2009,02,26, Thursday
浮草(1964年・S39・1月5日OA)CX 22:00-23:00
演出:土屋達一郎 出演:柳永二郎(駒十郎)、藤間紫(すみ子)、加賀まりこ(加代)、杉村春子(お芳)、岸田森(清)、宮口精二、西村晃、殿山泰司、天知茂 昭和9年と、戦後は昭和34年に故小津安二郎監督によって映画化された作品。ドサ廻りの旅芸人一座を舞台に、その生活と哀観を描いていくもの。(以上、週刊TVガイドより引用) *小津監督の「浮草」は未見なのでなんともいえないが、このメンツの中では年齢的に岸田さん(息子役)に一番近い天っちゃんの役柄が気になるところだ。ぎりぎりでも一応名前が載っているから、少しは目立っていたのだろうか?
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2009,02,24, Tuesday
悪の紋章(1965年・S40・10月7日〜翌3月31日OA:全26回)NET 22:00-23:00
【本誌に連載の異色小説】(以上、朝日新聞縮刷版より引用) 【汚名を着せられた警官の復讐】天知茂と愛京子主演(以上、週刊TVガイドより記事引用) *放映リストはこちら。 *OP映像収録ビデオあり(東映TVドラマ主題歌大全集(1))。 *映画ではショボクレ(「鉄砲犬」ごろ)を演じながら、テレビではすさまじい復讐鬼。そのギャップが凄い。「次郎長…」などと違って外見から想像しやすい役柄ではあるが、見られないのは辛い…どこかに埋もれていないかなあ? *原作について(2008.4.30) とある死体遺棄事件の捜査に関わった警部補・菊池正明は、麻薬運搬、恐喝、その他いろいろ罪をでっちあげられ刑務所に送られた。2年後、出所し名前を「稲村清一」と変えた彼は自分を陥れた人物(元妻を含む)を執念で突き止め、報復を誓う。かつての先輩刑事・松野は、再出発を棒に振り過去に囚われたままの菊池=稲村を憂うが、彼の決意は変わらない。徐々に荒んでゆく菊池=稲村の心を唯一和ませてくれるのは、偶然の出会いから懇意になった女性・節子の存在。だがその彼女も実は……。 「モンテ・クリスト伯」的とはいえ、よりいっそう壮絶で救いのない、とにかく読中・読後がずっしり重い話だった(しかも借りたのが、映画のスチールが文中に挿入されている版で、ものすごく目つきの怖い山崎さんの顔で余計に気分が滅入ってきた)。こんなのを朝から読めた当時の朝日新聞、すこぶるディープである。 ところで、この作品しかり「雲霧仁左衛門」しかり、山崎さんと天っちゃんはコワモテという部分で同じカテゴリの人といえそうだが、このふたり、決定的に何かが違うような気がする。具体的にどう、とは言いづらいのだが、たとえばゲンと弥藤次(「無宿侍」)はキャストを入れ替えられないと思うし、頭に懐中電灯差して村人を無作為に殺しまくる役(「八つ墓村」)なんてのは天っちゃんには無理じゃないか、そんなふうな違いである。役者としての力量云々というレベルの話は置いておくとして(そんなものを語り出すと分が悪そうだし←失礼)、動物的な凶暴性、とでもいうのだろうか、平気で理性をぶっとばせる、ホントに怖い人間の狂気を醸し出せるか否かで両者の間には境界があるように感じる。 見慣れてしまったせいもあるかもしれないが、天っちゃん演じるキャラは大体において「何をしでかすか分からない怖さ」というのがない。顔や動きで性格がみえてしまうのだ。それはおそらく、彼自身が肉付けの際、そのキャラのすべての言動に理由を持たせてしまうからではないか、と思う。人を殺すのも、悪事を働くのも、天知キャラには相応の動機がある。悪なりの理性がある。だから怖くない→マダムやお子ちゃま層も安心して惚れちゃう、という図式が成り立つんじゃなかろうかと。 ・・・そんな彼が、半ば狂気に導かれた稲村をどう演じ切ったのか、すごく興味がある。ほんとにOPしか映像が残っていないとしたら残念だ。
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2009,02,23, Monday
次郎長三国志(1964年・S39・1月8日〜6月24日OA:全24回)CX 21:45-22:15
【次々おなじみの顔ぶれ/13回連続の「次郎長三国志」】(以上、朝日新聞縮刷版より。13回予定が、好調ゆえか24回に延長した模様) #2(1/15) (前略) タンカ、出入り、義侠、色模様と、ワンコース揃っているからけっこう面白そう。「ことしはコメディ路線にのりたい」と言っていた天知茂が鬼吉に扮して中国弁(*名古屋弁?)をしゃべる。「三匹の侍」の長門勇の向こうをはったわけでもあるまいが……(週刊TVガイドのあらすじより) [読者サロン] (週刊TVガイド 1964.2.7号より) 【楽しめる天知茂の新境地】(鎌倉市・Mさんの投稿)*具体的な演技について書かれていたので引用。そんな過剰な(きっと大真面目に取り組んでいただろうことは想像に難くないが)コミカル演技、見てみたい。 [茶の間の茶] (週刊TVガイド 1964.2.21号より) 【天知は言語学博士?】*先にテープに吹き込んでチェックしてもらう生真面目さに敬意を表する。 *「気っぷのいい」だの「オッチョコチョイ」だの雑誌記事でも大評判の鬼吉兄ィ。せっかくの三枚目演技が今では埋もれてしまっているのかと思うと残念だ。
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2009,02,20, Friday
『坊ぼん罷り通る』(1958年・S33)
化粧品会社を営む父の旧友、大友(由利徹)を訪ねて東京へやってきた大阪の坊ぼん・水島光一(高島忠夫)が、持ち前の傍若無人な坊ぼん気質で恋に仕事に歌にとハッスルする青春映画。 光一の機転で売り出された新製品・シロクナールの人気はうなぎ上りだが、何者かによって大量に横流しされ安価で出回っていることが判明した。腰が低くて実直な倉庫主任の田村さん(写真)は知らないと言うのだが、どうやら最近、増田という怪しい男(天知茂)と羽振りよく遊んでいる姿が頻繁に目に付く販売課長の佐々木(並木一路)が怪しい。 佐々木の脅しに屈せずに調べを進めた光一は、たまたま田村さんの留守中に机に入っていた老眼鏡を掛けてみて、それが伊達メガネであることを発見。そして帳簿を見て確信する。田村さんと佐々木はグルだ! 「おい水島、おめえのガン付けしたとおりよ」 詰問された田村さんはガラッと態度を変え、おもむろに口髭を取り、眉を取り、カツラを外す。そこにいたのはなんと増田。乱闘の末、ナイフや銃を持ってる連中を素手でノックアウトした光一は会社を救い、社長令嬢のみゆきさん(高倉みゆき)とゴールインするのだった(という部分はどうでもいい)。 *あまりに地味な登場シーン(写真)と極上の爺さん演技にまんまと騙された。見た目の風格はともかくセリフ回しがまだ軽い増田より、田村さんの喋くりの方が自然に思えたくらいだ。 *子分たちから“おやっさん”と呼ばれ、おねーちゃんたちを従えてワルの貫禄十分な増田だが、自分で変装して横流しを指示しているマメさがいかにもで微笑ましい。 *いけてる(?)増田の画像集: ・おねーちゃんにネクタイ直してもらってる図 ・バレそうで焦る佐々木の小物ぶりを鼻であしらう図 ・「俺はね、涙もろいんだぜぇ?」椅子に逆向きに座り、泣きの入った佐々木を眺める図 ・ワルですと言わんばかりの顔でピストルを構える図 (おまけ)この身長差で殴り合っておりました
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2009,02,04, Wednesday
『宿無し犬』(1964年・S39)
ハジキと喧嘩は滅法強いが、女に弱いお調子者の一匹狼・鴨井大介(田宮二郎)は、高松にある母の墓地をゴルフ場に変えた大興組とひと悶着。そこを彼らのライバル、沼野観光社長(佐々木孝丸)に見込まれ神戸にやってきた。 沼野の店が火事になり、その保険金を受け取った帰り道、鴨井の前に奇妙な不精髭男(天知茂)が現れた。「君のボディガードや」抜け抜けとそう宣言した不精髭は彼の後を尾けてくる。ちょうどその時、高松で出会った大興組と訳ありの美女・麻子(江波杏子)に遭遇するのだが、不精髭はなぜか彼女と関わり合いになるなと言い「そのうち火事見舞いに行くからな」と不可解な台詞を残して消えた。 そんな折、鴨井がナイスバディの柳子(坂本スミ子)と働いていた沼野所有のモーテルが放火された。予告通り焼け跡に、しょぼくれたコートの不精髭が姿を見せる。沼野の保険金詐欺をほのめかした彼は、飯場にいた鴨井を銃器不法所持で引っ張ろうとした。「お前、デカやったんか!」 捜査一課の刑事・木村準太(改めて天知茂)は鴨井に、(うどんと麻子の居場所をエサにして)沼野と青井(水島道太郎)の線を洗ってくれと持ちかける。青井というのは沼野の片腕で、鴨井の良いハジキ仲間だったが、モーテルの保険金を持ち逃げして大興組に匿われた男(それはすべて沼野との策略だったのだが、大興組は青井をゲットすると沼野を射殺し、結局寝返った形になっているややこしい男)。同僚を青井らしい男に消された木村は、なんとしても青井の身柄を確保したいのだと言う。鴨井は麻子会いたさに渋々協力することに。 鴨井がホの字の麻子は、大興組の康市(五味龍太郎)の女とみられていたが実は彼の姉だった。康市は姉の身の安全のためそれをひた隠しにしていたものの、お前には出来すぎた女だから青井に譲れと組長の佐伯(須賀不二男)に命じられて苦悩。麻子を連れて逃げようとしたところを組員の瓜生(デビュー作?:成田三樹夫)たちに襲われ、ついでに事情を知らない鴨井にも追われて海へドボン。翌日浮かんだときには死体になっていた。 実際は組員たちのドスを喰らっての刺殺だったが、鴨井の前以外では俄然キレものぶりを発揮する(しかも標準語に切り替わる)木村は、沼野の出方を探ろうと“水死”として発表させた。おかげで自分が麻子の大事な男を殺してしまったと落ち込む鴨井。しかし、連れて逃げた麻子と木村の言葉から真相を知った彼は、康市の骨でひと儲け企んでいた沼野から骨を奪い返すために、青井とのサシの勝負を決意する。 サシのはずなのに沼野やらミッキー瓜生やらが押しかけ乱戦になり、青井は味方サイドにやられて死亡。残りを単身でやっつけた鴨井の背後から、パトカーのサイレンが聞こえてきた。逃げて、と抱きつく麻子を「アイツ(=木村)の月給あげたらなイカン」と諭した鴨井は、木村の手錠を潔く受けるのだった。 *“犬シリーズ”第1弾ゆえか、途中から妙にシリアスで湿っぽい展開になってしまい、鴨井のあっけらかんとスカした魅力が花開いていないのが残念。とはいえ、“しょぼくれ”(とは1作目では呼ばれていないが)こと木村刑事の懐深いキャラは最初っから全開である。ふらりと姿を見せて「俺は君(=鴨井)より色男やと思ってるんやが」(ほんとにそう思う←贔屓目)なんて言いつつ鴨井をやんわり手玉に取り、タイヤを頭から被らされて逃げられてもヤンチャ坊主を見る優しい目で見送っていたかと思うと、本業では眼光鋭くキレ者。刑事としては会田@非ライより優秀なんじゃないかとさえ思えてしまうその余裕のある態度が、ルックスと相まって実に魅力的だ。
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2009,01,23, Friday
スター劇場 「愛の誤算」(1970年・S45・1月6日〜3月3日OA:全9回)MBS 22:00-23:00
原作:三浦綾子「自我の構図」(以上、朝日新聞・読売新聞より記事引用) *友人の陰湿なジェラシーで人生が大きく狂う画家の役。画家ってことは絵も描いたのだろうか? “曽吉が生きていた”という展開は原作にはないので、ドラマの収束の仕方も気になるところだ。
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2009,01,22, Thursday
「武州糸くり唄」 (1967年・S42・6月30日OA)
放送ライブラリ@横浜にて鑑賞(2007年5月5日)。 暑い夏の最中、とある家の様子を何日も見張っている岡っ引きの文五(杉良太郎)と下っぴきの丑吉(露口茂)・矢七(常田富士男)。この家に住む後妻・お冴(岩崎加根子)は、内偵与力を殺めて逃走中の蘭学者・立木仙三(うらぶれた浪人風体の天知茂)の初恋の相手であり、妻に見捨てられ行くあての無い彼が立ち寄る場所はここしかないと文五は睨んでいたのだ。 *殺人の経緯は#11「鴉」に詳しいようだが、残念なことにライブラリにはこの1話しか収録されていない 大店の番頭のくせにドケチな夫や小憎らしい先妻の娘の仕打ちに黙って耐えていたお冴の元に、立木からの文が密かに届けられた。『お冴、…お冴!』立木の悲痛な叫びが聞こえそうな(実際天っちゃんの押し殺した低音ボイスがこだまする)その文を読んだ瞬間、堪えていたものが彼女の胸に一気に突き上げる。 文五たちの眼を盗んで逢瀬の場所へと駆けつけたお冴は、安宿へと立木を誘う。身分の違いを越えられずに彼女を捨てたことを詫びる立木に、初めて会ったときからずっと貴方を待っていました、結婚すると告げられても、自分が嫁ぐことになったときも、理由が分からないまま、ずっと待っていました、そう打ち明けるお冴。鎖国の世に密航を企てる秘密結社にいた(らしい)立木は、彼女を引き寄せ呟く。「(仲間が密航を画策する)部屋の隅でひとり刀を抱きながら、俺は思っていた。エゲレスまで行けなくてもいい、無人島まででいいと…ふたりだけでひっそりと暮らせる島へ行ければそれで十分だと・・・」 しかし、文五や立木の友人の医師・草太郎(和崎俊也)が二人に迫っていた。湯から出たところを捕縛された立木は、番屋への道すがら、草太郎の脇差を奪い自らの腹を突いて果てた。立木のことは忘れるよう文五に説得されたお冴は、翌日から再び貞淑な妻の仮面をまといながらも、放心したように糸を繰るのだった・・・。 *何事も起こらぬまま、夏のうだるような暑さと文五たちの焦りがシンクロしている前半、そして緊張感が一気に高まりクライマックスへとなだれこむ後半のメリハリが素晴らしい。特に立木とお冴の逢瀬シーン、自ら立木の胸に飛び込み彼の指(これがまた長くて白くて繊細でキレイな指なのだ)を咥えるお冴、もう片方の腕で肩を抱き、彼女を愛しそうに、切なそうに見つめ続ける立木の表情は必見(演出:和田勉さん)。前半は、ドタドタとセット内を歩く音が丸聞こえだったりでかなり画像や音の状態が悪いのだが、アップ多様でひたすら男女の機微を魅せてくれる頃になると全く気にならなくなった。 *一緒に無人島へ行こうなんてファンタジックな誘いをかけてくれた男のことを忘れられるはずないだろうなあ。 *さすがの杉さまも当時は若くて(=青くて)初々しい。ちなみに天っちゃんはローン・ウルフの頃だけあってセクシー路線全開である。 (2009.1.22追記)「武州糸くり唄」と前編にあたる「鴉」が収録されている本(「倉本聰コレクション9 文五捕物絵図 (1)」)を読んだ。 母親のスパルタ教育を受けた優等生の立木は、長崎留学枠を巡って草太郎に負けて以来がらっと変貌、妻のお涼(鳳八千代)に暴力を振って追い出し、勉学にもついてゆけず蘭学塾の用心棒になり下がっていて、塾を内偵中の与力を止せというのに殺めたらしい。で、追い出したお涼の家に転がり込んでお互い憎しみ合いながら暮らしていたのだが、殺した与力の目明し・銀次(浜村純)にかぎつけられてしょっぴかれそうになるところを、立木を憎んでいたはずのお涼が銀次を刺して庭に埋め、その屍に鴉が集まってきて発覚、という筋書きが「鴉」。「母の言うなりになってお前(=お涼)なんか嫁に貰わなきゃよかった、俺にはお冴という初恋の人がいたんだ!」とか言ってお涼を虐めるヤな奴だが(マザコンだったようだし)、土壇場でお涼さんにも、友人の草太郎にも助けてもらえる“放っておけないオーラ”が出ているとみた。 「武州…」はほぼ脚本通りにドラマが展開していた(映像の方が立木がいい男に見えるのは贔屓目か)
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| TVドラマ(時代劇)::その他(ゲスト) | 05:37 PM | comments (x) | trackback (x) | |
2009,01,21, Wednesday
「陽気な未亡人」(1983年・S58・11月22日OA)
八代将軍になった吉宗(鹿賀丈史)の母ゆり(=浄円院:山田五十鈴)と嫁(側室)のたえ(斉藤慶子)が梅干し持参で大奥を訪れた。場所柄構わずカントリースタイルを崩さない二人は大奥の庭を耕して畑にする始末。困惑する月光院(江波杏子)の頼みで偵察に訪れた間部(トメ位置奪回:天知茂)は、自ら野良作業に勤しむ吉宗に不穏な胸騒ぎを覚えた。「あの汗が、怖い…」 覗き見するデカダンスなふたり(=月光院&間部)の存在は、ゆりと吉宗に気づかれていた。「あの男(=間部)が側にいては、月光院さまの切り髪もけがれ果てようのう。お気の毒なことや」(いやどっちかというと彼女の魔性が原因なのだが)母の呟きに、吉宗は近々決着をつけると約束する。 間部は天英院(加賀まりこ)に、吉宗を大奥へ誘う骨抜き作戦を暗に促すのだが、今回ばかりは吉宗の対応の方が素早かった。彼は大奥に自分の許可なく男子が入ることを固く禁じたばかりか、側用人の役職を廃止する、と宣言したのだ。万事休した間部は、がくりと頭を下げるしかなかった。 この命令に当然憤った月光院は吉宗に詰め寄ったものの、「二人とも人の手本とならなあかんお人やさかい…ふっつり諦めなされ」とゆりに諭される。想いがあるうちに断ち切った方が、後の生きるよすがになる――ゆりの言葉を噛みしめる月光院。 一方、側用人から雁間詰に配置換え(左遷)させられ陰鬱がどんより増していた間部はある日、周囲の反対を押し切って大奥に入り、所領の高崎に戻らせてほしいと吉宗に直に申し出て許可を貰う。健在で、と言う吉宗に「かつての名もなき能役者めよ、と白い目を向けられ続けた越前の引き際、とくとご覧下さりませ」とひとさし舞おうとして振り向くとそこには涙目の月光院が。「月光院様にもお健やかに…想いを抱き、消え失せまする」それだけ言って「船弁慶」最後の部分(弁慶舟子に力を合せ〜)を舞いながら(謡は吹き替え)、間部は厳かに退場してゆくのだった――。 (このあと月光院も吹上御殿へ移り、紀州ファミリーとの微笑ましい交流のあとで“陽気な未亡人”・天英院もまた別れの舞を舞って退場するところまで続くが、ワタシ的にはここがセフィニ〜♪) *“金襴緞子から木綿の世界に”をポリシーに質素倹約を敢行する吉宗に完敗、とうとう画面上から姿を消してしまう間部。往生際悪く足掻く事すら潔しとしない、エベレスト級自意識の持ち主らしい壮麗な引き際だった。 *大奥改革を終え、紀州親子が「さっぱりしましたな」と言い合っていたが、たしかに間部&月光院の濃密といおうかいかがわしさ全開といおうか、大層おどろおどろしいコンビがいなくなると雰囲気がガラッとライトに変化していた。 *能役者といえば翌年(1984年)の「真夜中の鬼女」(能役者・宗山役)、いつかぜひ見てみたい。原作はもしや泉鏡花の「歌行燈」なんだろうか?
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| TVドラマ(時代劇)::大奥(1983) | 10:58 PM | comments (x) | trackback (x) | |
2009,01,21, Wednesday
「吉宗と肝っ玉母さん」(1983年・S58・11月15日OA)
幼君・家継が風邪をこじらせ病の床に就いた。我が子を案じ心乱れる月光院(江波杏子)に「人の命は一寸先は闇。今この越前とて、この場において命を落とすやも…」と不穏な口をきく間部(天知茂)は、万が一に備えて次の将軍の人選を考えておかねばとあくまで冷静。そして二人の意見は「紀州の吉宗だけは願い下げ」で一致した。特に、誰もが一目置く自分に廊下で頭を下げさせ道を譲らせた吉宗(おまけにクレジットのトメ位置までも略奪:鹿賀丈史)に対して、間部は反感を抱いていたのだ。 「あの男が八代様になっては、わしの夢が崩れる…この手から天下の権が零れ落ちる…」 昏い憎悪の眼差しを燃やす間部、その胸に月光院はぴっとり寄り添うのだった(子供が心配でも魔性が勝ったらしい)。 将軍後見職(=次の上様)を決めるために徳川御三家の長を呼び出し、老中たちは喧々囂々。間部のイチ押しは尾張大納言・徳川継友(堀内正美)なのだが本人が今一つぴりっとせず、年嵩の水戸の綱条(佐竹明夫)は副将軍で充分という。そして紀州の田舎を駆けていたそのままの質素な格好で母ちゃん(山田五十鈴)と茶屋で見初めたヨメ(斉藤慶子)を連れて上京した吉宗は、皆の意見に従うからといって別室へ引っ込んだ。 その吉宗にさりげなく毒入り茶を届けさせた間部だが飲んでもらえず目論見は失敗。月を見上げている吉宗の背後を通りかかり、頭の影をむんずと踏もうとした時にもさっとかわされ、またもやムカッときた間部は「始末せよ。ただし、殿中ではならぬぞ…」 と黒装束で軒下にいた助川(毒入り茶を持って行った茶坊主もばっさり始末:宮口二郎)に吉宗暗殺を命じるのだが、吉宗シンパの紀州黒潮隊(内田勝正ほか)らの妨害に遭いこちらも未遂に終わった。 一方、六代将軍の正室・天英院(加賀まりこ)は、間部が継友を推しているのを知って阻止せんと家宣の遺言書まで偽造した右腕の綾小路(南美江)の頑張りに応えるため、地位を利用して吉宗プッシュに回る。母の言に従い欲を捨てていた吉宗だが、「大奥の費用(三十万両)を半分にしたら後見職を引き受けると言ったわよね!」と彼女に突っ込まれ引き受けることに。 土壇場で逆転された間部は「月光院さまの御意向も受け賜わらねば!」と急ぎ立つが、その瞬間、しゅたっと手裏剣を足元に投げつける吉宗(実は畳を滑っていったが、次のカットではちゃんと刺さっていた)。それは助川たちが襲撃に使っていたものだった。「動くまいぞ、越前!」だが一瞬“畜生バレたか”という顔をしたものの、間部はすぐに懐紙に手裏剣を載せて吉宗に差し出し、ポーカーフェイスで相手を直視。「恐れながらここは殿中、このようなもの、お納めあってしかるべきかと存じまする」 息詰まる場の空気を変えたのは、家継臨終の知らせだった。これにより吉宗は次期将軍に。葬儀の段取りでも質素倹約を持ち出し、棺が何の変哲もない白木であることに怒り心頭の月光院は吉宗をぶちのめしに向かうが、逆に諭されて泣き崩れる。それをじっと見ていた間部は、黙って奥へと引き下がるのだった。 *カントリー精神と和歌山弁を江戸に持ち込んだ自然児・吉宗に、相変わらずの澱んだオーラで対抗する間部。あからさまにヒールな挙動を繰り返していたにも関わらず、嫌味や開き直りを超越した表情で吉宗に対峙してのけた手裏剣シーンはすごかった。なんでそこでそんなカッコいい顔ができるんだ! *山田五十鈴さんとの共演は『風雲金比羅山』以来だと思うが(というか、あれは共演とは言わないだろうが)、あいにく今回も絡みはなかった。
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2009,01,19, Monday
「永遠の処女」(1983年・S58・11月8日OA)
(冒頭、#31の禁男の園の濃密シーンなどが微妙に別アングルで回想されたあと)将軍生母として権力を誇る月光院(江波杏子)と男の壮麗な野望を達成した間部(天知茂)の蹴落としを図らんとする老中一派の謀略により、月光院の右腕・絵島(神崎愛)や宮路(加茂さくら)たち十数名は芝居見物・役者との乱交の咎で大奥を追われ、絵島を真剣に愛してしまった生島新五郎(田村亮)もまた罪人となった。 ショックを受け、老中に糺しに行かんばかりの月光院だが、この見え透いた陰謀のターゲットが自分たちだと勘付いた間部は自重を促す。彼には、得意の眼力で生娘とみた絵島がそう簡単に男と情けを交わすとは思えなかった。ここで騒いでは藪をつついて蛇を出すことになる。「秘すれば花、秘さざれば花ならず。この花を知っているのは絵島ただ一人…」絵島も心配、しかし自分たちが夜ごと臥所を共にしていることがバレるのはもっと心配。不安そうに背後からぎゅうっとしがみ付いてくる月光院の手を、間部はしっかりと握り返した。 牢に繋がれ、関根(菅貫太郎)らのネチっこい拷問を受け続けた絵島は、ついに譫妄状態となり胸に秘めた新五郎への愛を口にするようになる。しかし秋元但馬守(綿引勝彦)や土屋相模守(林彰太郎)ら老中が最も知りたかった月光院&間部の逢瀬のことは一言も漏らさずじまいで、とうとう死罪を言い渡されてしまった。 ところが、二人の老中は「絵島の命を助けてやれというのに間部は聞いてくれぬ!」と間部にむずかりハンストする上様を目の当たりにし(させられ)、間部と月光院が最後の切り札を出してきたことを悟る。かくして絵島は減刑され遠投、生島も三宅島へ流されることに決まった。 別々の土地へ流されるふたりにせめて最後の逢瀬を、との懇願に渋い顔をしたままの間部に「そなたには小伝馬町の牢役人を動かすほどの力もないのか!」と詰め寄る月光院。「そなたは近頃、我が身の保身ばかり考えておる。人は頂上にのぼりつめると、失うものを惜しむばかりのいじきたないブタになるものじゃな!」明智ばりの冷静さを保っていたもののさすがにカチンときた間部は月光院の手をぐっと掴んで引き寄せたが、途端にヘナヘナとしなだれかかり、泣き落としにかかった彼女の魔性には逆らえなかったようで、便宜を図ってやるのだった(籠に幽閉されたまますれ違う絵島と生島の哀しい別れでセフィニ〜♪) *いってみれば自分たちの代わりに絵島&生島が罰せられたわけだが、懲りるふうでもなく濃厚に密着していたコワモテ・カップルであった。
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