2006,05,29, Monday
「掟討ち」(1973年・S48・10月6日OA)
ゲン(天知茂)と弥藤次(山崎努)は「陰公方」に仕える忍者集団「陰」の一員で親友同士。いつも冷徹に仕事をこなすゲンに対し、弥藤次は傀儡(くぐつ)人形である己に疑問を覚え、漠然とした不安を抱いている。 暗殺任務を終えて休む二人の耳に女性の悲鳴が。少女が崖から落ちそうになっているのを、ゲンは咄嗟に助けた。少女の姉・さと(宇津宮雅代)はそんなゲンにひとめぼれ、だが彼女に熱い視線を返したのは弥藤次のほうだった。 さととの出会いがきっかけとなり、更に頭目の雲十郎(西村晃)から、一揆を計画するさとの父親たちを抹殺せよと命じられたことで、鬱屈していた弥藤次の心は出口を見つけて一気にスパーク。一緒に出かけた仲間を殺し、さとの父親を助けてしまう。父親を助け、朴訥な愛の告白までしたのに「この前一緒に居たひと(=ゲン)は・・・?」とさとに問われて複雑な弥藤次だが、追っ手の松丸(露口茂)たちを蹴散らし、さとと共に生きることを宣言。 一方ゲンは任務から外され、「子を作れ」との命を受けていた。相手は「陰」のくの一・きらら(松岡きっこ)。ゲンにぞっこんなきららは大喜びだ(天っちゃんモテモテ)。だが、組織を裏切った弥藤次を始末してこいと言われたゲンの心中は穏やかではない。 弥藤次はゲンを待っていた。刀を交える二人。 お前は何のために生きているのだ。陰とは、掟とは何なのだ。 弥藤次の言葉に、掟に盲従することへ疑問を抱き始めるゲンだったが、彼にとって上からの命令はまだ強い支配力を持っていた。 お前には分かるまい、そう呟き絶命する弥藤次、そこへ駆けつけるさと。 「人殺し!」 彼女の言葉と簪に身と心を(文字通り)突き刺されながら、ゲンは思わずさとを抱き寄せ接吻、彼女を残しその場を去る。 雲十郎はゲンの迷いを見抜き、きららと里へ降りろと指示するが、自分の存在意義を疑ってしまったゲンにはもはや魂の安寧はなかった。きららの誘いから逃れ、陰公方の指令を雲十郎に運びに来た伝達師を問い詰めるゲン。陰公方はどこにいるのか。俺は一体誰なのか。だが答えはなく、ゲンは気が付くと、絶対服従を誓わねばならぬはずの伝達師を殺めていた。「伝達師もただの当たり前の人間じゃないか・・・!」彼の中で、またひとつ何かがはがれ落ちた。 きららや松丸たちに追われる側になったゲン。「抜け忍」と呼ばれた瞬間、彼の顔に凄惨な笑みが浮かぶ。「抜ける、俺は抜けるぞ!」陰公方の正体を暴くため、そして弥藤次が果たせなかった人間らしい何かを掴むため、ゲンは新しい世界へ足を踏み入れる・・・。 冨田勲の重厚な音楽をバックに天っちゃんの劇画チックな殺陣(と顔)が拝めるオープニングから、がっつんがっつん飛ばしまくる初回。殺陣がうまいかどうかはもはや目が曇ってるのでよく分からないが、剣をすっと逆手に持つ構え(「逆手斬り」)がカッコいいのなんの! 分別臭くなる一歩手前の、脂の乗った天っちゃんの熱い演技が堪能できる。 弥藤次役の山崎さんは天っちゃんより5歳若いんだけれど(1936年生まれ)、先輩格の悩めるインテリ・エリート忍者の雰囲気には圧倒された。上背もあるし(隣にいる男のせいか?←失言)それからさと役の宇津宮さんの凛とした美しさも印象深かった。 細かくみるとツッコみたいところも色々あるけれど(抜け忍なのに素浪人風体になるってどうよ、とか、さとの妹・ちこちゃんをどこに置いてきたんだよ、とか)、有無をいわさぬハードボイルドな展開に目を奪われた。しかし初回がこんなに面白いのに13話で打ち切りってどういうことやら。ヘタレていく様もまた見ものなのかもしれない。
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2006,05,26, Friday
「女が牙をみがく夜」(1981年・S56・8月11日OA)
田沼に取り入り甘い汁を吸いたい勘定奉行やその部下とつるんで米をしまい込み、値を釣り上げては上納金として差し出している米問屋・大和屋の若い後妻(風間舞子)は、米を出し惜しみすることに懐疑的な同業者の家に刺客を使って主人を殺害、家に火を放つ。 見回り同心・佐竹真之助(堀之紀)はその刺客たちと鉢合わせ、逆に襲われかけたところを、たまたま居合わせたどうにも夜歩きが治らない深編み笠のナゾの人(=もちろん新さん:天知茂)に救われた。ひとりが落とした大和屋印の手ぬぐいを番屋に持ち帰ると、上司は「そんなものは証拠にもならん、それよりその深編み笠の男の正体を探れ」と言う。実は真之助の上司こそ、勘定奉行のコバンザメ、放火殺人の計画者だったのだ。 合点がいかぬものの、上司の命には忠実な真之助は、翌日また出くわした新さん(ブラブラ歩きすぎ)の後をしっかりつけ、長屋で張り込みを続ける。正体がバレないかと心配する哲三(三浦浩一)だが、新さんは真面目で純な真之助を微笑ましく見守ってやり、自分への疑いを晴らすためだといいながら、別の米問屋襲撃の現場を押さえて主犯格の男を引き渡してやりさえする親切さんぶりを発揮。 だがこのシリーズの常として新さんに親切にされるとロクなことはない。大和屋の後妻にタンカを切ったまでは良かったが、事件の核心に近づきすぎた真之助は案の定、上司の放ったゴロツキたちにばっさり斬られて絶命。かわいい許嫁を残して逝った彼のため、闇狩人たちは田沼への上納金を運ぶ勘定奉行たちの一行&大和屋後妻を成敗に向かう・・・という話。 寝たきり主人の襖ひとつ隔てた先で男と燃える後妻さんの濃厚なお色気シーンが今回のウリのひとつかもしれないが、新さんとの接点は皆無で、むしろ純情な同心クンのストーリーにウエイトが置かれていた。ただ、新さんの身なり(と鬘)がこざっぱりしたせいか、「○七郎江戸日記」系とでもいおうか、「ほんとは身分の高い主人公が忍びで悪を倒します」的なノホホンとした展開が、実際の状況(=闇狩人です追われてるんです)とは甚だかけ離れているのが妙な具合だった。こういう話はもっと初期にするべきじゃないのだろうか。 *真之助クンに張り込まれながら呑気に盆栽弄りをしている最中「若い芽を育てるためには、邪魔な葉っぱを摘む必要がある・・・」と言いつつチョッキンと中心の花を丸ごと切り落としてしまった新さん、ウッカリ具合が板についてきた(しかしこんなリーダーでいいのか闇狩人)。またのんびりお米研いでたしな。
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2006,05,20, Saturday
「おんなの罠」(1981年・S56・8月4日OA)
基本的には金が繋ぎ目の某シリーズの仕事人連中とは違い、闇狩人メンバーは何で繋がっているのかがどうもはっきりしない。先週の展開をみると「仲間」意識が強いのかと思いきや、今回はのっけから安斉さんが仲間割れ。亡き兼子さま(尾上松禄)の魂を受け継いで打倒・田沼を誓おうと息巻く新さん(天知茂)に対し、田沼の悪事(の末端)を人知れず始末するならいいが、俺たち風情では相手が巨大すぎるんじゃないかとの安斉さんの主張はもっともだ。しかし渚さん(坂口良子)や哲三(三浦浩一)はいまさら何を言うんだこの裏切り者!と突っかかる。「まあ待て、喧嘩をしても始まらん」冷静に止める新さんだが、そもそもあなたが原因です。 一方、火盗改め・伊丹(=今週のヤラレ役人)は、故・兼子さま渾身の労作(=新さんの墓に自分の娘の遺体を入れてカモフラージュ)をわざわざ掘り返して蘭学者に骨を調べさせるという寝た子を起こす行動に出ていた。兼子さまの苦労はいったい何だったのか。名前の語呂(鳥居ショウジロウ→鳥飼シンジロウだからバレバレなことこの上ないのだが)から新さんに目星をつけた伊丹は彼を徹底マーク、部下の柳生十兵衛もどきは安斉さんの周辺を探るため、奥様を篭絡しにかかる。 伊丹の配下の尾行に気づきながらもぶらぶらと花街付近を歩いていた新さんは、怪しげな女衒に声をかけられる。女は要らんと言いつつ「武家の女とどうです今夜」との誘いを断り切れずに一軒の家へ。俯き加減で帯を解きかけた暗い目をした薄幸そうな女性を制した新さん。もしや自分でクルクルするのがお好みですかと思いきや(思ってませんが)、そばにあった三味線を手に取りチューニング、小粋に爪弾き始めた。そうかやっぱり舞台の合間に習ってたんだなあ(*51年公演パンフに、空き時間に三味線か踊りを習いたいという発言があった) 胸を病んでいるらしいその女性・おときさんの話をぽつりぽつりと聞いてやり、「貴方(=新さん)のような方は初めてです」との言葉に「あんたのような美しい女に会ったのは初めてだ」と草葉の陰(というか新さんの棺おけの中)で千草さんが歯軋りしていそうな浮いた台詞を残してそっと家を出る新さんだったが、実は彼女は伊丹の妻で、夫に命じられて新さんが闇狩人かどうかを探る役目を担っていたのだった(これが「おんなの罠」)。翌日新さんを見かけたおときさん、早逝した息子の墓前で(たぶんわざと)自害しかけたところを救ってもらい、彼の長屋に連れて行ってもらうところまでこぎつけた。 長屋へ帰るなり新さんひと言: 「さて、床(とこ)を敷こう」ってえらく積極的じゃないですか昼間から! ではなくて、病身のおときさんを労わってのこと(いちいちフォローを入れねばならないのもどうか)。そんな新さんの優しさにころっと騙され、もとい、ほだされたおときさん、闇狩人の寄り合い場所まで尾行・確認したというのに、真実を報告できずにあえなく変態夫・伊丹に殺されてしまう。物悲しい三味線の響きをBGMに敵地に乗り込む黒頭巾(新さん)、形見のかんざしを夫の額にびしゅっと突き刺してエンド。 安斉さんの件はどうなったかというと、奥様に探りを入れていた役者崩れの正体(=伊丹の密偵)を哲三が割り出したことで「仲間ってのはいいもんだな」(by 新さん)であっさり仲直り。うーん、甘いぞ皆の衆。それにもはや自分たちの正体を必死に隠すためだけに殺しを重ねているようで、割り切れないものが残った。 *兼子さまが出てくるオープニングはどうなるのかと思ったら、映像はそのままでナレーションだけが変更されていた。 *キメ台詞復活。
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2006,05,08, Monday
「暗殺!兼子八郎左衛門」(1981年・S56・7月28日OA)
冒頭、娘の墓参りをしながら思い出に浸る白河藩公用人・兼子様(尾上松禄)。亡き娘・千草と新さん(天知茂)はデキていて、あるとき娘が殺されるか自害したかで、骸を抱きながら悲しむ新さん(当時は侍姿の鳥居ショウジロウさん)の回想シーンがここで挿入。このことがきっかけかどうかしらないが(何しろ初回を見逃しているので)、乱心して切腹、という偽装により闇の人となった新さんに思いを馳せながら「すまんショウジロウ、お主は墓参りも叶わぬ身」と大層すまながる兼子様だが、当の新さんってばこっそり森の茂みから覗いてるから大丈夫。しかしながらそれで田沼の放った忍び連中に見つかってるあたり、全然大丈夫じゃないのだが(ガード甘いよ新さん)。 マークされた新さんと接触した安斉さん(山城新伍)、渚さん(坂口良子)が相次いで田沼の手の者・三浦(小林・おやっさん・昭二)に掴まった。お嬢さんの一大事と顔色を変える哲(三浦浩一)だが、新さんは堪えろという。彼はとにかく主君・松平定信(沖雅也)命なので、わんこは助けても(そして自分は幾度となく助けられていても)仲間はおいそれと助けに行かない、実に慎重な、というと聞こえはいいが悪く言えば非情の男だ。仕方なく単身乗り込んだ哲は案の定捕らえられてしまい、三人揃って兼子様の前に引き出される。 その場は平静を装った兼子様だが、自分もマークされているため迂闊に動けない。急ぎ主君に告げると、定信公自らが新さんとコンタクトを取るために行動を開始してくれた。このあと二人が温泉で落ち合うという美味しい、というかすこぶる濃厚な(だって沖雅也と天知茂が仲良く褌姿でお湯に浸かってるわけですよ、沖さん元気そうですよ、天っちゃん色白いんですよ)シーンがあり、途中で全裸のくの一に襲われるというデジャブな展開に軽く眩暈(『狼男とサムライ』参照・・・というより時期的にむしろこっちが先か?)。 仲間を助け出せないときは斬りますと定信公に誓った新さんだが、渚さんの必殺武器・赤い鉄扇や安斉さんの爆弾(=口に放り込んでドカン)を駆使して敵を撹乱、あれ〜、それじゃさっき捕まえた奴らって別人?と思わせて三人を無罪放免させる知恵者ぶりを披露(というよりたぶん、珍しいことをやってみたかっただけかもしれない←天っちゃんが)。 しかし先のディープな逢瀬を偶然見かけてしまった町方役人(穂積隆信)の通告によって、とうとう闇狩人と白河藩の接点(=新さん)が田沼親子に知られてしまった。死んでるんなら、鳥居ショウジロウ=新さんの墓を暴いてみろと迫る田沼親子。無論死んでないから中は空のはず、と思いきや、棺を開けると変わり果てた侍の頭が。そういうこともあろうかと兼子様が娘の千草さんをこっちに埋めておいたのだ(実の娘の頭を侍ヅラにしてまで!) してやられた田沼ジュニア(原田大二郎)はぶち切れ、親父(三國連太郎)に内緒で兼子様抹殺を命じる。防御むなしく、三浦&忍びの者たちに惨殺されてしまう兼子様が不憫。形見の刀を差し、キメ台詞を言う余裕もなく(黒頭巾を巻く余裕はあったようだが)おやっさん(三浦)以下バッサバッサと切りまくる新さんだったが、大ボスはまた逃してしまった。まあ田沼氏は歴史上の人物だからして、新さんレベルにやられたりするのはムリがあるというものだ。しかし、元締めがこんな早くに亡くなっちゃって、しかも闇狩人のメンツ割れまくりなのに、次回からどうするんだろう(まだ9話ほど残ってるのに)。 *いつもはオープニングしか出てこない面々が勢ぞろいした回をみるのは初めてだった。三國さん、デカくて貫禄あるなあ。 *新さんのヅラがちょっと変わったんじゃなかろうか(素浪人風から、愛染@狂四郎無頼剣みたいな感じに)
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2006,05,04, Thursday
「隠密犬・危機一髪!」(1981年・S56・7月21日OA)
いつになく嬉しげに白い歯を見せて釣りに興じている新さん(天知茂)の元に隠密わんこ・火山が駆け寄ってきた。ところが、よしよしと撫でた手にべったりと血が。新さんびっくり。事件の陰に犬ありと気づいた田沼ジュニア(原田大二郎)と取り巻き4人衆が、町方に命じて怪しい犬を捕らえるよう指示、居合わせた火山は放たれた小柄で負傷したのだった。それにしてはえらく元気そうに走ってきたぞ、火山。 わんこを飼ってることが長屋中にバレバレな新さん、仲間たちから引っ越すよう諭されるが、首を縦に振らない。それじゃ隠密わんこから闇狩人の存在が知れたらどうします、火山を殺せますか?と突っ込まれると「そのときは、俺も死ぬ・・・!」とまで言ってのける、なぜだかわんこラブ全開モード。「正体を知られたら愛する女でも殺せ」とか言ってたくせに自分はそうきましたか。最近助けてもらうことが多かったからってそこまで思いつめんでも、と観ている方も仲間達も思うのだが、聞く耳まるで無し。そんな新さんの愛を知ってか知らずか(いやたぶん知らないんだろう)、小屋からふらふら抜け出して町を散歩してたりする火山、緊張感の欠片もないヤツだ。 迷惑がかかるからと解散宣言をして自分だけで取り巻き4人衆を血祭りに挙げてゆく新さんだが、罠を承知で乗り込んだ待田京介(役名忘れました)宅で短筒やら火縄銃やらで狙われ危機一髪(承知じゃなかったのか)。そこへわんこを始め仲間達が駆けつけてくれて事なきを得る。「水臭いぜ新の字」「一緒に死にましょう」って、みんな良いひとたちすぎるんだよなあ。 *実は火山役のわんこ、天っちゃんにそれほど懐いていない。やはり顔が怖いとみえる(オイ) *新さんが犬笛を吹くと♪チャララララ〜と音楽が流れるのだが、笛の音というよりは、魔法の杖をひと振りするときの擬音のようで脱力する。
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2006,05,04, Thursday
「妖異・鬼火ケ淵の精」(1971年8月28日)
能登・七尾(=ななお)城では、当主・正臣(天知茂)の夜毎の忍び歩きに家臣たちが頭を悩ませている。黒頭巾に身をやつし、愛馬にまたがった御前様がふらふら向かう先は、いかがわしそうな連中がたむろする、ひとよんで地獄宿。住人らしい、怪しさ満開の徳丸(天本英世)の手引きで束の間の戯れに身を委ねる御前にはかつて、忘れられない女人がいた。 それは2年前、白鳥ただよう水辺を写生中に見染めた、笛を吹く美しい女・おりん(加賀まりこ)。写生目的で城へ連れ帰り、その後妻にすると宣言した御前は、「おおい待ってくれよ~、うふふ、捕まえてごらんなさ~い」ごっこ(誇張)をしている際にぽっきり折れてしまった笛を嘆いている彼女のためにせっせと国中の笛を集めてやったりと甲斐甲斐しい。だがおりんは悲しく頭を振るばかり。御前の笛にはどうやら満足らしいのだが、ってそういうノリの話ではない(18禁な暴走すみません)。 素性の知れぬおりんを快く思わぬお局様・歌野(宮内順子)が家臣・刑部(外山高士)と結託し、ある嵐の夜、御前に内緒でおりんを絞殺、死体を木箱に入れて鬼火が淵に沈めてしまった。愛妻の突然の失踪に心を痛めた何も知らない御前はそれ以来「おなごも、人も、わしには信じられん・・・!」と、自らが描いたおりんの絵姿にニヒルで物憂げな視線を注ぐ毎日だったのだ。しかしその絵というのがちょっと笑っちゃうような可愛らしい画風で、リアクションに困った・・・いや、仮にもし天っちゃん作だったらと思うと迂闊なことはいえないなと。 今では「御前と一夜を共にした女は変死する」という呪われた噂(か真実かは本編では分からない)まで背負い込んでいる御前だが、ある夜、徳丸が見つけてきた女がおりんそっくりなことにびっくり仰天、アカネと名乗るその女を徳丸共々城へと迎え入れる。性格はまったく違えども、彼女がおりんの亡霊ではないかと戦々恐々の歌野が御前の寝所をそっと覗き込むと、見覚えのある髪型と着物に身を包んだおりんの姿が! 響き渡る物悲しい笛の音に苦しむ歌野。 翌朝、精神に異常をきたし物置で力なく震える歌野を発見、近寄った御前の耳に聞こえてきたのは、「苦しい、ここから出して」との愛妻おりんの叫び。飛び込んできた刑部が歌野を殺害するが、声は犯人暴露にまで及び、ようやく真相を知った御前は、急ぎ鬼火が淵から木箱を引き上げる(運び上げられた木箱の下敷きとなって刑部死亡)。だが、鎖が巻かれていた箱の中に遺体はなく、白い羽根が一枚落ちているだけだった。 帰城後に問いただすと、実は私は白鳥の精で、写生に訪れた殿に心を奪われたのだと告白するおりん=アカネ。笛が折れたために白鳥に戻ることも叶わず、幽界から抜け出すためには御前のお命を頂戴しないといけません、そう続けるおりんにその気マンマンな御前だが、徳丸の妨害で彼女の姿は忽然と消えた。なぜ邪魔をするのだと怒りにまかせて徳丸を斬り、笛の音に導かれて鬼火が淵に向かった御前の目の前に再びおりんが現れる。 おりんの手招きに応じようとする御前の背後になぜか愛馬が現れ、彼を止めようといななく。はっとする御前だったが、何度かの葛藤の末、遂におりんの白い手を取ってしまった。そりゃあ、(正体は白鳥の)加賀まりこVS(もしかしたら正体は天本英世かもしれない)馬だもの、勝負は最初からついているようなものだ。霧の中に消えてゆく二人をじっと見つめた後、頭から血を流しながら狂ったように笑う、なぜか生きていた徳丸。実のところ、おりんよりも徳丸の正体が無性に気になるクライマックスだった。お前やっぱりあの馬か? それで御前さまラブだったというわけなのか徳丸よ。若い尼と偽りわざと年増を用意していたし。・・・もしや御前と一夜を共にした女を殺していたのも彼だったりして。ああ愛あればこそ(って、そういうノリの話でもない) *しかし最初に馬上の御前が徳丸と会って話しているシーンが(影だけだが)あったので、徳丸=馬じゃないのかもしれない。 *寝所でのシーン、手の添え方や身体の角度など、カメラワークをきっちり計算に入れた天っちゃんの動きが実に美しかった。さすがに手馴れている。 *脚本は宮川一郎氏。こちらも手馴れている(天っちゃんの魅せ方に)。
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| TVドラマ(時代劇)::徳川おんな絵巻 | 12:36 AM | comments (x) | trackback (x) | |
2006,04,30, Sunday
「先輩後輩」(1966年・S41年・8月28日OA)
渥美清扮する、将棋好きでうだつのあがらぬ刑事が空き巣犯(同じく特別出演の藤山寛美)の書き残した住所をたどると、そこは球場だった・・・という場面で、彼を案内して来るのが制帽・制服姿の天っちゃん(交番の巡査役。シナリオ集によれば、名前なし、設定23歳。クレジットは「特別出演」)。 「その番地だと、ここしかないんですけどねえ。ちょっと名前見せてください。・・・あっはっは、こりゃいいや。片岡さん(=渥美清)、こいつはガセですよ。それ、オリオンズのピッチャーの名前じゃないですか」ってなことを、目じりを下げて(眉も思いっきり下げて)満面の笑みで喋くる巡査くん。しかし笑い方がどうも爽やかというよりは「あっはっは、ボロを出したな黄金仮面!」調で少々胡散臭かった。 制服を肘上まで捲ってるので腕の細さが際立っていて儚げだなあ、なんて思ってるうちに出番おしまい。まさにショートな特別出演であるにも関わらずビデオ(DVD)のパッケージに写真が載ってるあたりが大物だ(というよりは、笑顔の天知茂というレアなものが拝める意外性か) 1966年(S41)というと、ヤクザ映画(『893愚連隊』『男の勝負』など)や時代劇(『座頭市の歌がきこえる』『眠狂四郎無頼剣』など)で名バイプレーヤーぶりを発揮していた頃。・・・というときこえはいいが、TVでも「土曜日の虎」や「銭形平次」のゲスト出演ばかりで、要は主役が出来なかった時期である(「ローン・ウルフ」が飛び出すのは翌年のこと)。それでも地道にいろんなジャンルの作品で芸を磨いていた真面目さが画面にも現れていた。 *渥美氏の後輩役が石橋蓮司(若い!)。不器用な感じがいい。 *空き巣に入られたアパートの住人役で、熟れ頃の三原葉子ねえさん(天っちゃんとの絡みはない)。
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| TVドラマ(現代劇)::その他(ゲスト) | 08:13 PM | comments (x) | trackback (x) | |
2006,04,27, Thursday
「金粉の若君登城!」(1981年・S56・7月14日OA)
諏訪・高島藩の幼君・忠丸が江戸へ向かう途中の宿で寝込みを襲われた。彼が死ねば後継ぎのいない藩は取り潰される。空きを狙う浅川能登守と、彼に肩入れする田沼ジュニア(原田大二郎)の差し金だった。 「重傷を負った幼君の安否を確かめ、護衛せよ」との命を受けた新さん(天知茂)たちが探りを入れたところ、何事もなかったように高島藩一行は江戸へと向かったが、忠丸は駕籠から出てこないらしい。そして数名の侍たちが密かに別行動を取っており、近所の仏具師が殺されたという。侍の一人は、大きな葛籠(つづら)を背負っていた・・・。 忠丸は生きているのか、はたまた死んでいるのか? 葛籠(つづら)には一体何が入っているのか? このふたつの大きな謎で最後まで引っ張ってくれる上、迫り来る虚無僧集団から葛籠(つづら)を死守する侍たちに合流した新さんが、葛籠(つづら)のダミーを2つ用意し、そのうちのひとつを哲三(三浦浩一)に運ばせたりするものだから、どの葛籠(つづら)が本物なのか?という謎(哲三も知らされていない)まで追加され、目が離せなかった。 そこへ渚さん(坂口良子)と哲三の過去(#1〜#3を見逃しているのでよく分からないが、どうやら彼らは武田忍者の末裔なんだとか)が絡んできて、安斉さん(山城新伍)や隠密わんこ・火山も活躍の場がたっぷり与えられている、実に濃厚な展開。「しかし、いろんなものを見たなあ」という新さんの締めの言葉に深く頷いてしまった。「鮎担ぎ」なんていう習慣も初めて知ったし。 ・・・とはいえ、肝心の新さんの活躍シーンは最後の殺陣の黒頭巾以外ほとんど皆無だったのだが、まあ面白かったのでOKだ。
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| TVドラマ(時代劇)::闇を斬れ | 11:41 PM | comments (x) | trackback (x) | |
2006,04,23, Sunday
『人形佐七捕物帖 妖艶六死美人』(1956年・S31)
江戸で評判の六人の美女、人呼んで「風流六歌仙」たちが、何者かによって次々に殺されていく。その中のひとり、一番気立ての優しい春太夫(若杉嘉津子:後のお岩さん@『東海道四谷怪談』)と恋仲なのが素浪人・浅香啓之助(天知茂)。 『着流し姿に身をやつしてはいるが、いずれはどこかの若様か』(人物関係図より)とのことだが、どちらかというと若様を殺して成りすましている、いずれはどこかの小悪党かといった風情が漂っている人物である(しかしすこぶる善人だ)。 春太夫の用心棒をかって出ている啓之助、襲い掛かってきた黒装束の集団とやり合い、後を付けて捕らえられるが、同じく窮地に陥りかけた佐七親分(若山富三郎)を助けて活躍する場面もあってなかなかおいしい役どころだった。・・・しかしながら台詞は軽いわ殺陣は軽いわ胡散臭いわで、初々しい、というよりもむしろ貧相という言葉が非常に良く似合う天っちゃん25歳。たった3つくらいしか違わない富三郎さんの貫禄と比べたらちょっと可哀相なくらいだ。昭和31年の作品を見るのはこれが初めてなのだが、『恐怖のカービン銃』(S29)で魅せた「色気」を、自分も(そして周囲も)うまく使いこなせていない感じがした。たぶん、今回は善人役だったからなのかもしれない。中川信夫監督に魅力を引き出してもらうには、あともう2年ほど熟成しなければならないようだ。 *風流六歌仙のひとりにむっちり色っぽい三原葉子ねえさん。 *(2008.3.1追記)久々に見たがやっぱり天っちゃんは実に儚そうな用心棒だった。あと、ネーミングからして元気いっぱいな渦潮太郎(=大ボス:市川小太夫)のケレン味あふれる悪者ぶりにウケた。小太夫さんといえば、「大忠臣蔵」で兄の中車さんにかわって吉良殿を演じて天っちゃん(=一学さん)に守ってもらった人と同一人物なのだろうか? 変われば変わるものだ!←どっちも
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2006,04,20, Thursday
「妻恋い逃亡・男でない男」(1981年・S56・7月7日OA)
*タイトルから、ピーターか美輪さんでも出てくるのかと思ったのだが、そっち系ではない 隠密わんこ・火山が持ってきた文には、理由のよくわからない特赦で遠島から戻ってきた二人の男の名前が書かれていた。一人は花火師、もう一人は一刀流の使い手。気に入らないヤツはみんなやっつけて出世しちゃえ〜、と腹黒いことを考えているお代官さまと廻船問屋がぐるになり、自分たちの計画に必要な技を持つ二人をチョイスしたのだ。 花火師のほうはもともと小悪党なのだが、一刀流の使い手で元同心の堀谷(大門正明)は、上司が美人の奥方(志庭いずみ)にちょっかいを出したせいで上司を斬り殺して島送りになり、奥方に会いたい一身で何度も逃亡を図って拷問を受け(この際に男性の大事な部分を無くしているので「男でない男」というわけ)、今また、奥方との生活のために要人の暗殺を引き受けざるを得なかった、根は真面目なのだがとにかく奥方激ラブの人物である(さらに奥方も輪をかけて旦那様ラブなので、相思相愛ここに極まれりといった風情)。 このラブラブな夫婦に、やがて悲しい結末が訪れる。悪い側の人(宮口二朗)に用済みとばかりに飛び道具で撃たれた堀谷は虫の息になりながら帰宅し絶命、最愛の夫の死を目の当たりにした奥方は、実に痛そうな方法(=女性の大事な部分を刀でぶっすり)で果てる。彼らの仇討ちのためにも、闇狩人たちは腹黒代官たちを始末しに向かう・・・。 といった具合で、この薄幸夫婦にスポットが当たっているのだが、主役(←いちおう)だというのに彼らとまるで接点が無かったのが新さん(天知茂)。もっとも今回の新さんは、無法地帯に潜んでいる例の花火師と黒幕との関係を秘密裏に探るというかなりオイシイ役割を買って出て(からくりは我々視聴者にはもう読めているので、ムダといえばムダなのだが)、へらへらした軽い口調で嬉しそうに島帰りの遊び人を演じてはいた。・・・いたのだが、目つきが目つきなのでやはりすぐに怪しい人扱いされてしまい、ならず者たちに荒縄でくくられてあわや!というところで忠犬わんこの火山(と哲三)に助けられ 「旦那、少々お遊びが過ぎたんじゃないすか」と哲三に言われてしまう始末。もっともだ。 *「今の世の中 真っ暗闇よ・・・」とキメ台詞をしゃべる新さん。あなたの衣装も真っ暗闇です。
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