2009,10,04, Sunday
『博徒』(1964年・S39)
三組の博徒一家がシマを張る明治の大阪にて、盛大な襲名披露で阿倍野一家の二代目に収まったのは藤松米太郎(東映デビュー:天知茂)。紋付き袴だけでなく洋装や電気マッチ(あとは馬車など)も良く似合う藤松は“関東から流れてきた、御家人崩れの成り上がりモン”としてナニワの古株博徒たちから毛嫌いされるが、彼には市会議員になるという野望があり、目的達成のために財界の大物たちの頼みごとを引きうけて足場を固めてゆく。 博徒を馬鹿にしているくせに彼の資金や組織にちゃっかり頼ってくる連中を見返すため、社会的地位を得ようとしているかのような藤松。しかし昔堅気の任侠道を説く高田一家の伊三郎(主役:鶴田浩二)を筆頭に、血の気の多い子分・卯之吉(松方弘樹)、弟分・安之助(里見浩太朗)たちがなんだかんだと足を引っ張ってくる。 鉄道会社に請われ、貧民窟(あくまで自分のシマ内)の一掃を仕切っていた藤松に「堅気さんを泣かすんかワレー!」と突っかかってきたのが伊三郎。立ち退き拒否のおっさんが死んだせいで子分連中が乱闘となり死者が出るが、両一家の手打ちでとりあえず収まった。「そんな(死なせる)つもりはなかったんだ」と弁解した藤松だが、子分を失った伊三郎は、博徒らしからぬ行動を続ける彼に敵意を抱くようになる。 一方、安之助が属する八軒山一家は親分がヘタレ、その親分を叩き斬って安之助が刑務所入りしている間に、甲斐性の無い代貸が「わしらの賭場、預かってくれまへんか」と藤松に泣きついた(別に藤松がシマを乗っ取ろうとしたわけではない)。だが出所した安之助から事情を聞いた伊三郎がまたしても激怒して阿倍野一家に乗り込み、藤松を泥棒呼ばわりして詰った。 伊三郎なんかやっちまいましょうぜ、と憤る子分たちを前に無言で思案中の藤松のところへ、高田一家を破門になった五郎七(遠藤辰雄)が現れ、高田の親分(月形龍之介)をバラすから女と逃げる資金をくれと持ちかけてきた(別に藤松が親分をバラせとけしかけたわけではない)。ところがその女というのが卯之吉と相思相愛の女郎・小里(藤純子)。小里を返せー!と猟銃持ってなだれこんできた物騒な卯之吉を仕方なく藤松は一発で始末。「卯之さんは阿倍野の親分にブッ殺されたあ~!」と泣き叫ぶ小里の言葉にアンチ藤松度数が上昇する伊三郎、おまけに高田の親分を刺して一家に捕まった五郎七が「(親分殺しは)藤松の差し金だー!」と大ボラ吹いたおかげで完全にブチ切れてしまい、藤松に果たし状を叩きつけた。 多分にお門違いな憎悪を向けられた藤松は果たし状にも動じず、「俺は無駄な喧嘩はしない」と警察に連絡。だが、博徒風情の市政参加を快く思っていなかった警察署長は、相討ちさせる魂胆で馬車で殴り込みをかけた伊三郎と安之助を止めなかった。たった二人にばっさばっさやられて倒れる阿倍野一家の面々。かくして、何発ぶち込んでも向かってくる(主役ですから)伊三郎と彼を捨て身で守った安之助の連携プレーにより、伊三郎のドスをくらってしまった藤松は「貴様、邪魔ばかり…!」と本音を吐いて倒れ伏すのだった(おまけに間抜け呼ばわりされて止めを刺され、足を突っ張らせて絶命)。 *ドス持ちの鶴田さんに拳銃向けてるスチールからどんな悪人なんだと思っていたら、gooあらすじにあるようなイカサマ博打もなく、単に近代的な博徒の道を模索しようとしていただけ(にみえる)藤松。なのになんでそこまで憎むんだ伊三郎!と鶴田さんの暴走ぶりが少々恨めしくなる作品。まあ、大阪で標準語しゃべって済ましてるヤロウってだけでムカつく気持ちは分かるんだが(←そんな問題ではないと思う)。 *初の東映作品なので花を持たせてもらったのかどうか、松方弘樹や里見浩太朗を簡単にやっつける姿がまたカッコいい。 *襲名披露とか、手打ち式とか、博徒の仕来たりが極上のモデル(=天っちゃん)つきで分かる、プロモーション映画としての面白さもある(「博徒 せいたい早わかり表」なるミニ冊子が存在し、そこにも襲名披露の写真なども入っている)
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2009,10,02, Friday
『新釈 四谷怪談 (前・後編)』(1949年・S24)
おそろしく小心者で自滅する伊右衛門(上原謙)、元・茶屋女で伊右衛門に「別れないで~!」とすがりついて蹴飛ばされて熱湯に顔を突っ込むお岩(田中絹代)、お岩恋しさの余りストーカーになってる小平(佐田啓二)など、古い映画なのになんだか新鮮で、goo映画の粗筋よりも派手な炎のクライマックスといい、さすが“新釈”だけのことはあった。 天っちゃんがこの作品に出ている(映っている)という根拠は、ワイズ出版「天知茂」で勲兄さんが「この映画の冒頭の『御用!御用!』シーンで水被って肺炎に」云々という発言だけで、どうも件の『御用!』は「影法師」(レビューはこちら)である可能性の方が高そうなので、いるかどうかは不明(例によって『御用』シーンは暗くて顔の判別は出来なかった)。 ただ、勲兄さんの奥様の友人が木下恵介監督の下でチーフ助監督を務めており、そのツテで松竹下加茂に入れたという経緯があるので、この木下作品のどこかでウロチョロしていても不思議ではない。といっても、群衆シーンはほんとに人が画面に溢れているので、探しにくいことこのうえないのだが。 *(2009.11.8追記)1983年放送のトーク番組「素敵なこの人」によれば、肺炎に罹ったのは「夏の暑い時期でね」とのこと。つまり勲兄さんの言葉通り、7月公開の本作品がそうなのかもしれない。
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2009,09,29, Tuesday
#33「兇悪の肌」(1973年・S48・11月15日OA)
オツムの少々弱いパー子こと水沢純子(左時枝)は、知人の結婚式で見かけた男をアパートに連れ帰った。寡黙な男にマジ惚れしてしまったパー子は、50万貸してくれ、その金があったらキミと一生暮らせるんだと迫られ、10日待ってくれと頼む。 「あんただけには、きれいな体で抱いてほしいの」 10日間男を断てばきれいな身体になれる、そう彼女は信じていた。無心にお百度参りまで始めたパー子には、その男が財界の黒幕を拉致・射殺した犯人グループの一人だなどという事実は知る由もない。 殺された黒幕は外国(シャルダン共和国)との合弁会社設立を画策しており、かの国の秘密組織の暗躍が背景にあると睨んだ会田(天知茂)と一課の橘警部(渡辺文雄)は、今回ばかりは無言の協力体制を敷いて捜査に当たっていた。やがて新婚夫婦の見送り連中にまぎれて現場から逃走した男・青井登(長谷川明男)の名前が浮上する。 鈴木刑事(梅津栄)が聞き込みに向かった先はパー子の勤める居酒屋。青井と一緒に暮らしていることを嬉しそうに打ち明けた彼女は鈴木をアパートへ連れてゆくが、気付いた青井は逃走した。さすがにいぶかしみ始めたパー子だが、会社の金を使い込んだという言葉を信じ、せめて5万でも、と要求する青井のために金を工面しようとする。 「10日間の誓い」を先延ばしすることにして、シンパの浅川(大泉滉)から身体と引き換えに5万円を借りたパー子だが、待ち合わせた場所に青井の姿は見えなかった。秘密組織の一人に見つかった青井はその頃、土手で死骸になっていた。保険金のもつれなどというとってつけた動機で自首する犯人。青井をスケープゴートに、すべてをうやむやにしようとする上層部より捜査打ち切りの命令をうけて憤る橘は、取り調べ室で自首した男を半殺しレベルでボコ殴っている会田に自分と同じ思いをみた。 あきらめつつも待っているのか、居酒屋で客とから騒ぎするパー子。そんな彼女に、青井の死を告げられぬまま鈴木は店を出るのだった(そして真っ暗な特捜部屋で、鳴り響く電話にも反応せずにやり切れなさ全開で座り込んでいる会田と橘がうつって昭和ブルース4番) *国家主権がおびやかされる重大事というのに、上からの圧力で身動きがとれなくなる中間管理職のふたり(会田&橘)がメインというよりは、いわば捨て駒として働かされ殺された男と、彼を純粋に愛してしまった白痴娘の哀しさが強調されている。 *それでかどうか、会田の出番が普段の矢部さんレベルに少なかった。ただ、橘さんとは無言で見つめあうシーンが2〜3度あって、その都度会田の眼の表情の色っぽさにちょっとドキドキできる。(ぐっと睨んでるようで、あんたのことは分かってるよ、ってな雰囲気をも漂わせるのだ)
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| TVドラマ(現代劇)::非情のライセンス1 | 11:21 PM | comments (x) | trackback (x) | |
2009,09,24, Thursday
『月の光(トラン ブーラン)』(1954年・S29)
(ラピュタ阿佐ヶ谷にて鑑賞) 南方戦線でゲリラ殲滅と現地人の日本語教育に携わる小林伍長(小笠原弘)は温和な性格で部落の人気者。ところが両親を戦争で失った歌の上手な少女・ベルダ(雪村いづみ)だけは彼に頑なな態度をとり続けていた。おまけに兄・アリ(沼田曜一)がメルド(三原葉子)との結婚資金のためにゲリラに加担、日本軍に捕らえられてしまったことで一層硬化するベルダだが、兄は小林の機転で命を救われたと知り徐々に態度を和らげる。 アリを逆スパイとしてゲリラ隊に戻す、というのが小林の策。ところがそのカラクリはゲリラのイスカンダル(というカッコいい名前はどこにも出てこなかった殿山泰司)に知れ、アリは捕えられてゲリラ隊長(ひとりだけエゲレスの冒険家めいたヘルメットを斜め被りして銀縁メガネを光らせた天知茂)の前に引き出され、リンチの挙句、日本軍をおびき寄せるニセ手紙を書かされた。 手紙が胡散臭いと踏んだ上官の田代(細川俊夫)は兵を出さず、その決定を知ったベルダはメルドと2人で出発。目をぎらつかせたゲリラ隊長らにまんまと捕まりあわや…!となりかけるが、逃げてきたアリ、そして駆け付けた小林たち日本兵によってゲリラたちは一網打尽とあいなった。 …ワタシ的にはゲリラ隊長がさしたる抵抗もみせずに手を挙げた時点で話が終わったのだが、この後、小林センセイにメロメロになったベルダが鈍感極まりない彼の気を引こうと「2人の男にプロポーズされた」などと言って翻弄し、それでもやっぱり鈍かった小林がいろいろあってようやく彼女の気持ちに気付いたところで部隊が他所へ移動、ベルダ涙の別れ、というのが映画の主題。 *公開が主演デビュー作『恐怖のカービン銃』のほぼ1カ月後であるせいか、開眼したての冷徹なワルの雰囲気が同映画に酷似していた。ただあっちは色気を感じる余裕があったが、こちらは顔をゆっくり拝む暇もなく出番終了。まあ流暢なマレー語(推定)だけは堪能できたのでよしとしよう。 *「ニヒル 天知茂」(ワイズ出版)でこの映画のものとされているスチールは別作品と判明(よくみたら『女真珠王の復讐』っぽい) *主演の小笠原さん、前も書いたがこの年はほんとに目立っているのだが、キャラがウツイ系だからだんだんあっちと被ってきて仕事がなくなったのかもしれない。 *アリとメルドの結婚式シーンに森悠子さん(天っちゃんの未来の奥様)の姿があるらしい…と聞いたのに判別できなかった。←修行が足りない *そういえば「隊長」だったゲリラ隊長だが、彼らが投降した後も小林たちはもっと強そうなゲリラ集団に襲われていた。どれだけローカルだったのか。
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| 映画::新東宝 | 10:59 PM | comments (x) | trackback (x) | |
2009,09,21, Monday
七人の刑事 #23「少年と灰色の霧」(1962年・S37・3月7日OA)TBS 20:00-21:00
(『「七人の刑事」を探して1961‐1998』より引用) 脚本:勝目貴久 (朝日新聞より引用) 沢田部長刑事(芦田伸介)が15年前に担当、迷宮入りとなったブローカー殺しがあと3日で時効という日、被害者の友人黒崎(有馬昌彦)をみかける…。金のため執念の鬼となった男の調査から事件が解決するという話。ほかに堀雄二、荒木道子、細川俊夫、南風洋子らが出ている。 (2013.3.15追記:毎日新聞夕刊より引用) 【沢田部長刑事が追う事件】 #53「終着駅の女」(1962年・S37・10月4日OA)TBS 20:00-21:00 (『「七人の刑事」を探して1961‐1998』より引用) 出演:天知茂、喜多道枝 *#23、どちらのあらすじを読んでも秋元弟の役割がよくわからない。 ・15年前に殺されたのが一郎兄さん ・真犯人は15年前少年だった(はず)の弟 とかいうおいしい展開だったら面白いのにと思う。 *また#53は、タイトルが1965年の映画版と同じ(「七人の刑事 終着駅の女」)なのがちょっと気になる。関連性はないのだろうか?
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2009,09,15, Tuesday
『リングの王者 栄光の世界』(1957年・S32)
立ち退きの迫る家で母親と足の悪い妹とで暮らす魚河岸の新ちゃん(宇津井健)は、ボクサーになって家族を裕福にしようと新聞記者の畑さん(伊沢一郎)の勧めを受けることに。調子よく勝ってゆく新ちゃんだが、試合中にガールフレンドの京子ちゃん(池内淳子)にデレデレして足が止まる始末。自分と同じ轍を踏ませまいとトレーナーの岩崎(中山昭二)は京子ちゃん引き離しを画策するが、その結果、よりタチの悪い悪女(クラブのマダム:若杉嘉津子)の毒牙にかかった新ちゃんは、宿敵の三田村(元アスリートだけに脱いだらすごかった細川俊夫)に敗れるわマダムに捨てられるわで踏んだり蹴ったり。しかし辛抱強く見守ってくれた岩崎や畑さん、そして京子ちゃんのおかげで、打倒・三田村に向けてファイトを燃やすのだった。 *石井輝男監督のデビュー作。こんなスポ根ドラマが似合わないことこの上ない天っちゃんの役名は「幹部B」、新ちゃんの所属する旭光倶楽部の会長のお付きで、幹部というより会長さんにコート着せたりするただの下っぱ君である。しかし、こんなセリフすらない“仕出し”も本作品が最後、徐々に上り調子になってくる新婚さんなのだった。 【幹部B 写真集】 *チンピラ然とした初登場シーン *負けを認めたくない新ちゃんに詰め寄られてつらそうに俯くシーン *心を入れ替えて練習に精出す新ちゃんを温かく見守るシーン *DVDに収録されていた唯一映ってるスチール
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| 映画::新東宝 | 10:56 PM | comments (x) | trackback (x) | |
2009,09,13, Sunday
『影法師 寛永寺坂の血闘/龍虎相搏つ』(1949年・S24)
*続編「龍虎相搏つ」の公開は1950年 幕府の御金蔵が破られ、蔵番の宇津木が切り殺された。同僚の仙波龍之介(阪東妻三郎)は、ほのかに思いを寄せていた宇津木の妻・千賀(入江たか子)のためにもと下手人探しに奔走する。やがて市中に出回るニセ小判。すべては幕府を牛耳る柳沢一派の命を受けた小山田鉄心(山村聡)が浪人たちを集めて仕組んだことであった。 その小山田一味の中に、仙波そっくりの影法師・天堂左近(阪東二役)がいた。横笛と黒猫を友として悠然と構え、小山田のやり口に不満を漏らす根っからの悪党ではない天堂に、仲間のお夏(山田五十鈴)は恋心を抱いている。 やがて敵味方として相対する仙波と天堂。ふたりの決着、そして恋のゆくえは…? はたして柳沢一味の野望は潰えるのか? *ワイズ出版「天知茂」で薫兄さんと勲兄さんの記憶が食い違っている「『御用!』の仕出しで水をかぶって肺炎に」エピソードの作品名、公開時期から撮影時期を推測すると、7月の「四谷怪談」(勲兄さん説)よりも、吐く息が白かった薫兄さん説の本作品ではないかと思われる。実際、続編「龍虎相搏つ」のクライマックスで、雨の中の「御用!」シーンがあるのだが、兄さんたちが言うように、暗くて顔なんかとても分からなかった。ただ、人がわんさかあふれている日中のお江戸の町が随所に映るので、そこを探せばいるのかも。 バンツマさんを兄のように慕う鶴田浩二さんがいたり、山田五十鈴さんの帯を「あ~れ~」とくるくるほどく山村聡さんがいたりする映画で、どこにいるのかすら分からないノボル君18歳。彼らと堂々と渡り合えるようになる2~30年後を考えるとこれもまた感慨深い。 *(2009.11.8追記)1983年放送のトーク番組「素敵なこの人」によれば、肺炎に罹ったのは「夏の暑い時期でね」とのことだった。ということは、こちらではなく7月公開の「四谷怪談」の方なのかもしれない。
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2009,09,07, Monday
「降嫁」(1971年・S46・10月23日OA)
長野主膳(トメ位置:天知茂)、前回出演(#5「大獄」)から2回おいての再登場。#5のラストで桜田門外の変までたどり着いていたが、ほんの少し遡ったところから物語は始まる。 降嫁を推進する井伊大老の秘密連絡員・主膳は九条家家臣・島田左近(川合伸旺)と、姉が皇女を産んだばかりの岩倉具視(伊丹十三)は何を考えてるかわからない策謀家だが降嫁には積極的、なんてことを今日も密談中。しかし、金に糸目をつけない主膳が和宮の乳母の買収にも一役かって着々と裏工作を進めていくその最中に、桜田門外で井伊大老が暗殺されてしまった(映像なし・中村竹弥さんの出番もなし)。 それでも彼の遺志を継がねばと頑張る主膳、京都所司代に降嫁推進を訴え、皇子(のちの明治天皇)の叔父にあたる中山忠光(村野武範)、そのブレーンである田中河内介(丹波哲郎)たちアンチ降嫁派・攘夷派を排除せんと画策したり忙しい毎日を送っていた。その甲斐あってか和宮の降嫁は決定。しかし暗躍した主膳らは、次々に粛清の憂き目にあってしまうのだった…(後ろ手に縛られて首を刎ねられる直前のシーンが映って出番はおしまい)。 *史実では井伊亡きあと彦根藩の藩政に関わったものの、後継ぎや家老と折り合いが悪くて処刑されたらしい。今でいう「再現ドラマ」形式なので、もうちょっと内面を掘り下げてほしかったなあと思うシーンがあっさりスルーされてしまうのが勿体無かった。
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2009,09,05, Saturday
「大獄」(1971年・S46・10月2日OA)
条約締結や後継問題の件で井伊大老(中村竹弥)を詰問しようと押しかけ登城した御三家の面々はそれぞれ謹慎処分を受けた。まもなく家定将軍死去の知らせが入り、水戸の徳川斉昭(三島雅夫)は井伊のワンマンぶりに怒り心頭。また京都でも、条約を勝手に締結した事で天皇が立腹、水戸贔屓の面々は天皇の手紙を直接水戸へ届ける手段に出た。そしてそれは、京都入りする老中のための下工作に奔走中の長野主膳(主役:天知茂)の耳にも入る。 直弼の部屋住み時代の愛人で今は主膳と微妙な仲にある(byナレーション)たか(南風洋子)の屋敷に滞在、忍び衆を傍に置き、一度毒見した茶の再毒見を無言で強要するすさまじく慎重な主膳だったが、この密勅の件を聞き慌てて九条関白(青野平義)の元へ。だが海千山千の九条は、水戸宛の書状には署名せず、ちゃっかり作っておいた同じ内容の幕府宛のものには署名をしていた。つまり関白の署名のない水戸宛の書状は「偽勅」とみなせる――江戸で青ざめていた直弼もこの主膳の知らせで安堵し、水戸藩の家老たちを隠居に追い込んだ。 しかし秋には九条が関白の座から引きずり落とされ、悪口雑言を投げ文する輩の出現もあって主膳の立場は悪くなる。そこで巻き返しを図った主膳、投げ文の犯人を探るため、わざと白紙の書状を飛脚問屋に預けて忍びに盗ませ、「昨日の書状、返してもらいたい」と主人にねじ込み、問屋にあるすべての書状を堂々と調べ上げるという荒技に出た。その結果、犯人は尊攘志士の梅田雲浜(外山高士)と判明、主膳は彼の一味をことごとく牢に繋ぎ、ここに安政の大獄が始まるのであった。 老中首座の間部詮勝(生井健夫)を安全に京へ入れるため、という名目でばっさばっさと水戸藩ゆかりの人物や公家らアンチ井伊派を弾圧する主膳。やがて九条が関白に返り咲き、間部が京都入りした後でも「頭の毛は、幾度でも生えまする。二度と毛の生えぬ頭こそ、望みです」とツッコミ自粛な発言で手綱を全く緩めず、鷹司たち水戸派の公家衆を出家に追い込み、捕えた者たちをことごとく江戸送りにしてのけた。 「むごくあってこそ力だ」――うそぶく主膳の最後のターゲットは水戸藩そのもの。「小憎い男よのう、主膳は」天皇の言葉をでっちあげてでも水戸に止めをさそうとしている彼に苦笑しながら、直弼は自分も同じことを考えていた、と彼のやり口を擁護するのだった。 …と、ここで唐突に舞台は現代に。評定所跡・東京常盤橋にたたずむ主膳の中の人(=コサック服のようなシャツ&ジャケットの天知茂)が、生真面目かつ心もち沈痛な面持ちで語りだす。 「安政の大獄で検挙された人たちは、ここにあった評定所というところで裁判を受けたのですが、その審議には初めから予断があり、およそ公正な裁判とは程遠いものだったのです」 いや、検挙させた張本人にそんなこと言われましても。戸惑う視聴者をよそに、 「暗い幕末期にあって、ひときわ光を放った2人の人物、越前の橋本左内(田村正和)と長州の吉田寅次郎(=松蔭:原田芳雄)も検挙されていたのですが、この2人は、井伊大老にとり、絶対に許せない不逞分子でした。では、まず、橋本左内から」 と歴史再現番組のナレーターめいた口調で締める天っちゃん。場面は再び江戸へと切り替わり、左内や寅次郎の最期の様子が描かれた後、主膳にとっては一大事の桜田門外の変が現代の桜田門周辺をバックに「井伊直弼の首を討ち取ったぞー!」などというセリフだけで展開されてこの回は終了した。 *安政の大獄の立役者(?)として、水戸藩や公家衆ら“不逞分子”たちを弾圧しまくる主膳、ワルさに磨きがかかって大そうな活躍ぶりだった。しかし桜田門外の変がえらくあっさり済まされてしまったので、そのときの心情などが分からずじまいで残念。 *左内を裁く評定所の役人・池田頼方役で北町史郎(現・嘉朗)さん。「いかほど良いことでも、良すぎては悪となる!」との名言で左内を黙らせていた。 *写真はコワモテ主膳と、いかにも善い人そうな中の人。この回に限らず、いきなり現代のシーンになる演出があったようだが、そのギャップに顔が緩む。
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2009,09,04, Friday
「地熱」(1971年・S46・9月25日OA)
安政四年、幕府は押し寄せるアメリカ軍艦の処遇や後継問題に揺れていた。アメリカとの条約を結ぶか否かで朝廷の意向を伺おうと幕府要人が京都へ向かう一方で、越前の松平慶永(御木本伸介)は、ブレーンの蘭学者・橋本左内(主役:田村正和)を京都へ向かわせ、前関白・鷹司政道(美川陽一郎)を味方につけようとするのだが、鷹司のライバルの現関白・九条尚忠(青野平義)邸では、井伊直弼(中村竹弥)の命を受けた切れ者の長野主膳(トメ位置:天知茂)が余裕シャクシャクで賄賂つき密談を繰り広げていた。 この主膳、出生地すら明らかでなく、農村を放浪していた貧しい国学者だったのが、まだ部屋住みの厄介者だった直弼と知り合って以来、懐刀として重宝されるようになった男である。彼の戦略(というか金色の土産)が功を奏し、条約は関東に一任されることに。しかし九条のこの案は岩倉具視(伊丹十三)ら貧乏公家たちの猛反対により潰えるものの、後継問題で一橋慶喜(松橋登)プッシュに慣れない賄賂など渡して再び奔走する左内は、「将軍家のお世継ぎと申されますと?」などとしらばっくれながら一橋後継のデメリットを滔々と語り、関白に「賢明で人望があって年上」との条文を削らせるに至った主膳にまたしても敗れ去るのだった。 まもなく大老になった井伊は、一橋や水戸の副将軍・徳川斉昭(三島雅夫)らのイヤミを粘り腰で乗り越え、後継ぎを紀州公に定めて地位を確固たるものにした。そしてその傍らには、闘いはこれからだと彼を激励する主膳の姿があった――。 *『新撰組始末記』の土方役に匹敵するような、冷徹なナンバー2。御前(=直弼)のためか、はたまた自らの野望のためか、ものっすごい三白眼のコワモテ顔(メイクびしばし)で忍びを引き連れ暗躍している姿は、青い理想論をぶつ橋本左内の敵ではなかった(贔屓目)。とにかく味方につければ最強(兇)なキャラクターだ。
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