2008,02,13, Wednesday
「討入り その二」(1971年・S46・12月21日OA)
「いよいよ来たか・・・!」 12月15日、月明かりの午前4時。赤穂浪士たちが吉良邸へ討ち入ってきた。愛妻・おせい(長谷川峯子)に短くも情熱的な別れの言葉を告げた清水一学(天知茂)は外へ飛び出した、と思ったら弓矢を避けるため彼女の小袖を借りに戻り、「おせいの匂いがする・・・」と再び味な愛妻家コメントを遺して上野介(市川小太夫)の寝所へと急ぐ。 寝所では、上杉家からきたツワモノ家臣の小林平八郎(芦田伸介)や鳥居利右衛門(大友柳太朗)らがおびえる上野介を囲んでいた。「どうだ清水、殿を塀の外へお連れできるか」平八郎からいきなり難問を投げかけられた一学さんは黙るしかない(たぶん自分だけでも無理)。結局、抜け道を通って炭焼き小屋へという話になり、堀部安兵衛(渡哲也)との対決より殿を護るのがお前の役目だと諭されて、大須賀(睦五郎)・榊原(久富惟晴)らと共に上野介の誘導にまわることになった。 1時間後。名だたる家臣が壮絶な最期を遂げる中、上野介の所在は皆目分からず、浪士たちに焦りが見え始めた。安兵衛はまた、義兄弟(=一学さん)の姿が見えないことをも懸念していた。あいつは逃げ隠れするような奴じゃない、きっともう上野介を連れ出したに違いないと進言する彼に、大石内蔵助(三船敏郎)は、そう思わせるのが手なのだ、ワシがおるといったらおるのだ!と力強く皆を励ます。 そして安兵衛たちは足跡のない炭焼き小屋のからくりを看破。先に飛び出してきた大須賀と榊原が倒れた後、殿に今まで世話になった礼を律儀に述べていた(といっても殿に会ったのはこの回が初めての←ゆえに殿の中の人が変わっていても分からない)大本命が姿を現す。 「安兵衛、待ちに待った日が来たな・・・参ろう!」 ――小屋の前で静かに対峙した義兄弟対決は、あっけなく終わった。 「見事だ・・・安兵衛」安兵衛が駆け寄ったときには既に、一学さんは微かに満足気な笑みを浮かべて事切れていた。 本懐を遂げた赤穂浪士たちが去った後。無残な死体がうち捨てられたままの吉良邸に、捨て身で自分ちの殿様を押しとどめ、上杉十五万石を守ることに成功した千坂兵部(丹波哲郎)が現れた。「あたら武士を汚名の中で死なせ・・・すまぬ。この礼は、あの世できっと・・・!」視線の先には、変わり果てた夫(=一学さん)の亡骸をそっと撫でるおせいの姿があった―。 *ひときわ豪勢なキャストで繰り広げられた討入りの回で、なんだかんだと最初から最後まで美味しい場面をキープしていた一学さん(天っちゃん)、実に大物扱いだ(いや、大物なのかもしれないが←失礼)。小袖で敵を霍乱するのは上野介の専売特許かと思っていたよ一学さん。しかもある意味ラスボスだし一学さん。どう見ても安兵衛より強そうだったけど、望みが叶って良かったね一学さん。おまけに丹波さんに弔ってもらってるよ一学さん。 *一学さん亡き後、炭焼き小屋の前で浪士たちがぐるりと上野介を取り囲むのだが、倒れているはず一学さんの所在が気になって仕方がなかった(田村正和さんの座布団にされてやしないかとか)
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2008,02,12, Tuesday
「決闘 堀部安兵衛」(1971年・S46・10月12日OA)
11月の寒空の中、ひとりで町を巡回中の清水一学(クレジット最後尾:天知茂)は、討入りの下準備に余念がない堀部安兵衛(渡哲也)にばったり出会う。安兵衛の行動を咎めるふうでもなく、その様子では俺たちが刃を交える日もそう遠いことではなさそうだな、と穏やかに言う一学さんに「(お前を)他の者に討たせはせぬから、安心していろ」と返す安兵衛、相変わらず義兄弟の絆はがっちりだ。 その安兵衛が、吉良邸に増設された土蔵を調べに単身で屋敷に忍び込んだ。屋敷内は討入りに備えて警備がすこぶる厳重。やべえ見つかるかも、というときに突如現れたのは、兵法者の勘とでも申しましょうか、なんとなく寝付かれなくて・・・と非番にも関わらず屋敷内をぶらついていた一学さん(たぶん義兄弟センサーが作動したのだろう)。直接気づくことはなかったが無意識に救ってくれた友(=一学さん)のおかげで、安兵衛は土蔵のからくりを発見できた。 一方、米屋という触れ込みで吉良邸を偵察している前原伊助(若林豪)は、吉良に雇われた町道場の荒くれ者たちに眼をつけられた。伊助と仲の良い安兵衛は、道場主の荒巻一心斎(青木義朗)との果し合いを決意、大石内蔵助(三船敏郎)に迷惑はかけられぬと脱盟届を出して約束の場所へと向かう。祈るしかないと言う大石たちに対し、彼だけを死なせるわけにはいかないと伊助も槍を持って後をつけた。 大勢の手下を引き連れて待っていた荒巻は、卑怯でも何でも勝てばいいのだと人海戦術で二人を苦しめる。さしもの喧嘩安兵衛もこれまでか!と思われた瞬間、「この勝負、俺が許さんっ!」と一学さんが力強く駆けてきた(義兄弟センサーおそるべし、というわけではなく、親切な部下が知らせてくれたおかげである)。正々堂々と1対1で勝負しろ、さもなくば俺が相手だと二天一流の構えで殺気立つ一学さんを前にしてクルッと向きを変えた荒巻(怖かったのか)は安兵衛に対峙、卑怯にも背後から切りかかろうとしていた手下ともども、彼の刃の餌食となった。 「どうだ久しぶりに一献」「立場上“堀部安兵衛”とは飲めんが、偽名のお前となら」なんてことを言い合いながら笑顔で帰る義兄弟ズ(+伊助)の様子に、やはり心配で来たらしい(たぶん一学さんが来なかったら自分が荒巻を瞬殺しようと思っていたに違いない)大石も安心したようにその場を去るのだった。 *討入りまであと1ヶ月(=10話分)。今度会うときは雪の吉良邸で死闘を繰り広げる運命の義兄弟の最後の友情話(だと思うとちょっと泣ける)。 *丹波さんがいないお陰で最初で最後の(?)トメ位置に収まった天っちゃん。普段と比べて声が少々かすれていたような気もしたが、堂々といいとこ取りをしていた(さすが最後尾)。おまけに今回も“紫のひと”は健在。特に決闘シーンでの三つ巴紋がちりばめられた紫の袴はインパクト大だ(さすが最後尾←関係ない) *8年後には殺戮チーム(違)を組む豪さんと天っちゃんだが、同じ画面に収まれど会話は直接なかったようだ。ちなみに豪さんは今回もピンクたすきで頑張っていた(あれが好きなのか?)
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2008,02,08, Friday
「暁の江戸潜入」(1971年・S46・9月28日OA)
吉良邸の長屋でごろ寝している清水一学(今回も桔梗色の帯がまぶしい天知茂)を、御高祖頭巾の武家が訪ねてきた。大石内蔵助(三船敏郎)がついに江戸入りするとの噂に、自分の殿様(=吉良の実子)がとばっちりを被ることだけを懸念する上杉十五万石命の家老・千坂兵部(丹波哲郎)である。 「斬って欲しいのだ、大石を」 千坂様からいきなり刺客になれと言われた一学さん、「ムシの良いご依頼ですな!」とまったく相手にしない(そうでしょうそうでしょう)。薄汚い暗殺屋として大石殿を倒すなどまっぴらごめん被ります、そう言ってふくれっ面でそっぽを向いた彼に千坂様は「その答えは予期しておった」ときり返し、武士として必ず償いをいたす、お主の後を追って晴れ晴れと腹を切ろうじゃないかと重ねて持ちかける。そんな、自分ちのことしか頭にない他所の家老の命なんかで償ってもらってもねえ・・・「分かりました!」って今度は即答ですか一学さん! どうやら(クレジットがトップとトメの)ミフネ&丹波両名と冥土へ道づれっていう未来予想図が気に入ったらしい。 そんなこんなでやっぱり丹波さんにいいように使われるさだめの天っちゃん、もとい一学さんは大石の潜伏先へと向かった。柳生家当主・俊方(仲谷昇)と内蔵助を引き合わせたい柳生の忍び・お蘭(上月晃)はなんとか一学さんを足止めしようと手下に襲わせるが、ザコでは話にならんと数名を得意の二天一流で瞬殺(みね打ち)した彼は、子供と釣り三昧の内蔵助に対峙する。 子供をお蘭に預け、刀を交えるふたり。緊迫感あふれるシーンだが、腕のなまっちろさからして一学さんの分が悪そうなので(それは関係ない)早く収拾つけてくれ、と思っていたら白馬に乗った王子様ならぬ柳生の殿様が現れて止めに入り、吉良家に傷がついてもいいのかと脅された一学さんは渋々引き下がった。 内蔵助と対談した柳生俊方は、彼が世論をがっちり味方につけていることを確信し、討入りを事実上容認する構えをみせた。憤る柳沢吉保(神山繁)だったが、こうなったら上杉十五万石を巻き添えにして取り潰してやる、と闘志を燃やす。千坂様ラブのお蘭のたくらみは裏目に出たのだ。「なんと卑劣な・・・!」ついさっきまでまさに卑劣な行為をしかけていた一学さん(上杉家へのおよばれだからか、新撰組のような浅黄色の羽織着用。袴はもちろん紫)と千坂様は自分たちのことは棚にあげ、更なる苦難を予想して眉間を深くするのだった。 *久々の登場ゆえか、かなり美味しい設定を作ってもらっていた一学さん。しかしよその家来に頼みにくる千坂様も千坂様だが一学さんも一学さんだ。「大石殿を迎えて同行3人、冥土の道連れとして悪くありませんな」って、自分だけ死ぬ確率が一番高いということは考えてないのかこのひとは。
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2007,12,30, Sunday
#92「天下を占う大姐御!」(1985年・S60・1月26日OA)
甲府藩ではここ最近で年貢の取り立てが急増、農民たちは生活苦にあえぎ、若人たちの藩政への不満は極限に達している。 「この奸賊め、天誅だ!」 甲府城から出てきた裃姿の城代家老・平岡監物(天知茂)はいきなり若侍に襲われ肩を負傷した。藩主・柳沢吉里が病弱で引き籠っているため、監物と大目付の根津主水(北町嘉郎)が増税の元凶と憎まれているのだ。だが、付き添っていた根津たちにメッタ突きに遭う若侍に向かって「愚かな奴だ…」と呟く監物の眼は、なぜか哀しみに満ちていた。 事件を目撃した御庭番の半蔵(荒木ストロンガー茂)は吉宗(松平健)に報告。窮状を知った上様は自分が行くと力強く宣言、爺(有島一郎)や越前(横内正)、それからめ組の人々をも引き連れ、ほぼ慰安旅行のノリで甲府を目指す。甲府へ入った途端、怪しげな占い師の尼僧・妙締(特別出演:淡谷のり子)に呼び止められ「この町に入ってはいけない、命に関わる危険が」云々と諭される上様だが元気よく歩みを進め、若侍・滝沢隼人(大場順)を助けた。隼人は改革派のリーダー的存在で、家老と大目付を排除し、江戸家老の柳沢帯刀(遠藤太津朗)を擁して藩の立て直しを図ろうとしていた。 監物宅に奉公している彼の恋人・香織ちゃん(内山みどり)を送りがてら、上様は問題の監物に会う。なぜ増税で藩民を苦しめるのか、との問いに監物は盆栽をいじりながら、木を助けるためには花も実も落とさねばならん、わしはこの鋏だ、切られる身にとっては憎かろう、だが幹を枯らす訳にはいかんのだとコワモテに似合わぬ落ち着いた(そして意味深な)答えを返すのだった。 御庭番ズの調べによれば、どうやら大目付の根津がボスを裏切って(だめじゃん北町さん)江戸家老の柳沢とつるみ、ある目的のために軍資金を貯め、藩民の恨みを監物に集中させようとしていることが判明。しかしその時には隼人ら若侍と農民たちは踊らされているとも知らずに一揆を決行しかけていた。上様は辰五郎(北島三郎)に頼んで民衆を足止めさせたものの、隼人たちは香織ちゃんの制止を振り切り根津の屋敷を襲い、一網打尽に。 恵林寺にいた監物に会った上様は彼の真意を問う。貴方は根津らの背後にいる人物を知りたいがためにあえて奸賊の汚名を被ったのではないのか、そう図星を指された監物は、黒幕が尾張大納言であること、尾張に甲府藩の実権を握られては幕府存亡の危機に繋がるとみたためだと告白、「だが“心頭滅却すれば、火もまた涼し”とは申せ、凡夫の身には辛い…辛い毎日でござった…!」とただでさえ辛そうな顔をさらに歪めて床に突っ伏す。実は陰腹を切っていたのだ。 吉宗の正体を知っていた監物は、自分の命と引き換えに甲府藩の庇護を懇願、上様の肯きに安心したようにぱたりと倒れ、帰らぬ人となってしまった…(あとは北町っちゃん&エンタツさんが成敗され、監物サマの心を知った隼人たちが仲良く墓参、実は隼人くんの母だったのり子姐さんも現れてめでたしめでたし、上様一行は富士山を見てニッコニコ、のハッピーエンドだがもはやそれはどうでもいい) *淡谷のり子さんとのブルース対決(違)は、タイトルその他で彼女に華を持たせつつ、その実は天っちゃんのワンマンショーだった。殺陣が無く(冒頭もやられっぱなし)ひたすら耐えてる監物さまが最後に見せる決死の覚悟が泣かせる。こういう“静”の人も力みなく演じられるお年頃になってきたのに、数か月経ったらもう…と思うと残念だ。 *香織ちゃんの“ご家老さま”発言を聞いた隼人の台詞「あんな奸物は監物で十分だ!」…もしやこのシャレのために名前が「監物」だったのか? *そういやまた予告編をチェックするの忘れました(泣)…ご覧になった方、どんなだったか御教示下さると嬉しいです。 *(2008.3.23追記:再放送でめでたく予告編チェック。300回記念作品!ということでタイアップ先のホテルや素の格好でロケバスに乗り込むレギュラー陣が映ったりしていたが、果たして天っちゃんは甲府まで行ってるんだろうか?)
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2007,12,24, Monday
「哀しき士情」(1971年・S46・5月18日OA)
上杉十五万石が何より大事な家老・千坂兵部(丹波哲郎)は、殿さまがパパ(=上野介)の加勢をしてとばっちりを喰らうことを恐れており、赤穂浪士が討ち入ってきたときにすぐ勝敗がついて自分ちの殿さまが出陣しなくて済むよう、片腕・大須賀(睦五郎)に命じてわざとヘタレな連中を吉良邸へ赴かせた。何も疑わずに彼らを受け入れる上野介(市川中車)だったが、吉良家一のコワモテ、じゃなくて手だれの清水一学(おそらく吉良家一のハデ衿の持ち主:天知茂)だけは彼らの力量不足を見抜いていた(大須賀と二刀流で渡りあうカッコいいシーン有)。 一方、吉良邸の図面が欲しい赤穂サイドは屋敷にスパイを送り込まんと画策、高田郡兵衛(田村高広)の妹・おその(真屋順子)が兄に強引に乞われてその任に当たる。さっそく上野介に気に入られた彼女だが、図面をしたためているところを大須賀に見とがめられた。しかしその窮地をさりげなく救ってくれたのは誰あろう一学さん。邪魔されてムカついた大須賀は手下と共に無謀にも一学さんに夜討をかけようとするものの、「フッ、わざわざ腕の無いところを見せにきたのか」と不敵に笑われた挙句あっという間(カメラ早回し)にノされてしまった。 しかしムカついたのは一学さんもだったようで、その足で上杉邸へ向かい、兵部に真意を問う。兵部はそれに直接答えず、一学さんと堀部安兵衛(渡哲也)の義兄弟の証=脇差を手にとる。 ――お主はその刀で義兄弟の志を阻むのか。 そう問われてちょっと黙りこむ一学さんに、わしは内蔵助の志を阻もうとは思っていない、すべては上杉十五万石のためなのだと兵部は重々しく自らの士道を説く。その勢いに圧されたのか、一学さんは「それではせいぜい仲良くやることにしましょう」とあっさり帰っていった(新東宝対決はやはり丹波さんの勝ちらしい)。 おそのの素性が吉良家御用達の三州屋(清水元)にバレそうになり、亭主・弥助(田村亮)は自らの命と引き換えにして三州屋に秘密を守るよう懇願。事情を聞いたおそのは吉良邸から弥助の亡骸を弔いに向かうが、後をつけてきた人物がいた。探偵の虫が騒いだ一学さんである。 内蔵助(三船敏郎)と共に墓地にいた安兵衛は義兄弟の姿に驚き、吉良にチクられては大変とばかりに刀を抜いて対峙する。だが一学さんは「相変わらず気が早いな安兵衛」と動じず(その気の早さで前回は帰参させられたわけだからして)、一学さんに刀を交える意思がないことを見てとった内蔵助も安兵衛を諌めた。かくして大物にさりげなくナイスガイぶりをアピールした一学さんは、沈黙を守ることを誓って余裕の背中を向けて去ってゆくのだった。 *しかしおそのさんは次回、上野介に慰みものにされて自害してしまうそうである。きっと一学さんが呑気に構えていたせいだろう(っていうか、お次の出演は#39までないのだから仕方がない)。
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2007,12,13, Thursday
「公儀への一戦」(1971年・S46・4月27日OA)
自分のショバで道場破りをしている凄腕浪人がいると聞きつけた堀部安兵衛(渡哲也)が駆け付けたところ、それは#7で夜逃げして以来行方をくらませていた清水一学(「無宿侍」チックな浪人髷の天知茂)であった。「おう、一学じゃないか!」「これは堀部殿」安兵衛のあけっぴろげなフレンドリーさに対し、一学さんは丁寧だが固めの口調。赤穂VS吉良の確執を慮ってのことだが、お前は吉良を見限って浪人してるんだから俺は構わないさ、と安兵衛は屈託がない。 安兵衛は、郭内に籠ったきりの吉良上野介(市川中車)やなかなかお神輿を上げない大石内蔵助(三船敏郎)に業を煮やす急進派のひとりなのだが、彼らの先走りを危惧する大石は「いざとなったら公儀への一戦も辞さないつもりなのだからまあ待て」云々と書かれた手紙を送って寄こす。しかしそのヤバめの手紙を、燃やす直前に隠密に奪われてしまいピンチ到来。とそこへ、たまたま安兵衛を訪ねようとしてぶらぶら歩いていた一学さんが鉢合わせ、安兵衛の頼みに何の躊躇もなく隠密を叩き斬り手紙を奪い返してくれた。 それがとても嬉しかったらしい安兵衛は、お前だけは信じられる男だ、どうだ俺と義兄弟にならんか、そう言って脇差の交換を提案。一学さんも笑顔で応じ、愛妻のおせいさん(長谷川峯子)や物陰で伺っていたお蘭(上月晃)も男同士の熱い契りにキュンとくるのだった。 実は二天一流を極めた凄腕の一学さん(今回は二刀流は拝めなくて残念)には再々の帰参の要請が下っていたのだが、赤穂シンパになってしまった彼は首を縦に振らない。保身のため手練の者を手元に置いておきたい上野介は、一学さんを放逐した張本人である国家老(=おせいさんの父)・宮石(村上冬樹)を呼び寄せ説得を強要。だが国家老が勢い込んで長屋を訪れると一学さんは留守(←風呂屋)、愛娘の命を賭した懇願に遭った彼は根負けし、黙って引き下がった。 国家老が遺書をしたためているのを見たお蘭(すっかり義兄弟ファン)から相談を受けた安兵衛は一学さん夫婦を引っ張ってゆき、吉良家の門前で切腹直前の国家老を止めた挙句、門を叩いて「清水一学が帰参した」と告げる。ええっ義父上が長屋へ!?切腹!?ってオレ帰参するの!?と、呑気な性分ゆえか話の流れに追いつくのがやっとだった(ようにみえた)一学さんだが、「俺が吉良につけばお前を斬らねばならなくなる」とさりげなく手練ならではの一言。しかし「いや、俺がお前を斬る」とこれまた自信家の安兵衛に返されると、それもアリだなあというような、なんだか悟った笑顔で門の中へ消えていった。 *あの呑気で頑固な一学さんがどうしてまた吉良に戻る気になったんだろうと不思議だったが、たきつけたのは安兵衛、お前か!(←語弊あり) *一学さん、いつもどこかが薄紫色(帯とか袴とか)。おしゃれさん?
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2007,11,30, Friday
「大いなる決断」(1971年・S46・2月16日OA)
吉良上野介(市川中車)の生死が分からず悶々とした日々を送る堀部安兵衛(渡哲也)は、長屋の前で侍たちが“清水一学”の襲撃を画策しているのを耳にした。帰ってみると夜鷹のお絹さん(利根はる恵)が“すごくイイ男が越して来たのよぉ!(ハート)”と身をくねらせており、それが清水なる男のことだと知った安っさんは早速注進に向かう。 新参者の浪人です、先輩よろしく!(←実年齢は10歳上)と明るく挨拶を返した清水一学(天知茂)はその知らせを聞いても「来れば分かるでしょう」といたってどっしり構えている呑気者(自称)。とそこへ先刻の侍たちがごろつきを連れてなだれ込んできた。彼等は吉良家の家臣。「一学、キサマぁ、ご家老様のご息女をかどわかしただろう!」とわざわざ国許から詰りにきたのである。それで初めて、振り切って来たはずのおせいさん(長谷川峯子)が家に帰っていないことを知り慌てる一学さん。問答無用で斬りかかろうとした侍たちだったが、安兵衛がごろつきの始末を買ってでている間に一学さんの手であっさりとノサれてしまったらしい。息も切らさず「片づけました」と長屋から出てくる一学さん、なにやらとんでもなく強いんじゃないかと匂わせるくだりだ。 お絹さんの親切によって、小料理屋で働くおせいさんが見つかった。どうしてこんな、と弱り果てる一学さんに対し、惚れた男に再会できてとても嬉しそうなおせいさんは長屋に一緒に住むことになった。 そんな折、柳沢吉保(神山繁)配下の忍び・お蘭(上月晃)と兎助(露口茂)の物騒な計画のターゲットが安兵衛であることをたまたま聞いた一学さんは、彼の代わりにごろつきたちと二刀流で対峙、ばったばったと峰打ちでなぎ倒した(「せっかくだが、相手が代わったよ」と自信満々でバッと二本の刀を取り出すあたりからワンマンショー)。上野介の無事を知った安兵衛を捕えさせる計画が頓挫して悔しいお蘭は一学さんと一戦交えようとするが、かなりデキる二天一流の一学さんの前に「相討ちではつまりませぬ」と戦意喪失、安兵衛が赤穂の浪人であることだけを告げて去る。 生涯の友と呼べる男がいわば敵側の人間だったことを知り、ショックを受ける一学さん。おまけに長屋へ帰ると、安兵衛の父・弥兵衛(有島一郎)以下親切な人たちが、おせいさんとの祝言の場を設けてくれていて気づまり極まりない。前回(#6)といい、吉良VS浅野の件に関してかなり鷹揚な態度を取っていた感のある一学さんだが、悩んだ挙句に初夜の晩に夜逃げを決意。新妻・おせいさんは涙を見せつつも、すまながる一学さんに気丈に従うのだった。 *安兵衛がコチコチの硬派にみえる分、かなり丸めというか余裕のある言動の一学さん。天知プロ背負ってる大物は違うなオイ(それとも年の功?) *豪快な二刀流だけでなく、祝言を挙げてからいつもの調子で「おせいどの!」と呼んじゃって「おせいです」とつっこまれるあたりの可愛さも必見(しかも3度繰り返し)。 *タイトルの意味は夜逃げを決意した一学さんのことでは無くて、お金がないのに農民たちに換金することを決意した内蔵助さんのことだと思われる。 *今回は一学さんのカットシーンはなかった模様。ちなみに次回登場は#17までお預け。
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2007,11,29, Thursday
「悲報 赤穂へ」 (1971年・S46・2月9日OA)
浅野内匠頭の刃傷事件を国許・赤穂へ知らせる早駕籠が吉良家の領地に差し掛かった途端、「殿様を傷つけた赤穂の侍は許せねえズラ!」と息巻く百姓たちに絡まれ一触即発。そこを待て待てと鎮めにきたのが吉良家家臣・清水一学(天知茂)だった。リーダー格の百姓の髷をすぱっと切り落とし(まだ二刀流は未使用)、早駕籠に乗っていた早水(和崎俊哉)たちを通してやる男気を見せてくれる一学さん、初登場からナイスガイ全開である。 しかし百姓たちは国家老(村上冬樹)に泣きつき、一学さんはお説教の憂き目に。それでも吉良の侍か!となじられても「清水一学の士道は、ご家老の士道とは違う!」ときっぱり言い切り自らの行動を恥じる様子などまったくない彼にカッとなった国家老は召し放ちを言い渡した。 ああそうですか、やむをえませんな、とさっさと出ていく一学さんに駆けよる国家老の娘・おせい(長谷川峯子)。二人はどうやら良い仲らしいのだが、さほど未練もない様子であっさりとひとり江戸へ旅立とうとする一学さんに「私も一緒に参ります!」と宣言したおせいさん、待ち合わせ場所を決めて「待っていて下さいね」と念押ししたのに、そこには誰もいなかった…。(彼女が「一学さんと江戸へ行きます」と書き置きを残したせいでひと悶着あるのが次回) *傍系の話だけに、地上波版では一学さんの出番(ご家老にお説教されているシーン)でかなりカットされていたようだ。「黙ってばかりおらず、何か申したらどうだ!」と言われて「…何を申せばよろしいのでしょう?」と真面目に戸惑っている表情なんかが結構みものなんだけどなあ。 *昔は大ニュースを知らせるのも大変だったんだなあとつくづく思う回。江戸から赤穂まで、担ぎ手を数人連れて必死の思いで駕籠を飛ばしまくっても5日以上かかるんだから難儀だ(おまけにこの第一陣では、刃傷事件のことだけで、その後の沙汰などまだ一切わからない状態なんである)。
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2007,11,22, Thursday
東芝日曜劇場「根獅子(ねしこ)のきりしたん」(1961年・S36年 8月6日OA)TBS 21:30-22:30
出演:安井昌二、藤間紫、朝丘雪路、天知茂、早川雪夫 (朝日新聞縮刷版よりあらすじ引用) 『天草の乱で敗れた信徒の一人、漁師の喜作は宣教師ロレンソを救って故郷の平戸島へ小舟で脱出した。気を失った喜作が意識を回復したとき、胸をはだけた女の姿があった。喜作と顔なじみのお春だった。喜作が故郷の根獅子の浜に打ち上げられたのを体温であたためて回復させたのだ。4人の男女をめぐり恋に身を焼く姿を描く。』 *早川さん(雪洲Jr.)がロレンソ役らしいがあとは不明。おそらく喜作=安井さんだろうなと思うが、“4人の男女”に天っちゃんが入っているかどうかは微妙なところだ。
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2007,09,14, Friday
「夜伽女の怨みぶし」(1981年・S56・4月21日OA)
隠密わんこ・火山が運んできた兼子様(尾上松禄)からの密書には、達筆でひとこと「日光例幣使」。日光東照宮へ金幣を奉納する京都の勅使のことだが、今度の勅使・綾小路公友(白塗り・マロ眉の中尾彬)は田沼と懇意なのを良いことに、あちこちの宿場で取りたい放題ヤリたい放題の愚行を繰り返しているらしい。 新さん(天知茂)ら闇狩人メンバーは様子を探るうち、村の娘たちを夜伽に差し出せと強制され憤る百姓たちに遭遇した。なんとか彼女らを救ってくれと懇願された新さんだが、無言で放置。後日、娘たちは綾小路らの慰み者にされた挙句に自殺した。もう勘弁ならねぇ、例幣使を殺るぜ!と怒る安斉さん(山城新伍)や渚さん(坂口良子)をよそに、新さんは「俺達の使命は人助けではない。世直しだ」 と慎重を促す。それに今襲えば、警護を担当している愛しの殿様・松平定信公(沖雅也)に迷惑がかかるから、という理由も大きいらしい。 それなら警護の切り替えが行われる地点で、などと悠長な計画を立てている内に、定信公もへったくれもない件の百姓たちは綾小路の駕籠を急襲、新さんたちの目の前で皆殺しにされてしまった。許婚のおミッちゃんを失った利吉どん(本郷直樹)が握りしめていた血染めの娘たちの署名状を手に、新さん(紫頭巾&風林火山の白装束)はようやく綾小路を叩き斬るのだった。 *大義のためには多少の犠牲はやむを得ない、という新さんの徹底した非情の志、これが番組のオリジナリティのひとつだと思うのだが、結局いつも田沼というラスボスは放置したままなのだから、世直しを語るよりまずは「小さなことからコツコツと(←西川きよし風)」じゃないのか!と突っ込んでしまうのも確かだ。今回も「死んでいった者たちの恨み、思い知れ!」とか言ってばさーっとマロ中尾を斬っていたが、彼らを見殺しにした新さんへの恨みも相当詰まっているとみた。 *戦闘時の紫頭巾、初登場。どうも好きじゃなかったらしく(オープニングには毎回登場するが)しばらくしたら消滅の憂き目に。 *お色気路線も初登場(山城さんがウハウハ)。美女シリーズの井上梅次監督、さすがの手腕である。
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| TVドラマ(時代劇)::闇を斬れ | 11:22 PM | comments (x) | trackback (x) | |