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非情のライセンス 第2シリーズ #39
#91「やさしい兇悪」(1975年・S50・7月3日OA)

北海道からフェリーで帰る途中の会田(天知茂)の部屋(特別室)へ逃げ込んできた密航少年・湯山賢治(中井徹)。便りが途絶えた出稼ぎの父(牟田悌三)の身を案じ、母(天地総子)や妹たちに黙って家を出てきたらしい。

珍しくオールキャストが揃った(南刑事=望月太郎はいなかったが、もはや誰も気にしていないのかもしれない)特捜部ではリンチ殺人事件を追う一方、会田の北海道みやげ・賢治少年の父親探しにも皆でひと役買うことに。やがて、失業者たちを騙して強制労働させている暴力団組織の存在が浮上、潜入捜査に向かった会田は男たちの中に身体を壊した賢治の父を発見する。

リンチ事件の犯人でもあった関西ヤクザ(北町嘉郎)らは特捜部により一網打尽、かくして湯山親子はめでたく再会を果たした。「忘れないよ、会田健という名を」「俺も忘れないさ、湯山賢治という名をな」親子の乗った船に向かって、会田は笑顔で手を振った…(昭和ブルースは1番)

…という、非ライにしては甘め(単純?)なストーリーは、交通事故死した実在の賢治くんの名前を拝借して作られたもの(詳細はこちらの記事に)。予告とエンディングにその旨が流れるあたりに少々あざとさを感じてしまうとはいえ、とにかく今回の特記事項は天知茂・初監督作品であること。レギュラー陣がやけに嬉しそうに画面を往来するうえ、ピンポイント・ゲストがやたらと多く、現場でのちょっとしたお祭り騒ぎが想像できるのが楽しい。

そして肝心の演出は、特捜部室の少し変わったアングルの撮影、長回しロードムービー風(水面ショットなど)、スローモーションにコマ劇場(=ぐるぐる)と、これまた天っちゃんの凝り性な面が随所に出ていて興味深かった。ただ凝りすぎて予算オーバー、始末書モノだったそうで(ワイズ出版「天知茂」池田さんの証言より)、それが影響してかどうか、非ライ上、最初で最後の演出作品となってしまった。

*前回の悲しいラスト(#38「男のうたは兇悪」)の後の予告編にて、セカンドLPの表紙みたいな格好(ただしノー金鎖)で「はいカットー」とかやってる天知監督がばっちり映るせいで涙が引っ込んだ。「だめだろ、爪噛むんだろお?」と子役に指導してる監督、けっこう怖い。

*ちなみに賢治君の爪を噛むという癖は天っちゃん本人の癖(ワイズ出版「天知茂」より奥さま談)からきているのかもしれない。ラストで賢治君の「忘れないよ」を思い出し、釣られたように爪を噛んじゃう会田がご愛敬。

*友情出演枠で桜町弘子さん(屋台の女将)・弓恵子さん(だるま船の女)・毒蝮三太夫さん(だるま船の船頭)・倉丘伸太朗さん(船員)。そのほか、天知ファミリーも「傷の男」(北町さん)だの「額際の薄い男」(岡部さん)だの投げやりな役名で(人数多すぎて名前考えられなかったのか?)もちろん出演。

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石の林
土曜劇場「石の林」(1962年・S37年 1月27日OA)フジ 20:00-21:00
原作:樹下太郎
出演:河野秋武(速水竜伍)、瞳麗子(速水麻子)、天知茂(金杉東三)、富岡恵子(高遠万千子)、鬼頭昭夫(年山栄次郎)、早川研吉(時ちゃん)、谷口徹次、西川豊子
(以上、朝日新聞縮刷版より引用)

原作を読んでみた。
順風満帆な人生を送っていたはずの課長・速水は、娘の麻子につきまとうチンピラを巧妙なアリバイ工作の末に撲殺し、そのアリバイに無意識に勘づいた部下をも自殺に見せかけて殺害した。だが死んだチンピラの兄貴分が麻子を脅迫、そのうえ小柄機敏油断のならない部下の金杉(=天っちゃん)がじわじわと真相に肉薄してきたために進退窮まり、家族と自分の尊厳を守るため、最後の賭けに出る…というのがあらすじ。「石の林」というタイトルは、人を殺める場所が石切り場だったり墓場だったりすることから付けられているようだ。

毒舌家だのニヒリストだのと描写されている(おまけに女房は3度も取り換えている)金杉くんは課長とソリが合わないせいで出世を妨げられており、その恨みを晴らしてやろうとの思惑で事件に首を突っ込む。殺された部下の恋人だった万千子に接近、ドンファン気取りでガバッといただいちゃったあとで誠実な面も示すというダーク・ヒーロー的な人物なのだが、速水課長が彼も消してやれと考える前に刑事に目をつけられ自己完結してしまうので、扱いがすこしばかり中途半端になってしまっているのが残念だった(とはいえ殺されてもイヤだが)。

(2013.3.12追記:毎日新聞夕刊より引用)
【三谷は死んだが】
樹下太郎原作。速水の部下三谷は酒におぼれ、ある日死んだ。警察は睡眠薬の飲みすぎ自殺と断定した。しかし三谷とライバルの立場にある金杉には、それが自殺とは割り切れなかった。金杉は三谷の死の一か月半ほど前に、速水の娘麻子につきまとう男が何者かによって殺された事件を思い出した。二つの事件はどこかでつながっているのではないか?

速水=河野秋武、麻子=瞳麗子、金杉=天知茂、万千子=富岡恵子、三谷=志摩晶ほか。
*この記事では、謎解きをしていく金杉が良い人っぽくみえるのだが、果たして…?

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非情のライセンス 第2シリーズ #38
#90「男のうたは兇悪」(1975年・S50・6月24日OA)

産業庁の課長補佐が投身自殺、などという物騒な記事を電車内で読みながら会田(天知茂)が向かった先は北鎌倉の小谷邸。中学からの親友・英明(神山繁)の父の命日なのである。精糖会社の課長になった英明は毎夜忙しい様子とのことだが、母・清子(南美江)は昔と変わらぬ温かさで会田を迎えてくれ、かつて彼と英明が植えた泰山木を見ながら思い出話に花を咲かせる。

本庁へ戻った会田は部長の矢部(山村聡)と二課二係(=汚職などの知能犯罪担当)の伊佐山(渥美国泰)に呼ばれた。「君は親友に対しても部内の秘密を明かさんという約束ができるか?」 特捜部でも警官のはしくれですがね、と憮然とする会田に伊佐山は、先刻の課長補佐・池谷(西本浩行)の投身自殺が“さんずい”(=汚職)絡みだったこと、池谷や政界の黒幕などに金をバラまいていた張本人が神山精糖の小谷英明であることを告げ、捜査への協力を要請する。「せっかくだが出来ません!」 きっぱり断る会田だったがタイミングの悪いことに当の英明から「今夜一杯やらんか」と電話が入り、仕方なく出向く羽目に。

親友の無実を信じたい会田の気持ちとは裏腹に、英明は酒席に上司を呼んだり高価な布地を送りつけてきたりといかにもな行動を取る上、神山精糖の子会社で優遇されている池谷の妻、クラブのママで英明の愛人・紀子(谷口香)らの証言により収賄の容疑は濃厚となる。サシで会い、自首をそれとなく勧める会田を「なぜそう俺を追い詰めるんだ!」となじった英明は、友達だからだ、と諭す彼の言葉に聞く耳を貸さず、話し合いは決裂。

高跳びのためか、英明のブラジル出向が決まったその夜、会田は逮捕状を持って小谷邸へ赴く。事情を薄々察していながら、それでも明るく自分を歓待してくれる清子の心づかいが会田には辛い。帰宅した英明は観念したように黙り込むが、取り調べ室ではあくまでシラを切り通した。やがて空が白み始めた頃、会田の吸いかけの煙草を深々と吸い込んだ英明は、洗いざらい喋ると言いながら看守の目を盗んで窓から身を躍らせて死んだ。

彼の死により汚職事件の捜査は頓挫。葬儀に出向いた会田に愛人の紀子は「あの人を殺したのはあなたよ!」と辛辣な言葉を浴びせかける。だがそれよりも気丈な清子の「いいんですよ会田さん…」の一言がこたえた会田は、満開の泰山木を見上げて涙を流すのだった(男のうたは1番)

*希望に満ち固い友情で結ばれていたふたりの男の悲しい別れ(逮捕状を持っていったシーンと煙草のシーンは泣ける)を彩った泰山木の花言葉は「前途洋々」。

*親友だけあって、頑固さや忠誠心の厚さは似た者同士の英明くんと会田くん。会田がフルネームで呼ばれまくるのはこの回は初めてでは? それにしても、普段の会田なら英明に汚職を実行させていた上司をボコ殴りするくらいはやってのけると思うのだが、それどころではなかったらしい。

*[会田データその1] 広島から横浜のおじさんちに居候して、コウホク(港北?)中学を昭和27年に卒業。
*[会田データその2] 梅桃(ゆすらうめ)が好物で、かつて食べ過ぎてお腹を壊した(清子さん談)
*[会田データその3] 現住所は「渋谷区神宮前2-3-15 パシフィックマンション内 tel:466-3618」(布地の宛名書きより…って、マンションはともかく、この住所実在してるんだ…)

*第1シリーズから続いていた「兇悪(の)…」タイトル頭文字が逆転。

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非情のライセンス 第2シリーズ #37
#89「兇悪の倒産」(1975年・S50・6月19日OA)

働き者のおはな婆さん(村瀬幸子)は、たった一人の肉親である可愛い孫の昌一(大森久綱)の初出勤を祝って大張りきり。ところがうかない顔の昌一は当日になって打ち明ける。「採用取り消しになっちゃったんだよお」

その夜、就職先だったはずの番城電機は炎に包まれた。

現場でおはな婆さんが目撃されたことから、所轄の弾三郎刑事(北島三郎)が聞き込みに。孫の就職先を必死に探すおはな婆さんの姿に打たれ、彼女が犯人であるはずがないと思いたい彼に部長刑事(会田より派手なスーツのディック・ミネ)から朗報が入る。出火の原因は時限爆弾によるものだったのだ。

ところが、中学生レベルのその爆破装置を作った容疑者として、孫の昌一が連行されたと知りびっくり仰天。しかも逮捕したのがあの会田(天知茂)だというので、サブちゃんは早速特捜部へ殴り込み、じゃなくて怒鳴り込みに行く。

会田たちはこの事件を、番城電機のパテントを所有する暴力金融の仕業だと睨んでいた。事実、自らは手を汚さずにひと儲けを企む金融会社社長・田代(北原義郎)は番城電機の人事課長・道原(佐原健二)を手なづけ、採用を取り消されて会社に恨みを持つ者の中から実行犯を選ばせていた。

だが肝心の昌一ががんとして口を割らないため、会田はおはな婆さんに接触。「頼むから昌一逮捕のことは婆さんには言わないでやってくれ!」とサブちゃんからさんざん頼まれたにも関わらず家に出向いておはな婆さんに真実を告げる会田に鼻の穴をふくらませるサブちゃん。しかし婆さんは昌一ではなく自分が道原の言葉に乗じて火をつけたと告白(結局ふたりで火をつけていたことが判明)、そこに道原と田代をつなぐ糸が見えた。

田代の子分(傷メイク付き)に扮した右田(左とん平)&四方(葉山良二)コンビに牢屋で脅された道原はあっさり田代の関与を認め、キレたサブちゃんが大暴れして(会田がさせて)一網打尽。一時は自殺を図ったものの、サブちゃんに激励されたおはな婆さんは昌一の帰りを待って頑張ることを誓うのだった(昭和ブルースは1番)

*サブちゃんが出てくると会田が一歩引いたセンパイ的な態度を取るので(出番的にも一歩引いているのか?)少々物足りないような気がする。とはいえ二人の掛け合いは面白い。

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大忠臣蔵 #7
「大いなる決断」(1971年・S46・2月16日OA)

吉良上野介(市川中車)の生死が分からず悶々とした日々を送る堀部安兵衛(渡哲也)は、長屋の前で侍たちが“清水一学”の襲撃を画策しているのを耳にした。帰ってみると夜鷹のお絹さん(利根はる恵)が“すごくイイ男が越して来たのよぉ!(ハート)”と身をくねらせており、それが清水なる男のことだと知った安っさんは早速注進に向かう。

新参者の浪人です、先輩よろしく!(←実年齢は10歳上)と明るく挨拶を返した清水一学(天知茂)はその知らせを聞いても「来れば分かるでしょう」といたってどっしり構えている呑気者(自称)。とそこへ先刻の侍たちがごろつきを連れてなだれ込んできた。彼等は吉良家の家臣。「一学、キサマぁ、ご家老様のご息女をかどわかしただろう!」とわざわざ国許から詰りにきたのである。それで初めて、振り切って来たはずのおせいさん(長谷川峯子)が家に帰っていないことを知り慌てる一学さん。問答無用で斬りかかろうとした侍たちだったが、安兵衛がごろつきの始末を買ってでている間に一学さんの手であっさりとノサれてしまったらしい。息も切らさず「片づけました」と長屋から出てくる一学さん、なにやらとんでもなく強いんじゃないかと匂わせるくだりだ。

お絹さんの親切によって、小料理屋で働くおせいさんが見つかった。どうしてこんな、と弱り果てる一学さんに対し、惚れた男に再会できてとても嬉しそうなおせいさんは長屋に一緒に住むことになった。

そんな折、柳沢吉保(神山繁)配下の忍び・お蘭(上月晃)と兎助(露口茂)の物騒な計画のターゲットが安兵衛であることをたまたま聞いた一学さんは、彼の代わりにごろつきたちと二刀流で対峙、ばったばったと峰打ちでなぎ倒した(「せっかくだが、相手が代わったよ」と自信満々でバッと二本の刀を取り出すあたりからワンマンショー)。上野介の無事を知った安兵衛を捕えさせる計画が頓挫して悔しいお蘭は一学さんと一戦交えようとするが、かなりデキる二天一流の一学さんの前に「相討ちではつまりませぬ」と戦意喪失、安兵衛が赤穂の浪人であることだけを告げて去る。

生涯の友と呼べる男がいわば敵側の人間だったことを知り、ショックを受ける一学さん。おまけに長屋へ帰ると、安兵衛の父・弥兵衛(有島一郎)以下親切な人たちが、おせいさんとの祝言の場を設けてくれていて気づまり極まりない。前回(#6)といい、吉良VS浅野の件に関してかなり鷹揚な態度を取っていた感のある一学さんだが、悩んだ挙句に初夜の晩に夜逃げを決意。新妻・おせいさんは涙を見せつつも、すまながる一学さんに気丈に従うのだった。

*安兵衛がコチコチの硬派にみえる分、かなり丸めというか余裕のある言動の一学さん。天知プロ背負ってる大物は違うなオイ(それとも年の功?)

*豪快な二刀流だけでなく、祝言を挙げてからいつもの調子で「おせいどの!」と呼んじゃって「おせいです」とつっこまれるあたりの可愛さも必見(しかも3度繰り返し)。

*タイトルの意味は夜逃げを決意した一学さんのことでは無くて、お金がないのに農民たちに換金することを決意した内蔵助さんのことだと思われる。

*今回は一学さんのカットシーンはなかった模様。ちなみに次回登場は#17までお預け。

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| TVドラマ(時代劇)::大忠臣蔵 | 12:49 AM | comments (x) | trackback (x) |
大忠臣蔵 #6
「悲報 赤穂へ」 (1971年・S46・2月9日OA)

浅野内匠頭の刃傷事件を国許・赤穂へ知らせる早駕籠が吉良家の領地に差し掛かった途端、「殿様を傷つけた赤穂の侍は許せねえズラ!」と息巻く百姓たちに絡まれ一触即発。そこを待て待てと鎮めにきたのが吉良家家臣・清水一学(天知茂)だった。リーダー格の百姓の髷をすぱっと切り落とし(まだ二刀流は未使用)、早駕籠に乗っていた早水(和崎俊哉)たちを通してやる男気を見せてくれる一学さん、初登場からナイスガイ全開である。

しかし百姓たちは国家老(村上冬樹)に泣きつき、一学さんはお説教の憂き目に。それでも吉良の侍か!となじられても「清水一学の士道は、ご家老の士道とは違う!」ときっぱり言い切り自らの行動を恥じる様子などまったくない彼にカッとなった国家老は召し放ちを言い渡した。

ああそうですか、やむをえませんな、とさっさと出ていく一学さんに駆けよる国家老の娘・おせい(長谷川峯子)。二人はどうやら良い仲らしいのだが、さほど未練もない様子であっさりとひとり江戸へ旅立とうとする一学さんに「私も一緒に参ります!」と宣言したおせいさん、待ち合わせ場所を決めて「待っていて下さいね」と念押ししたのに、そこには誰もいなかった…。(彼女が「一学さんと江戸へ行きます」と書き置きを残したせいでひと悶着あるのが次回)

*傍系の話だけに、地上波版では一学さんの出番(ご家老にお説教されているシーン)でかなりカットされていたようだ。「黙ってばかりおらず、何か申したらどうだ!」と言われて「…何を申せばよろしいのでしょう?」と真面目に戸惑っている表情なんかが結構みものなんだけどなあ。

*昔は大ニュースを知らせるのも大変だったんだなあとつくづく思う回。江戸から赤穂まで、担ぎ手を数人連れて必死の思いで駕籠を飛ばしまくっても5日以上かかるんだから難儀だ(おまけにこの第一陣では、刃傷事件のことだけで、その後の沙汰などまだ一切わからない状態なんである)。

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| TVドラマ(時代劇)::大忠臣蔵 | 12:48 AM | comments (x) | trackback (x) |
非情のライセンス 第2シリーズ #35
#87「兇悪の裏帳簿」(1975年・S50・5月29日OA)

「やっとだ…」サングラスの会田(天知茂)は海岸に佇む男女を見て呟いた。暴力団・総和会から裏帳簿をくすねて5000万を脅し取った男・滝本庄平(若林豪)の行方をようやく突き止めたのだ。俺は組のモンじゃない心配するなと彼なりにフレンドリーに近づいた会田だが、滝本は猛反発(会田がそのスジの人にしか見えないから、というよりデカ嫌いなので)、帳簿の在り処を話すどころではない。

元漁師の滝本は、かつての仲間たちとの船出を夢見て、金を漁船の購入につぎ込んでいた。会田は滝本と一緒にいたリサ(市毛良枝)に接近して帳簿の所在を聞き出そうとするが、仲間の密告によって総和会のヒットマンたちも滝本に迫っていた。

滝本の潜伏場所をわざと連中に電話で知らせ、張り込ませている坂井刑事(宮口二郎)に捕えさせようという会田の計画は、裏をかかれた坂井の負傷で頓挫。あやうく消されそうになった滝本を救った会田だが、帳簿の件ではしらを切りとおされる。

凄腕の漁師だったが陸でみじめに横死したリサの父の供養のため、また自分自身の漁師としてのたぎる血を鎮めるためにひたすら海に出たがっている滝本に、船は来ない、仲間も誰一人集まらないと会田は冷酷に告げる。滝本が船をたのんだ業者は悪徳ブローカーであり、今の生活に安んじているかつての漁師仲間は、組に身を置いていた滝本が怖くてただ調子をあわせていただけなのだと。

過酷な事実を突き付けられてショックを受けた滝本を、総和会の新手の銃弾が襲った。リサが救急車を呼びに行っている間、そばで励ます会田(犯人はすでに射殺済み)。
青い海が見える―。昏い灰色の海を目前にして呟く滝本に、俺も見たことがある、広島のピカの時にな、とさりげなく過去を打ち明け、会田は頑なな彼の心を溶かしてゆくのだった。

滝本は一命を取り留めた。帳簿はすでに焼却済だったが、中身を写したカメラをリサから手渡された会田はネガを坂井に託して彼の手柄にした(弟子思い)。そして後日、紹介した海での仕事に向かう滝本(あれだけ反抗していたのにすっかり「会田さん」と敬語使用)を見送った会田の表情は明るかった(昭和ブルースは3番)

*体格的には結構差があるのにやっぱり伝さんは剣さんには頭が上がらないのかあ(ってそれは「江戸の牙」)。

*滝本と激しい肉弾戦を繰り広げたり風が吹きすさぶ屋外でアクションしたりが多い回。リサさんやら滝本やらに「大丈夫かっ!」と駆け寄るたびに「そっちこそ大丈夫なのかっ!?」と突っ込んでしまった(カットによってはかなりヤバかった…)←何がかは自粛

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非情のライセンス 第2シリーズ #36
#88「兇悪のふれあい」(1975年・S50・6月12日OA)

雨の夜、男は電話で告げた。30分後に会いに行くと。
女は嬉しくて待っていた。
だがいくら待っても男は現れなかった。
その夜、男は撃たれて死んだのだ。

汚職をネタに大会社から金をゆすり取り、その後で警察に密告するアコギなタレ込み屋・篠原(菅貫太郎)が射殺体で発見された。大東産業専務・宮野(夏木章)の贈賄絡みで消されたらしいのだが、やり手秘書の北川(平田昭彦)が警察に確証を掴ませない。

一方、北川と、彼に雇われたヒットマン・足立(千波丈太郎)は、掴んだネタを篠原が預けたという人物の割り出しを急いでおり、篠原のかつての仲間・栗山(矢野宣)は、会田(天知茂)と接触していたが故に足立に消されてしまった。

残るはバーで働く篠原の女・ゆき子(藤田弓子)。遺体を引き取りにきた傷心のゆき子に付き添った右田刑事(左とん平)は彼女は無関係だと言い張るが、会田と坂井刑事(宮口二郎)はゆき子が情報を握りながら黙っているのではないかと疑う。1週間バーに通いつめ、何も知らないと言い張るゆき子に「北川に会ってくれないか」と頼む会田。そしてゆき子は、恋人を死に追いやった元凶である北川をホテルに誘った。

婦女暴行罪で逮捕された北川は、取り調べに来た会田に叫ぶ。「凄腕の刑事だとはきいていたが、こんな汚い手を使うとは思わなかった。 私が甘かった…!」それを聞いた会田はエエッこの俺が何をしたってぇ?という顔で絶句。 北川に会ってくれと言ったものの、その後のゆき子の捨て身の行為、そしてそれが自分の差し金だと思われていることまではどうやら計算に入れていなかったらしい。

北川や足立の自供により、宮野の悪事は明るみに出た。篠原の遺骨を抱いて故郷に帰る支度をしているゆき子を訪ね「どうしてあんなことを…」と問う会田に彼女は冷たく言い放った。
――刑事さんのためなんかじゃない。うぬぼれんのもいい加減にしてほしいわ!
(ガーンときてる会田のアップと共に昭和ブルースのイントロ開始)
自分のためにしたことだと、鏡を見詰めながらゆき子は言った。
いたたまれずに玄関に立った会田に、そっと差し出される靴べら。微かに笑みを返したものの、部屋を後にした会田の足取りは悄然としていた(昭和ブルースは1番&4番)

*クールな万能刑事・会田でもたまには不発なときもあるさ、な回。右田さんが力説したように、そもそもゆき子は最初っから篠原のネタなんか持ってなかったんじゃないか?とも受け取れるので、会田からすれば踏んだり蹴ったりな展開だ。

*脚本は「橋本絲」氏となっていたが、「橋本綾」氏とは別人なのだろうか?(OPクレジットはけっこう誤植があるのでよくわからない)

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濃霧(ガス)
土曜劇場「濃霧(ガス)」(1961年・S36年 9月2日OA)フジ 20:00-21:00
作:はざま・たけし
出演:天知茂(安東吾市)、潮万太郎(巷)、故里明美(球江)、綾川香(支配人)、館敬介(弁護士)、梅津栄、本間文子、宮浩一

(朝日新聞縮刷版よりあらすじ引用)

『夜の隅田川にはガスが深くたちこめている。吾市は8年前のやはりガスの深かった夜の事件を思い、苦い回想にくちびるをゆがめた。深酒がもとで吾市は殺人犯として逮捕された。同僚が姿を消し証言が得られず入獄したが特赦にあって8年ぶりで出獄した。無実の罪におとしいれた者への復讐に青春を葬り去られた男の心は燃える。』

*データベース未収録作品。無実の罪を着せられ復讐に燃える男、いかにも似合いそうな役柄で堂々の主演。

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根獅子のきりしたん
東芝日曜劇場「根獅子(ねしこ)のきりしたん」(1961年・S36年 8月6日OA)TBS 21:30-22:30

出演:安井昌二、藤間紫、朝丘雪路、天知茂、早川雪夫

(朝日新聞縮刷版よりあらすじ引用)

『天草の乱で敗れた信徒の一人、漁師の喜作は宣教師ロレンソを救って故郷の平戸島へ小舟で脱出した。気を失った喜作が意識を回復したとき、胸をはだけた女の姿があった。喜作と顔なじみのお春だった。喜作が故郷の根獅子の浜に打ち上げられたのを体温であたためて回復させたのだ。4人の男女をめぐり恋に身を焼く姿を描く。』

*早川さん(雪洲Jr.)がロレンソ役らしいがあとは不明。おそらく喜作=安井さんだろうなと思うが、“4人の男女”に天っちゃんが入っているかどうかは微妙なところだ。

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