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江戸の牙 #3
「阿片!墓標なき男」(1979年・S54・10月16日OA)

巷ではご禁制の阿片が横行していた。茶屋の二階で阿片の密売がなされるという情報で駆けつけた八丁堀の連中が見つけたのは、真っ昼間から芸者の膝枕で耳かきしてもらっている呑気な本所方与力・剣(つるぎ)精四郎(黒扇子でさりげなく顔隠しちゃったりなんかして粋な天知茂)。ガセネタだったのか、と連中は引きあげるが実は芸者・おしんは恋人から阿片を預かっていたのだ!・・・という話はもすこし進んでから判明するわけだが、どうも怪しいと睨んだ剣さんは本所方でも調べを進めようとする。

しかし伝さん(若林豪)が、他のメンバーがいては危険だ、一人で探索に当たらせてほしいと願い出る。彼にはかつて隠密廻り同心だったとき同じような抜け荷事件を担当、情報が漏れていたせいで部下を2人死なせてしまいお役御免になったという過去があったのだ(そして職にあぶれていたときに剣さんに拾われたらしい)。

捜査を進めるうちに、伝さんは元・同僚の原田(藤巻潤)に出くわす。阿片がらみの事件の担当だという原田だが、実は同心を隠れ蓑に黒幕サイドと共謀している張本人が彼だった。不治の病に侵された愛妻の苦痛を和らげるために阿片を調達せねばならなかった原田。果たして伝さんは彼を糾弾できるのか?

・・・という、伝さんメインの回。後の回に出てくる奥さんの悲劇といい、「江戸の牙」レギュラー陣で色々とハードな過去が語られるのは伝さんだけなのだが、普段から情念の塊みたいな顔のひと(=天っちゃん)が側にいるせいか、いまひとつ陰翳がみえてこないあたりがちょっともったいない(しかも回を負うごとにだんだんキャラが軽くなってくるし)。

*ちなみにホームドラマchの番宣で使われているディープなふたりの写真は、釣りにきていた剣さんに「オレひとりに任せてほしい」と伝さんが相談にいったときのもの。はじめて見たときから「うわっ、特濃!」と思っていたが、改めてみてもやはり濃い。

*今回の決め台詞の締めは「江戸の牙、参っ上!(↓)」と下がっていた。こっちのほうがドスきいててナイス。

*まだ例の“すちゃちゃちゃっ!”(=光速で刀を持ち替えて鞘に収める仕草)は登場していないが、今回は仕事が済むと二刀をクロスして一気に鞘に収めるという荒業を披露してくれた剣さん。両方とも鞘に収まったかどうかは(見えてないので)想像にお任せ、ってところか?

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| TVドラマ(時代劇)::江戸の牙 | 11:13 PM | comments (x) | trackback (x) |
[7] 宝石の美女
一歩間違えばお笑い以外の何物でもない「白髪鬼」を田村高廣さんが怪演、それを動じない態度で受けて立ついつもクールな明智センセイ。ただ前作に引き続き「センセイ(ヒロイン)に萌えないヒロイン(センセイ)」なうえに、センセイがいなくても話が十分成り立っているせいで、少々影が薄いのが残念です。

【明智先生ファッション劇場】:センセイの服装をキャプチャーしてみました(服の種類は多くないのですが、金鎖は復活)

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| TVドラマ(現代劇)::江戸川乱歩シリーズ | 10:25 PM | comments (x) | trackback (x) |
『皇室と戦争とわが民族』
『皇室と戦争とわが民族』(1960年・S35)

突如飛来した銀色の怪鳥ロプロス(違)のお蔭で地方の豪族に勝利を収め、若くきれいなお后(三ツ矢歌子)と橿原の山中にいた神武天皇(嵐寛寿郎)があっと云う間に東條英機になっているような(そのWキャストはどうなのかアラカンさん)忙しい展開の天皇陛下バンザイ準ドキュメンタリー映画。

いかに陛下が第二次大戦を回避しようとされたか、また戦争を早く終結させようと尽力なさったかというストーリーが延々と続き、とうとう玉音放送を吹き込む段になったとき、それを阻止せんと近衛師団の青年将校たちが反旗を翻した。師団長(明智十三郎)に熱く迫る畑中少佐(宇津井健)の横にいたのが椎崎少佐(といっても役名はまるで出てこない天知茂)。やがて航空隊の上原大尉(菅原文太)も畑中の誘いに応じて押しかけてきた。叫ぶ宇津井氏、がなる文太の熱血テンションと比べるとかなり低音&低温そうな(そもそも台詞があまり無い)天っちゃんだが、畑中に目配せされるや否や真っ先に刀剣を抜いてズバーッと反対者を斬って捨て、宇津井氏に撃たれて果てた師団長の印鑑を勝手にニセ命令書にポンと押す文字通りの実行犯

だが彼らの反乱は、軍司令官(沼田曜一)によってあっけなく鎮圧された。「お前たちの考えはよおく分かる」と言われて慟哭する3人。頬を涙で濡らしながら唇を噛み締め俯き加減に肩を震わせる天っちゃん、という滅多に見られない姿が拝めるのが貴重。

早まるな、俺と一緒に来い四郎(とは云ってません←そりゃ「地獄」)と沼田さんに諭されたにも関わらず、畑中と椎崎は部下と共に死出の旅路へ。「天皇陛下、バンザーイ!」部下達の叫びと銃声が聞えたのちに周囲に響き渡る2発の銃声。カメラが戻ると、椎崎は畑中(手前)の側でうつ伏せに倒れ絶命していた。

*この事件(宮城事件)に関しては、67年の映画『日本のいちばん長い日』(ここでの椎崎役は中丸忠雄さん)が詳しいようだ。しかし史実によれば椎崎は少佐ではなく中佐。あれで宇津井氏よりワンランク上という設定だったのか?(とてもそうは見えないので同じ「少佐」にしたのだろうか)

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| 映画::新東宝 | 10:21 PM | comments (x) | trackback (x) |
江戸の牙 #2
「戦慄!蛇目傘の女」(1979年・S54・10月9日OA)

米の値段を不当に釣り上げ私服を肥やしている米問屋たちが、ひとりの女によって順に消されてゆく。手を血で染める蛇目傘の女・おつた(永島暎子)は、かつて彼らの謀略により切腹を余儀なくされた御蔵奉行・青山(小倉一郎)の無念を晴らそうとしていた。

2年前に青山の屋敷でちらっと見かけただけなのに、おつたさんの顔をしっかり覚えていた記憶力抜群の剣(つるぎ)精四郎(2年前は袴姿も麗しい北町の吟味方与力:天知茂)は、米問屋殺しを彼女の仕業と見抜くも、復讐に燃えるおつたさんの熱意にほだされ、黙って見守ることに。・・・したのだが、ちょっとばかり悠長に見守りすぎたせいで、正体に気づいた敵方がおつたさんを拉致してしまった。

ギリギリのタイミングで間に合わなかった剣さん&伝さん(若林豪)は、敵の手にかかり絶命した彼女の最後の願いを叶えるため、半さん(坂上二郎)&兵(ひょう)さん(藤村俊二)と共に江戸の牙として敵地へ乗り込む・・・。

*1話目では途中からだったが、今回は最初から二刀流で気合入れまくりの剣さん。決め台詞も「江戸の牙、参上ォォッ!(↑)」と語尾がやたらと上がっていた(回によってイントネーションが違う)

*違うといえば「十万億土の冥途の使者が・・・」の「冥途」という言葉のイントネーションが「明治」のソレとかぶるときがある天っちゃんが気になるのだが、標準語はそうなのか?

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| TVドラマ(時代劇)::江戸の牙 | 11:14 PM | comments (x) | trackback (x) |
炎の河 #21
第二部・花ひらく炎(6)(1963年・S38・5月14日 PM1:30-1:45 OA)

「女シリーズ 炎の河」(=「続・炎の河」)21話の台本を入手。この回のキャストは(台本のまま引用すると):

渥美葉子 : 高倉みゆき
海老名昭二郎 : 天知茂
和子 : 春風すみれ
(ミナミのバー“翡翠”のマダム。海老名と同年輩。太っ腹で包容力がある。痩せぎすな美人)
バーテン : 高橋英介
(住み込み。十九か二十。美少年)
女秘書 : 松島和子


*入手したのはその「美少年」のバーテン役の方の台本らしく、ほんの二言三言のセリフのところにも下線を引っ張って「はっきりと」など書き込みがあってリアルだった

天っちゃんと高倉さんには人物紹介はないが、どうやらヒロイン・葉子は離婚したてで喫茶店の経営に乗り出そうとしていて、資金が足りない分を、宝石商を営んでいるらしい海老名氏に借りに来るところである。タイトルバックでいきなり

応接の椅子に腰掛け、例のパーコレーターの珈琲を前に珈琲をすすりながら、ダイヤの指輪を手に眺めている昭二郎

なんてシーンから開始(そのあと溜息まじりの独り言ナレーションも付く)、すぐに葉子さん登場。指輪に気付いて「あらこれ、わたしにくださるの?」と喜んで指にはめちゃう葉子さんだが、「いやいやこれは頼まれもので」と自分の指にはめて見せびらかしながら眺める昭二郎。きっと当時の華奢な指にダイヤは映えただろうと思われるが、いい奴なのかそうでないのかよくわからない。そのあと葉子さんが百万円借りにきたと知って

昭二郎:ほう・・・とうとうぼくに借りにきましたね。これまでは、ぼくはことわられどうしだったんだが・・・(と、にやり)

と言うのだが、この「にやり」もなんだか意味深(しかし、資金を丸ごと周旋屋に渡すと言う彼女を心配しているようなそぶりもある)。

次の場面はバー「翡翠」。やはり葉子さんは周旋屋に騙されて資金を全部取られてしまい、昭二郎がここにいると(彼の会社で)聞いてやってきたのだった。ネグリジェ姿で現われたマダム・和子に2階へ通されると、そこには同じくガウン姿でタバコをぷうぷうふかしながら(←そう台本に書いてある<ぷうぷう)新聞を読んでいる昭二郎がいた。気まずく見詰め合うふたり。だが“太っ腹で包容力がある”マダムはそんな二人の様子もなんのその、「なんかウチに出来ることあったら、力になったげるわ」と協力を惜しまない。そこで葉子さんは、ある方から百万円借りているので、ここで働かせてもらえないかと(ある方=昭二郎であることは伏せて)切り出し了解を得る。その時、マダムの手に輝く例のダイヤの指輪を思わず凝視する葉子さん。

和子:これかいな・・・さっき、うちのひとにもらいましてん・・・やさしおまっしゃろ・・・

うちのひとかよ! との内心の驚きを隠し寂しそうに微笑む葉子さん。ベッドに寝転がったまま無言の昭二郎。・・・というところでおしまい。うーん、続きが気になるなあ。←既に昼メロのとりこ

*毎日放送・七ふく製薬提供。

*製作スケジュールが

本読み・立稽古:5/1(火)12:00~18:00
ドライ:5/3(木)24:00~1:30
カメリハ:2:00~3:30
VTR本番:3:45~4:00


と書いてあるのだが、このカメリハ・本番の2時とか3時というのは、もしかして午前なのだろうか? ベッドに寝転がったらほんとに寝ちゃいそうだ。

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| TVドラマ(現代劇)::その他(シリーズ) | 08:32 PM | comments (x) | trackback (x) |
江戸の牙 #1
「炎上!赤馬を斬れ」(1979年・S54・10月2日OA)

オープニングに映る本物の黒ヒョウより数倍は怖い顔の剣(つるぎ)精四郎(五十路間近のいぶし銀・天知茂)は本所方(ほんじょがた)与力。本所・深川の橋や道路の建設・保護などが仕事らしく、市中の警護を担当する「八丁堀の旦那」連中からみれば、本所方はリストラされた極潰しの行き場所。江戸を襲う謎の放火=赤馬と、裏でがっぽり儲けている連中の関連を調べるも、格下の八丁堀同心や材木問屋から「しゃしゃり出て来るな。どぶさらいが待ってるぜ!」とバカにされる毎日だった。

祖父の代からの主君筋・朝比奈宅で「世の中なっとらん!」とべらんめえ調でぶーたれる感情表現が豊かな剣さんを、朝比奈の娘・雪(竹下景子)は優しい目つきで眺める。「ちっともお変わりにならないのね」ちょっと待てお雪さん、いま瞳にハートが飛んでやしないか?「精四郎さま、まだ、おひとりなのですか・・・?」って、結構なおっさん相手に(暴言)やたらと積極的なお嬢様だ。

と、一転にわかにかき曇る空。暇乞いをして襖を開けた途端、剣さんに白刃が襲いかかる。「お前なんぞに娘はやらーん!」と怒った父親・朝比奈軍兵衛(三船敏郎)だ(注:言ってません怒ってません)。世界のミフネと我らが天っちゃんの息詰まる対決は、互いに喉元に刀を突きつけた時点でおひらき。「ふふふ、さすがに腕は鈍っておらぬようだな」余裕を見せるミフネ氏に対し、こっちは精一杯っすよ、ってな息をほうっと吐く天っちゃん。まあ、製作は三船プロだからしてそれくらいのジェスチャー(?)は必要かと。

幕府の大番頭(おおばんがしら:警護の要職)を勤める軍兵衛もまた江戸の町の腐敗振りを憂えており、話を聞いて「荒療治ができるのはお前しかいない!」と剣さんを本所方を隠れ蓑にした闇の組織のリーダーに据えた。そうこなくっちゃとコワモテのまま微笑む剣さん。

本所方屋敷に戻った剣さんは、早速部下の同心ふたり・半さんこと金丸半兵衛(坂上二郎)&兵(ひょう)さんこと間兵助(藤村俊二)と、居候の伝さんこと大熊伝十郎(若林豪)に事の次第を打ち明け、仲間に誘う。「イヤなら断ったっていいんだぜ」とはいっても、上司からこんな秘密を打ち明けられたら断れないだろう普通。苦しいところを助けられた恩があるという肉体派の伝さんは二つ返事。よく効く目と鼻を貸してくれと乞われた半さんや、渋ってはいたものの火薬の知識が欲しいと乞われた兵さんも承諾。そこへ、父親が世話になった縁で剣さんの身の回りの世話をしているというお志乃さん(白都真理)も現れ、同じく仲間に。

こうしてゴレンジャー、もとい江戸の牙が結成されている一方で岸田森&内田朝雄の悪役コンビによって池波志乃さんや森次晃嗣さんが殺され市毛良枝さんが悲しみ、怒りのパワーが頂点に達した時点でハンドクラッピングと共に黒装束の4人が出動。

いきなり材木問屋連中を屋敷ごと吹き飛ばしたかと思うと、悪人の前でカッコいいタンカを切りつつバッとお経を背負った白装束を露わにし、ひたすら切りまくり殺しまくる4人。屋敷内みな殺しが基本なので、覆面も要らなくて便利。剣さんは重ね着のせいで腰のあたりがモコモコしていて、ゼンマイ仕掛けのちっちゃいお人形みたいだけれど(←ちっちゃいは余計)スピーディーかつ華麗な二刀流を披露。一人だけ淡いブルーリボンで襷がけの伝さんは、薙ぎ倒すというよりどつき倒す豪快な太刀さばき、半さんは槍を繰り出し、兵さんは火薬使ったり小太刀を投げたりとそれぞれがてきぱきと仕事を進めるので痛快だ(最後に残った岸田さんがこれまた実に魅力的に斬られてくれたので余計に)。

朝。何も知らない見習い同心たち(京本政樹ほか)が呆れるなか、本所方でだらだらと過ごす伝さん・半さん・兵さんに、橋を散歩する剣さんの甘くて渋い歌声(「ふたりづれ」)が被っておひらき。テンポの良さがクセになる作品である。

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| TVドラマ(時代劇)::江戸の牙 | 11:17 PM | comments (x) | trackback (x) |
『孤独の賭け』
『孤独の賭け』(1965年・S40)

*ラピュタ阿佐ヶ谷にて鑑賞(2006.11.25)

あらすじはほぼ原作をなぞっているので省略。

資金繰りに奔走しているかと思えば女を口説いてるか抱いてるか脱いでるかな(って女絡みが多いが)実に忙しい千種梯二郎(天知茂)。34歳という天っちゃんの実年齢とルックスは成り上がりの若き野心家を体現するにはまさにうってつけで、新東宝時代の名残のような台詞回しのそこはかとない軽さすらも、詰めの甘さで道を誤まる千種の末路を見越しているかのようだった(うなじの手入れの詰めの甘さもそうか?←それはたぶん違う)

1話の後半でようやく登場したドラマ版とは違って実にサクサクと話が展開するのだが、サクサク進みすぎて百子(佐久間良子)はもとより千種の内面描写やバックグラウンドの掘り下げが浅くなっていたのが勿体無かった(原作好きの弊害か)。もっとこう、最底辺から這いのぼってきたんだぜ!というギラギラした姿も見たかったなあ。

ただ、秘書の中川京子(小林千登勢)と百子の色男・千種を巡る女の争いはビジュアルで見るほうがインパクト大。佐久間さんに百子チックな「毒気」や「執念」をあまり感じなかったせいで(「おんな太閤記」や「細雪」等のふんわかイメージが強いので)、おとなしそうな顔をして私はどこまでも社長にお供しますわオーラをがんがん放出させ、ラストに見事(?)千種をモノにした京子=千登勢さんの手腕が際立っていたように思えた。

*あんなに地味な梅宮辰夫をみたのは初めてかもしれない(メガネ姿の千種の右腕役)。←プレ不良番長時代だからか

*(2006.5.28)原作について
最底辺の生活から這い上がった野望多きひとりの男・千種梯二郎。
自分を不幸に陥れた親類への復讐に燃えるひとりの女・乾百子。

偶然出会った二人は似た境遇と互いの持つ力に本能的に惹かれ合う。男は女の夢に投資し、やがて二人で歩むことを望む。女は男を認め愛しつつ、自立の道を模索する。

借金だらけで突き進む男の夢(=パノラマ島作り)は叶うのか、自立心の強い女はどこまでのし上がれるのか。そして人生の賭けに勝つのはどっちか。メリハリの効いた短文調でなかなか読ませてくれた。

1963年(S38)に本が出るなり天知茂主演でドラマ化され、乾百子には小川(黒蜥蜴)真由美。その後、1965年には映画が作られ、このときの百子は佐久間良子。そして1978年に再度ドラマ化されている。

天っちゃんを念頭に置いているせいでどうしても千種メインで読んでしまっていたのだが、従属を嫌う百子の生き方には共感する部分が多かった。特にラスト(以下ネタバレ失礼)、甘さが抜けなかったというか、うぬぼれが強すぎて千種が自滅し、金の無心のために(それも自分の愛人兼秘書のための金を無心するために!)百子を訪ねるくだりには、彼女でなくても今までの理想像がガラガラと崩壊する気分を味わった。ドラマや映画もこのラスト通りなのだとしたら、かなりカッコ悪いよ天っちゃん(=千種)。

*気になることがひとつ。1978年版キャストをデータベースで調べてみると、

天知茂、五十嵐めぐみ、浅野温子、園まり、白石奈緒美、伊藤雄之助

という面々の名前があるのだが、順番からすると五十嵐さんが百子役だったのだろうか? 78年だからもうすでに初代文代さんと明智センセイだったわけで、その二人の絡み…ってどうなんだろうなあ。

*「首無し島」のときもなんだかなあと思ったものだが<文代さん&センセイ

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| 映画::東映 | 12:51 PM | comments (x) | trackback (x) |
非情のライセンス 第2シリーズ #6
#58「兇悪の母」(1974年・S49・11月7日OA)

銀行勤めの夫、結婚間近の娘、高校3年の息子と和やかな家庭を築いていた主婦・文江(小畠絹子)の幸せは、ある朝コワモテの刑事(=会田:天知茂。同伴は右田刑事)が訪ねてきたことで崩れ始める。

彼女の夫・一郎は裏金の横流し容疑で事情聴取を受けた後、料亭で青酸カリを飲んで死亡。ご丁寧に特捜部あてに抗議の遺書をしたためての自殺に疑問を持った会田は文江に接触を図ろうとするが、彼女は頑なに沈黙を守る。面倒をみようと約束してくれた一郎の上司・小沢(戸浦六宏)を頼り、子供たちと生活を立て直そうとする彼女だったが、まもなく娘は縁談を断られたショックで自殺、母の卑屈な態度に反抗した息子は小沢に刃物を向け、傷害の現行犯で逮捕された。

一方、会田たちは黒幕が小沢で、一郎は利用され抹殺されたと睨んでいた。だがそれを裏づけるには一郎が遺した証拠のメモが必要で、文江の協力なしでは手も足も出ない状態だった。そのうち、小沢の息のかかった弁護士(中条静夫)のはからいで息子は釈放され、文江の元へ戻った。ああみえてフェミニストな会田は「おっかさん」には特に弱いようで(それとも相手が小畠さんだから?)、社会悪を糾弾できずに悔しい思いをしながらも文江母子のちいさな幸せを願ってみたりするのだが、すっかりグレた息子は今度はチンピラ相手にひと悶着起こし、人ひとりを殺してしまう。

文江が必死に守ろうとしたものは脆くも崩れ去った。俺がこうなったのはお袋のせいだ!と文江に食って掛かる息子を「お前は自分の痛みしか分からんのか!」と髪を振り乱してボコる会田に触発されたのか、文江は証拠のメモを手に、レストランで一家団欒を楽しむ小沢の元へ行き、彼の息子の首に刃物を突きつけた。息子を助けたければ夫に仕組んだように遺書を書いてお前も死ねと小沢に迫る文江だったが、間一髪で駆けつけた会田の説得(というより協力)により流血の事態は回避、小沢たちの悪事は明るみに出ることになったのだった。(昭和ブルースは当然♪この世に生んだおかあさん〜♪の2番)。

*小畠さんと二人っきりのシーンが結構多く、シリアスな展開なのに新東宝時代を思い出してニヤケてしまった。

*多々良純さんの居酒屋にて、とん平さん・葉山良二さんと3人でしみじみ飲んでるシーンが2度ほどあるのだが、3人とも息が微妙にずれているというか空回りしていて、見ているこっちまで脱力する。

*(2007.8.5追記)戸浦さんが家族団らんで食事していたレストラン・ストックホルム、まだ営業しているようなので今度行って見たいような(出刃包丁持った小畠さんが来ると怖いが)

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| TVドラマ(現代劇)::非情のライセンス2 | 04:08 PM | comments (x) | trackback (x) |
暴れん坊将軍 吉宗評判記 #15
#15「春を呼ぶ藪医者」(1978年・S53)

小石川養生所の評判がすこぶる悪い。主任医師・小川笙船(天知茂)の顔がとにかく怖いからではなく(いや、それもありなのか?)、タダをいいことに怪しい薬を怪しい土瓶で煎じまくっては試しまくり、何人も殺しまくって平然としている、などという悪評でせっかくの施設は閑古鳥。所轄の町奉行・大岡越前(横内正)の責任問題に発展している有様を憂慮し、吉宗=徳田新之助(松平健)はみずから笙船に事の真偽を問い質すが、物は云い様と肯定も否定もしない。

そんなある日、数少ない入院患者の一人が急死。ウワサの薬を飲まされた後だっただけに、遺族は笙船を訴えた。なぜ死んだのか申してみよと詰問され「息が止まったからでございます」とここでも誤解招きまくりの発言をする笙船だが、この患者が何者かに窒息死させられていたことを見抜いていたのだった。しかし鬼与力でも人相見でも探偵でも刑事でもない彼は、誰の仕業なのかを突き止めることは出来ず(せず)、沙汰があるまで「手鎖10日」つまり謹慎を言い渡される。

吉宗&お庭番ズ(宮内洋・夏樹陽子)の調べで、病人をタダで看るのは営業妨害だと養生所を煙たく思っている町医者たちと、大岡を失脚させて自分が町奉行にと企む役人がゴロツキとつるんで養生所の評判落としに暗躍していることが判明。一方、養生所の小間使い・卯助(佐々木・2号ライダー・剛)は金のために悪人たちの片棒を担いでいたのだが、同じく養生所勤めの恋人・おみつ(村地弘美)の説得で改心し真相を打ち明けようとしたところでゴロツキに刺されてしまった。

養生所に担ぎこまれた卯助は助手の手には負えない重傷だった。吉宗は笙船の手鎖をぶった切り、彼に手術を任せる(ここから額に汗して頑張る見せ場あり←ここしか見せ場がないのも事実)。吉宗が悪人たちを成敗している間に改造手術(違います)は無事成功、卯助・おみつのカップルに春を(そして再び養生所に人を)呼んだということで、めでたくおひらき。

*養生所にいると薬を煎じたり書物を読んだりしてるだけなので少々物足りない笙船さん。ダーク・ヒーローな町医者でいてくれたほうが面白かったなあ(身の回りの世話をしていた三吉少年の役割がいつのまにかおみっちゃんに代わってるし)。


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| TVドラマ(時代劇)::暴れん坊将軍 | 12:32 AM | comments (x) | trackback (x) |
徳川おんな絵巻#7
「お妾拝領仕る」(1970年・S45)

お紋の方(中村玉緒)&神尾新八郎(天知茂)のアツアツ夫婦(#8「嫁地獄」参照)のなれそめが分かる回を、8ヶ月経ってようやく鑑賞できた(再放送ありがとう時専ch!)

厳重に縄を掛けられた輿が、会津へ向かう途中の峠にさしかかった。牧歌的な景色を眺め、輿の中に優しく話し掛ける新八郎、登場するなり好感度急上昇。だが輿からは何の反応もない。お紋の方は世継ぎを産みながら乱心のかどで江戸詰めの殿(葉山良二)から国許へ送り返され、口惜しさに唇を噛み締めていたのだった。

会津若松城内のあばらや同然の小屋に押し込まれた途端、実姉・お葉の方(中原早苗)に扇子でグリグリいびられるお紋の方。殿の寵愛めでたい姉の侍女を務めていた時に「お手つき」になり、しかも姉の自分より早く男子を産んだ彼女にお葉の方はジェラシーMAXなのである。

一方、新八郎はお紋の方の世話係に任命された。国許に残る彼に母や親戚、友人(とその妹)は大喜びだが、新八郎はお紋の方の置かれた劣悪な環境に密かに心を痛めていた(←多少推測含む)。しかも追い討ちを掛けるようにお世継ぎ病死の悲報が届き、絶望のあまりお紋の方は座敷牢で首を吊ってしまう。間一髪で彼女を救う新八郎。乳房わしづかみマッサージという、すこぶる土曜ワイドな世界が拝める(←だが双方ともスタントさんか?)のはさておき、ここではじめて「乱心」の真相が明かされる。産み落とすなり引き離された我が子会いたさに、懐刀を自らの咽喉に当てて殿に懇願したにもかかわらず、聞き届けられなかったばかりか乱心者呼ばわりされて国へ返されたお紋の方の嘆きに、新八郎は言葉もなかった。

そんなある日、殿が会津へ戻ってきた。お紋の方に未練ありそうな殿を手中に収めんと、お葉の方は姦計をめぐらせる。それはお紋の方を、年寄り坊主の嫁に下賜するよう殿に耳打ちすることだった。内緒で外出して仲良く池の鴨を眺める仲になっていたお紋の方&新八郎はこの命令に驚く。殿の命だが即座に拒んだお紋の方を見て、新八郎は自分が拝領したいと申し出た。同情からなのかとなじるお紋の方だったが、ここ(=座敷牢)へ来るのがどこへ行くよりも、また家にいるよりも楽しかったのだと静かに口にした新八郎の実直さにほだされ、ゴールイン。

母親含め親戚一同は大反対、祝言の夜には誰ひとりとして出席する者はいなかった。お神酒を盃に注ごうとするお紋の方をそっと制し、廊下の障子を開け放つ新八郎。何の遠慮が要るものかと高らかに会津節を唄いながら、二人だけの誓いの盃を固く交わすのだった・・・。

*やっぱり良い漢(オトコ)だった新八郎にうっとり(予想外に出番も多かったし)。しかも唄うし、揉むし!(?)。

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| TVドラマ(時代劇)::徳川おんな絵巻 | 12:37 AM | comments (x) | trackback (x) |
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