2008,07,21, Monday
「男たちの詩」(1978年・S53・10月9日OA)
空港特捜部の鯉沼(中村雅俊)の友人・及川(堀之紀)が、政財界の黒幕・脇坂(内田朝雄)のチャーター機にセスナで体当たりしようとして失敗、爆死した。会社秘書だった彼の恋人は、脇坂が仕組んだ会社乗っ取りの犠牲となり、社長との無理心中を偽装され殺された、と及川は信じていたのだ。 無念の死を遂げた友人に代わって脇坂に鉄拳を浴びせようとした鯉沼だが、パリパリスーツの中年にぶっ飛ばされる。有無を言わせず彼を遠ざけて(←クビを救うための親切行為)脇坂に挨拶したその男は特捜部の上司である警察庁の三井係長(天知茂)。心中事件に拘る鯉沼の暴走を懸念した三井は彼を捜査から外そうとするが、加賀チーフ(鶴田浩二)から「捜査には怒りが必要だ。鯉沼を外すんならまず俺を罷免するがいい」などと舎弟キャラの弱みに付け込まれては引き下がるしかない。 事件のカギを握るパートのおばさんを執拗に付け回していた鯉沼は脇坂の罠に陥り、大事な証人を殺されたあげく容疑者に仕立て上げられた。同僚の立野(岡本富士太)と海原(高岡健二)が彼の無実を晴らそうと脇坂子飼いのヤーさん事務所で大乱闘、密かに事件を洗い直していた三井係長の神経(と眉間)を逆なでする。おまけに「自分に事件を預けて欲しい」という彼の切なる願いは、相変わらず頑固な加賀チーフにすげなく断られてしまった。 一方、三井の申し分のない経歴と部下に対するウケの悪さを調べ上げた脇坂は、格好のイヌを見つけたとばかりに彼に接触を図ってきていた。呼び出しに応じた三井は、心中事件の偽装を目撃したカップルの存在を土産代りに漏らすという、脇坂につくかのような言動をとる。早速カップル抹殺に動く脇坂配下の連中。しかし彼らの正体は特捜の梶(緒形拳)と紀子(片平なぎさ)、既に替え玉にすりかわっていたのだ。「裏切ったな!」詰る脇坂秘書(北町嘉朗)を「仲間だと思っていたのか。なめるな!」とキレイにぶっ飛ばした三井は、加賀チーフと共に脇坂逮捕に赴くのだった。 *初回以来の登場、しかもこれで出番はおしまいとはいえ、目立ちまくって存在感をアピールしてくれた三井さん。キレすぎて何を考えているのか分からんだの冷酷非情だのと評されるエリート係長だが、実は正義感が人一倍強くて仁義に篤い(おまけにやたらと手が早い)あたりが実に良い味を出していた。「三井くん」「加賀さん」と呼び合う加賀チーフ(鶴田さん)との名コンビぶりにも磨きがかかっていて(対立しながらも“あなたには勝てませんよ”ってな風に視線がふっと和らぐのが天っちゃんらしいと思った)、ラスト、脇坂逮捕にパリパリスーツ(と高い襟)で並んで歩いてくるカッコいい二人は必見。もっと出てくれたらよかったのに! *しかし非ライの刑事連中の平均年齢の高さに慣れているせいか、ぶーたれてばかりの若い刑事たちがうろちょろするのがちょっとばかり目障りなドラマでもある←所詮おっさん好き
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2008,07,13, Sunday
『青春ジャズ娘』(1953年・S43)
ジャズ全盛の時代。大学対抗コンテストで見事優勝した城南大学のジャズバンド「シックス・メロディアンズ」は喜びに沸く一方、ドラマー・青木(フランキー堺)らの引き抜き問題が浮上し、分裂の危機が訪れていた。リーダー格のトランペッター・後藤春彦(片山明彦)も代議士のお父ちゃんの反対を受けながら、なんとかメンバーたちを(というより青木を)引き留めようと奔走する。 青木を引き抜いたのは悪徳ブローカー・山崎(三島雅夫)とその部下の安木(大泉滉)。新聞記者の三上(水島道太郎)や恋人でボーカルの俊子(新倉美子)、そして優勝時の審査員だった江利チエミ(本人役)らの協力により、紆余曲折の後に再び集うことができた6人は、著名ミュージシャンたちとの共演を見事に果たすのだった。 もしかしたらこの映画が初クレジット作かもしれない22歳の天っちゃんはシックス・メロディアンズのピアノマン・石川。片山明彦・フランキー堺・高島忠夫・小笠原弘・島津猛(君島靖二ではなく)といったメンバー中、実年齢が最年少なことも手伝ってか、実に物静かで押しの弱そうな青年だった(際立った台詞は「ハイ」ひとつ)。「青木はどこなんだ」「青木は大丈夫かなあ」など、青木ばっかり気にしているメンバーだが、こっちはさりげなく画面から消えているメロディアン・ミニ(失礼)が心配で仕方がなかった(場末のキャバレーでピアノ弾きになっていた模様)。 【少ない見せ場をキャプチャー】 ・楽屋でイメージトレーニング(後ろはボン・高島) ・コンテストで演奏中(けっこうノリノリ) ・また集まるぜ、と小笠原さん(右)から伝言を受けたところ(この目つきがいい)。そのあとピアノ弾きながら笑顔でOKサインを出す(さわやか系) *「高英男のシャンソンうまかったわ〜」「東京キューバン・ボーイズ観にいったわ〜」「トニー谷の真似して学校でウケたわ〜」と当時の青春ジャズ娘(=母)に見せると非常に喜んでいた。新東宝の映画でこんなにウケたのはこれが初めてだ(別の意味でウケていたのは『婦系図より 湯島に散る花』だったが) ちなみに天っちゃんに関しては、(痩せすぎてて)服に負けてるどころか椅子にも負けてはると身も蓋もないコメントを残してくれた。
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2008,07,13, Sunday
#152「兇悪の憧憬(あこがれ)」(1976年・S51・9月23日OA)
マンションで女が絞殺された。凶器のネクタイは相思相愛の恋人のもの。 仕組まれた完全犯罪。 彼女は会田(天知茂)に告げていた。 ――私の身に万一のことがあれば、テレビの裏側を見て――。 女の名は幾野純子(范文雀)、暴力団が仕切る銀座の高級クラブ「エンパイア」のNo.1ホステスである(源氏名は「ジュン」←姓がサンダースかは不明)。立て続けに同僚(坂井&右田)を亡くしてメランコリックな会田は、矢部(山村総)から(銀座が似合う云々の理由で)彼女の身辺調査を命じられた。女性の海外進出など問題外の某国出身者であるにも関わらず日本へ来ている彼女は、マスコミや政財界の大物を顧客につけ、取引のため多額の札束を持ち歩いているらしい。 新聞社の経済部長(名前は大久保平三郎)に扮して純子に接近した会田。例のごとくすぐバレるが、ヤーさん連中の厳重な監視をかいくぐり自宅へ押しかけた彼にほだされたのか、純子は海外出国を条件に情報機関のスパイめいた仕事をさせられていることをほのめかす。だが真相をすべて明かすことへのわずかの逡巡の隙に殺されてしまったのだ。 ルポライターの小寺茂(睦五郎)は妻子ある身でありながら、そんな純子を不憫に思い関係を培ってきたのだが、組織に知られ、犯人に仕立て上げられた。そして会田がテレビの裏で見つけたのは、某国の情報機関の重要人物の写真。相手が相手だけに、特捜部の存続を賭けて組織に挑んだ会田たちは、小寺の協力を得て黒幕たちに手錠をかける。 処遇待ちの特捜部屋にて。特捜部が潰れても他でやっていけばいい、と呑気な浮田(松山英太郎)と何も言わないけどそう思ってるっぽい岩田(岩城力也)にふざけんなとばかりに「この部屋を出て二度と戻ってこなかった者たちのためにも、俺は最後までここにいる・・・!」と再び坂井&右田の写真を見ながら眼をうるませる会田。そんな彼を矢部部長は「俺が眼の黒いうちは潰させやしないから安心しろ」と励まし、皆を飲み会に誘うのだった(昭和ブルースは1番) *キリのいい時期の100回記念作品。それゆえ(ではないだろうが)久々にR指定なお休みシーンあり。しかし、二度と戻ってこなかったのは坂井さんや右田さんだけでなくもっといたよ会田!(生きてても戻ってこなかった若い刑事もちらほらいたし)
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2008,07,07, Monday
#151「兇悪の殉職・右田刑事」(1976年・S51・9月16日OA)
背広の新調(強引に)を条件に、広域暴力団壊滅作戦を遂行中の会田(天知茂)のカバーに回ってくれと矢部警視(山村総)に頼まれた右田(左とん平)。祖父江組の高額な上納金が払えず難儀している支部長の梅津(桑山正一)に牙を剥かせろとの命を受けてしぶしぶ梅津と接触するが、病気持ちで気の優しい彼に、組長に楯突く気は毛頭ないと軽くいなされる。 祖父江組が彼への鉄砲玉として村上雅(越村純一)という青年をリクルートしたことが判明してもまったく慌てない梅津、そしてなんとか彼らの間でひと悶着起こし、祖父江組解体を目論もうとする矢部&会田の態度に、梅津に父親のようなシンパシーを感じてしまっている右田は焦燥を隠せない。 会田が組長の祖父江(富田仲次郎)を雇われ者のヒットマンぶって刺激したことで、雅が梅津を狙いに出動。大金を渡し「仕事が済んだら親父に会わせてやるよ」と笑顔で送り出した祖父江は、行方不明の彼の父がターゲットの梅津その人だと知っていた。そして梅津も雅が息子だと気づいており、彼に撃たれるなら本望だと、右田のマークをかわして雅に対峙する。 右田が駆け付けたときには、梅津は銃弾に倒れ、父の証拠だという“男一匹”の刺青を梅津の体に発見し自分の行いに泣き崩れる雅の姿が。おまけに雅は祖父江組の連中に射殺されてしまった。完全に頭にきた右田は、祖父江を逮捕せんと単身で乗り込むのだが、梅津サイドの刺客だと思われて(←たぶん会田のせい)、子分たちに蜂の巣にされてしまう。 一方、雅を追ってホテルまで行ったはいいが雑魚に手こずりまくり、ずいぶん遅れをとって現場へたどり着いた会田は、血まみれの右田をみて逆上、祖父江や部下を一人残らず撃ち殺す(弾丸無尽蔵)。そして祖父江の死体を右田の側まで蹴飛ばしながら運ぶと、彼の手にあった手錠をしっかりと掛け、生前の思いを代行した。部長もそんな会田の行為を静かに黙認、「バカタレ、とんでもねえところではみ出しやがって…!」と部下の死を悼んだ。 さびしくなった特捜部屋で、右田を回想する会田。そんな彼に「これを右田に着せてやってくれ」と矢部は真新しい背広を手渡すのだった(昭和ブルースは1番) *不幸な境遇に生まれ、弱者に優しかった右田さんらしい最期に合掌。矢部さん、いくら会田が心配だからって(←想像)、彼を援護につけるのはどうかと思うなあ。おまけに右田さんのために新調した背広が会田みたいな紺ストライプってのもどうかと思ったぞ矢部さん(ウルッとくるはずのラストで笑いが漏れてしまった)。 *でもって今回の会田、去りゆく人に華を持たせなきゃ〜、という趣旨はわかるが間に合わなさすぎなのがトホホだった。
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2008,07,07, Monday
ありったけの青春(1964年・S39・2月29日OA)CX 20:00-20:56
原作:藤原審爾 出演:天知茂、小坂一也、久保菜穂子、高津住男、中島そのみ、利根はる恵 【にわか役者になった愚連隊】(以上、朝日新聞縮刷版より引用) (以下、ほぼネタバレのあらすじ@週刊TVガイドより) 【ちんぴらヤクザの純情】*原作の主人公は錦之介で、そもそも「三吉」という人物はおらず、松の弟分に「豊」というのがいて、彼が相手のボスを刺して刑事に捕まるエピソードがちょこっと入っているだけだった(劇も「父帰る」ではなく鼠小僧)。朝日とTVガイドではあらすじの書き方がまるで違うので分かり難いが、クレジットからすると、三吉メインで筋を大幅に変更しているようだ。ある意味、舞台初出演(?)がこれかもしれない。 *同名タイトルの映画が1963年に公開されていて、こっちのほうが原作に近い(かなりハッピーエンド気味だが) *ちなみに「ぐれん隊純情派」には「地平線がぎらぎらっ」も収録されている
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2008,06,30, Monday
#150「兇悪の女将」(1976年・S51・9月9日OA)
市民局日照部の山川雄一(西本裕行)が収賄罪で連行された。賄賂受け渡しの場所となった高級料亭「よし美」の女将・田島美沙(弓恵子)は山川の幼馴染だが、賄賂のことなど知らぬ存ぜぬを通すしたたかな女。警視庁きっての猟犬を自認しているらしい会田(天知茂)と右田(左とん平)の今回の任務は、この“女狐”を追い詰めることにあった。 山川は日の差さないアパートで身体を壊した妻や子供達と細々と暮らす、いわば捨てゴマ。美沙と愛人関係にある上司の園田(北原義郎)が彼女と共謀し、彼だけに罪を被せるつもりだった。だがそれを薄々感じていた山川は、取引日時を克明に書き記したメモを武器に彼らから金をせびろうとしたものの、縊死させられてしまった。 会田は綾(岸田今日子)の協力で新聞記者と偽り、直接美沙と顔を合わせる。が、すぐに身分がバレた上、メモの話をすると少し動揺を見せたものの、証拠がありませんわと澄まし顔の美沙にちょっと押され気味。 大事なメモは園田によって焼却されたが、そのコピーを療養中の妻・静子(町田祥子)が所有していることを掴んだ会田らは彼女をマークする。静子は美沙を呼び出し、コピーの存在を告げる。それを売ってくれと札束を差し出す美沙の顔を、夫を奪われた恨みをこめて傷つける静子。そこへ現れ彼女たちを拉致しようとした園田の配下たちを、会田たちは一網打尽にした。 後日。美沙は場末の居酒屋に身を落としたが、それなりにしたたかに生きていた。そして「F」では、綾がクラブを閉めることを決意。会田クンに会って、まだまだ弱い立場の人がいることを知った、今後はまた弁護士として、まずは静子の弁護をしたい――。 「これからは、会田さん、って呼ぶわ」 そう告げる彼女に、会田は笑顔で頷いた(昭和ブルースは1番) *旦那(=宮口さん)が殉職した次の回に奥様登場、やり手の女将を悪女っぽく熱演。 *朝の4時半の銀座をぶらつく綾さんと会田(どんだけ夜更かしさんなんだ)。そらそうと綾さんって、前のママが出所するまで店を預かるんじゃなかったのか?(#75「兇悪のワイン」)
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2008,06,28, Saturday
#149「兇悪の殉職・坂井刑事」(1976年・S51・9月2日OA)
青年実業家・太田(村上幹夫)がライフルで狙撃され死亡した。彼が嫁さんの遠縁に当たることから、メンツに賭けても事件を解決したい捜査一課の橘(渡辺文雄)は、かつてライフル射撃で鳴らした坂井(宮口二郎)に応援を要請するのだが、すげなく断られた上、呼んでないお邪魔虫(=会田:天知茂と浮田:松山英太郎)まで現れて渋い顔。 とある出来事の後、二度とライフルは握らないと心に決め、その手の事件を避けてきた坂井だが、狙撃犯人に心当たりがあった。もしや、大学射撃部の後輩・羽島宏文(和崎俊哉)では――しかも羽島の前妻・光子(二本柳俊衣)は、死んだ太田と再婚しようとしていた。ところが単独で調べを進めるうち、羽島が事件前日にライフルを盗まれ、事件当日から姿をくらましていることが判明、彼の無実を確信する。 犯行に使われたライフルが決め手となり、羽島は指名手配されてしまった。そんな折、坂井あてに彼から電話が掛ってくる。「やっと、あのときの先輩(=坂井)の気持ちが分かりましたよ……」 ――あいつは俺を裏切った女だ。死んだからって許せるものか。 坂井の妻は、彼が射撃大会に行っている合間に男と間違いを犯し、心中を図った挙句に自分だけ命を落としたのだ。そのときに放った坂井の言葉をなぞる羽島。彼は、光子とその父・徳永(増田順司)が邪魔な自分をワナにかけたのだと信じ込んでいた。2〜3日したらすべてを清算します、そう言って電話は切れた。 一方、私情が絡んで危うい状況にある坂井をバックアップしようと、会田たちも行動を開始。光子がライフルを扱えることを調べ上げ、尾行の末に真相を聞き出した。父の命で太田と政略結婚することになっていた光子は、土壇場で太田に拒まれ、家にあったライフルを、羽島の物と知らず持ち出し射殺したのだという(そう仕向けた元凶は父親)。 自白した光子を連行しようとしたその時、ライフルを持った羽島が徳永邸に押し入ったとの知らせが入った。急ぎ駆けつけた会田は、坂井が中に入ったと知り、自暴自棄になった羽島の弾丸を避けながら(1発当たりつつ)自らも侵入する。 「俺は先輩と同じことをしようとしているんです、止めないで下さい!」 光子を呼べと叫ぶ羽島を、自分の過去を見るようで制圧しきれないでいる坂井。だが橘の命令でライフルを持ってきた警官をふっとばした彼は、それなら俺が行くという会田を制すと、拳銃を手渡し、丸腰で羽島に対峙しようとした。そこへ投げ込まれる催涙弾。パニック状態になった羽島のライフル弾は、坂井の胸を貫いた。駆け込んだ会田が見たものは、「(彼女を)許してやれよ…」そう呟いて後輩の胸の中に崩れ落ちる坂井の姿だった。 「ヤツは立派に任務を果たしたよ」坂井の亡骸を前にした矢部(山村聡)の足元に、会田は警察手帳を投げつける。「その代償は何です、何が残りました…? 警視総監賞ですか、特進ですか! ……俺は辞める! こんなもののために、命を捨てる馬鹿はいませんからね!」 ひとり道を歩く傷心の会田の前に、坂井がふと現れた。 ――会田さん、何渋い顔してんですか、気楽にやらなきゃあ、気楽に! 幻は、朗らかに笑って消えた。 あっちへ行きかけそうな会田を呼び止めたのは浮田だった。 「俺は辞めません、絶対に。辞めたら坂井さんに悪いです」 いっちょう仕込んで下さい、そう言って頭を下げる浮田の手から、会田は逡巡の後に手帳を受け取るのだった(昭和ブルースは1番) *これまでも殉職した刑事は何人かいたが(大門・四方・江沢)、これほど丁寧に見送られた果報者は坂井さんが初めてだろう(そもそもタイトルからして気合が入っている)。一番の黒幕(=光子の親父)や実行犯(=光子)は無傷で、弱い立場の人間がいっそう救いようのない悲劇を導く展開もさることながら、ラストの会田の取り乱しっぷりが哀しさを助長していた。でも最後に手帳持ってきたのが(#99で殉職する)右田じゃなくて良かった・・・。 *半泣きになって「俺は辞める!」と駄々(?)をこねた会田に「いいだろう」とあっさり了承し、後からさりげなく使いを遣る矢部さんは懐が深いなあとあらためて実感(そしてあそこで反対されたり殴られたりすることを期待していたのか、肩透かしをくらってちょっと「え?」な感じになっていたような会田もかわいらしい) *一課の橘さんは彼なりにベストを尽くしていた、と思う(いつもは下手に出るのに、珍しく矢部さんとも真っ向対立)。「強硬手段をとったのは、銃声を聞いて君たちが危ないと判断したからだ!」と、アカンというのに飛び込んだ無鉄砲な男(=会田。しかも玄関先で撃たれて派手に倒れてたし)を心配してのライフル渡しや催涙弾作戦だったろうに(←想像)、結局裏目に出てしまい焼き殺されそうな目つきで睨まれていたのがちょっぴり可哀想でもあった。
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2008,06,24, Tuesday
#148「兇悪のカムバック」(1976年・S51・8月26日OA)
「シュザンヌ、君は幸せかい…?」 恋人を友人に奪われながら、彼ら夫婦の幸せを念じ続ける男を描いた舞台「ミッシェル・オークレール」。数年前、啓子との辛い別れ(#95「兇悪のめぐり逢い」参照)を経験した会田(天知茂)にとって、当時見た舞台上の主人公ミッシェルの心情は痛いほど伝わってくるものだった。その舞台の後体調を崩し、今また5年ぶりにカムバックを果たした主演俳優・狭間次郎(西沢利明)の記者会見を偶然TVで見た会田は、彼の表情の暗さが気になった。 そんな折、マンション内で殺しが発生した。被害者・竹内節子(上野淑子)は会田が追う宝石密輸ルートとの関係が濃厚、しかも第一発見者&通報者は狭間だったことから、会田は一課の向こうを張って独自捜査に乗り出す。節子は狭間のファンで、後援会設立の相談を持ちかけられた彼が部屋を訪れたところ、事切れた彼女が床に倒れていたらしい。まもなく下田(山崎純資)というチンピラが捕まり、通り魔的な犯行かと思われた。ところが彼は、宝石密輸に一枚かんでいる沢田(田島義夫)の指令で、節子のマンションから手帳を奪おうとしていたことが判明。おまけに、刺し傷の数が供述とは違っていた。 会田は狭間に5年前の舞台に感動したことを伝え、わだかまりを抱いたままあの役を演じて欲しくない、とそれとなく自白を促す。帰宅後、妻・幸子(三浦真弓)に真実を打ち明ける狭間。結婚を強要するまでにエスカレートしてきた節子を、混乱に乗じて致命傷を負わせ殺した、と語る夫の言葉に耳を塞ごうとする幸子だったが、狭間の決意に打たれる。そして、盗聴器をしかけて狭間宅を張り込んでいた会田と浮田(松山英太郎)も、初日を終えるまで彼をそのままにしておくのだった。 かくして5年ぶりの舞台の幕は上がり、精一杯ミッシェルを演じきった狭間は、妻に見送られながら会田たちの元へと歩みを進めた(昭和ブルースは1番) *前回の話を引きずっている会田。よっぽど啓子さんがエリート佐伯と結婚したのが辛かったんだなあ。 *橘班長(渡辺文雄)との舌戦は相変わらず絶好調。勘で狭間=犯人説を唱える会田に「捜査は勘じゃないよ、データだよ!」と突っ込んだ班長さん、この事件に口出しするのは何か裏があるんじゃないのか、俺にも教えろよ、と迫って「データのないことは喋れないね!」と突っ込み返されていた(そのやりとりを見ながら「ほんとにコイツら懲りないなあ」ってな顔で微笑んでる矢部さんがこれまたいい感じ) *絶好調といえば、その筋のおねーさんをホテルに誘ってのお姫様抱っこ(もちろんby会田)もあり。 *母お気に入りの天野新士さん(←今ならマツケンの奥さんのパパ、といったほうが分かりやすいかもしれない)の名前を見つけたのだが、クレジット自体は悪くない位置ながら、顔もよく分からないようなチョイ役(=狭間のマネージャー風の人物)で視聴者(主に母)の溜息を誘っていた。
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2008,06,21, Saturday
#147「兇悪のめぐり逢い」(1976年・S51・8月19日OA)
矢部警視(山村聡)の友人で会田(天知茂)とも親交のあった小宮刑事(外野村晋)が殺された。葬儀におもむいた会田はそこで、忘れ得ぬ女性の姿を発見する。四方の奥さん(#3「兇悪の序曲」)…ではなくて、6年前に恋仲だった啓子(宮本信子)である。だが彼女は会田を見ると顔色を変え、逃げるようにその場を離れた。 小宮が自分の助けを借りたがっていたことを二課の古賀刑事(太田博之)から聞かされた会田は、彼が射殺された現場に居合わせたのが啓子だと知る。彼女の夫の佐伯(塚本信夫)は、とある収賄事件の重要参考人だった。夫と息子に囲まれ何不自由ない主婦生活を営んでいるかにみえる啓子は、小宮の死について聞き込みに出向いた会田をけんもほろろに追い返す。 啓子の態度には理由がある。6年前、暴力団の組長の娘だった彼女は、内偵にきた会田をそれと知らずに愛したが、手入れの際に父親を彼に殺されたのだ。小宮を撃ったのはかつての組の者ではないのか、と迫る一課の橘(渡辺文雄)の執拗な取調べにも、見かねた会田の助け舟にも口を閉ざし続ける啓子。しかし、彼女と結婚するために会田が刑事を辞職しようとしていた事実を知り、心が揺れる。 銃弾は小宮ではなく啓子を狙った可能性が高いとみた会田と坂井(宮口二郎)は彼女宅を張り込み、案の定、その筋の連中が押し入り啓子の首を絞めようとしたところを逮捕した。やはり狙いは啓子だったのだ。そして、彼女のコネを利用するため会社の指示で結婚した佐伯もまた、用済みとばかりに殺された。 マンションに連れて来られた啓子は、6年前、父を密告したのは自分だと会田に打ち明ける。ヤクザの血を呪い、父さえいなければ…そう思ったのだと。貴方が私を真剣に愛してくれていたのは知っていた、と言う啓子に、それならなぜ佐伯と結婚したんだ、子供まで作ったんだ!と詰る会田だが、子供は佐伯の愛人の子だと聞かされ呆然とする。自分の血が流れていない子供なら愛せると思った、でも本当は、愛する人の子供が欲しかった――。今度生まれ変わったら結婚してくれるわね、そう涙にくれる啓子を、会田はただしっかりと抱き締めるしかなかった(昭和ブルースは4番) *会田の切ないラブ・ストーリー。現在のギクシャクした関係と6年前のラブラブな様子が交互に映し出されて(長髪で若々しい啓子さんと、髪型その他は一緒でもほぼ素で嬉しそうに微笑んでる会田は必見)、ついそっちに頭がいってしまうので、事件の真相がいまいち掴めていないような。啓子さん、別に人を殺してるわけじゃないから罪軽いんじゃないのか? 旦那死んでるし、子供は婆ちゃんが見ててくれそうだから、待っててやれよ会田! *啓子さんの前で辞職云々の話を暴露したのは橘さん。実は会田をバックアップか? *親友が殺され頭にきていたらしい矢部さん、取調べ室で拳銃取り出してどこぞの元締めのような凄みを漂わせていた。 *ロボコン、(ある意味)ゲスト出演。東映だもんなあ。
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2008,06,15, Sunday
#146「兇悪の判決」(1976年・S51・8月12日OA)
敏腕検事の伊達史郎(藤巻潤)が暴力団に便宜を図っている節がある――。 チンピラが岩川組の幹部を刺殺した事件で、伊達が3年という短すぎる刑期を言い渡していたことに疑問を抱いた矢部部長(山村聡)と会田(天知茂)は、自分たちが捕えた組長・岩川登(伊達三郎)の事件でも伊達が罪を軽くするのではないかと危惧して捜査を進める。 案の定、伊達は岩川の顧問弁護士・吉岡(穂積隆信)に何かを言い含められている様子。おまけに彼の妹・俊子(北村優子)は岩川の息がかかったナイトクラブで歌っていた。そして会田の顔を見るなり極度に怯えた伊達の妻・英子(北林早苗)。確かに怖い顔だが無論それが理由ではなく、彼女は「男」と「警察」を恐れているのだ。 服役中のチンピラ・佐川(高林謙)のヘタレな様子に、彼が幹部殺しのホシではないと直感した会田は、英子が事件の鍵を握っていることを確信する。事実、岩川組に拉致され、暴行されかけた英子が幹部を刺殺、その口止めに、伊達は岩川組に便宜を図るよう強要されていたのである。 自らの犯した罪に慄きながらも夫の立場を思い、何も言えずに心身ともに追い詰めらている英子に会田は自首を勧め、猛反対する伊達に「あんたは自分の体面しか考えていない!」と言い放った。かくして岩川の公判当日、伊達はありのままの事実を述べ、岩川と吉岡を糾弾。夫婦そろって会田に手錠を掛けられたが、その顔はどこか清々しかった(昭和ブルースは4番) *特捜の刑事に目をつけられた、と吉岡に話す伊達さん。そんなもんくらいで、と鼻で笑っていた吉岡だが、彼の帰宅後に「あの会田が…!」と顔色を変えてボスに電話するのが笑えた。会田、人気者だ(そうなのか) *その人気者の会田、今回もバイオレンス風。陸橋から落とされそうな勢いで締め上げられ「なっ、なにするんだ!」と怯えるチンピラにひとこと「事故死だよ!」 *英子さんが怯えたのは、会田が岩川組の幹部と瓜二つだったからか?などと想像してしまったが、幹部は似ても似つかぬ人相だった。なんとなく残念。
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