2007,10,21, Sunday
#78「兇悪の友情」(1975年・S50・3月27日OA)
矢部部長(山村聡)の仲人で見合い結婚した大門刑事(名は「錠二」:高城丈二)。特捜の面々も集う披露宴に、怪しい暗号電報が届けられた。結婚を呪うその文面に、会田(ぱりっと礼服:天知茂)は式場の隅で大門を恨めしげに見つめていた女(珠めぐみ)がいたのを思い出した。 博多-神戸-横浜の新婚旅行に出かけた大門夫妻の行く先々で、彼らの支払いを先に済ませて去る女(同一人物)がつきまとう。披露宴でもさんざん女性関係について聞かされた新妻・悠子(ひしみゆり子)は当然おもしろくなく(しかもハネムーンの夜だというのに野暮な同僚=会田から電話がかかってくるし)「アタシちっとも幸せな気がしない!」と大門をなじるのだが、そこは特捜きってのレディキラー(らしい)、お前とはこれから愛が始まるんだ、それじゃいけないのかと彼は悪びれる様子もない。 翌朝、悠子に例の女・眉子が近付いてきた。恋仲だった男と行くはずだったというハネムーンルートを聞いて驚く悠子。自分と全く同じ――眉子の相手が大門その人という意味でも、全く同じだったのだ。ヤクザ幹部の情婦だった眉子は、接触を図ってきた大門に本気で惚れて幹部を裏切ったのだが、彼にとってはしょせん囮捜査の一環に過ぎず、すぐに眉子から離れていってしまったのである。 にっくき大門をおびき寄せた眉子は、挙式当日に処刑された幹部の恨みを晴らさんとする子分たちに彼を預けた。拷問を受け「死にたくなければ俺たちの犬になれ!」と迫られた大門だが激しく抵抗、その結果、朝霧の中で無残な磔死体となって発見される憂き目に。 間にあってやれなかった悔恨の念を兇悪な死に顔と共に心に深く刻みつけた会田は執拗に犯人探しを進める。そして大門の墓に参る眉子に遭遇、殺すつもりじゃなかったと嘆く彼女に話を聞こうとしたところを銃弾に襲われた。追い詰めた初老の男は「見逃してくれ、会田くん」と懇願。大門を拷問したメンバーのひとり、彼の名を知るこの男は、会田と同じ元4課(=マル暴担当)で退職した浜崎(浜村純)だった。 腕利きのデカでありながら退職後にヤクザの犬に成り下がった浜崎は、自らの勘の衰えを悟り、大門を後釜に据えようと画策したのだ。真相を知った会田は浜崎にペンと紙、そして拳銃をばんと放り投げ、遺書を書け、さもなくば俺と撃ち合って死ねと銃を突き付ける。その剣幕にかつてのデカ魂が蘇った浜崎は、アジトの場所を“遺書”としてしたためる。 アジトへのガサ入れ当日。わざと慌てたそぶりで銃をぶっぱなし、次々と銃刀器の在り処を暴露していった浜崎はボスの貝山(竜崎一郎)の銃弾に倒れ、会田の腕の中で微笑みながらこと切れた。血が上った会田は逃げる貝山をビル屋上まで追い詰めるのだが、そこで貝山は心臓発作であっけなく昇天。 怒りの矛先を失った会田はだらんと垂れさがる腕に渾身の力で手錠を掛け、空に向かって弾を放つしかなかった――(昭和ブルースは1番) *大門と浜崎、ふたりへの友情が炸裂する回。特に後半の会田の火傷しそうな言動から目が離せなかった。あと一歩というところで相手が頓死、というのは第1シリーズ最終話もそうだったが(親友・タロさんの死に顔が兇悪だったという点も同じか)、「人殺しになってもいいから、生きている内に弾をぶちこみたかった…!」という前回にはない明確な独白が第3シリーズの最終話へと繋がっていくのかもしれない。 *大門さんといえば今まで「おはら餅(#13「兇悪の噴煙」)」「妄想スリーサイズ(#14「兇悪のロマン」)」くらいしか思い浮かばなかったが、あのトラウマになりそうな死に顔だけは忘れないと思う。 *浜崎さんに熱く詰め寄る会田。いろいろもっともなセリフを言ってくれていたのだが、「デカは贅沢をしちゃいけねえんだ!」だけには「アンタに言われてもなあ」と突っ込んでしまった。
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2007,10,20, Saturday
#77「兇悪の霧」(1975年・S50・3月20日OA)
右田(左とん平)・江沢(江波杏子)両刑事が夫婦に扮して(右田刑事、ノリノリ)密かにマークするのは隣家に住む1児の母・宮原俊子(榊ひろみ)。彼女の夫が、政界を牛耳る黒幕参謀・大上則之(殿山泰司)の3千万を持ち逃げして失踪したというタレこみがあったからだ。 そんな俊子にそれとなく近づくもう一人の人物は、大学の先輩・内山明子(クレジットでは内“田”:有沢正子)。会田(今回は黒幕専任:天知茂)の調べで彼女は大上の娘だと判明。大上がプッシュする政治家のライバルと目される大学教授・森京介(クレジットでは“亮”介:久松=スポック=保夫)を出馬させまいという陰謀の匂いを背後に感じ取った会田は、黒い霧を一掃するためにも出馬してほしいと森に談判する。 いっぽう俊子は明子から、いなくなった旦那の代わりに指導教官の森先生に出馬を止めるよう説得しなさい、でないとあのことバラしちゃうから!と脅迫を受けていた。俊子は助手時代、森と不倫関係にあったのだ(しかも息子の本当の父親は森先生)。仕方なく森を呼び出した俊子だが、何も言えずに戻ってきてしまう。そして明子に夫の3千万を返して関わりを避けようとするのだが、俊子と同じく森に恋心を抱いていた(スポック先生、モテモテ)明子のジェラシーの炎はますます燃え上がり、それなら怪文書をバラまくわよ!と息巻き始めた。実は俊子の夫に真相を伝えて金を渡し、タレ込み情報を特捜に流した張本人は明子だった。 ここで右田・江沢コンビが登場、明子に手錠を掛けた。しかしその隙になぜか俊子が逃走、沼で自殺を図ろうとしたところを江沢刑事に止められた。過去をなじる夫をはずみで殺してしまった揚句、何もかもが表沙汰になってしまったことに絶望する俊子に、愛することは苦しむことだ、と江沢刑事はかつての彼女の言葉を静かに返すのだった。 息子を実母に預けて車に乗り込んだ俊子。母を追いかけ叫ぶ息子を、事の顛末を会田から聞き駆け付けた森はしっかりと抱きしめた―(昭和ブルースは2番) *タイトルからすると、殿山さん扮する大上VS会田がメインかと思いきや、過去のアヤマチに苦しむ主婦の俊子VS嫉妬に燃える明子のストーリーが強烈で、会田の影が薄い回。おまけに森教授への言葉が(真相が分かったせいもあるだろうが)最初と最後で正反対なので違和感も残る。(「出馬してくれ!」と言われてその気になっていたら「こんなことになってるのにそれでも出馬するんかお前!」ってな調子で睨まれるセンセイが哀れだ)
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2007,10,13, Saturday
#76「兇悪の献身」(1975年・S50・3月13日OA)
山中湖畔で二重底になっている死体置場が発見された。2時間枠のミステリードラマを十分引っ張れそうなツカミとはいえ、さすがは(?)非ライ、あっという間にタネが明かされた。 数々の会社にインヴェードしながら、師と仰ぐ酒匂(=さかわ)静山(瑳峨善兵)の政治結社へ黒い資金を送り込んでいるヤリ手男・中本徹也(根上淳)が、からくりを知った部下を殺害、たまたま湖行きを目撃していたらしい男も口封じし、ひとつめの死体の上にカモフラージュとして乗っけておいたのだ(オープニング早々バレているのでカモフラージュもなにもあったもんではないのだが)。 被害者を誘い出すなど、ふたつの殺人を間接的に手伝ったのは愛人の華道家・水科あやか(小山明子)。命の恩人である中本に献身的に尽くすあやかは、彼を糾弾しようとする会田(天知茂)ら特捜部の行く手に立ちふさがり、証拠を握らせようとしない。あやかの悲惨な境遇を知り、男にすがるしか生きるすべがなかった彼女に同情を禁じ得ない右田刑事(左とん平)は張り込みを続けながらも複雑な心境だ。 あやかの線から足がつきそうだと踏んだ中本は、彼女に“すべて自分がやった”と書いて自殺するようほのめかす。体のいい厄介払いだが、それでも中本命のあやかは遺書をしたためて薬を飲む。 翌朝、何食わぬ顔で家族と出かけようとしていた中本に、会田は逮捕状をつきつけた。チンピラを雇って殺しに使ったスコップの指紋を改ざんしようとしたことが直接の証拠となったのだが、「あのひと(=中本)はやっていません、そんなひとじゃありません!」というあやかの物狂おしいまでの献身愛が詰まった遺書は、結果として彼の犯罪を激しく肯定していたのだった。 右田の素早い判断で命を取り留めたあやか。格子のある病室でうつろな視線をさまよわせる彼女は今、何を思うのか――(昭和ブルースは1番) *小山明子さん(旧姓は天っちゃんと同じ「臼井」さんだそうで)といえばちょっとプライドの高そうなチークダンスの女医さんのイメージが強いので(#54「兇悪の砂丘」)、今回のように極貧で育ちひたすら男に尽くしてます、ってな役柄は違和感があった。 そういえば根上淳さんだって大田黒(#113「男」)だしなあ。←どちらも放映順序が逆とはいえ先に見てしまったので刷り込まれてしまっている *ラストは会田が政界の黒幕・酒匂静山(このシリーズにおいて、鯉に餌をやっていたり畑を耕していたりするようなネイチャーおやじはたいてい黒幕と相場が決まっている)にがちゃりと手錠をかけておわり。
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2007,10,08, Monday
#75「兇悪の夜の蝶」(1975年・S50・3月6日OA)
産婦人科医が相次いで殺される事件が発生。犯人の目星はすぐについた。階段から落ちた身重の愛妻をたらい回しにした揚句に死に至らしめた医者たちを、夫が血祭りにあげていたのだ。夫・下川(手塚茂夫)の次のターゲットと目される医者・落合(田中明夫)は、モルヒネの密輸疑惑で会田(天知茂)たち特捜部にマークされていた人物。悪徳医者の匂いがぷんぷんする彼には高級クラブのママ・華子(篠ヒロコ)という愛人がいて、下川はまず彼女に接触を図ってくる。 華子は高利貸しへの利子の返済に追われながら、たったひとりの肉親である義理の弟・徹(大石悟郎)のための援助を惜しまない弟想いの女だった。弟に歳が近い下川の訴えに同情を覚えた彼女は、返済金を出し渋るパトロンの落合を「彼(=下川)にあなたの居場所教えちゃうから」と脅しにかかる。 下川逮捕への協力要請を突っぱねる華子に「ハダカにしてやる」と闘志を燃やした会田は(「…どこで?」と右田刑事ナイス突っ込み)、愛する弟が彼女に貰った金をぜんぶ競馬につぎ込んでいる事実に直面させるが逆効果、華子の態度はより頑なに。そこで、愛人を持つ父を苦々しく思っている落合の娘を抱き込んで、落合自身に下川の居場所を聞き出させる計画に出る。 かくして、娘が誘拐されたと慌てる落合に華子は下川の待つ場所を告げた。そこで落合は待ち構えていた下川のナイフに倒れ、会田は下川だけでなく、瀕死の落合にも手錠をかける。驚く華子に、高利貸しの黒幕は落合だったことを告げる会田。羽をもがれた夜の蝶・華子の虚勢は崩れた。しかしその表情にどこかさばさばしたものを認めた会田は静かにその場を後にする。そして、刺された落合は下川の妻同様、いくつかの病院で門前払いされているうちに死亡。因果応報という言葉をかみ締めてか、会田は車中から夜の闇をじっと見詰めていた――(昭和ブルースは1番) *昔のお父さんに戻すために手助けしてくれ、とか言って落合の娘に協力させたのに結果的に見殺しにしちゃった会田、後から娘に恨まれてるんじゃなかろうか。 *「こうでもしないと君はいつまでも夜の蝶の羽をつけたままだからね」「せめて夜露に濡れて羽を痛めぬよう祈っている」など、華子へのムード満点なセリフが印象的な今回の会田。クラブでブランデーグラスをくるくるしている姿も雰囲気良好。 *退職デカの吉田さん(多々良純)経営の居酒屋「吉田署」が今回で閉店。それなのに矢部さん(山村聡)以外は張り込み多忙中とかで姿を見せず「特捜部みんなの分の杯は俺が飲み干す」と部長ひとりが大奮闘。華子さんの歌を2曲も聞いてる場合じゃないだろう会田!
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2007,10,07, Sunday
#74「兇悪の夫婦」(1975年・S50・2月27日OA)
三河社長夫妻(金田龍之介&弓恵子)のひとり娘・君子が誘拐された。身代金3000万を要求され、夫人の葉子が引き渡し場所へ向かうが犯人は現れず(おもむろに後ろ向きで現れたのは会田だったというオチ付き ←ヒールの高さですぐ分かりますがな)、あんたら警察のせいだ!と三河に責められ追い出された会田(天知茂)と坂井(宮口二郎)、南(望月太郎)の特捜部の面々は形無しだ。 夫妻は子会社が提供するTV番組を中断して犯人に切々と訴えかける。それが功を奏したのか、君子が自力で帰宅。その子会社の製品(石鹸)の売上は急増、新しい化粧品も近日発売される、というウハウハな会社の状況を知った会田は、君子の実の両親である三河夫妻に疑いの目を向ける。 彼の読み通り、会社の業績アップを図るために娘の誘拐を計画、金に困る若い小谷夫婦(長谷川明男&京春上)に実行させたのは三河夫妻だった。失明の危機に瀕した画家の夫・昭治の手術代のため、三河の子会社で働いている妻のマキは社長の言う通りに夫と共謀し君子を拉致。しかしふたりに懐き、家に帰りたがらないそぶりすら見せる少女に心を打たれ、金を貰わずに姿をくらましてしまう。 帰宅後、検査入院させられた君子は、昭治に贈る千羽鶴を折り続けていた。新製品の発表前に小谷夫婦に余計なこと(=自首)をされたくない三河は妻に命じて彼らの居場所を娘から聞き出そうとするが、夫妻が大好きになった君子はかたくなに沈黙を守る。だが夜に病室に来た会田が、昭治の手術に間に合わせようとせっせと鶴を折る姿を見て態度を軟化させ、彼らを罰しないという約束で知り得たことをすべて打ち明けた。 翌日。新製品のお披露目を終え満足気な三河の前に、君子がいなくなったと慌てる葉子が駆け込んできた。そこへ君子を連れた会田が現れ、逮捕令状をかざす。何を証拠に、と開き直りかけた三河夫妻の前に、会田の温情で夫の手術を見届けたマキの姿が。 会田は君子の目の前でマキに手錠を掛けた。「おじちゃんの嘘つき! おばちゃん達を許してくれるって言ったじゃない! 悪いのはパパとママなのよ!」泣きながら会田に打ち掛かり、実の両親に目もくれずマキに抱きつく君子。そんな娘の様子に、三河夫妻は肩を落として罪を認めるのだった。 小谷夫婦が釈放されるまで、君子は“吉田署”に預けられることに。朗らかな表情で栄子(大川栄子)と通学する彼女を会田はそっと笑顔で見送った(昭和ブルースは1番)。 *登場する2組の夫婦の兇悪さが逆転する展開。#16 「兇悪の青い鳥」に続いてまたまた少女に憎まれてしまう会田だが、どんな理由があれ罪は償わねばならないのだということをびしっと体現してみせるあたりがイイ。おまけに今回は落ち着きを取り戻した君子ちゃんに「…おじちゃ〜ん」と切ない目つきで縋られてしまう子供キラーぶりも発揮。 *兇悪夫婦の葉子夫人・弓恵子さんはダンナ様(=宮口二郎さん)に手錠をがちゃりとやられていた(って、もう結婚されていたのだろうか?)
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2007,10,06, Saturday
#73「兇悪の白い花」(1975年・S50・2月20日OA)
「俺は女ってものが信じられないんだ」 テーブルに小さな白い花(クチベニスイセン)が置かれたレストラン。 涙目で縋るカノジョに冷たく言い放って席を立ったのは坂井刑事(宮口二郎)。俺は結婚する気はないから見合いでもなんでも勝手にしろ、とつれないセリフを吐く後輩(=弟子)に苦笑しながら、後ろの席で会田(天知茂)はレアのサーロインをぱくついている。 部長(山村聡)の命令で会田と行動を共にすることになった坂井は、さっきの件があるので会田といるのがちょっと気づまりな雰囲気。今回の任務は、銃を奪って銀行強盗を重ね指名手配中の伊佐山努(吉田次昭)の5年前の恋人・窪川恵子(鮎川いづみ)を24時間監視することなのだが、世の女性全体が信用できない坂井には無駄骨に見えて仕方がない。しかも恵子には結婚間近のフィアンセがいるのだ。だが会田は、恵子が毎夜さびしそうに白い花(クチベニスイセン)に水をやっている姿に、彼女がいまだに努を忘れかねていることを見てとる。 集団就職で苦労を重ねつつ愛を育んできた努と恵子は、恵子の妊娠を機に郷里に帰ろうとした矢先に大規模な学生デモに巻き込まれ、努は誤認逮捕、恵子は流産という不幸に見舞われた。クチベニスイセンは、ふたりの郷里の花でもあるのだ。 「女は、正直なんだよ」 過去など忘れ、今の幸せを享受しているかにみえるそんな女に男がのこのこ会いにくるはずがないと決めつける坂井に、会田は言う。「それなら男は、俺は不正直なのか・・・!」張り込みの最中に件のカノジョと見合相手に出くわし心穏やかでない坂井は、後からわざわざカノジョが届けてくれた手紙とマフラーを捨ててしまう。 しかし努は恵子に接触を図ってきた。会田たちに取り押さえられた努は、恵子に子供の金を渡してやりたかっただけなんだと叫ぶ。彼の気持ちを知り、婚約を解消して努をずっと待ち続けたいと言う恵子を見て、坂井はようやく会田の言葉を理解し、カノジョに会いに行くことを決意。そんな坂井に、会田は取っておいたマフラーを渡してやるのだった(昭和ブルースは1番) *メインストーリーと併せて坂井刑事の心の葛藤が手に取るようにわかる、味わい深い作品。会田はもっぱら酸いも甘いも噛み分けたフェミニストの先輩に徹しているが、「じゃあなんで会田さんは独身なんですかあ!」とか突っ込まれたりしないあたりがさすがの師弟関係だ(そうなのか)。しかしこんな顔も衣装も目立ちまくっているコワモテふたり(会田&坂井)に張り込み・尾行させるなんて、矢部さんどういうつもりなんだか。 *朝のラッシュ時の駅、夕方の市場など、人がわんさかいる場所でのゲリラ撮影が多く、天っちゃんが至近距離にいるのを見て皆の目が見ひらいたり顔が微妙にへにゃっと歪んだりするのが結構可笑しい。
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2007,09,30, Sunday
『風流交番日記』(1955年・S30)
(ラピュタ阿佐ヶ谷にて鑑賞) “風流とは、平和を愛する人の心の中に生ずる一種の「あくび」である”――(「大言海」) 中堅巡査の和久井(小林桂樹)は駅前の小さな交番に勤務する4人の巡査のひとり。女にモテモテの花園(宇津井健)、やる気満々の新卒・谷川(御木本伸介)に比べると、元来の人の良さ(トロさ?)ゆえかいまひとつパッとしない和久井だが、同郷で夜の女として働くマツ改めユリ(阿部寿美子)は、そんな彼にすげなくされても憧れのまなざしを注ぎ続けている。 年長巡査の大坪(志村喬)は若い3人だけでなく、新聞売りの孤児やバタ屋のオヤジ(多々良純)にも分け隔てなく接する温厚な人物。長年連れ添った妻とも良い雰囲気で順風満帆にみえる彼にも悩みはあった。2年前に家を出て以来消息不明の息子・一郎(開襟シャツで腕組みしてる爽やか青年風で仏壇横のフレームに収まっている天知茂)のことが気がかりなのだ。 ある時、留置所勤務を命ぜられた和久井は、無銭飲食で捕まったぶかぶか背広の貧相な青年の財布に、大坪夫妻の写真を見つけた。彼こそが大坪が捜している愛息だと悟った和久井は、初めての留置所で自分の弱さにうちひしがれながら膝を抱えている彼に、とある老巡査(=大坪)の悲哀をさりげなく話してきかせる。 ――まったく『親の心、子知らず』だよなあ。 一郎は彼の言葉に胸を衝かれたように眼を伏せるのだった。 数日後、新聞売りの少年の父親が交番を訪ねてきた。罪を犯して逃亡中だったという彼は、遠巻きに息子の懸命な姿をみて自首を決意したのだという。今一度しっかり見てきてやりなさいと父親を温かく後押ししてやる大坪の後ろ姿を、一郎が物陰からそっと見つめていた。 指名手配中のギャング(のくせに女といちゃいちゃしている、いつもどおりエラそうな丹波哲郎)の捕物劇などあった後、モテ男・花園は上司の娘とゴールインして出世、和久井に手柄を譲って貰った谷川も1人前になり、相変わらず和久井だけが冴えない毎日なのだが(片思いのお嬢さんが結婚したせいで、自分のために身体をはってギャングを止めてくれたユリちゃんのことは今のところおざなりになっている)、一郎から速達手紙が届いたと駆け込んできた大坪の妻や、その手紙を大事そうに読んでいる大坪の姿を見てほんのり嬉しい気分に。北海道の森林で頑張っている、今が一番幸せだという一郎の手紙には父への謝罪と尊敬の言葉が綴られていた…。 *2年も家出中というからもっとグレまくったチンピラ息子なのかと思っていたら、留置所に入ってくるなり捨てられた仔犬のような眼つきでオドオドしている気弱なぼっちゃんだったので驚いた。ただし、薫兄さんの師匠・土門拳さんがこの映画の天っちゃんを見て「あれは有望だ!」と太鼓判を押してくれたというだけあって、表情の移り変わりがナチュラルで素晴らしい。抑えたセリフ回しもいい感じ。 *とはいえ、無銭飲食で捕まるくらいお財布が切迫している青年がホイホイと北海道なんぞへ行けるんだろうか? そう書いて老親を安心させ、実はまだ交番の物陰にいるんじゃないのかと思ってしまったのも事実だ。 *名前は?と言われて口ごもりながら偽名(「大坪一郎」→「大沢三郎」だったかな)を使った一郎クン。生年月日は?と聞かれるとけっこうスラスラと「昭和5年3月4日」なんて言っていた(でも1年サバよんでるな>天っちゃん) *クレジットには名前が無かったようだが、事故ったタクシーに乗っていたいちゃいちゃカップルの女性は奥様(森悠子さん)だったと思う(ほんの一瞬)。
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2007,09,27, Thursday
#72「兇悪の純愛」(1975年・S50・2月13日OA)
女優の茜ひとみ(朝丘雪路)はパトロンの金融商会を訪ねようとした際、思いがけず郷里の先輩、英之(山下洵一郎)に再会した。だが英之と数人の仲間が出てきた金融商会の中は血の海、ひとみはビックリ仰天。 彼らが強盗殺人を犯したことを週刊誌で知ったひとみ。彼女の車が現場の近くにあったことから、車の中や自宅マンションの中まで勝手に入り込んで問い詰めるしつこい刑事(=会田:天知茂)が現れるが、彼女は知らぬ存ぜぬを通す。スキャンダル女優として悪名高いひとみだったが、かつて恋仲だった英之への想いだけは清らかなまま保ち続けていたからだ。 その英之がひとみに接触を図ってきた。 ――故郷の金沢にいる両親にひとめ会ってから自首したい、そのためにどうしても君の車が必要なんだ。 その言葉を信じたい彼女は協力を誓う。しかしひとみは、英之が既に仲間のひとりを射殺し、奪った500万円すべてを持ち逃げしようとしている事実を知らなかった。裏切られた仲間の中根(黒部・ハヤタ・進)たちは金を取り返さんと、ひとみから英之の居場所を聞き出そうとするのだが、英之ラブの彼女は彼らの脅しに屈しないばかりか、自分が500万を出そうと持ちかける。 英之にはさらにOL連続殺人犯という余罪もあった。あんな男を庇う必要はないと(またちゃっかりマンションに潜り込んで)諭す会田にさえ、ひとみは自分の肉体と引き換えに英之を見逃してくれと懇願。実はそのときすでに、一課との協力体制(&会田の冗談みたいなガンさばき)によって英之は逮捕されていたのだが、彼女の一方的ながらもひたむきな純愛を目の当たりにした会田は、黙ってマンションを去る。 翌朝、金を下ろしたひとみに近づいた中根たちを、橘(渡辺文雄)ら一課のメンバーが一網打尽にした。呆然とするひとみに英之逮捕を告げる会田。「尾方(秀之)はあなたの夢の中で生きるような男じゃない」 でも美しい思い出だけは大切に、そう言って去った会田の言葉を胸に、ひとみは英之との思い出の“起き上がり”(金沢名産の可愛いダルマ)をじっと見つめるのだった。(昭和ブルースは1番) *相変わらず肩章付きトレンチをぱりっと着こなしている会田だが、やたらと立体感のある黒のごっついネクタイが気になって仕方がなかった。あれは総絞りなのか、それともフリルなのか? *橘班長さんとのアイコンタクトな関係が相変わらずクールでいい。 *英之役の山下さんは『ごろつき犬』『鉄砲犬』で天っちゃんと共演しているが、どちらも幸薄い極道役の山下さんが先に死んでいるので接点はなさそう。 *女性はお手のもの、な大門刑事(高城丈二)登場。週刊誌の新米記者に扮してひとみに接近するも、一課の連中にバラされておしまい。 *自らの夢をひとみに託す付き人・珠子さん(小桜京子)もいい味を出していた。
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2007,09,23, Sunday
#71「兇悪の十字架」(1975年・S50・2月6日OA)
少年院での刑期を終えた後、保護司・中村(名古屋章)のすすめで教会でオルガンを弾く傍ら印刷所に勤める坂崎圭子(竹下景子)。彼女は毎日、女優の滝川江理子(司美智子)に白紙を送りつけている。作曲家だった父を奪い、母をノイローゼに追い込んだ江里子を刺して少年院に送られた彼女の江理子への憎しみは、まだ癒えてはいないのだ。 これ以上圭子に間違いを犯させては可哀想、との矢部部長(山村聡←今回出番無し)の気持ちを汲んで彼女の監視を請け負う会田(天知茂)。手紙の郵送を阻止した結果、再び江理子襲撃を図ろうとした圭子を制した会田は、彼女の心を覆う深い闇を憂うが、そんな圭子を心配し、真摯に慕っている工員・高岡浩二(山下雄三)の存在に希望をみる。 だが、蒸発した圭子の父が冷たい亡骸となって発見されてまもなく、江理子がホテルの一室で殺害されるという事件が発生。一課は圭子を容疑者として取り調べるが、彼女は頑なに否認。会田はマネージャーの望月(穂積隆信)を締め上げて江理子の男性関係を掴み、その夜ホテルにいたという男を連行する。しかし現場に残されていた指紋は彼のものではなかった。 まさかと思いつつ会田はある品を一課に託す。――付いていた指紋は、現場と一致した。彼が渡したのは、高岡にもらった手作りの湯飲み。父の死で暗さを増した圭子を心配するあまり、江理子から謝罪の言葉を引き出そうとホテルに乗り込んだ高岡は、男をしゃぶり尽くす江理子の魔性を目の当たりにし、咄嗟に手をかけたのだった。 教会にいた高岡を連行する会田と一課の刑事たち。そこへ現れた圭子の目の前で、会田は高岡に手錠を掛けた。彼が乗せられた車に追いすがり地面に崩れ落ちた圭子を残し、会田は無言で歩み去る・・・(昭和ブルースは1番) *不幸な境遇の圭子。だがそこから抜け出せずにひたすら憎しみを引きずり続けた結果、高岡に殺人を犯させてしまうその業の深さが重く哀しい。またこの無常のラストに昭和ブルースの切ない調べが似合いすぎるのなんの。 *でも「彼女(=圭子)を見守ってやってほしい」と高岡にわざわざ頼みに行った会田のひと言も彼を殺人に駆り立てた動機のひとつだったりして。 *高岡役の山下雄三さんは必殺シリーズの名曲「荒野の果てに」を歌っている山下さんと同一人物のようだ。 *「ねっとりとした年増好みかと思ったら、案外部長もカワイ子ちゃん好みの出歯亀だな」矢部さんがいないと思って言いたいこと言ってる会田。坂井さん(宮口二郎)聞いてるぞ。
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2007,09,21, Friday
#70「兇悪の父子(おやこ)」(1975年・S50・1月30日OA)
特捜部に鳴り響く電話のベル。矢部警視(山村聡)が受話器を取ると、うら若き女性の声が工場爆破を予告した。会田(天知茂)らの迅速な通報の甲斐なく多数の被害者が出てしまったこの事件の犯人として浮上したのは、被害を受けた大東重機の社長令嬢・芝木るみ子(服部妙子)。過激派に身を置きながら彼女は父・良三(金子信雄)や弁護士の内海(佐々木孝丸)の前ではしおらしい令嬢を演じており、すぐに釈放された。 だが会田は、社長の良三が娘の行動を黙認、爆破事件で世間の同情を買うことで武器商人としての暗躍をカモフラージュしている真相を看破。被害者の遺族の苦しみを見せ良心に訴えるのだが、横槍を受けて休職させられてしまう(が、これ幸いと捜査を続行)。良三はるみ子を連れて渡航しようとしており、その前に密輸の疑惑を究明せんとして、四方(葉山良二)たちも奔走する。 そんな中、大東重機にまたもや届く爆破予告。爆弾の在り処を聞き出そうとする会田の前でるみ子は発作を起こした。持病の狭心症が進行していた彼女は緊急入院、慌てて良三が駆け付けるが、彼が持参した小包を見てるみ子の顔色が変わる。彼女の表情から、爆弾がその中に仕込まれていると見抜いた会田は小包をかかえて屋上へ走った。幸いにも爆弾は接続の不具合で事なきを得、るみ子は最後に父の手を邪険に払いのけて逝った。そこへ、良三の覚せい剤密輸の証拠を握った四方も現れる。 あんたが娘を殺したんだ!そう会田をなじる良三(ある意味もっともだ)。しかし会田は、娘の病状の悪化、それに伴う自暴自棄な破壊行動をすべて見越して利用していた良三を逆に非難。それでもなお、お前らは甘い、国家百年の計を考えねばならんときに多少の犠牲はやむを得んじゃないか、などと吠える良三に会田は「人の命は百年の計より大事だ!」と止めを刺し、犠牲になった人々への思いを込めて手錠をかけるのだった(昭和ブルースは1番)。 *人助けよりまず世直し、とかいってる新さん@闇を斬れにも聞かせてやりたいセリフだ<ひとの命は… *矢部さんが会田のために作った休職届の理由欄には「坐骨神経症」。どこからそんな病名が。 *事件に首を突っ込みすぎるとヤケドするよ、と弁護士に牽制された会田がひとこと。「私は原爆の被災者です、たいがいのヤケドには驚きませんよ」。さりげなくフラグ立て。 *いつも会田とは別ベクトルでダンディーな四方さんが珍しく土木作業員スタイルで聞き込み。意外と似合っていた。
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| TVドラマ(現代劇)::非情のライセンス2 | 03:42 PM | comments (x) | trackback (x) | |