2010,01,22, Friday
「卍どもえ 色と盗みのテクニック」(1979年・S54・9月4日OA)
ワンマンな豪商・越後屋善右衛門(伊沢一郎)に接触中の雲霧一党の富の市(荒井注)は、店で知り合い、家まで押し掛けてきた青物売りのおかね(弓恵子)に本気で惚れてしまった。しかしおかねは夜兎の文蔵(上田忠好)を頭と仰ぐ引き込み役。最後の勤めを越後屋と定めた年老いた文蔵のため、主人と親しそうな富の市に近づいてきたのだった。熊五郎(谷隼人)の指摘で彼女の正体に気付く富の市だが、惚れた弱みで始末できない。 ある夜、おかねは富の市が描いた店の見取り図を見てビックリするが(まさかご同業だとは知らなかったらしい)、それをくすねて仲間の富三(大貫達也)に渡した。ところが富三は時代遅れのお頭を裏切り、見取り図を畜生働きし放題の鳩栗の大五郎(福山象三)への土産とする。文蔵を切り殺す富三。と、そこへ大五郎一味を追っていた火盗改めの面々が現れ乱闘になる。居合わせたおかねは、彼女を殺せなかった富の市の代わりに後をつけていた利助(江幡高志)に救われた。 雲霧仁左衛門(キリリとした侍鬘と着物の青が眩しい天知茂)とお千代(すっかり甲斐甲斐しい恋女房:大谷直子)の前に連れて来られたおかねと富の市。雲霧のお頭の仕組みだとは知らなかった、覚悟は出来ておりますと言うおかねに抜き身を向けるお頭。あんたが本当に好きだったと打ち明けられた富の市は、切るなら私も一緒に、と彼女に覆いかぶさる。その姿に(というより元より斬る気ナッシングだったらしい)お頭は刀を納め、快くおかねを仲間に引き入れると、部下に文蔵の仇・富三の始末を命じた。 富三はおかね達の手にかかった。そして越後屋に押し入ろうとしていた鳩栗の大五郎一味は、アジトを嗅ぎつけ駆け付けた山田藤兵衛(高松英郎)らによって一網打尽(=皆殺し)に。今回は火盗改めに先を越されて面白くなさそうなお頭だが、おかねと富の市の仲睦まじい様子を覗き見して笑みを見せるのだった。 *1話以来御無沙汰だった注さん、ギャグなど飛ばし気味だった1話と比べてかなり真面目。 *鳩栗の大五郎一味、三重扉+からくり仕掛け(らしい)越後屋の金蔵を襲いそこねて捕まるのかと思ったら、バイオレンス志向の火盗改めにやられてしまった。おかげでお頭は無駄な殺生をせずにすんだ上に越後屋襲撃計画がばれずにすんだが、せっかく左門さま・剣さんレベルの侍スタイルだったのに、活躍がなくて残念だ。
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2010,01,18, Monday
「五十七人の付け人」(1969年・S44・8月2日OA)
箱根での受難(前回)にもめげず、内蔵助の書状を携え江戸入りを果たした神崎与五郎(中山仁)を、仲間たちは温かく出迎えた。道中を共にした八重(宮園純子)も、小豆屋の手代・善兵衛となった神崎に励まされ、養父の仇・大須賀次郎右衛門(加賀邦男)を探すため、浪人達が多く集うという料亭「川梅」に仲居として入り込む。 八重はそれと知らず小林平八郎(戸田晧久)と清水一角(名和宏)の部屋を任されるが、ある仲居から担当を代わって欲しいと持ちかけられた。これも彼女の知らないことだが、相手は先に住み込みで働いていた毛利小平太(トメ位置:天知茂)の愛妻・お艶(広瀬みさ)。吉良家の付け人募集を目的に「川梅」に現れた両名のことを早速小平太に報告したお艶は、夫の顔色がすぐれないことに不安を覚える。だが小平太は月のせいにしてはぐらかし、夫婦離れ離れの生活を憂う彼女を「大事決行の時までは…」と優しく諭した。 一方、神崎もまた小平太の顔色の悪さが気になっていた。実際、そんなに悪くはみえないのだが(暴言)、10話ほど御無沙汰だったりこれが初対面だったりで反応が鈍かった江戸詰メンバー(坂口徹、宮内洋ら)も、彼の指摘で「もともと丈夫ではないくせに負けず嫌いだからなあ」「江戸へ来て無理をしたのではあるまいか」などと一斉に心配顔に。そして、それが合図であったかのように、夜道で小平太は咳の発作に見舞われた。 道端の水桶に突っ伏し、口元を拭った血染めの懐紙を落としてグロッキーな小平太は、覆面男女の会話から「小林平八郎」の名を漏れ聞いてハッとなる。男は吉良家用人・松原多仲(遠藤辰雄)。小平太は首筋に黒子のある女の方を尾行するが、尾行に不向きな典型的天知キャラの御多分にもれず(体調不良のせいもあり)まんまと巻かれてしまった。 小平太を巻いた女は、山科で主税(三田明)といい仲になっていたおぬい(土田早苗)だった。「川梅」で小林と彼女の密会現場を見たお艶からの報告で、おぬいが吉良の間者であると確信した小平太は、来月にも江戸入りする御城代にもしものことがあっては大変と、明朝京都へ経つらしい彼女を追って上洛を決意。とはいえ、1日に1度の逢瀬だけを励みに我慢してきたのに…と嘆くお艶がさすがにいじらしく、すぐ戻るから、と抱き寄せるのだった。 (八重の仇は吉良邸召抱えとなり、神崎とふたり、仇がいる屋敷を見つめて終わり) *小平太さん喀血開始の巻(といっても本人は特に驚いていなかったので、既に何度か吐いている模様)。そんな弱った体で京都へ行かんでも、江戸詰メンバーには仮面の忍者だとか改造人間だとか妖術使いだとか体育会系がうようよいるのになあ。 *イケズそうな仲居頭の折檻を受けながらもけなげに密偵を続けるお艶さん。大事(討ち入り)が決行されたからといって幸せになるわけではないので、余計不憫だ。
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2010,01,15, Friday
「女盗賊の恋」(1979年・S54・8月28日OA)
息子の消息を知りたい――仁左衛門(天知茂)とお千代(大谷直子)を訪ねたかつての仲間・徳兵衛(今福正雄)が探す息子とは、最近おみつ(池上季実子)にプロポーズした大阪屋の手代・由太郎(南条弘二)だった。ところが由太郎は米屋の音吉(松山照夫)というワルの養父に付きまとわれ、「おみつを殺されたくなかったら店の鍵を取ってこい」と脅される羽目に陥っていた。 音吉と一緒にいるのは、血を見るのが何より好きな聖天の半蔵(黒部進)たち畜生働きの常連組。彼らの手引きが由太郎かもしれないと知ったお頭は、お千代のフォローにも取り合わず「盗人同士の恋愛はご法度だ」とおみつの祝言に反対する(自分達のことは棚上げですかお頭)。 その頃、畜生働きを捜査中の火盗改め方もまた、密偵のお京(宮下順子)の働きで半蔵たちのアジトを突き止めていた。だが半蔵らに見つかったお京は捕らえられ失神、そこへ由太郎が鍵を持ってやってきた。お前の本当の父親も盗人だった、だからお前はあの娘(=おみつ)と一緒になんかなれないぜ、と音吉から改めてリクルートされて激しく動揺する由太郎。「そんなこと嘘だ!」 その時。「そう、嘘っぱちだ」由太郎の言葉を受けて黒装束(顔丸出し)のお頭&六之助(江藤潤)が颯爽と登場、血の気の多い手だれ達を一人でばさばさ斬って捨てた。全てが終わった後に駆け付けた高瀬(三浦洋一)は、お京を救ったもののまたしても遅れを取ったこと、そしてヒーロー然とした雲霧の所行に怒りを覚えるのだった。 由太郎の純粋さを知ったお頭は、お千代と共におみつの養い親・甲(江?)州屋善右衛門&その女房に扮し、密かに徳兵衛も伴って、若い二人の門出を祝福した。お互いの素性を知らぬまま、落雁屋を切り盛りすることになるおみつと由太郎。「互いに自分の身に過ぎた女房、亭主と思い遣っていれば、うまくいくことははっきりしております」妹のように慈しんできたおみつの幸せにしみじみするお千代に「わしらのように、か?」と微笑むお頭。こちらの二人も幸せそうに頭上の花火を楽しんでいた。 *おみっちゃん、雲霧一党から寿離脱。ハッピーエンドに落ち着いて驚いた。てっきり社長さんが好きなんだとばかり思っていたが違ったのかあ(だからそれは「野望」)。 *よくよくのことでしかたなく(殺陣師の安川さん談)、には見えなかったが人を殺す回数がこれで4回(ラスト)? 今まで殺した人たち:勘蔵(#1)雲霧偽者たち(#3)岡田甚之助(#6) *ラストの善右衛門さんがなんとも胡散臭げ。左門さまの潜入捜査じゃないんだからして、もうちょっとカンロクを出してもよかったんじゃないのだろうか。
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2010,01,08, Friday
「闇の中の決闘」(1979年・S54・8月21日OA)
一刀流の使い手、“不知火の勇五郎”と名乗る義賊が人足寄場から脱走したらしい。「まさか、勇さん…?」人相書きを凝視したお千代(大谷直子)の顔色が変わる。仁左衛門(天知茂)に拾われる7歳以前、お助け小屋にいた彼女に優しく接してくれた男に似ていたからだ。“勇さん”から貰った土鈴を手に物思いに耽る姐さんのため、奉行所に忍び込んで勇五郎の調書を書き写してきてやる六之助(江藤潤)たちだが、いわば昔の男に気もそぞろなお千代に心中穏やかでないらしいお頭から禁足を言い渡された。 そんな折、お頭に内緒でフリーの嘗(なめ)役・仙之助(宮口二郎)と組もうとしたものの、良心の呵責に耐えかねて懺悔した利助(江幡高志)の口から、勇五郎の名前が出る。一匹狼の彼が、雲霧と組みたいと申し出ているのだという。お千代を伴い、暗がりの御簾越しに勇五郎と面会するお頭。お千代が投げよこした土鈴を見て沈黙した勇五郎の横顔に、お頭はハッと第1話を思い出す。突如響き渡る行者達の念仏。「安部式部、大胆な…!」(←「図ったな」だったか?) 雲霧と接触を図るため、寄場で急死した本物の勇五郎に化けていたのは火盗改めの長官・安部式部(田村高広)その人だったのだ。 火盗に取り囲まれ、式部の白刃に対峙しながらも、ここで捕まるわけにはいかんと逃げのびたお頭(黒頭巾装着済)。だが、思い出の土鈴を取りに戻ったお千代が捕らえられてしまったため、利助をはめた密偵・お京(宮下順子)と粂三(田中幸四郎)を急きょ拉致し、お千代との交換を申し出る。密偵とはいえ同志だからと、式部も部下達の反対を押し切ってそれに応じた。 仁左衛門と式部、1対1での取引――しかし背後ではそれぞれの部下が殺気立っていた。解放され、お頭に駆け寄りながら鉄砲隊の存在を伝えるお千代。狙われた二人は、駆けつけた一党(と六之助の放った煙幕)に救われた。結果として、かけがえのない者を取り戻した双方。式部の元には密偵志願の者が殺到したという。そして舟の中、全ての元凶となった土鈴を水中に捨て「お頭のためなら死ねる」と気色ばむお千代を、お頭は穏やかに赦すのだった。 *お千代姐さん死ぬのか…!?ってな思わせぶりな演出が目立ったオリジナル展開。おまけに勇五郎と式部が元々そっくりだった、という無理目の設定ながら、大ボス同士の息詰まる駆け引きは面白かった。六之助もやっと役に立ってたようでなにより。 *お頭の微妙な表情がいろいろ見られるのも良し。ほんとにお千代姐さんのこと大事に思ってるんだなあ。
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2009,12,31, Thursday
「吉良邸潜入」(1969年・S44・5月24日OA)
赤穂を後にし、江戸に到着した毛利小平太(トップクレジット:天知茂)とお艶(広瀬みさ)夫婦は大石瀬左衛門(坂口徹)たちと合流、夫婦水入らずで暮らせる長屋を紹介してもらった。新妻のしじみ汁を堪能しようとしたある朝、瀬左衛門に呼ばれた小平太は、江戸入りした大高源吾(俳号は子葉:中谷一郎)から、大石内蔵助(山村聡)の「早まるな」との伝言を聞いた。ところが、何も動けない現状に最も苛立っていた杉野十平次(村井国夫)がさっそく早まり、吉良邸に拘束されたとの知らせが入る。 その日、僅かな蓄えを丸ごと持って家を出た小平太は、行く先々でトラブルを起こす酔っ払い浪人・高島十兵衛(土方弘)に「名前を売ってくれ」と持ちかけた。彼は吉良(上杉)に縁のある伊達藩にいた高島の名前で、吉良邸に潜入しようと考えていたのだ。差し出された小判と“断れば斬る”という殺人オーラに高島はあっさり承諾、ふたりは鍔をカチンと鳴らして(=金打(きんちょう)というらしい)契約を成立させた。 一方、お艶は3日も消息を絶っている小平太を心配していた。だが夫は泥酔して帰宅、情けないと詰る彼女に、あろうことか「働きに出ろ」と強要した。深川の料亭・吉野屋に前借してきたのだという。赤穂にいたときの一途な思いは貴方にはもう残っていないのですか、と嘆くお艶には、小平太の涙ぐましいなりきり努力(飲み逃げしたり、そば屋の屋台をひっくり返したり、道端のおねーちゃんの帯をくるくるしかけたり)はもちろん知る由もない。しかし、吉野屋で女将から吉良家用人・松原多仲(遠藤辰雄)を紹介されたとき、初めて小平太の真意に気づく。 その頃、小平太は無事“高島十兵衛”として吉良家の用心棒にとり立てられていた。千坂兵部(西村晃)の肝入りで上杉藩から派遣されている小林平八郎(戸田晧久)に命じられた最初の仕事は、監禁中の杉野の拷問。どつきながらこっそりヤスリを床に残してくれた小平太の配慮に杉野は感謝する。そして、少し前から女中として潜入、裏木戸の鍵を任されているおしの(俵星玄蕃の妹:大原麗子)の協力で彼は脱走に成功した。 杉野逃亡の罪で尋問されるおしのを救ったのは、小平太の巧妙なニセ証言だった。今度は小平太が疑われたが、用意周到な裏工作の甲斐あって、密偵の達吉(堀田真三)の報告でもボロは出ない。千坂兵部直々の取り調べの際も、伊達藩の屋敷の構造や側室の名前までスラスラ答えた小平太に隙はなかった。だがその余りにも優等生な回答が却って千坂の疑惑を濃くすることまでは頭が回らなかったらしい。 私は賭ける、あの人(=小平太)はきっと吉良家にいるに違いない――多仲にとり入ったお艶は、吉良邸に同行した。彼女の膝枕でいびきをかき始める多仲。女中(=おしの)が運んできた大目付からの書状の中身を見ようとすると、再び現れたおしのに連れ出され、中身なら吉良家の屋敷替えの件だと知らされる。来た理由を問われ、夫がここにいるかもしれないのだとお艶が答えたちょうどその時、屋敷が怒号と喧騒に包まれる。本物の高島が仇討ちで死んだことが判明し、小平太が偽者だとばれたのだ。 迫る追手と斬り結びながら庭に出た小平太は、そこに妻の姿を認めて驚く。おしののお蔭で吉良邸を脱出した二人は、杉野から事情をきいて駆け付けた大高たちが用意してくれた舟で無事に逃げのびるのだった。 *実質、彼ら夫婦よりもおしのさんのほうが役だっていた感じもするが、まさに天っちゃんのために用意された回(脚本は宮川一郎さん)。 *小平太さんと他のメンバーとの関係を口調から推測:瀬左衛門・武林・磯貝はタメ(「毛利!」)、杉野はちょっと下(「毛利さん!」)、大高さんは上(「子葉どの」) *小林平八郎配下のムチ使い・城所新兵衛役に宮口二朗さん(師弟で夜の見回りなどしているシーンあり) *経歴に偽りあるときは即刻斬る、とのシビアな命令。偽名以前に経歴書に28歳とあることにツッコンでしまったが、もしや28歳設定なのか小平太さん?
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2009,12,25, Friday
「涙の城明け渡し」(1969年・S44・5月10日OA)
殿様(松方弘樹)が殿中にて吉良上野介(山形勲)に斬りかかり、即日切腹になるというショッキングな知らせが届いて以来、赤穂城下は騒然としていた。城代家老・大石内蔵助(山村聡)がどう出るのか、探りを入れる公儀隠密なども暗躍する中、こざっぱりした侍が医師・矢島玄庵宅を訪れた。侍の名は毛利小平太(天知茂)、浅野家家臣のひとりである。 小平太を嬉しそうに出迎えた矢島の娘・お艶(広瀬みさ)の部屋には婚礼衣装が。恥じらうお艶と純白の衣装を避けるように庭に目を投じ、「私とあなたの婚礼の話はなかったものとしていただきたい」と切り出す小平太。殿の御舎弟・大学様御取り立ての願いは極めて難しい、そうなったら家臣一同、城を枕に討ち死にせねばならない、討ち死にすると分かっている身が婚礼の式を挙げるわけには参らん……苦渋に満ちた彼の決断に、お艶はきっぱりと言い放つ。「私は、あなた様の妻になろうと決めたのです。お取り立てのお願いも、ご籠城も、何も関係ないではございませんか!」晴れて夫婦になり、あなたが討ち死になされたときは、私も毛利小平太の妻として覚悟は出来ている、と。フィアンセのけなげな言葉を聞いて、小平太は彼女をひしと抱き寄せる。 徐々に脱藩者が増える赤穂城内。間近に迫る江戸からの軍勢。やがて内蔵助が「明日、殉死する」と一同に告げたその日、小平太はお艶と祝言をあげた。「ふつつかものですが、幾久しゅう、お願い申しあげまする」「…幾久しゅう…」遺された時間の短さを知りながら、永遠の愛を誓い合う二人。 だが、“殉死”は内蔵助の、真の忠臣を見極めるための苦肉の策だった。わずか52名に減った家臣一同に、彼は初めて胸の内を正直に語る。城は明け渡す。大学様御取り立てが叶わぬ場合は、吉良の御首を頂戴する――。懐剣を手に取り、今にも自害しかけようとしていた新妻の元へ急ぎ戻った小平太は、殉死中止を告げた。「毛利小平太の道は決まったぞ。どこまでもついてこい!」力強い夫の言葉に、お艶はしっかりと頷いた。 赤穂城は人情ある脇坂淡路守(岡田英次)に引き渡され、家臣たち(毛利&お艶夫婦含む)は名残惜しそうに城を振り返りながら、二度と戻らぬであろう郷里を後にするのだった。 *毛利小平太、満を持して登場(しかもナレーションの石坂浩二さんを除くと立派なトメ位置)。タイトル通り、土壇場での無血開城が今回の主題なのだが(いろんな逸話も含まれているのだが)、それを押しのけるようにずずいと割って入ってきた薄幸カップルに目を奪われてしまった。一学&おせい夫婦@大忠臣蔵もお似合いだったが、こちらの二人も一直線に不幸に突き進んでいきそうなあたりがベストマッチ(誉めている)。 *だけど小平太さん、城にいないんだよなあ…!←オトナの事情 (ちなみに#5では名前の木札だけ「登城してますよ」と主張している)。残った藩士の中で唯一の大納戸役(=藩主の手元金や衣服・調度類の出納をつかさどる役)みたいだから、城明け渡しのために殿様の甲冑やら調度品やらを並べたりする裏方仕事に徹していたのだ、と思えばいいのか。
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2009,12,24, Thursday
「掟破り」(1979年・S54・8月14日OA)
お頭(=雲霧仁左衛門:天知茂)の命により、厄落としのため六之助(江藤潤)に散在させた小頭の吉五郎(財津一郎)は、ほろ酔い気分の帰り路、ならず者たちに襲われている娘・おひさ(石原初音)に遭遇した。行きがかり上彼女を助け話を聞いてみると、多額の借金が災いし、吉原に売られそうになっているのだという。借主は金貸しであり吉原のオーナーでもあり目明かしでもある、三足のわらじ所有者・相模の軍次(早川雄三)。話を漏れ聞いたお頭はノリノリで軍次宅を急襲、証文を破らせ、200両(=小金)をせしめた上に「我らは東北へ行く、船はもらってゆくぞ」と雲霧の紋章とコワモテ笑顔を全開で露出させて颯爽と引き払った。むろん、火盗改め方をかく乱するためのお遊びである。 おひさと病床の父親・与助(市川青虎)は、忠吉(立花正太郎)の店に預けられた。与助の顔にデジャヴを感じる吉五郎は、親身になって与助の世話を焼く男・七三(今井健二)を見て驚いた。18年前、高崎で共に仕事をした霞の七三だったからだ。その七三から、おひさはお前の実の娘だ、との衝撃的な事実を告げられた吉五郎は動揺を隠せない。高崎の旅籠の女中と恋仲だった彼が去った後、身ごもった女中と何もかも承知で所帯を持ったのが、風呂番をしていた与助なのだという。それを知って以来、毎日のようにおひさに会いにゆく吉五郎。不審がる六之助たちと違い、お頭は、時がくれば訳を話してくれるはず、と鷹揚に構えていた。 しかしその頃、七三は「一人働き」だと今の身分を隠していた吉五郎に、おひさ親子をダシにして仕事の片棒を担がせようとしていた。組織ある身での流れ仕事は掟破り、だが断るとおひさの命はない――脅迫を誰にも言えずに苦悩する吉五郎だったが、実の娘云々は七三と彼に脅された与助の作り話だったことを突き止めたお頭が虚無僧姿で体を張って制止してくれたおかげでやっと目が覚める。 ならず者仲間とターゲット宅に忍び込んだ七三は、吉五郎の怒りの鉄拳を受けた後、雲霧一党により捕縛され、火盗屋敷の前に放り出された。火盗の犬・吉五郎にやられた――そう思い込んでいる七三の言葉に、またしても雲霧のお遊び(ハングマン風)に翻弄された山田藤兵衛(高松英郎)は怒り心頭だ。 江戸を立つおひさ親子。“吉おじさん”はどうして見送りに来てくれないのかしら、そう言って名残惜しそうに振り返るおひさに会わなかった吉五郎は、少しだけ甘酸っぱい思いが出来たことをお頭に言い当てられ、苦笑いしながら酒を酌み交わすのだった。 *吉五郎メインのオリジナル展開。本編でも子分達に言われていたがお頭のノリが非常に良い。吉五郎さん的には大変な事態だが、フットワークの軽いお頭を見ていると楽しかった。監督は『ごろつき犬』 『早射ち犬』などの村野鉄(鐵)太郎監督。だからか? *それにしても笑顔のストップモーション(at 軍次宅)は怖いですお頭。 *OPテーマ曲(イントロ部分)が前回あたりから微妙に短いような。
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2009,12,18, Friday
「裏切り者は消せ」(1979年・S54・8月7日OA)
松屋から奪った金が思いのほか少なく、部下と共に江戸へ舞い戻ってきた雲霧仁左衛門(天知茂)は、再度お千代(大谷直子)に引き込み役を頼む。皆に十分な引き金を渡し、最後の大仕事が終われば死ぬるまで二人っきりで暮らそう、とのお頭のフラグめいた台詞に喜びつつも、最後の大仕事って何ですか、私もお頭の手足になりたいと(酒癖の悪さも手伝ってか)胸にすがり駄々をこねるお千代。優しくなだめるお頭だが、どうやら私怨絡みのその仕事だけは一人でやり遂げる決意らしい。 ところで、雲霧一党の密偵である火盗改め方与力・岡田甚之助(穂積隆信)は最近とみに金使いが荒くなっていた。女を囲い、高級料亭で食事する金はどこから出ているのか。尾張から帰って来た政蔵(草薙幸二郎)の注進もあって、ボスの安部式部(田村高広)は岡田の素行調査に本腰を入れ始める。松屋から女の似顔絵が送られてきた、とわざと自前のニセ似顔絵を岡田に手渡す式部。岡田が何の疑いもなくそれを雲霧サイドに流したことから、彼の背信は確定的となる。 まるで似ていないお千代の似顔絵を見た途端、式部の罠だと察したお頭。既に見張られている岡田との密会を終えた熊五郎(谷隼人)に接触、尾行者の存在を告げたが、揉み合う内に熊五郎がその男・同心の井口(加島潤)を刺殺してしまった。式部は葬儀の手配を岡田に任せ、雲霧一味が彼を襲うなら葬儀中を置いて他はないと、さりげなく監視の目を光らせる。 そして読経の最中、突如響き渡る女の笑い声。玄関先には、岡田が囲っている八重(戸部夕子)の叔父夫婦だという老夫婦(治平&お千代の変装)がいた。八重の気が触れた――彼らの言葉で急ぎ笑い声の方へ駆け出す岡田、それを慌てて追う同心2名。お松(ホーン・ユキ)とおみつ(池上季実子)の撹乱により同心たちが離れた瞬間、お頭の必殺剣が岡田の頸動脈に炸裂した。翌朝、岡田の死体を前に失望を隠せない式部だが、「雲霧は侍…それが分かっただけでも良しとせねば」と闘志を燃やす。 一方、お頭はお千代と屋形船の中。最後のターゲットが伊勢・藤堂藩の金蔵だとお千代にだけ打ち明けるお頭。「それまでは、どのようなことがあっても、お互いに死ねませぬな…」彼女のフラグめいた言葉に、お頭は固い決意を込めた表情で頷くのだった。 *カメラが遠くなった時、仕事を終えて談笑モードに入っているようなラストの二人が微笑ましい(お頭がすっごい素で微笑んでるように見える) *お頭、殺生はいかんといいつつ誰よりもスプラッターな殺し方を。なんて大胆な!(顔がもろに見えてる黒頭巾姿ってのも大胆だ)。それにしても今回のようなこざっぱり髪型(後期の新さん@闇を斬れとか愛染@無頼剣みたいなの、なんていうんでしたっけ。 儒者髷?)の方がしっくりくるなあ。 *予告がまた無くなっていた。「掟破り」って誰のことだろう、殺生するわ仲間内で関係を持つわなお頭か?(違う)…しかし今回のタイトル、岡田さんは雲霧側を裏切ったわけではないのになんだか可哀相だった。むしろ「用無しは消せ」だろう(それも可哀相か)
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2009,12,10, Thursday
「松屋襲撃」(1979年・S54・7月31日OA)
愛しいお頭・雲霧仁左衛門(天知茂)を想いながら、松屋善兵衛(金田龍之介)の愛撫に応える毎日の七化けのお千代(大谷直子)。まだ金蔵の鍵の在り処が分からない上、前回見つけた秘密の入り口を命掛けで偵察した(お頭から貰った鋼の脇差で命拾いした)吉五郎(財津一郎)が困難を報告するが、お頭は襲撃を急ごうとする。尾張まで追ってきた火盗改めの眼前で盗みを働いてみたいのだ、と。そんなに急ぐには訳があるのではないか、雲霧一党を解散した後、お頭はひとりで何かするつもりではないのか…?そんな吉五郎の疑問を穏やかに否定しながらも、お頭の表情は何かを内に秘めている。 その頃、引き込み役として松屋にいる山猫の三次(左とん平)は、仁左衛門のライバル・暁星右衛門の義弟、櫓の福右衛門(大前均)から法外な金を手渡され、アメとムチで丸めこまれてしまっていた。尾張入りした火盗改めの山田藤兵衛(高松英郎)は彼らの密会現場を偶然目撃、雲霧だけでなく星右衛門が乗り出していることに驚きつつ、少人数での張り込みを続ける。 尾行した治平(近藤準)によって三次の裏切りが確定。お千代は三次に松屋襲撃は年明けだとウソの日付を告げ、使いに出した。喜び勇んで福右衛門にリークしてから彼が出向いた先には因果小僧六之助(江藤潤)が。失敗続きの六之助はお頭に喜んでもらいたい一心で三次を刃にかけ、三次を尾けてきた火盗改めの密偵をも口封じに抹殺した(泥の中での格闘裏話は番組徹底ガイドへ)。 襲撃はその夜のこと。松屋裏で張っていた高瀬俵太郎(三浦洋一)たちを華麗なる峰打ちで倒したお頭は勝負服(=赤紫っぽい盗賊装束)に着替えると、大勢の手下と共に松屋へ押し入った。鍵を渡せとの要求を頑なに断った善兵衛だが、愛しのお千代を斬ると言われては頷かざるを得ない。 異変に気付いた山田が松屋に飛び込んだときには、放心状態の善兵衛だけが部屋に残されていた。金よりも“奪われた”お千代を嘆く彼に真相を告げる山田だが、善兵衛は虚ろな笑いを返すだけだ。 だが、雲霧一党はまだ知らなかった。何万両もの財産を持つ松屋から奪った金が、たったの五千両であることを――。 *メイン・イベント(=松屋襲撃)までの展開がてんこもりで、お頭の雄姿を拝むまでが長かったものの、登場するとウットリしてしまうのはもはやお約束。ただ、クライマックスの「(鍵を)渡さねば、斬る…!」は原作同様、「渡さねば、犯(ヤ)る…!」であってほしかった…!(←松屋さんの前でお千代姐さんの着物を肌蹴て馬乗りになるシーンをものすごく期待していたらしい)…どうもここのお頭とお千代姐さん、どっちのガードが固いのか知らないが、物理的にエロいシーンが全くないんだよなあ。
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2009,12,07, Monday
「刀傷松の大廊下」(1979年・S54・4月23日OA)
吉良上野介(小沢栄太郎)の度重なるイケズに耐え兼ねて殿中で刃傷沙汰に及んでしまった浅野内匠頭(松平健)。取り押さえられて少し理性が戻ったのか、衣服の乱れを正したいと頼むものの、羽交い締めはきつくなるばかり。 と、そこへ颯爽と現れた黒烏帽子大紋の脇坂淡路守(天知茂)が「武士の情けは無いのか!」と一喝、ようやく内匠頭は解放された。「脇坂殿…!」涙目になってる内匠頭に同情を含んだ視線を投げかけた淡路守は、(本当はちょっと額切っちゃっただけだが)吉良殿は高齢ゆえ命おぼつかぬかもしれぬ、と武士の情けからくる大いなる気休めを口にしてやるのだった。 *やはり殿中にいた脇坂淡路守。ヨロキンさんみたく手負いの上野介を扇子でどつく、なんていうアグレッシブな淡路守像も見たかった気がするが、短いシーンながら“良い人”感が漂っていた。次の出番は赤穂城明け渡しか。 *かっこいい正装の淡路守写真は、元付け人の方の著書「波瀾ばんじょう君 向かい風に向かって」の最終章の扉写真に使用されている
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