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雲霧仁左衛門 #4
「七化けお千代色くづし」(1979年・S54・7月24日OA)

尾張に到着したお千代(大谷直子)は、松屋(金田龍之介)から女主人として番頭・彦七(北町嘉朗)ら奉公人たちに紹介された。彼女の気がかりは、引き込み役の男の面相を知らないことだったが、“若奥様を追って必死にたどり着いた”という触れ込みで治平(近藤準)が店に担ぎ込まれてきた際に付き添っていた男こそ、今回の引き込み・山猫の三次(左とん平)だった。

“最後のおつとめ”である松屋襲撃の下準備を着々と進めながら、古き良き盗賊道についてまったりと語り合う吉五郎(財津一郎)と雲霧仁左衛門(天知茂)。だがその一方で面が割れて待機を余儀なくされている因果小僧六之助(江藤潤)は、引き込みの大役を犬猿の仲の三次に奪われたと思い込んでクサっていた。お前にしか出来ぬ仕事が必ずあるから、とお頭に諭されたにも関わらず、役に立てない欲求不満が高じて賭場へ出向いた彼は、尾張で病床についた高瀬(三浦洋一)のために金策に奔走中のお京(宮下順子)に発見されてしまう。

報告を受けた高瀬は江戸に支援を要請するため、尾張藩に頼みこんで継飛脚(=公用の速達便)を使わせてもらうのだが、書状は謎の虚無僧(=お頭)がまんまと飛脚たちを川へ放り込んでゲット、秘密裏にもみ消された。ところがお京の伝書鳩がことのほか頑張ったおかげで、“雲霧・尾張に現る”情報は安部式部(田村高広)の知るところとなった。

アジトに迫る火盗の面々。松屋の金蔵の入り口らしきものを見つけたお千代たち。襲撃の日は近い――。

またお前か六之助。

*お頭は殺生無し(ぼっちゃーんと落とされた人がおぼれ死んでない限り)。

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| TVドラマ(時代劇)::雲霧仁左衛門 | 12:08 AM | comments (x) | trackback (x) |
雲霧仁左衛門 #3
「ああ無情!運命峠」(1979年・S54・7月17日OA)

名古屋へ向かう松屋(金田龍之介)とお千代(大谷直子)に付かず離れず同行している雲霧一党が島田宿に差し掛かると、因果小僧六之助(江藤潤)の人相書きが出回っていた。おまけに折りからの雨で川止めとなり、雲霧仁左衛門(天知茂)は、旅籠に泊まらぬよう仲間たちに通達する(自分が誰よりも怪しげな虚無僧スタイルだったからかどうかは不明)。そんな中、“雲霧”を名乗る強盗が宿場に現れたという噂を耳にして眉間を険しくしたお頭は、ワシにも血が騒ぐときがある、と自ら率先してニセ者探索に動き出した。

一方、雨で熱を出したおみつ(池上季実子)は寺子屋の先生・沢田喜兵衛(安井昌二)に介抱されて彼の家にいたのだが、怪しげな賊が沢田を付け狙い始めた。どうやら彼は、賊のひとりの兄の仇らしい。旅芸人を名乗るおみつから“道中世話になった梵論師(ぼろんじ)さん”だと紹介されて沢田の危機を救ったお頭は、その賊こそが雲霧を騙る偽者たちだと知るや否や、4人をばっさり斬って捨てる。

雨は止んだ。ところが、ニセ雲霧を切ったのは誰なのかが不審だと言い出した役人のせいで川止めは解除されない。その上、六之助が隠れていた家の母子はかつて火盗改めの高瀬俵太郎(三浦洋一)の父に世話になったことがあるという因果な事実が判明、六之助を発見した息子は江戸へ馬をかっとばし、高瀬を呼び寄せようとしていた。

密かに舟を用意し、脱出を図ろうとする雲霧一党。だが、おみつに死んだ娘の面影をみた沢田は彼女に留まってほしいと懇願、妻を凌辱された彼の不幸な身の上にシンパシーを抱いたらしい梵論師さん(=お頭)は、ここで沢田殿と一緒に暮らすが良かろう、とおみつに命じる。おみつに相談されたお千代が松屋の目を盗んで「ワタシだってあの娘を育ててきたんです!」と談判にくるが、おみつの本当の幸せを想うお頭の決断は覆らない。

しかし出発の朝、舟の隠し場所には既におみつがいた。お頭の言いつけに背いてでも一緒に行きたい、そう訴える彼女に、親の心、子知らずだなと言いながらも涙目になるお頭。かくして雲霧一党は、からくも逃げてきた六之助も合流して、名古屋へと向かうのだった。

*エリちゃんやっぱり社長さんが忘れられないのね!(ってそれは「野望」)なオリジナル展開の第3話。「普化僧というものは、何人の前でも天蓋をとらず、たとえ親兄弟に行きあおうとも挨拶せず、俗にある時は名を名乗らず…」とか言いつつ露出が多かったお頭、松屋さんともじっくり顔見せ完了。“繋ぎ”の際の読唇術めいた会話法が盗賊っぽかった。しかし正直、六之助をなんとかしたほうがいいと思いますお頭。

*「合計13回の放送で、人を殺すのは4回、それもよくよくのことでしかたなくです」(殺陣師・安川勝人さん:番組徹底ガイドより)とのことだが、今回のアレですでに殺生が2回。ペース速いですお頭。

*はじめて次回予告が。「お千代づくし」(=お千代さんの見どころいっぱい)なのかと思っていたら「お千代色くづし」だったのか…。

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| TVドラマ(時代劇)::雲霧仁左衛門 | 12:08 AM | comments (x) | trackback (x) |
雲霧仁左衛門 #2
「牢に火を放て!」(1979年・S54・7月10日OA)

公家の若後家に身をやつして佐原屋(=雲霧アジトのひとつ)を出る七化けのお千代(大谷直子)。江戸に来ている尾張名古屋の呉服問屋・松屋善兵衛(金田龍之介)を籠絡することが彼女の今回の務めである。松屋襲撃を最後に仲間を引退させ、いつかは京都でひっそりと暮らしたい、わしの死に水をとってくれるのはお前だと思っている――愛しのお頭・雲霧仁左衛門(天知茂)の言葉を噛みしめ任務達成を誓うお千代だったが、彼女と六之助(江藤潤)の舟を追う者がいた。火盗改めの密偵・鹿伏の留次郎(市村昌治)だ。

片腕かつ労咳病みの駒寺の利吉(武田洋和)が偶然六之助を目撃、かつて雲霧一党にいた留次郎にネタを売ったのだ。留次郎を見つけた六之助は「お頭の恩を忘れやがって!」と怒り心頭、殺しはご法度だと分かっていながら匕首でぶっすりやってしまう。事件を聞いた小頭・吉五郎(財津一郎)は急ぎ仲間を分散させ、(500万かかったらしいセットの)佐原屋を炎上させた。

責任を感じた六之助は、他に自分たちの正体を知っているものがいないか探ろうと単身で火盗改めに乗り込まんとするが、先回りしていたお頭に「命は粗末にするな」と諭される。お頭は火盗改め側の情報を知るための格好の人物を既にチョイスしていたのだ。その人物とは、やり手の山田藤兵衛(高松英郎)と比べて安部式部(田村高広)の覚えがめでたくない上、借金苦の飯屋の女と良い仲になっている与力の岡田甚之助(穂積隆信)。おみつ(池上季実子)&熊五郎(谷隼人)に法外の大金を手渡され少しは抵抗した岡田だが、俺を選ぶとは雲霧はさすがだと半ば自棄のように笑い、利吉の名前を明かす。

ところが利吉は実家で労咳に倒れ、息を引き取っていた。先に居場所を突き止めた火盗改め側は、利吉と老母の身代わりを立て、雲霧一味の到着を待つ。現れたのは小頭、治平(近藤準)と六之助。小頭は常人離れしたパワーで治平を連れて逃げ切ったが、六之助は捕えられ、火盗改めの執拗な拷問に晒された。

六は死んだ者として精霊流しを始める小頭、なんで助けに行ってやらないんだよ!と息巻く女たちを他所に、じっと火盗改め方の見取り図を見つめるお頭。やがて彼は、役宅へ戻る途中の岡田の前に黒頭巾(鞍馬天狗風)で姿を見せる。「牢屋台所に油を流し火を放つ。時刻は八ツ半きっかりだ」もう後戻りは出来ぬ――有無を言わせぬ口調と無造作に置かれた小判に、岡田は従うしか無かった。

そして深夜にあがる火の手。焦る山田たちの元へ、隣家の旗本・上村左京(字は当て字:もちろんお頭)と名乗る火消し装束の侍と家来たちが駆け付けた。手伝いと称して牢屋を破壊し、六之助を助け出した後、“左京”は安部式部へ「火の元にはくれぐれもご用心」と伝言を残し、天知キャラ五指に入る高笑いを放つのだった。
(その後、松屋と共に名古屋入りするお千代、その後をそれぞれの扮装でついてゆく雲霧一党と虚無僧姿のお頭でおしまい)

*“五指に入る”としたが、高笑いする天っちゃんキャラは数えると文字どおり片手で足りそうだ。明智センセイと、氏家@「野望」と、新さん@「闇を斬れ」と…あと、別格だが深沢兄@『勝利者の復讐』とか?

*「雲霧仁左衛門の顔をみたものは、誰もいなかった…」(OPより)ということなのに、山田さんや岡田さんはじめみんなに顔バレバレだったお頭、この先大丈夫なのか。

*本筋とは関係ないところで怖いくらい熱演だった利吉の老母。演ずる津路清子さんというと『地獄』で天っちゃんの首を(死んでも)締めてたあの母ちゃん。なんだか納得だ。

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| TVドラマ(時代劇)::雲霧仁左衛門 | 12:09 AM | comments (x) | trackback (x) |
雲霧仁左衛門 #1
「初夜に賭ける凄い奴ら」(1979年・S54・7月3日OA)

今夜は呉服問屋・武蔵屋の祝言。親代わりの近江屋(財津一郎)に連れられて楚々と輿入れしたお千代(大谷直子)は、新郎はじめ家人が不自然な寝息を立て始めたときに本性を現した。彼女、そして半年前から女中働きしていたおみつ(池上季実子)らの手引きで入って来る黒装束の面々。ひときわ目を引く衣装(と面相)の男が指示を出す。「たとえどのような事があろうと、決して人を傷つけてはならぬ…」彼こそが天下の大盗賊・雲霧仁左衛門(天知茂)その人であった。

ケチで有名な呉服屋からまんまと大金をせしめた雲霧一党。「七化け(ななばけ)」の異名をとるお千代姐さんは、久々にお頭の隠れ家に呼ばれた。各地に散らばった仲間に行き渡る金を手に入れたら、お前と二人でひっそりと暮らそう――お頭のメロドラマな台詞に少女のように恥じらうお千代姐さん。隠れ家に同行した、密かに彼女に惚れている因果小僧六之助(江藤潤)は心中複雑だ。

次のターゲットを悪徳医者の竹村玄洞と定めたお頭は、まず富の市(荒井注)を送り込む。しかし、かつて雲霧一党にいたが人を殺めて破門された草間の勘蔵(堀口真三)もまた玄洞宅を狙って下工作を始めていた。そんな勘蔵を雲霧一味ではないかと睨んで接近したのが、火盗改めの密偵・お京(宮下順子)。火盗改め方新任長官・安部式部(田村高廣)のやり手ぶりを刀売りに扮して偵察したお頭は、小頭の吉五郎(財津)と二人で玄洞宅を見張ることに。

勘蔵の性分から決行の日が近いと踏んだお頭の読み通り、その夜勘蔵一味が玄洞宅へ押し入った。ところが中はお京が呼び寄せておいた役人でいっぱい。どさくさに紛れて逃げようとした勘蔵の前に姿を現したお頭は、畜生働きをした上に刃を向けてきた彼を一刀の下に切り捨てると、州走りの熊五郎(谷隼人)に命じ、玄洞が肌身離さず持ち歩く金蔵の鍵の型を取らせた。

勘蔵たちが全員捕縛された翌日。雲霧一党がいつものように無殺生のまま、完成した合鍵で金蔵をごっそり空にしたとの知らせをうけた安部式部は、憎き男の名を呟くのだった。「雲霧…仁左衛門…!」(そして普通に嬉しそうにデカイ魚を釣り上げて笑ってるお頭でエンド)

*雲霧第1話。時代を(というより軽く美女シリーズを)感じさせるヤンヤンみょんみょんいってるライトなテーマ曲&BGM、そこまでせんでも顔で十分目立ってますよなお頭の一人色違い盗賊衣装などなど、「ドラマはフィクションで夢や娯楽を売るもの」という天っちゃんの基本姿勢が垣間見られるサービス精神旺盛な雰囲気が漂っていた。もうちょっとシリアスでもいいとは思うんだが、時代が時代なんだろう。

*たしかに話を詰め込み過ぎているので(とはいえ武蔵屋襲撃だけだとお頭の出番がショートだから仕方ないのか)、登場人物の描写などは物足りない。…っていうか、もう出てくるのか富の市。

*「宮川一郎の仕事―自選シナリオ集」に収録されているシナリオと比べると、お頭が自発的に勘蔵を斬る件(原作もそう)が変更されているのが興味深かった。あと、目を血走らせた火盗の面々とすれ違う深編傘のお頭、という渋いシーンでラストだったのが、呑気な釣りシーンになっているのは、お頭の余裕シャクシャクぶりを表すのにはこっちがいいのと判断だろうか。

*それにしても、エンディングにはオレの唄、とかいうサービス精神はなかったのか天っちゃん。…あったらあったで微妙かもしれないが(暴言)

*そういえばQueenのPV「Sheer Heart Attack」(Queen Rocks収録)で使われていた「雲霧…」アイキャッチ、まさにこの作品のものだとようやく判明(たぶんお千代姐さんの目だったと思う)。アイキャッチが文字通りアイキャッチ(=目のアップ)になっているあたりが面白い。

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| TVドラマ(時代劇)::雲霧仁左衛門 | 12:11 AM | comments (x) | trackback (x) |
「柳生…」ほどはスッキリせず
(1979年7月3日付読売新聞より引用)
試写室
新番組 雲霧仁左衛門
「柳生…」ほどはスッキリせず


非道な武家社会からはじき出された元武士の雲霧仁左衛門(天知茂)が、幕府権力の悪に報復を決意し、その資金作りに大盗賊団を組織して、悪徳商人だけをねらい大金を盗んで行く、という設定である。

池波正太郎原作、五社英雄監督の松竹映画が当たったのでテレビでもという、「柳生一族の陰謀」と同様の企画だが、「柳生―」がテーマがハッキリし、スピーディーな殺陣と工夫を凝らした忍術で面白く見せたのに比べ、こちらは第一回を見た限りではかなり落ちる。

おぼこ娘に化けた雲霧の手下お千代(大谷直子)が、豪商に嫁入りして盗みの手引きをする話だが、権力悪への報復という肝心のテーマは忘れられてしまっている。

雲霧が愛人のお千代を抱きしめるシーンなどはメロドラマ。そして「いずれは配下の者どもを正業につけ(盗んだ金でだろう)、わしもお前と二人で静かに暮らしたい」と言うにいたっては、大盗どころか小市民である。

まず第一に、泥棒の主人公を茶の間の感覚になじませることが難しいのだ。小川真由美がやった“女ねずみ”は金を庶民にばらまき、一応、悪もやっつけた。なのに、こちらは金をふところに入れたまま、悪を倒そうなどという話は全然ないのだから、天知の雲霧が外見いくらかっこよくても立派に見えてこない。土台のテーマからしっかり立てて出直してほしい。(武)

*朝日新聞以上に辛口な初回レビュー。しかし“小市民”的メロドラマな部分も、悪を倒そうという話が全然出てこないのも、すべて原作通りなんだから仕方ないじゃないかあ(この筆者、原作読んでないのか?)…まあ、とりあえず雲霧のお頭、これだけシビアな批評でも「外見だけはかっこいい」ことは認められているようなので良しとしよう。

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| TVドラマ(時代劇)::雲霧仁左衛門 | 12:12 AM | comments (x) | trackback (x) |
「雲霧」紹介記事
ケーブルテレビの番組ガイドに、「雲霧仁左衛門」の写真付き紹介記事がありました。
雲霧仁左衛門
しかしなんですかねこの悪人笑顔は(あ、いちおう悪人でしたか)

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| TVドラマ(時代劇)::雲霧仁左衛門 | 12:14 AM | comments (x) | trackback (x) |
闇を斬れ:エンディング曲
「ゆるゆるな女性の歌声にのせてわんこと新さんの春夏秋冬プロモーション映像みたいなのが流れるエンディングになるとなんだか体中の力が抜けてしまう」(#8)なんてことを書いていたが、毎回聴いてるうちにクセになってしまったのがこの曲。

大橋純子「アプローズ」(ベストアルバム「MINDS」収録:1982年6月)

*サワリ部分を公式サイトで試聴できます。この後の展開が好きなんだけど。
*時代劇のエンディングとしてのシングルは出なかったのかなあ(たぶん人気が無かったんだろうな←本編の)

(2009.10.23追記)上のアルバム(「MINDS」)はまだCD化されていないようですが、今年6月にリリースされたCD(「Tea For Tears」)のボーナストラックに「アプローズ」が収録されています

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| TVドラマ(時代劇)::闇を斬れ | 11:18 PM | comments (x) | trackback (x) |
「主役が悪人」に珍しさ
(1979年・S54年7月3日付朝日新聞より引用)
試写室
雲霧仁左衛門
「主役が悪人」に珍しさ


劇場用映画でヒットした作品をそのままテレビ化――最近は別に珍しくはない安全路線の手法である。この「雲霧仁左衛門」もその一つ。いまさら企画の貧困などというまい。どうせテレビと割引いて見れば、意外な新鮮さもある。

まず、このシリーズ、主人公がはっきりと「悪人」であることが、将軍様や十手持ちばかりもてはやされる最近のテレビの中では珍しい。雲霧仁左衛門(天知茂)とは江戸の町を荒す盗賊の首領。ねらわれるのは悪徳商人だが、犯罪者の側が変に思想性など振りかざさないのがいい。盗むのは単に自分たちが“老後”を安楽にくらすため、理屈などないのである。

見せ場は知恵を絞った盗みのテクニックだが、時代劇には珍しく、美女が、それも悪人役でどんどん出てくるのもいい。世の中、善人の美女ほどつまらないものはない。悪女は美女の条件なのだ。

もう一つ付け加えれば、盗賊を取り締まる側、つまり体制派の役人(田村高広)の方が、「私財を投げ打っても治安を守る」という使命感にとらわれているのも、妙にナマナマしく現代風だ。原作 池波正太郎、脚本 宮川一郎、制作 関西テレビの13回シリーズ。

ただし、何ごともほどほどにのテレビ映画、剣劇シーンは映画のように、そう快とはいかない。登場人物の人物像も今一つ不鮮明で、話には未消化の部分も残った。

*お頭とお千代姐さん(大谷直子)がいちゃついてる写真つき。

*初回放映時の記事。ライターさんは(というより1979年当時の風潮がまだ)映画≫テレビという図式なのか、少々辛口な書き方ではある。雲霧のお頭が盗みを働くのは子分達の老後のためなのは確かだが、彼自身には大事な目的があるはずでは…と思ったりするのだが、そういう部分が不鮮明な初回なのかもしれない。…しかし少しくらい天っちゃんの演技がどうとか書いてほしかったなあ。そのあたり、未消化な部分も残った。←真似

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| TVドラマ(時代劇)::雲霧仁左衛門 | 12:15 AM | comments (x) | trackback (x) |
雲霧仁左衛門 番組徹底ガイド
週刊平凡(1979年・S54年8月2日号)より記事引用
雲霧仁左衛門 番組徹底ガイド
悪徳豪商を次々と襲う神出鬼没の盗賊集団


【主な登場人物】

・雲霧仁左衛門=天知茂。盗賊・雲霧軍団の首領。有能な部下を組織して、天下の政道に徹底的に立ち向かう。盗みをしても血は一滴も流さないのが掟。
・木鼠の吉五郎=財津一郎。仁左衛門の右腕といわれる小頭。雲霧軍団の軍師で人情家。
・七化けのお千代=大谷直子。変幻自在で男を骨抜きにする凄腕の“引き込み役”。
・おみつ=池上季実子。お千代とおなじ“引き込み役”の美女。性質は底抜けに明るい。
・因果小僧六之助=江藤潤。子供のとき仁左衛門に拾われ、その恩義のため死ぬ覚悟で活躍。
・州走りの熊五郎=谷隼人。物心ついたときからの泥棒で、仕掛けやからくりの名人。
・黒猫のお松=ホーン・ユキ。雲霧軍団で料理と変装術を担当。
・山猫の三次=左とん平。軍団きっての手先の器用な男。
・富の市=荒井注。鍼灸の心得があり、軍団の情報係。
・安部式部=田村高広。雲霧と対決する火付盗賊改め方長官。
・山田藤兵衛=高松英郎。火付盗賊改めの筆頭与力。
・高瀬俵太郎=三浦洋一。激しく悪を憎む火盗改め方同心。
・岡田甚之助=穂積隆信。火盗改め方与力だが、雲霧側に情報を流す裏切り者。
・お京=宮下順子。火盗改め方の密偵として働く女スリ。

【雲霧軍団の大敵はヤブ蚊の攻撃とか】

徳川八代将軍吉宗の時代を舞台に、雲霧仁左衛門を首領とする盗賊集団が権力に挑戦、つぎつぎに悪徳豪商を襲って大金を奪うという神出鬼没の活躍を描く娯楽時代劇。
昨年、仲代達矢主演で映画化されてヒットしたが、原作は池波正太郎の同名小説。
ドラマでは、雲霧軍団と火盗改め方の二大組織の熾烈な対決を中心に、奇想天外な盗みのテクニックや女賊たちが織りなす妖艶な色模様が展開。
主役の仁左衛門を演じている天知茂は、芸能生活30周年を迎え「ぜひ記念になる作品にしたい」と語っている。

* * *

迫力満点だったのは、第2話に登場した仁左衛門の隠れ家炎上シーン。
神奈川県相模川近くに、500万円をかけて本格的セットを製作。
消防車4台が警戒するなかで撮影したのだが、火炎が吹き上げ、轟音とともに家が崩れ、2週間かけて作ったセットも、わずか40分で焼け落ちた。500万円があっという間に灰になったというしだい。

* * *

江藤潤と左とん平による、田んぼの中の格闘シーンが第5話に出てくるが、2人には撮影前日、ディレクターから「あすは覚悟してください」と通告。
その予告どおり、ある農家の田んぼを借りてのロケで、すさまじい格闘がくりひろげられた。
おかげで2人とも、泥だか人間だかわからないほど。農家の風呂でどうにか泥を洗い落したものの、2人は口をそろえ、「泥で死ぬかと思ったよ」

* * *

夜のシーンが多いため、夜間のロケがひんぱんだが、悩みのタネはヤブ蚊の襲来。殺虫剤で防衛しても、かいくぐって襲ってくる。
着物の上から刺すやら胸元から侵入して腹を狙われるやらで、被害続出。ドラマは雲霧軍団と火盗改めの死闘だが、撮影はヤブ蚊との“仁義なき闘い”というところ。

* * *

第7話から元ジャニーズの真家宏満がレギュラー入りするが、これを機会に、芸名を立花正太郎と改名。名付け親は原作者の池波正太郎さんで、傘屋の忠吉という役どころ。
ところで、スタジオに野良猫が迷い込み、だれがつけたか呼び名が《忠吉》。
それを知った立花、
「ぼくの役名と野良猫の名前がいっしょとは、かわいがられているのかバカにされているのかわからないですね」

【芸能生活30周年を迎えた天知茂】

天知茂は天下を揺るがす大盗賊役だが、
「無実の罪で追われた武家社会や権力に復讐するのが本当の目的。その心情は、ぼくのやった『非情のライセンス』の会田刑事と共通していると思っている。また、たとえ盗賊でも人間的魅力のある人物だけに、その面を強く打ち出すように心がけてやっています」

* * *

大谷直子は雲霧軍団の姐さん役。
「仁左衛門にひたむきな思いを寄せながら、そのいっぽうで狙いをつけた男はすべて籠絡してしまう。そして度胸がよくていさぎよい。お千代というのは、女の私から見てもほれぼれするほどで、その原作のイメージを裏切らないように、それこそ一生懸命です」

* * *

仁左衛門と対決する火盗改め方長官の田村高広は、
「盗みは許せないのだが、仁左衛門に対しては男としてのみごとさに共感していく。いわば武士の情けというやつです。立場をこえた男の友情を、うまく表現していきたい」

* * *

このほどアマチプロゼに所属、芸名を改めた立花正太郎は、途中からレギュラー入り。
「ぼくのやる忠吉は、原作ではほんのわずか出てくるだけ。それがドラマでは第7話から最後まで登場。改名して心機一転、がんばります。天知茂さんには、晩飯に誘われたりして演技を教えてもらっているけど、なるべく2人きりにならないようにしているんです。なんとなく、まだ怖いんですよ」

* * *

雲霧軍団の情報係役をひょうひょうと演じている荒井注、
「この暑いのにヅラなんかつけて、さらに髪の毛が薄くなるんじゃないかと心配しているというのに、スタッフときたら、もうそれ以上ハゲないよなんていっている。これ、慰めなんでしょうかねえ」

★スタジオから★

人を殺さない仁左衛門
剣法に苦労


「迫力のある立ち回りは欠かせませんが、天知茂さんの注文はなるべく人を殺さず血を流さないようにという方法。そこで合計13回の放送で、人を殺すのは4回、それもよくよくのことでしかたなくです。
したがって、天知さんの殺陣はもっぱら峰打ち。しかし、明らかに峰打ちだとわかるような見え見えの方法ではなく、一瞬、本当に斬ったように思わせて、じつは峰打ちだったといったやり方で迫力をだしています。
また、仁左衛門は元武士という設定だから、当然剣法の型も、武士スタイル。やくざ剣法とは違います。どうかすると、侍でもやくざでも、やたらとぶった斬る立ち回りが目につきますが、侍には侍の型、やくざにはやくざの剣法がある。その違いがないのはおかしいわけで、それぞれ役の設定に応じた殺陣をつけるようにしています。
このドラマの場合、雲霧軍団側は仁左衛門以外はやくざ剣法、対する火付盗賊改め方は侍の剣法。まともに正面からぶつかれば、剣の修行を積んだ火盗改めのほうが強いはず。でも、それではおもしろくありませんので、やくざ剣法でも侍と対等にやり合えるように、くふうをこらしています。とはいっても、殺陣師の力はわずかに3分、あとの肉付けは役者さん。その点、このドラマのみなさん、うまく肉付けしてくれているので、殺陣師の私も安心して見ていられます」
(殺陣担当・安川勝人さん)

★これからのあらすじ★

第5話「松屋襲撃」7月31日(火)夜10:00放送
名古屋の豪商・松屋善兵衛の金を狙う雲霧一味だったが、山猫の三次が暁一味の福右衛門に金と女で籠絡されたことから火盗側に松屋掠奪の意図を知られてしまう。仁左衛門は火盗の裏をかいて松屋の金を奪ったが、金は5000両しかなかった。

第6話「裏切り者は消せ!」8月7日放送
松屋襲撃のあと、仁左衛門の気がかりは、味方に引き込んだ火盗改めの与力・岡田甚之助のことだった。仁左衛門の不安は的中、長官の安部式部が岡田の行動に目をつけていた。仁左衛門は、式部の先手を打って、岡田を斬るのだった。

*詳細な(写真もかなり付いている)番組ガイド。殺陣の違いなども分かって興味深い。しかし注さん、よりによってヅラ話ですか。

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“執念持つ男”に執念
(読売新聞1979年7月1日付記事より引用)
今週のタレント 天知茂
“執念持つ男”に執念
“雲霧”は痛快な時代劇を


「僕がずっと演じ続けている役柄は、復しゅうとか、体制への反逆とか、執念を持つ男です。今度の役も、この線を行きます」

3日からフジテレビ系で始まる「雲霧仁左衛門」(火曜=午後10:00)で演じる仁左衛門のキャラクターである。
八代将軍吉宗の時代を舞台に、非情な武家社会から追われた仁左衛門が、盗賊集団を作り、悪徳商人から大金を奪って、幕府の権力に挑戦するというドラマである。
「この仁左衛門は、現代なら悪徳商社といえる大店ばかりをねらって盗み、人は絶対に殺傷しないという人物ですけど、泥棒は泥棒ですからね、魅力的に仕上げるのが難しいです」

天知は今年芸能生活30周年。先週は東京の日劇で芝居と歌のワンマンショー、きょう1日から約1カ月は大阪の梅田コマで「雲霧―」の舞台と忙しい。
天知といえば、テレビ朝日系で放送した「非情のライセンス」の会田刑事の印象が強く、劇場へ来る客もこのファンが多い。ねらった獲物は逃さないという、タカのような目が魅力で、これが会田にも雲霧にも共通する。

「映画なら黒沢明監督の『用心棒』、テレビだと五社英雄さんの『三匹の侍』あたりから、時代劇も西部劇タッチでリアルになってるようですが、ともすると、リアルがイコール汚れになっているような気がします。僕はアラカンの『鞍馬天狗』、大河内の『丹下左膳』で育ったもんで、やはり、今度の『雲霧―』も昔からの様式美を大事にして、きれいなふん装と痛快なアクションの古典的時代劇を目ざします」
(刀を構えている盗賊姿の写真付き)

*「雲霧仁左衛門」放送前のインタビュー記事。時代劇とはどうあるべきか、彼流の考えが分かる。「雲霧…」は現時点では未見なので分からないが、ものすごくシリアスなのにどこか非現実的な雰囲気が感じられる出演作が多いのは、このあたりが根本にあるのかもしれない(汚れた天っちゃん、なんて見たことないもんなあ)

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