2006,09,19, Tuesday
『一寸法師』(1955年・S30)
江戸川乱歩の同名小説をかなり忠実に、たぶん今ならロード・オブ・ザ・リング的マジックで表現するであろう「一寸法師」もリアルに具現化。ただ、探偵は明智小五郎ではなくて旗龍作という名前になっている。 学生時代の恋人を救うために立ち上がった熱血漢・小林(宇津井健)が旗探偵(二本柳寛)を訪れたところ、二人の助手が白衣を着て怪しげな実験中。そのうちのひとり(画像右)・平田が天知茂。セリフや出番はほとんど無いのだが(いってみれば、美女シリーズにおける小林君のような感じ)、尾行や探索をソツなくこなし、助手としての役目はきっちり果たしている真面目な青年だった。「なんだそれだけなのね」感は否めないが(“仕出し屋さん”に戻りかけ?) *一寸法師を尾行中の平田青年←たぶんこれが最大アップ *探偵が「旗さん」(←ここの事務所は皆「さん」付けらしい)ではなくて原作通り「明智さん」だったら面白かったのになあ *この「一寸法師」のネタ(ピアノに人を隠す云々)は美女シリーズでいうと「白い素肌の美女」に入っている
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2006,09,18, Monday
「孤独の賭け」#1(1963年・S38・10月4日OA)
放送ライブラリ@横浜にて、第一話を鑑賞(2006.9.3) ほぼ原作に忠実にストーリーが進むので、肝心の千種梯二郎(天知茂)が登場するのは20分以上経ってから。自家用車にふんぞり返ってエラそうな円月眉毛(←非常に気になる)の千種氏、偶然出会った百子(小川真由美)を連れて自分のキャバレー(高級クラブ)廻りをしている時に百子から200万の投資を持ちかけられ、彼女の中に自分と同質の何かを感じて、話に乗ることに・・・というところまで。百子が何気なく口にしたどぶさらいという言葉に異様に険しくなった彼の眉間のナゾに迫るのは次回以降らしく、第一話しか見られないのが実に残念だった。 *(2007.5.4:二度目の鑑賞。クラブ経営者としてのやり手ぶりや、女のあしらい方、リードの仕方など、胡散臭くも敏腕そうな千種像に改めて感服。あと、二郎役の高城丈二さんがやけに爽やかなことにも驚いた)
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2006,09,15, Friday
『修羅の群れ』(1984年・S59)
侠客・稲原龍二(松方弘樹)の昭和初期からの出世苦労物語。のっけからサブちゃん(北島三郎)が熱唱してるし、BGMは大袈裟だし、それに輪をかけて大袈裟な演技が繰り広げられるしナレーションは小池朝雄さんだしで、東映オールスター・漢(おとこ)祭りとでも言いたくなる賑々しい勢いだ。 しかし我らが天っちゃんは、いちおう単発クレジットで名前がどどーんと出てきたものの、丹波さん、鶴田さん、若山トミーさん、サブちゃん、文太アニィ、欣也さんなど、当時の東映系大物が次々と出てくる中、1時間経ってもまだ姿が見えない。そのうち二世俳優もわんさか出てきて、図らずも宮内洋氏まで見つけたのに、出てこない。賭場なんかで画面の隅までチェックしてみるが、いない(昔じゃあるまいし、そんな片隅にいるわけがないのだが)。まったく気を持たせる男である。 アニキィ! オヤジィ! うお~!と暑苦しい修羅(=おっさん)の群ればかり追うのがさすがにしんどくなってきた1時間50分後(本編終了13分前)、唐突に場面は高級クラブの片隅に。ピアノの音色をバックに両手に花状態でどっかと腰掛け、ブロンド女性からYou're very handsome man!と言われていやあ、あっはっはとまんざらではない様子で頭をなでなでしてやりながら一杯やってる映画の雰囲気的に場違いな男。彼こそが、天知茂(役名:大島英五郎)! 他の大物さん達のような着流し姿が見たかった気がするが、いかにも夜の街でブイブイいわせてそうな紺スーツに色眼鏡の胡散臭さが堂に入っている。 と、そこへ文太アニィ(松方の兄弟分だが言うこと聞かずに暴走、鶴田のおじきにどつかれて改心したばかり)が登場。 「あにき、八州会の大島会長(=天っちゃん)がお見えになってますぜ」 なんだか知らないが色眼鏡のおじさんはその筋では偉い人らしい。 弟分がそっと耳打ちすると、文太はふふんと鼻で笑って席に近づいてきた。 「よお、大島く~ん!」 実に態度のデカい軽口を受けた大島は、煙草片手にニヒルに言い放つ。 「・・・おめぇさんに『くん』呼ばわりされる覚えはねえな」 内輪ネタともとれるこの台詞に新東宝フリークのお父さんたちはウケたに違いない(っていうか私が非常にウケた)。 部下同士が一触即発になるが、拳銃を取り出した子分をしばいた文太は何をするでもなくプイと消え(貫禄負けか?←たぶん違う)、大島会長は「稲原(=松方)って男はそんな(俺に楯突くほど)馬鹿じゃねえよ」といきまく部下を止めて、おしまい。おそらくビッグネームの皆さんの誰よりもショートな出番だというのに、文太とのやり取りが映画予告編にもちゃんと入ってるところが凄すぎる天っちゃんだ。…それとも、予告編作った時にはここしか撮影していなかったと見るべきか? *喧嘩にすらなってなかったと思うのだが、かつてのセンパイに冷たくされて悲しかったのか(そりゃ内輪の話)、「大島が喧嘩吹っかけてきた。やるぜ!」と松方の指示も仰がず勝手に若い衆を煽って戦争をしかけようとした文太、今度はほんとに破門にされた。 *個人的に主演の松方氏がどうにもニガテなので辛かったのもあるが、天っちゃんってのは(胡散臭さはたっぷりあるが)暑苦しさとかむさ苦しさを感じさせない人だったんだなあと、出てこない間にその存在の貴重さをしみじみ感じた。 *この映画、顔見せがメインなのでかどうかは分からないが、時代がどんどん進んでも登場人物がまったく年を取らないのでややこしい。19歳から同じ顔の松方氏を筆頭に、鶴田さんなどは30年くらい経過しても全然変わってないのはどういうわけだ。 *予告編でずらずらっと出てくる主要人物一覧。他の人は映画からのスナップっぽいのに、ひとりだけブロマイド風の天っちゃんがヘンだ(しかもなんか若くないか?) (2011.2.14追記)原作について 「八州会の大島英五郎」は出て来ないのだが、後編の中盤で「東方会の町村広行」なる人物が登場し、同じ状況で井沢(文太)とひと揉めしていた(韓国籍でその方面に人脈がある、云々の設定はストーリー上要らなかったので名前が変わったのかもしれない)。町村会長は「目鼻立ちの鋭い、背の高い六尺近い偉丈夫」で、怒って手錠をひきちぎるほど気性が激しく「銀座の虎」と恐れられていたらしい。で、井沢に「町村くーん」と言われて 町村は、静かだが力のこもった声で言った。(本文引用)となるわけだが、この一言を文太に放てるうってつけの人物、ということで必然性のあるキャスティングとみてよさそうだ。
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2006,09,13, Wednesday
『潜水艦ろ号未だ浮上せず』(1954年・S29)
この作品、天知茂の名前はクレジットに出てこない。スターレット同期生の小笠原弘氏が主役級の人物をのほほんと演じている(同じく同期の松本朝夫氏もクレジットされている)中、どういう気持ちで、どんな人物を演じていたのか。そもそも観ていてそれと分かるのか。 不安な気持ちで再生したところ、冒頭、もうすぐ休暇だばんざーい、と、のんびりタバコを吸っている「ろ」号乗組員の中にそれらしい人物を発見(ちょっと大きめの画像を載せてみました)。でも横顔だけなのでなんともいえないなあ、それに暗い潜水艦の中で探すの大変だなあ、と思っているうちに上陸休暇。主役レベルだけの話に替わってしまった。艦長(藤田進)と家族の束の間の団欒、カタブツの永田(小笠原弘)と料亭を手伝う幸子(美雪節子)との淡い恋・・・正直どうでも良いのだが、必要以上にほんわかスローテンポなのでまったりする。当時はこういうのんびり(悪くいえば間延びした)演技がウケていたんだろうか。 さて「ろ」号は英気を養ったあと、島で援軍を待つ同胞に物資を届けるために出航。そのころかの激戦地では、水も食料もなく兵隊たちが瀕死の状態で塹壕に伏していた。こういうところに転がっていたらさぞ似あうだろうと思っていたら、いた(さっきのはあまり自信がないが、今度はアップになるから間違いない)。地面で何かを発見したようだ。虫か。 じっと見つめる。いやそれ虫だってば。口元へ持っていって・・・ええっ、食べちゃうの? 旨いのか? ・・・不味かったらしい(当たり前だ)。しかし隣りの人などはヘルメットとスイカを間違えたあげく、遠くの木に生ったパパイヤを採りにいって撃たれて死んでいたので、虫で助かったというべきか。 「ろ」号が彼らに無事物資と弾薬を届けたあたりからやたらと忙しくなり、のんびり平泳ぎしている人(中山昭二)は置いてけぼりをくらって戦死、知らない間に日本に帰っていたかと思うとまた出撃したり、どこかでテープが途切れてるんじゃないかと思うくらいスピーディーかつシリアスに話が展開していった。最後まで頑張った「ろ」号と乗組員に敬礼。 *文字通り息詰まるクライマックスでは姿が見えなかったので、最初のタバコの人物はやはり違うのかもしれない。 *セリフは一言も無かった天っちゃんだが、それがかえって虫の息な様子(また虫か)を表現していてリアルだった。はっきりいって演技は巧いし何か違うオーラが出ているような気がするんだけどなあ。 *当然「ろ」号メインの話とはいえ、救援物資を受けた上陸班はあれからどうなったのか気になるところだ(天っちゃん生きのびてるのか?)
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2006,09,11, Monday
『憲兵とバラバラ死美人』(1957年・S32)
暗い夜道を歩く男女。後ろ向きの憲兵服の男に結婚を迫る女。彼女を捨てて金持ちの娘と一緒になりたい男は、草むらでの愛撫の後、彼女の首に手をかけて・・・。 冒頭のシーンからしばらく経ったある日。憲兵隊舎の井戸から異臭がして、妊娠している女の胴体が発見された。 残りの部分はどこに? 彼女は誰なのか? そして犯人は? 思うように捜査が進まない中、東京から応援として小坂曹長(中山昭二)が派遣されてきた。それが面白くない地元の憲兵曹長・萩山(細川俊夫)は独自の聞き込みから、事件当夜、井戸の近くでこっそり荷物を運んでいる姿を目撃されていた恒吉軍曹(帽子を脱ぐと兵隊ヅラが不自然:天知茂)が犯人ではと目星をつけ、女遊びの激しい彼(『なにしろ男前でありましたから、女にモテたのであります』下士官談)が馴染みの女を殺したのだと決め付けた。また時を同じくして、恒吉と深い仲だった芸者が謎の失踪を遂げていたこともあり、萩山は否定する恒吉を拷問にかける。 一方、恒吉は物資の横流しをしていた小悪党にすぎないとみた小坂は地元警察との連携を図り、一歩一歩真相に近づいていくのだった・・・。 ヒントが順々に示されていく、非常に丁寧な作りのサスペンス映画。ただアマチスト(造語)には冒頭の後姿が別人だとすぐ分かってしまい、いかにも悪人面で怪しい挙動の天っちゃんを配してミスディレクションを狙った(と思われる)製作サイドの思惑通りとはいかなかったようだ。しかし捜査と小坂の言動が実にスローテンポなので、早くしないと恒吉軍曹、拷問で死んじゃうんじゃないか?と別のところでハラハラした。生死が重要ポイントの馴染みの芸者・文子さんってば、痴話喧嘩しただけで北海道まで旅に出たせいでなかなか帰ってこないし。 *テーブルにうつ伏せ、はたまた逆さ吊りにされてムチでビシバシしばかれ、水をぶっかけられ・・・と散々な目にしか逢っていない天っちゃんだが、いつもながら一生懸命。原作名は「のたうつ憲兵 : 首なし胴体捜査68日」(ちなみに原作者は「小坂慶助」氏。←「憲助」にあらず)。文字通り(拷問で)のたうってるのは恒吉軍曹(=天っちゃん)しかいなかったので、もしや原作では彼が主役なのかと思ったりもして(国会図書館にしかないようだが、読んでみたい)。 *(2007.3.12)国会図書館で読んでみた<原作 「です・ます」調で書かれている上に会話が多いせいか、えらくのんびりした胴体発見シーンや小坂憲兵と周囲の人々の交流など、映画のスローペースとマッチしていて意外にもほのぼのと読みやすかった。ちゃんと亡霊が首のありかを教えてくれるシーンまであるし、あれでもあの映画は原作を重視した丁寧なつくりだったのかと感心。 さて肝心の恒吉軍曹(=天っちゃんが演じた容疑者第一号)は、田舎にいたときから軟派の不良青年だっただの、日活の沢田清に似て女にモテモテだの(さすがに沢田氏がどんな顔なのかは判らないが)、なにやら胡散臭い人物に描かれていて、馴染みの女が行方不明なあたりもイイ感じ(?)に怪しいのだが、なんと彼は事件直後に満州へ出兵してしまっており、そのうち小坂憲兵がガイシャの身元を洗い出しちゃうこともあって、あっというまに容疑が晴れることが判明した。例のビシバシの拷問シーンは映画ならではで、要するに名前(と悪評)だけで出てもこない人物なのだ。膨らませまくっているじゃないか。 もっとも、原作を改変してくれたおかげで天っちゃんに陽の目(・・・か?)が当ったともいえるので、ここはひとつ映画スタッフに感謝すべきかもしれない。 *捜査が進まずに「のたうつ(小坂)憲兵」という意味合いのタイトルだったらしい。 *「私はこの主役をやりたい」というサブタイトルの序文を池部良さんが書いている(昭和32年3月15日付) *かなり状態が悪いらしく、目の前で「禁複写」シールが貼られて手渡された。(よって国会図書館ではコピーはできませんのでお気をつけください)
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2006,09,09, Saturday
「男の争い」(1966年・S41・3月25日OA)
ビル内で金庫破りが頻繁に起こっていると、ビルのオーナー・大沢から監視要請を受けた東京パトロール。しかし彼らが張り込んだ翌日もまた、とある会社の金庫が破られた。侵入形跡がまるでないことから、内部の犯行ではないか(狂言ではないか)と推測した高倉キャップ(宇津井健)の疑惑のターゲットに浮上したのが、大沢の娘・冴子と恋仲の、くだんの会社社長・立花(名前や肩書きがなかなか出てこないので「あんた誰」状態がしばらく続く天知茂)。 高倉の推測は当たっていた。立花は八年前に妹を陵辱・自殺に追い込んだ大沢に復讐するため、会社の二重帳簿を盗み出し、不正を白日の下にさらそうとしていたのである。東京パトロールとの息詰まる攻防の果て、大沢の金庫から二重帳簿を手に入れた立花だったが、最後に高倉に阻まれる。だが大沢の社会的信用を失墜させたことで彼の復讐は達成された。ただひとつの誤算は、冴子を本気で愛してしまったことだけ・・・。 暗い過去を背負った非情の男、でも生来の優しさが見え隠れして・・・という十八番のキャラクターでノリまくっている天っちゃん。いつもながら一本気な宇津井氏との対比もはっきりしていて見どころが多かった。 *得意のボーリングを披露するシーンあり。しかもそのあと、ロッカールームでユニフォームを脱ぎ上半身を露わに(視聴者サービスというよりは、彼の正体を知る上で重要なシーンなのだ、念のため)。新東宝時代は骨と皮だった天っちゃんだが、意外と着やせするタイプに成長していた←どこを見とるんだ
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| TVドラマ(現代劇)::ザ・ガードマン | 08:22 PM | comments (x) | trackback (x) | |
2006,09,08, Friday
「影なき男の影」(1982年・S57)
御名目金と偽り貧乏人から金を搾り取る札差しが横行していた。借金を苦に命を絶つ人々が後を立たない中、悪徳札差し宅を襲い、小判を町人にばらまく「稲妻組」という義賊が登場。銀に赤の縁取りの稲妻マークを背負った、賊というより族っぽい稲妻組ヘッドの正体は、半蔵(千葉真一)の長屋に住む寺子屋の先生兼傘張り浪人の村上新八郎(小道具のボロ傘使いも粋な天知茂)。 新八郎は妹・妙と二人暮らし。十五年前、紀州藩士の父は上司の罪を着せられた上に切り殺され、一家惨殺から辛くも生き伸びた新八郎は、六歳の妹を連れて山中を彷徨う内に稲妻組に助けられ、そのまま賊の仲間になったのだった。 *当時まだ少年だったのに、たった十五年で苦みばしった中年になるのか、といった細かいことは考えてはいけない(きっと苦労したのだ、そう思おう)。 妙の体を張った偵察によって、札差しの扇屋(北町嘉朗)と江戸家老・榊原が父を殺した下手人と判明。しかし扇屋たちは稲妻組へのワナを仕掛けていた。自らも父を殺され家を追われた半蔵は、似た境遇の彼らにシンパシーを抱き新八郎に警告するのだが、ワナと知りつつ新八郎は扇屋へと向かう。影の軍団の助成もあって、父の宿敵・扇屋をみごと討ち果たした兄妹。だが榊原が寄こした鉄砲隊が目の前に迫っていた・・・。 「人にはそれぞれ過去がある。人にいえないこともある・・・」 復讐のためとはいえ、妹を巻き込んで盗賊に身をおとさねばならなかった新八郎。眉根のクレバスと物悲しいピアノのBGMが彼の苦悩に彩を添え、深みのある仕上がりとなっていた。鉄砲隊に集中砲火を浴びてなおひとくさり口上を述べてから切腹して果てる(ネタバレ失礼)あたりの渋さも見逃せない(脚本は宮川一郎氏。さすがだ)。
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2006,09,07, Thursday
『あゝ同期の桜』(1967年・S42)
勉学半ばで学徒動員により戦地へ駆り出され、若き命を散らせていった海軍飛行予備学生たちの実話に基づく準・記録映画。 “同期の桜”である白鳥(松方弘樹)・半沢(最初「半蔵」と聞こえて「いつもその名か!」と突っ込みかけた:千葉真一)らのかわいらしい水兵服に笑いがこみ上げたりするのも束の間、話(と戦局)はどんどん悪化してゆく。 燃料がないので空を飛べず、地上で穴掘り訓練中(?)の白鳥たち予備学生と、兵学校出の若者たちとの間で諍いが起こった。大学で遊んでたくせに態度デカイぞお前らあ!と兵学校サイドの猛者たちが予備学生に気合を入れまくっている最中、ちょっと高級そうな黒い車が遠方から到着。軍服の上から白衣を纏った男が駆けて来た(途中で姿が見えなくなるのだが、コケたのではなく地面がでこぼこのせい) 「待てぃ!」 ドスの効いた声を合図に、「十戒」の海割れシーンのようにざざーっと両側に分かれる若者たち。 「殴るほうも元気がいいが、殴られるほうも頑丈にできとるもんだのう」 現われたのは小柄なモーゼ・間宮軍医長(天知茂)。 まだぶつぶつ言ってる兵学校出の連中に「まあそういきりたつな、元気がなくなる注射をしてやろうか?」と冗談めかすあたり、しょぼくれ刑事@犬シリーズが軍人になったような雰囲気である。 「兵学校を出たものも、シャバの大学から来たものも、同じニッポンの若者じゃないか」 お前たちと同期の奴らはフィリピンでほぼ全員が戦死したんだ、冥福を祈ってやれ。 双方をなだめてから最後に暗いニュースを告げると、人の波をかき分けて軍医長は去っていった。 あと、エライさんたちの会議の場(鶴田浩二さんようやくの登場シーン)でちらっと映った以外は出番がないのは少々残念。クレジット(一番下)で並列だった西村晃さん(従卒役)の方がインパクトがあったような気がする(もっとも西村さんは実際に特攻隊員だったので、それだけ情感がこもっていたのかもしれない)。
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2006,09,05, Tuesday
『怪談本所七不思議』(1957年・S32)
本所といえば夜な夜な黒装束(帰りはお経柄の白装束か)の物騒な冥土の使者4人が出没する場所だと思っていたが@江戸の牙、それとは別に「片穂の葦」だの「消えずの行灯」だの「足洗い屋敷」だの「置いてけ掘」だのといった七不思議(ぜんぶタヌキの仕業?)があるらしい。 危ないところを優しい老旗本・小宮山左膳(林寛)に救われたタヌキ姫(橘美千子)。恩返しを誓うのだが、左膳は後妻・さわ(山下明子)と、偶然にもかつて彼女とねんごろだった飲む・打つ・買うの極道な甥・権九郎(色悪ぶり炸裂:天知茂)の姦計によって殺されてしまった。屋敷で我が物顔の権九郎、さわさんといちゃいちゃの一方で、修行に出た左膳の一人息子・弓之助(明智十三郎)の帰りを待つ許嫁(松浦浪路)にちょっかい出してみたりと好き放題。と、そこへ弓之助が帰って来た! が、怪しげな祈祷師の力で、その正体はタヌキ姫だと判明、権九郎たちは調伏しにかかる。そこへ本物の弓之助が現われて・・・。 まあ、最後はタヌキ姫の喜びの狸囃子でほんわか終わるような映画なわけだが、こういったノリの作品でいかにも作り物でございな一本足の傘だとか大入道だとかに対峙した時の悪人の妥当な対応としては、腰を抜かすほど驚いてベソをかきながら「許してくれえ、俺が悪かった~」と泣き叫んでこそ調和が取れるんじゃなかろうかと思うのだが(それを望んでいるようなライトなBGMもかかっていたのだが)、「いつかはオレも伊右衛門役を」PRに余念がない彼は、ケレン味たっぷりの狂乱ぶりをこれでもかと見せ付け、周囲の人間を皆殺しにしてくれた(もしかすると「四谷怪談」より長丁場かもしれない)。相手はたかがタヌキだよ、落ち着けよ天っちゃん! ただひとり別方向に情熱を迸らせていた彼のおかげで、笑っていいのか感心していいのか、見終わるとなにやら不思議な気分だった。 *凛々しい顔(睫バチバチ)なのに口元がとにかく悪人。だが、「足洗え~」と妖怪に言われて実際に足(古傷)を洗ったらしく、悪化させて医者に「片足を切らねばならぬかも知れませんなあ」と言われちゃうあたりの素直さ(バカさ)が笑える *「とんだところへ北村大膳!」などの歌舞伎調のセリフにも受けた *映画館でみた生涯2度目(ただし1度目『二百三高地』は出番の記憶なし)の天っちゃん映画。出てきた瞬間に嬉しいやら気恥ずかしいやらで笑いがこみ上げた。 *(2008.7.10追記)たまたま1990年のシネ・ダイアリー(当時愛読していた「スクリーン」製。何を見たのかメモったもの)を読み返していたら、同年8月にこの映画のことが書いてあった。まさか10年以上前に見てたとは! …まったく記憶なかったなあ。 そのときのメモ: どうしてこういう笑えるタヌキ話を見たかというと天知茂が出てるからである。しかし彼は金と女にあけくれる悪役をキワめていた…。時代モノだしメイクは濃いしおまけに若いので誰かわかりにくかった。いい役やってる彼がみたい気がする。・・・まだ天っちゃんといえば明智センセイか左門さまくらいの年代しか知らない頃らしいコメントである
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2006,09,01, Friday
『破れ傘長庵』(1963年・S38)
この映画の主人公・長蔵改めモグリ医者の長庵(勝新太郎)は、人間の持つどろどろと醜くヒネた部分を、めいっぱい泥臭く体現してくれる。 サンマを盗み食いしたネコを殺して肉を味噌汁に入れ、主人の娘を犯し、口止め料をせしめ、別の娘を騙して金だけ奪って逃げ・・・最初はデフォルメされたふてぶてしさが微笑ましくもあったが、好みの芸者を身受けする大店の主人憎さと、道端で見初めた人妻欲しさに、彼女の夫であるしがない傘張り浪人をワナに嵌める段になるとあまりの極悪ぶりに怒りがこみ上げた。 いかにも善人ぶって浪人宅に寄り、金を貸し与えたその足で、長庵は大店の主人を絞殺、財布を奪うと、浪人宅から持ち出した印籠を手に握らせるんである。番屋に連行された浪人の前で「家に寄った覚えも金を貸した覚えもない」と平然と証言し、処刑が決まり荒縄で括られ市中を引き回される浪人を見て、いかにも嬉しそうにヘラヘラと笑うんである。その浪人・藤掛道十郎役が天知茂なんである。これが怒らずにおれようか。また天っちゃんは不幸すぎる浪人役(軽く咳き込みながら傘張ってる様子なんてもう)が笑っちゃうほど似合ってるから余計にだ(←笑うのか) ただ、悪い奴には悲惨な最期が待っていたのが救いといえば救いだった。そうでなくちゃ竹槍でグサグサ突かれて死んだ道十郎さん(*想像)が浮かばれないというものだ。 *道十郎の妻が藤村志保さん(『斬る』の薄幸カップル再びか)。支えあいながらつつましく生きていた夫婦の幸せが踏みにじられる様に涙 *ドロドロ気分(?)を助長してくれる音楽は鏑木創@美女シリーズ
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| 映画::大映with勝新太郎 | 11:38 PM | comments (x) | trackback (x) | |