2007,02,17, Saturday
『軍神山本元帥と連合艦隊』(1956年・S31)
国を愛し人を愛し、そして平和を愛しながらも悲劇へと突き進まざるを得なかった連合艦隊司令長官・山本五十六(佐分利信)の業績を、彼の内面にスポットを当てながら描いたセミ・ドキュメンタリー。セットは多少しょぼくても、これでもかと挿入されるリアル映像の迫力と、実際に戦争経験してます世代のキャストたちの演技は、今の時代には到底出せない重さを感じさせてくれる。 まだ第二次大戦前、ロンドンへ軍縮交渉に向かう五十六長官と青年将校・三島(宇津井健)を、大勢の人々が見送った。その中に紛れている着物姿の怪しい二人組。大柄なのは右翼・東亜会の会頭・黒川(丹波哲郎)、「強硬交渉を頼むー!」と声を張り上げている小粒なほうが大石(天知茂)だ。どうやら彼らは迷惑な人々らしく、「沢山見送ってくれましたねえ」といつもバカがつくほど朴訥な青年・宇津井=三島将校の感想に対し、「あんなのが憂国の士では、日本も危険千万な話だ」と五十六長官はばっさり斬り捨てていた。 まさかこれで出番が終りなのか?と危惧したものの、その困ったちゃんズは物騒な手下を2人追加して、帰国した五十六長官の家に押しかけてきた。若いときから尊大な丹波さん(黒川)が偉そうな口調で長官に詰め寄る隣で「この国家の難局に、あんたのような腑抜けに政治を任しておくことは出来ん!」と虎(=丹波)の威を借る背広姿の大石くんだったが、もちろん五十六長官が黙っているわけはなく、「国賊とは貴様らのような奴らのことを言うのだ!」と一括され、眉根にぴしぃっと横ジワが。ドスを抜く手下の横で指をぽきぽきっと鳴らすフリ(?)をするも、見た目が見た目だけにただ揉み手しているだけにしか見えないあたり(写真)に小粒感がただよう、キレやすい大石くん(と兄貴分の黒川さん)の出番はこれにて終了。 *高島忠夫氏や宇津井健氏が青年将校としてそれなりに活躍の場を与えられている戦争映画の中で、ある意味で目立つ(というか浮いている)ヒールの役割をあてがわれた実悪&色悪コンビ(by 鹿島茂「甦る昭和脇役名画館」)。昔からちっとも変わっていない丹波さんはともかく、25歳の天っちゃんは真剣そのものなんだけどまだどこか不安定な感じがつきまとっていて、役が付き難かったのがなんとなく頷けた。
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2007,02,13, Tuesday
#107「兇悪の花道」(1975年・S50・10月30日OA)
依頼主の堀田(神田隆)に裏切られた揚句に愛人を殺されたプロの殺し屋・佐伯(待田京介)は、堀田の娘・美樹(森田―現・五十嵐―めぐみ)を誘拐し身代金を要求した。父の所業を憎んでいる美樹は彼に協力的な態度を示し、いつしか二人はほんのり良い仲に。 佐伯はかつて会田(天知茂)と警察の射撃大会でジャージのいけてなさ具合もとい射撃の腕を競いあった友人なのだが(勝負がつかずに引き分けたのだとか)、暴力団に妻子を殺された佐伯はそのまま警察を辞め、殺し屋稼業に身を落としていたのだった。今までは暴力団員などがターゲットだったためにあえて彼を見逃していた会田も、今回ばかりは乗り出さざるを得なくなる。 堀田と受け渡し場所に現われた会田は、美樹を連れた佐伯に対峙する。しかし堀田は再び約束を違え、佐伯を抹殺しようと企んでいた。胸に銃弾を受けながらも堀田に銃を向ける佐伯。「何をしているんだ、奴(=佐伯)を撃て!」慌てふためき指示する堀田だが、会田は銃を捨て、動かない。やがて一発の銃声と共に倒れ伏す堀田。既に息絶えていた佐伯の代りに父親をその銃で撃ったのは、美樹だった。会田は彼女の頬を張り飛ばし、銃を佐伯に握らせる。 「撃ったのは佐伯だ――分かるな」 その言葉で弾かれたように駆け出した美樹の背を、会田は静かに見送った(昭和ブルース1番) *脚本は文壇デビュー前(新人賞を取る前)の赤川次郎さん。 *待田 VS 天知といえば伊勢社長 VS 明智センセイ(「魅せられた美女」)が真っ先に思い浮かぶが、任侠路線で誰かさん同様やっぱり殺される回数が多かった待田さんのやさぐれ具合と“実はいいヒト(だから薄幸)”イメージがたっぷり味わえた。「シンデレラには王子様だ、殺し屋じゃないよ」ってな台詞に込められた、顔に似合わない優しさが印象的。 *五十嵐さんはまだほんのり「少女」で固い感じとはいえ、ショートカットで活動的なお嬢様なあたりは文代さんチックだった。
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2007,02,11, Sunday
『悲恋の若武者』(1962年・S37)
西郷どんを慕う若者たちが西南戦争(田原坂の戦い)に突き進む悲劇を描いた、橋幸夫主演のアイドル映画。 青雲塾のアイドル塾生・天野(橋幸夫)が塾長の娘・志保(三条江梨子)とデエト中、前髪をはらりと垂らした行商人風の男が飛び込んできた。ショバ代を払えと迫る追っ手から逃れているらしい彼を助け、傷の手当てをしてやる天野&志保。二人のラブラブな様子に微笑みを浮かべ、丁寧に礼を言って男は立ち去る。 やがて、志保ちゃんを好いていた古株塾生が天野へのジェラシーから官軍に寝返って塾長先生を殺害、志保ちゃんを拉致。助けにきた天野は官軍に捕まり、あわや銃殺刑か!というところで止めが入った。近づいてくる黒ブーツの男。「こうして会おうとは思わなかったね。・・・私だよ」なんと、いつぞやの行商人は、官軍の米ノ津駐屯隊長・成尾壮一(天知茂)だったのだ! 明治なモミアゲ(前髪は相変わらずハラリ)の成尾は、薩摩で凝り固まっている天野クンに、これから伸びる若い芽をむざむざ枯らしたくはない、もっと視野を広く持ちなさいと上京を勧める。が、説教臭い台詞に反発した若人・天野クン、礼もそこそこに志保ちゃんと一緒に出て行ってしまった。 しかしボディブローのように成尾の言葉がコタえてきたのか、いっちょ東京さ行って見るか~、という気になった天野クンだったが、時すでに遅く、同僚の友情に応えたりしているうちに激戦地・田原坂に身を置くことに。後を追ってきた志保ちゃんが例の古株塾生ともみ合って死亡、天野クン(アイドルなので死なない)が亡骸をお姫様抱っこするシーンでエンド・マークと相成った。 *『座頭市物語』『斬る』ときて3本目の大映出演作。勝新さんや雷蔵さんと対等に渡り合うだけでなく、アイドル映画に付き物の物分りのよい中堅俳優としての役割も無難にこなしていた天っちゃん31歳。ノッている(が、出番はショート)。
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2007,02,06, Tuesday
『竜虎一代』(1964年・S39)
文明開化の音が聞こえ始めた北九州。川船頭を束ねる石岡一家に拾われ、親方(山本礼三郎)の後継者として育てられた組頭・縄手清治(天知茂)には、親方の友人の娘・雪子(藤純子)という美しい許嫁がいる。しかし雪子の父・松橋(柳永二郎)が川船頭の敵といえる鉄道事業を興したことから家同士の関係が悪化、祝言は延び延びになっていた。 そんな折、松橋が何者かに襲撃され死亡。父の跡を継がねばならぬ雪子は、商売敵となってしまう清治に婚約解消を申し出た。お互いの手に愛のペア・リングが光ったまま、次第に疎遠になってしまう二人。石岡一家を父の仇と付け狙う(実はその通りなのだが、清治だけが知らされていない)血の気の多すぎる雪子の弟・新一(千葉真一)、また雪子の側にのほほんと居座っているワケありの流れ者・草刈信次郎(主役:鶴田浩二)の存在も、清治にとっては心穏やかではない(実は信次郎にはおくみさん=佐久間良子というイイ女がいるのだが、清治が知る由もない)。 松橋の死により潰えるかと思われた鉄道工事は意外に順調に進んでいき、仕事を奪われる立場の川船頭たちの動揺は広がる一方だった。彼らの生活を守るため、清治は船と鉄道の共存を市役所に懸命に掛け合うのだが、おエライさん連中は彼の提案を無視(彼らが鉄道で金儲けを目論んでいることを清治は知らない)。石岡親方は清治の青い理想論に堪忍袋の緒を切らし、彼を遠ざけて鉄道工事の妨害を企てようとする。 石岡一家の若い衆が線路にダイナマイトを仕掛けたことを知った清治は、投げ文でそれを雪子に伝えた。だがその後馬で現場に駆けつけると一足遅く、橋は爆破、新一は刺され重態。清治は彼を抱えて暴走する機関車から飛び降りたのだが、介抱の甲斐なく新一は命を落とした。清治がその場にいたことで、線路爆破は石岡一家の(というより清治の)仕業だと断定されてしまう。 おまけに、工事を手伝う内にすっかり鉄道にハマっていた信次郎(主役)がキレて石岡一家に乗り込んできた。松橋襲撃の際に居合わせた彼、唯一見かけた般若の刺青の男を見つけるとずばーっと斬り伏せ、そのまま石岡親方に刃を向けた。親方を庇って信次郎の前に立ちふさがった清治は、彼にサシの勝負を挑む。 清治と雪子がいまだに愛し合っていることを知っているはずの信次郎だから(それにやはり鶴田さんだから)なんかこう丸く収まるような態度に出てくれるんだろうかとの期待も空しく、やるかやられるかの極限の中、信次郎のドスが何の落ち度もない清治を貫いた。リングが光る右手を地に這わせて、殺される理由は何一つないのに清治は絶命。信次郎は東京から彼を追ってきた刑事(加藤武)に捕縛され、「縄手…すまん」と呟いて親方はピストル自殺。 後日。護送される信次郎の側を、鉄道完成を祝う機関車が過ぎていった。そこには、指のリングをじっと見つめる雪子の姿があった…。 *勇ましい船頭の若親方ルックでも(薪割りなんかもやってたけれど)どことなく線の細い書生風の清治。親方を大事にし、船頭たちにも親切で、雪子の死んだ父の霊を灯篭流しでそっと供養してやるような良い男振りなのに、親方や子分達、はたまたフィアンセの雪ちゃんにも、ウラの事情をまったく教えてもらえない可哀相な奴であった(愛されすぎてか?)。しかしなにもこんな悩める薄幸青年を二度も刺して殺しちゃうことないだろ鶴田さん(信次郎)! それに石岡の親方も、彼にすまながって自殺するくらいならタイマン勝負の時に止めてやれよ! *鶴田さんに虎の刺青があったから、タイトルから察するにてっきり天っちゃんには竜の刺青があるのかと思っていたのだが、最後まで脱いでくれることはなくて残念だった。 *資料本にはドスを抜いた千葉ちゃんと対峙するスチールが2枚ほどあるが、そういうシーンはなかった(まだまだボーヤな千葉ちゃんなので器が違ったというべきか)。
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2007,02,04, Sunday
『男の勝負 仁王の刺青』(1967年・S42)
喧嘩っ早さが元で破門された九州男児の浪曲師、“暴れマサ”こと菊地政五郎(村田英雄)は、兄弟子(中山昭二)と別れ来阪。押しかけ女房のお袖(藤純子)と職を探すが、破門された者を雇ってくれる興行師はいない。そんな折に地元侠客の山根組とねんごろになり、ヤクザの世界に入ることを決意する。 大阪を仕切る侠客には、山根(明石潮)のほか、石津(天津敏)、石津の弟分の浦辺(名和弘)、そして滝井伊三郎(先のメンツに比べると、親分というよりは呉服屋の若旦那のような雰囲気の天知茂)がいた。自分ちの若い衆をボコボコにした政五郎とサシの勝負に出たり、ある時はクレーンで吊り下げてリンチしたりと、最初は対立していた伊三郎だが、政五郎の漢(オトコ)気に感心したらしく、いつしか心を許す関係に。 政五郎が米騒動の責任を取りムショ入りしている間に、山根組のシマを乗っ取りたい石津と浦辺が、山根のゴミ船の人足を囲い込み営業停止に追い込むという嫌がらせに出た。進退窮まったお袖ら山根一家に救いの手を差し伸べたのが伊三郎。彼はやがて出所してきた政五郎と義兄弟の盃を交わし、山根組襲名披露のために奔走してやるのだった。 政五郎のかつての師匠や兄弟子も招かれ、芝居道楽な若旦那もとい伊三郎親分が企画した浪花節興行は襲名披露と相俟って盛大に開催された。が、心労が祟ってお袖が急死、おまけに石津&浦辺の極悪コンビが出席予定の芸人を拉致監禁、興行はたちまち途中キャンセルの危機に陥る。愛妻を失い傷心の政五郎に事情は告げられぬと、伊三郎は単身で石津の下へ掛け合いに向かった。 ところが、証拠がないとうそぶかれた揚句「眼ぇ三角にしよってからに、大層なこっちゃなあ」と軽くいなされ(元々そんな眼なんだから堪忍したって下さい>天津さん)静かにブチ切れた紋付袴の若旦那(親分)、ワイは命を張ってきたんや、オノレが死ぬかワイが死ぬかじゃあ!と匕首を抜いてテーブル越しに石津に襲い掛かった…!のだが、彼のリーチよりテーブル幅の方がはるかに広く失敗(も少し考えてから襲えよ)、かくして石津や浦辺の子分らと乱闘になり、かなり善戦したものの数には勝てず、四方八方からメッタ突きの憂き目に遭ってしまう。 床に倒れてからも踏まれたり蹴られたり、瀕死のカメ状態の伊三郎に、浦島太郎ならぬ小浪竜次郎(政五郎に恩義のある、石津一家の客分:鶴田浩二)が見兼ねて助け舟を出した。彼の説得に石津はしぶしぶ芸人を渡すことを承諾し、それを聞いた伊三郎は竜次郎の腕の中で安堵したように息を引き取った。今度はオマエが政五郎をヤる番だぜとの言葉を背に、竜次郎は伊三郎の亡骸を背負って静かに部屋を後にした…。 その後、仁王の刺青を引っさげて政五郎が弔い合戦に向かい、渡世のしがらみに縛られた竜次郎とのひと悶着を乗り越えて、二人して(あ、サブちゃんもいたなあ)にっくき石津たちを斬り捨て(石津と相討ちになった竜次郎は仁侠映画っぽい台詞を吐きながら雪の中で絶命)、政五郎は息子たちとの涙の別れを経てお縄となるのだった。 *前作「男の勝負」の弁次郎は陽気な二枚目半だったが、どこかインテリ臭を漂わせるキレ者の伊三郎親分。冷静沈着で、いざというとき頼り甲斐があり、友(きょうだい)思い。そんなすこぶるイイ人のなで肩の若旦那を一人で敵地へ行かせるってのはどういうことだよ子分衆! *ようやく「誰かに抱かれて死ぬ」天っちゃんに遭遇できたわけだが、ずっと見てたんならも少し早くなんとかしてやって下さいよ鶴田さん(泣)
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2007,02,03, Saturday
稀代の女賊・黒蜥蜴(小川真由美)と明智センセイのスリリングかつセクシーな大人の駆け引きが秀逸な1本。「ライバル」が出てくるとセンセイの輝きがまるで違います。もれなくお姫様だっこ付き。・・・ところでこの回の変装解除シーン、人物切り替えがなかったように思うんだけれど、あのヒト、最初から天知茂?←最近いろんな天っちゃんを見ているので、彼ならやりかねんと思ったりもして
*(2006年4月13日追記):どうやら本物が消えた時点で、明智センセイの変装になっていた模様。芸達者だな天っちゃん!(じゃあ声も彼なのか?) *本編(1979年)を遡ること11年前、かの三島由紀夫に推されて舞台「黒蜥蜴」(主演・丸山(現・美輪)明宏)で明智役を演じた天っちゃん。むちゃくちゃ見てみたいこの舞台、劇場中継が当時TV放映されたそうなので、映像は残っているらしい(そんなことを知ったら余計見たくなる)。・・・しかし明智=榎木版をナマで見た限りでは、舞台は黒蜥蜴の独壇場なのであんまり明智の印象って無いんだよなあ。 【明智先生ファッション劇場】:センセイの服装をキャプチャーしてみました(松吉チェック付き)
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2007,02,01, Thursday
『空飛ぶ円盤 恐怖の襲撃』(1956年・S31)
(2007.02.01) 準備稿(「宇宙の十字架」)・決定稿(「地球は狙われている」)の他、詳細な解説が掲載されている資料集(猫山れーめさん編)をこちらで入手。 「ニヒル 天知茂」に載っているスチールが面妖な出で立ちにも関わらずやたらと男前だった大杉(天知茂)は、空飛ぶ円盤をやっつける唯一のロケット=R1号を開発した保科博士の助手。準備稿の段階では、ヒロイン(江畑絢子)の父でもある保科博士が最後まで主導権を握っていて、大杉助手は合いの手すら入れさせてもらっていないのだが、決定稿になると、博士はロケットに乗り込む前に怪しげなロボットにやられてしまい、大杉クンが涙ながらにロケットを発進させ、円盤を追うというおいしい展開になっていた。しかも、逃げる円盤をはやく撃っちゃえと示唆する能天気な主人公(高島忠夫)を、この距離で撃ったら地球が消滅するからまだダメですと止める(で、ギリギリの距離まで進めて見事打ち落とす)、人類の平和を守る心正しき科学者然とした人物だった。宇宙で仕切る天っちゃん、いつかぜひ映像を見てみたいものである。 *(2010.2.17追記)16mmフィルムが発見された模様。
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2007,01,29, Monday
#106「兇悪の砂丘」(1975年・S50・10月23日OA)
カイロの砂漠で狙撃され父を失い、自らも撃たれたショックで事件前後の記憶を無くした少女・祐子(森川千恵子)。主治医・牧原和子(小山明子)は彼女の記憶回復のため、現場と良く似た鳥取砂丘へと連れ出すが、そこで再び祐子は命を狙われた。どうやら顔を見られた犯人が追いかけてきたらしい。祐子の記憶を取り戻させて犯人を捕らえるという使命を帯び、会田(天知茂)たち特捜部は鳥取(皆生グランドホテル)へと向かう。 警護を固める中、祐子の行く先々に現われる不審な男。動きがすべて筒抜けなことに、会田は身内に内通者がいるのではないかと疑う。おまけに発砲したところを取り押さえ尋問しようとしたが、男は何者かに射殺されてしまった。 祐子をこれ以上ここに留めておくのは危険だと判断した牧原女医は会田に計画の中止を訴えるが、「そんな時間はない」と一蹴された。ところが偶然、会田が服用している薬の名前(=6メルカプトプリン)を見てしまい、「時間がないのは貴方のほうじゃなくて?」と反撃を開始。…したのだが、会田が祐子の命を大事に思うからこそ一刻も早く記憶を取り戻させたいと考えていることを知って(チークダンスでほだされちゃったりなんかもして)、砂丘でカイロの事件を再現させることに同意した。 予定を変更して砂丘に向かった祐子たち。とそこへぶちこまれる銃弾。ハッとする坂井(宮口二朗)と右田(左とん平)の眼に映ったのは、カービン銃を構えて歩み寄るサングラスの男(=会田)。会田は無言で次々に祐子に向かって銃をぶっぱなす(←悪い人にしか見えません)。やがて祐子は「おにいちゃん、やめて!」と叫んで地に伏した。彼女と父親を狙撃したのは義理の兄――母・節子(赤木春恵)の前夫との息子・孝之介(倉島襄)だったのだ。 祐子を追って砂丘に来ていた孝之介は逮捕、殺人を依頼した節子はホテルの窓から身を躍らせ、事件は解決した。「お体を大切に…」祐子と共に機上に消えた牧原女医を、会田は黙って見送るのだった(昭和ブルースは3番)。 *ロケ地を元気に走り回っていたとはいえ、白血病設定は(2週目だけあって)まだ健在。しかしながら、眩暈を堪えていたりでお疲れの様子だなと思いきや、牧原女医に「センセイ、俺に付き合ってくれませんか…」とダンスに誘い出すムーディー会田。踊りながら「貴方ってひとがわからないわ」と言われてフッと笑みを漏らし「俺にも分からないね。ただ分かっているのは…死ぬまで生きる、ってことだ」と呟くシーンにはこっちが眩暈を起こしかけた。 *砂丘で恐怖のカービン銃を手に歩いてくるシーンも、胡散臭さが堂に入りすぎてて眩暈が。やりますねセンパイ!と言いたげにニヤッとする坂井刑事(宮口二朗)の表情もナイス。
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| TVドラマ(現代劇)::非情のライセンス2 | 03:58 PM | comments (x) | trackback (x) | |
2007,01,28, Sunday
あの『狼男とサムライ』(1984年・S59)の完全版を、ご好意で見せていただいた。
完全版といっても、残念ながら「天知茂のアフレコ版」が存在するわけではなく、日本人キャストが華麗にスペイン語を喋っている(=吹き替え)上に字幕がギリシャ語、という国際色豊かなバージョンで、日本でビデオ化された作品(=日本版と呼ぶことにする)よりも約20分ほど多くの映像が含まれているものである。追加シーンは狼男(バルデマル:ポール・ナッシー)がらみの部分が多いものの、天っちゃん演じる貴庵が夢の中で暴徒相手に立ち回るシーンがあったりで、少しばかり得をした気分になれる。 しかし特筆すべきはなんといっても音(BGM)。舞台がスペインの時には日本版と同じBGMだが、いざバルデマル一行がお江戸に着くと、越天楽のようないかにもガイジンさん好みのニホンの音色が(たとえシリアスなシーンでも)賑々しく奏でられていて、ちょっとしたカルチャー・ショックを受けること請け合いだ。 ・・・もっとも、エンディング曲が天っちゃんと池波志乃さんのデュエット「絆」(しかもフルコーラス)だという最大級の驚きが待ち受けていることは前にも書いたが( 「恋酒」参照)、貴庵の妹・茜(朝比奈順子)とバルデマルのラブラブな逢瀬シーンでもこのムード歌謡(もちろん歌の部分)が唐突に流れ始めるという、そのめくるめく選曲センスには正直脱帽(or脱力)。何もかもこじんまりとまとまっていた日本版よりもいろいろと楽しめる作品だった。 *後から日本版を見直したところ、「絆」のインストバージョンはこちらでも流れていたことが判明。つまりこれが例の「映画のために作った歌」と考えていいのかもしれない(でもその場合なぜ池波さんなのか、という疑問は残るのだが)。
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2007,01,26, Friday
「喧嘩渡世 命売ります!」(1971年・S46・1月17日OA)
我こそは上様のご落胤の綾姫なるぞよと、3組もの親娘が名乗り出た。皆それらしい証拠の品を携えているため、家老や内藤勘解由(中村竹弥)には誰が本物のお姫様なのか見当も付かない。だがたった一人だけ、綾姫を見分けられる人物がいた。幼い頃共に育った乳兄妹、元旗本の淡野(=あわの)右近(天知茂)だ。 早速ご家老は協力を要請するが、自ら家禄を返上し今は喧嘩の仲裁などを生業としている偏屈浪人の右近(登場時には大根の漬物を切ってぽりぽり喰ってたお気楽振り)は首を縦に振らない。内藤に命じられた十文字小弥太(杉良太郎)は、彼のへそ曲がりな性格を逆手にとり、ようやく3人の娘がいる下屋敷へと向かわせることに成功した。 だが面通しをする直前で苦しみ出す右近。どうやら毒を盛られたらしい。「時の人」である彼は屋敷に来る前も黒装束の連中に襲われていた。それにしてはなんだか白々しい倒れ方だが、次の場面ではウンウン唸って寝込んでいる。とそこへ1組の親娘がこっそり現われ、右近の首に紐を巻きつけ両サイドからぎゅっと締め・・・床に転がった。小刀を手に起き上がった右近(やはり騙していた模様)、これで1組脱落〜と屈託が無い。 残りの娘たち――おきくとおふみ――に会った右近は顔を見るなり黙り込んだ。どっち?どっち?とせっつくご家老に「抱けばわかる」と冗談めかして呆れられるが、実は本物の綾姫には腕に3つの黒子があることを彼だけが知っているのだ。おふみと恋仲の男が押しかけてきて騒動になった際、彼女の腕に偶然ソレを見つけてしまう右近だったが、好きな男と里で暮らしたい彼女の幸せを考え、沈黙を守ってやる。 そして右近を狙った黒装束は、おきくの養父(神官)の差し金であることが判明する。再び寝込みを襲われるも颯爽と二刀流で退治した右近、その後会ったときから怪しいと睨んでいた小弥太とサシで(匕首VS懐刀で)勝負を挑み相討ちになりかけるが、アンタッチャブル仲間の井坂十蔵(瑳川哲朗)に阻まれるというオマケがついて一件落着。 二人ともニセモノでした、そう証言して(真相を知る小弥太には睨みをきかせて無理やり黙らせて)屋敷を後にした右近は、「侍もやめるつもりだ」と小弥太に告げ、のんびり風来旅へと向かうのであった・・・。 *同時期の「水戸黄門」ゲスト時のキャラクター(沖山船十郎)にとても近い、三枚目の勝った浪人役。お気楽そうにみえてもやはり隙がないのだが、なんだか嬉しそうに演じているので見ていて楽しかった。しかし侍やめちゃってどうする気だ右近。占い師でも始めるのか? *予告では「天知茂を迎えて送る次回・・・」と役者の名前入りで大々的に紹介されていた。
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| TVドラマ(時代劇)::その他(ゲスト) | 12:02 PM | comments (x) | trackback (x) | |