っていると聞かされた銀子は責任を感じて意気消沈。とうとう捕えられ殺されかけた彼らだが、その賭場の胴師だった浅造の配慮で、銀子が彼らの命と利き腕を賭けて再び浅造と手本引き勝負をすることに。結果は銀子が勝利し、子分衆の命は助かった。彼女は勝ちを譲ってくれた浅造に心の中で感謝する。 供養盆の資金捻出のため、銀子は日夜大奮闘。豪快な勝ちっぷりに、イカサマも辞さないと公言する夜泣きの半次(津川雅彦)に絡まれ勝負を挑まれたりもするが、居合わせた浅造に窮地を救われる。だがようやく資金の目処がついた頃、なんと兼松がイケズなことに供養盆当日に自分ちで高額を賭ける「金張り盆」をひらくという知らせが舞い込んだ。談判に向かった銀子は半次得意のイカサマに敗れ、おまけに不慮の事故で右耳の聴力を失ってしまう。 一方、金張り盆の胴師は浅造に決まっていたものの、彼の昔気質な潔癖さに嫌気がさしてきた兼松は、半次を後釜に据えてがっぽり儲けたいと考え、浅造にやんわりと病気にならねえかと提案。先代と生死を共にし、戦場で彼を看取って以来息子(=ミッキー)の支えになってきたつもりの浅造は、浅薄なボンにやりきれなさを感じながらもこれを固辞。同じころ、苦境の銀子を見かねたのか見切りをつけたのか、政吉(通り名は「早見え」)が訪ねてきたのを良いことに、兼松は浅造襲撃を指示。政吉は三田村残党を従えて浅造を襲い利き腕を刺すのだが、直後に兼松の子分たちが現れ返り討ちに遭って絶命した。 政吉を失った銀子は浅造を見舞い、彼から半次の“いかさま返し”のからくりを教わる。そして特訓を重ねること数日、半次が胴師を務める金張り盆に出向いた銀子は、見事彼のイカサマを打ち破った。半次はその場で斬殺され、責任者の兼松もまた親分衆からドスを手渡されて一巻の終わり。後日、晴れて三田村組の供養盆が行われた。後見人の浅造がクールに控える横で、銀子は胴師として盆を取り仕切るのだった。 *セクシーな痩身からバージョン・チェンジしかけている微妙な時期とはいえ(なんだかシーンごとに雰囲気が違ったりもして)、オブザーバー的ないいヒトを演じている天っちゃんに見惚れる作品。東映だったら死んでるキャラだが、大映なので助かったというべきか。…ところで通り名の「素走り」、時代劇ではたまに聞くが、どういう意味なのだろう? *ひたすらクールでかっこいい浅造さんだが、病院のシーンで「あんた、つくづくいかさまに弱いひとだねえ」と銀子に言ったときに眉が思いっきりハの字になったのがおかしかった。 *兼松の子分のひとりで政吉つぁんを刺してたのが、タロウ前の篠田三郎さん(こんな役もやってたのか)
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2007,09,05, Wednesday
『女吸血鬼』(1959年・S34)
「女」が付いてますが、ジェントルマンな吸血鬼が天っちゃんです。「彼はどんなことでも照れずにやる」と後に評されるに至ったのはこういう経験があったからでしょう。 [2007.9.1:新文芸坐にて鑑賞] キリシタン迫害の時代、天草四郎の血を引く勝姫(三原葉子)の重臣・竹中信敬(天知茂)は、姫が城の陥落時に自害した際、愛しさ余って彼女の血を啜ってしまったがために、不老不死の身体を得る。以来彼は、家来のフリークスたちと共に、勝姫の末裔の女性をかっさらっては夜のお供(絵のモデル含む)にし、愛想を尽かす(あるいは尽かされる)とろう人形にして地底城に陳列する、などといったことを繰り返しながら未来永劫の時を生きていた。 ただ、生前から勝姫が嫌っていた月の光、それだけが彼のウィーク・ポイント。月の光を浴びた途端、彼は呪わしい吸血鬼姿に変貌し、手当たり次第に女性に襲いかかる(血を吸う、というよりは噛み付く)、ちょっとばかり美意識に欠けた怪人になってしまうのだ。 20年ほど可愛がっていた勝姫そっくりの末裔・美和子(三原二役)が城を逃げ出したことから、竹中の平穏な生活は急展開を迎える。折しも彼女をモデルにした油絵が特選となりちょこっと得意げなところへ、絵の前で偶然「まあお母様にそっくり」と呟く娘・伊都子(池内淳子)に出会えてさらに気を良くするのだが、おまぬけな手下のせいで月の光を浴びまくり無駄に女性を襲いまくりの失態を重ねる羽目に。 ようやく美和子を奪還、島原の城へ戻るも、20年モノ(=美和子)より若くピチピチな伊都子にちょっぴり触手が動いたせいで家来たちに「親子丼はいけませんぜ〜」とたしなめられムキになっているところを、伊都子のおせっかいなフィアンセ・大木民夫(和田桂之助)らの急襲を受ける。マント&乙女チックなブラウスを翻しながら、ムチやら燭台やらレイピアやらで颯爽と応戦する竹中だったが、ポッと出のコソ泥が城の天井をぶちぬいたおかげで煌々たる月光が身体に突き刺さり、コント紙一重な異様な姿に変化。もはやこれまでと、ちゃっかりろう人形にしておいた美和子に別れを告げた彼は、最後のひと暴れの後で自ら硫酸の池へと身を投じたのだった。 *人間サイドのお気楽ぶり(なかでも和田さんの突き抜けたポジティブさは特筆事項)もなんのその、日本初の吸血鬼役をバタ臭い風貌で熱演。小道具の使い方も堂に入ったもので、ここまでやり切ったらさぞ満足だろうなと、見ていてなにやら痛快な気持ちにもなれる。願わくば普通に血を吸ってほしかったけれど(勝姫以外、だれの血も吸ってないんじゃないのか?) *新文芸坐のオールナイトで見た際、冒頭の美和子さん受難シーンを「あ、轢いちゃいました」で軽く済ませるタクシー運転手に笑いが漏れていた。同時上映だった「地獄」の同じようなシチュエーションでの四郎(天っちゃん)の苦悩ぶりとのあまりのギャップゆえかも。
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2007,09,05, Wednesday
#66「兇悪のロマン」(1975年・S50・1月2日OA)
心中とおぼしき死体が林中で発見された。昼食についてきて、心中はロマンなのだよ会田クン、と熱く語るボーイッシュな女性記者に、心中死体がいかにえぐいかを血が滴るようなビフテキやらエスカルゴやらを食べながらじわじわと話してきかせる会田(天知茂)。食べ方はお上品だが、正月OAというのにちょっとダーティーだ。 ハンドバッグから割り出された女の身元は、大富豪・道家仙太郎(曾我廼家明蝶)の若き妻・雪絵(浜田ゆう子)だった。どうやら男の方は彼女の浮気相手らしい。ただ、遺体のネックレスが、男の馴染みで行方不明になっているホステスのものではないかとの疑惑が浮上。特捜部は道家氏をマークするため、江沢啓子刑事(江波杏子)を口述書記として潜入させた。 自叙伝に対し歯に衣着せぬ感想を述べる啓子を気に入ったらしい道家氏は、事件の真相めいたものをぽつぽつと語り始め、なんと彼女にプロポーズ。一方、道家氏の行くところ頻繁に後を追いかける無言電話。電話の主は誰なのか? そして“恋人”として啓子にコンタクトを図る会田の背後を銃が狙う…! …真相は控えるが(というより分かったような分からなかったような微妙な感じだった)、老いに抗う富豪の哀しさがひしひしと伝わってくる、ちょっぴり寂しさ漂う男女のロマンが展開されていた。(昭和ブルースは4番) *美女シリーズでもたまに使われていた迎賓館前にて、豪勢な衣装の啓子さん(道家氏の破格のお給料で買ったのか?)とすれ違う会田。しばらくしてお互い「あっ」と気付いて後戻りするのがラストシーン。あのあとお茶でも飲んだのだろうか。 *椅子取りゲーム(?)で後れをとる矢部警視(山村聡)、女性のスリーサイズを記憶から割り出す大門刑事(高城丈二)など、特捜部内のライトな雰囲気が面白かった。
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2007,09,04, Tuesday
『憲兵と幽霊』(1958年・S35)
鹿島茂著「甦る昭和脇役名画館」(横目な色悪/天知茂)などで絶賛されている作品を、新文芸坐の大スクリーンでようやく鑑賞。かなり“雨降り”がひどく音や映像がばしばし飛ぶのが残念だったが、キーンと耳障りな金属音BGMが不快感を煽り、雰囲気は十二分に掴めた。 ゲットしそこねた女・明子(久保菜穂子)の祝言を、勝負はこれからとばかりに横目で舐めるように見つめる波島憲兵(少尉から中尉へ:天知茂)。彼には中国側のスパイという裏の顔がある。気の毒な旦那・田沢伍長(中山昭二)に自分の濡れ衣を着せ、妻や母ともども激しい拷問にかけた揚句に銃殺刑に処す冷酷非情ぶりを見せた波島は、邪魔な田沢の母を自殺へ追いやり、とうとう明子の体を奪って目的を達成する。 しかし、顔に似合わずえげつない呪いの言葉を吐いて死んだ田沢に瓜二つの弟(中山二役)がなけなしの良心をチクチクと刺激する上、濡れ衣の共犯である部下が造反、思わず刺してしまい行李に突っ込んで海へ投げ込む羽目になる頃から、波島の悪運は尽きようとしていた…。 実はこの映画の不思議な面白さは、『悪いヤツが幽霊におびえて自滅する』という典型的お化け話と並行して、ピカレスク・ロマンというべきもうひとつの物語が展開しているところにある。三原葉子ねえさん演じる紅蘭との儚いラブ・ストーリーがそれだ。 祝言の日、たまたま酔漢から助けた紅蘭は、自分が通じる中国側の取引相手・張覚仁(芝田新)の愛人。父が自殺し云々という不幸な波島の過去を知った上で真摯な同情のまなざしを向けてくる彼女に、明子へのサディスティックな態度とはうって変わった深い愛情を返す波島。そんな二人に張は当然ジェラシーに燃え、こっちでも波島は万事休すと相成る…のだが、一見作品の主題を散漫にしているようなこのサイド・ストーリーがあるが故に、墓地での進退窮まった波島の狂乱ぶりに重みが増しているように思うのだ。 蛇のような粘着質憲兵が似合いすぎていて、紅蘭との絡みではまるで別人にみえるという難点もあれど、単純ではない悪人をいつもながら真剣そのもので演じ切っている天っちゃんに拍手。
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2007,09,02, Sunday
『地獄』(1960年・S35)
教授の娘・ユキコ(三ツ矢歌子)と結婚間近の大学生・清水四郎(前髪が大学生?:天知茂)。勝ち組の割に顔色が冴えないのは、怪友・田村(沼田曜一)と起こした偶然の事故でチンピラ・恭一(泉田洋志)を轢き殺してしまったからだ。良心の呵責に耐えきれずユキコに相談、自首しようとする四郎だが、乗ったタクシーが衝突してユキコが死亡。自暴自棄となって寝た女・洋子(小野彰子)は恭一の情婦で、復讐に燃える恭一の母(津路清子)と彼女に命を狙われる羽目に。 ハハキトクの電報で故郷に帰ってみると、胡散臭い養老院を経営している父(林寛)は病の床に伏せる母の隣で二号(山下明子)とよろしくやっている。絵描きの父と暮らす、ユキコにそっくりなサチコ(三ツ矢さん二役)という娘の存在だけが清涼剤だが、娘の死で狂った妻を抱えた教授、田村、そして洋子たちが乗り込んできて芋蔓式に不幸が四郎に覆いかぶさり、運命が狂い始める……。 ……このあと登場人物すべてがばったばったと死んでゆき、めくるめく地獄ツアーへと話が展開していくさまは圧巻かつ強引すぎて笑いがこみあげてくるほど。とりあえずどこの世界にいてもビクつきながら「俺が悪かった、許してくれ〜!」と謝りまくっている四郎は、死んでなお「殺してやる!」と首を絞められる上に「四郎、俺と一緒に来い!」だの「四郎さん、助けてー」「もう離さないわ〜」だのと男女関係なく迫られる人気モノだった。 *地獄で長丁場のキスシーンをやってのけるツワモノでもある<四郎 *この映画のメフィストフェレス・田村を演じた沼田さんの恐るべき怪演はトラウマ必須。
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