2008,02,03, Sunday
#108「兇悪の情事」(1975年・S50・11月6日OA)
今夜は宿直でヒマなもんだから電話したんスけどね、という坂井刑事(宮口二郎)からのハタ迷惑な連絡(会田は静養が必要なんだよ、遠慮しろよ!)を枕元で受けた会田(ほんのりR指定:天知茂)は、矢部警視(山村聡)や一課の橘警部(渡辺文雄)らお偉方が深夜に雁首そろえて会議中との話に興味を示す。「こりゃ何かありましたよ、大事件が!」 好奇心旺盛な(出歯亀ともいう)特捜部の面々は早速一課をマーク、とあるモーテルで激しい暴行の痕がある女性の死体を発見した彼らが、遺体と現場に残されたいわくありげな外車を運び出すのを目撃した。秘密裏に処理されたこの殺人事件の謎を矢部部長の目を盗んで探っていくうちに、日本と関係の深い(らしい)アンドリアの一等書記官・ノンブル(ダン・ディピートロ)という人物が容疑者として浮上。だが彼はアンドリアの皇族で、大使である兄の所でのうのうと匿われていた。 ノンブルがクロだと知りながら外交官特権を前に引き下がらざるを得なかった上層部を非難する会田たちだが、一警官の立場ではどうにもできんのだ、と苦渋の表情の矢部部長にこの件から手を引けと諭される。会田はそれでもしつこく食い下がったものの、部長パンチでふっとばされるわ、おまけに体調も悪化してくるわで踏んだり蹴ったり。 「あとどれくらい持ちますかね」輸血がてら余命を山岸医師(大友柳太朗)に尋ねたところ、正直分からん、あと半年か3年か5年か、10年20年、30年以上生きられるとも限らん、と実に幅のある答えを貰った会田はそれならガンガン突き進んでやると思ったのか、バーに勤めていた被害者女性の同僚でベテラン格の真理子(杉本美樹)の協力を取り付け、ノンブルを大使館の外へおびき出す計画を立てた。 兄に釘を刺されていたにも関わらず、真理子からの電話でホイホイ会いに出かけたノンブル。少年時代、育ての母が日本兵に陵辱され殺された現場を目撃してしまった彼は、それ以来猟奇的な衝動を抑えきれないのだ。真理子を自分の別荘へ連れてゆき、ベッドの上で再び同じ過ちを繰り返そうとした彼を会田が(立ち聞きに熱中したのか微妙に遅れつつ)間一髪で制止、銃撃戦になりかけるも、一課の応援のおかげで無事逮捕。泣きが入ったノンブルに最後通牒を突きつけた橘警部と頷きあい、真理子とも別れた会田を待っていたのは、「特捜部を追い出されてどこへ行くつもりかね」――辛らつな言葉とは裏腹に温かい眼をした矢部部長だった(昭和ブルースは4番) *会田のえらそうな返答:「もうひとつ特捜部を作っていただくんですな」。矢部さんがいるのを見た途端、悪戯が見つかった子供みたいな表情をみせる会田がいい(このあと車まで歩いてゆき、会田がさっとドアを開けて矢部さんをエスコートするところも好きだ)。 *杉本美樹さんといえば池玲子さんの妹分(という認識でいいのだろうか)。脱ぎっぷりはさすがだが、どんなときも眼が笑わないクールなひとだった。 *眩暈、それにときおり脚が引きつることも、と初めて不調を訴えていた会田。てっきりノンブル逮捕のときになにか症状が出ちゃうのかとか、はたして矢部さんは知ってるのかとか、いろいろと想像を逞しくしてしまったのだが、そういう乙女なノリは禁物らしい。(ちなみに山口百恵の白血病ドラマ「赤い疑惑」がオンエアされたのが、同年のこれまた同じ10月から、という事実と、会田の白血病立ち消えの件は関連はないのだろうか?)
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2008,02,01, Friday
#104「兇悪の再会」(1975年・S50・10月2日OA)
おねーさんのむっちり脚と天っちゃんの歌声(「非情の街」)入りOPに気を取られているうちに公害企業反対組合のリーダーが駐車場で射殺され、たまたま通りがかった赤ん坊連れの若夫婦も巻き添えをくって死亡。現場でいちゃついていた山野(西田健)は犯人・黒崎(黒部進)の顔を目撃したが、不可解なことに後になって証言を覆す。そして山野も、坂井刑事(宮口二郎)と四方刑事(葉山良二)が張り込んでいる目の前でガス自殺に見せかけて殺された。 自分たちのヤマをさっさと一課に託すなど、最初からなぜかおとなしの構えの会田(天知茂)だが、「なんでヤマちゃん(=山野)を守ってくれなかったのよ、人殺し!」と恋人・伸子(=冒頭の生脚おねーさん:ジャネット・八田)にシャレのように張ったおされてスイッチが入ったらしく、黒崎のボス・大和田(天本英世)の事務所を急襲、黒崎ほか5人を血祭りにあげ、矢部警視(山村聡)に拳銃と警察手帳を返上した。橘警部(渡辺文雄)に過剰防衛の咎で逮捕され留置所入りとなった会田は、自分ひとりで責任を被るつもりが新聞沙汰になり、特捜部の存続も危うくしてしまう羽目に。 そんな折、会田の行為を正当防衛だと証言し彼を保釈に導いた人物が現れた。伸子と大和田である。大和田は「奪った手帳を返してくれ」と1000万を提示。会田が事務所で手に入れた手帳には、大和田たち殺し屋グループを差し向けた黒幕の大企業・帝都物産の名前が記されているのだ。俺も安くみられたもんだとお近づきの小切手を破り捨てた会田に大和田は刺客を差し向けるが、彼をマークしていた(助けたわけじゃない、とか言いつつ実にタイミングの良い)橘班長によって事なきを得る。 一方、伸子も同じ手帳を欲しがってきた。彼女が大和田に唆されていることを知りながら会田は手帳を彼女に手渡し、部長にまたしても拳銃その他を返却すると、大和田一派を振り切って帝都物産を強請りに向かった。帝都の総務部長が顔色ひとつ変えずに用意した5000万を「俺はこれでも刑事の端くれだから」と丸ごと伸子に譲った会田は、田舎へ戻ってかあちゃんたちにこれ見せてやるんだ、と涙ぐむ彼女の純朴さに笑みを漏らす。 しかしコケにされた大和田たちが彼らを許すはずはなく、ビルを出てすぐ二人は狙撃された。逃走中に現金入りケースを落とした伸子は、会田の制止を振り切りケースに駆け寄ったところを射殺された。丸腰の会田も左肩を撃たれてあわや、というところでまたまたナイスタイミングで橘班長さんらが現れ、殺し屋グループたちは一網打尽と相成った。 とはいえ、親玉の帝都物産は無傷のまま。会田に刑事グッズを返しながら、こうなったらとことん突き詰めてやる、そのためには人殺し(=会田)でも強請り(=会田)でも、戦力になるヤツは集めてやろうと思ってね、と俄然張り切る矢部部長。だが会田は「ありがたい話だが、俺はそれまで待てないんでね」とひとりごちると、拳銃を握り締めて帝都物産のビルを睨み付けるのだった(昭和ブルースは4番) *なんとなく大人しめかと思いきや、がんがん人殺しちゃったり2回も辞職宣言しちゃったり、どこか自棄になってるような今回の会田。ラストの「それまで待てない」というセリフといい、これはもしかすると次回(白血病カミングアウトの#53「兇悪の無実」)への伏線だったのだろうか?(それにしてはえらく微妙な・・・) *この回からしばらく(年末OAの#63「兇悪のデザイン」まで)OPに「非情の街」が流れる。会田同様、非情になりきれない揺らいだ雰囲気が良く出ている歌声である。 (歌詞を検索して来てくれる人のために↓) ♪薔薇は嘆きの花か 俺に良く似た花か 傷を抱きながら 強く生きてくために 棘もいるさ 咲いて散るのが花か 散ってばかりが俺か 運命(ほし)に身を任せ ひとり枯野を歩く 馬鹿な奴さ 俺が歩く 道はいつも 暗くて 遠い ←最後に付く「ん〜ん〜」がちょっとセクシー *天井が高くて外の眺めも良かった特捜部が、薄暗い地下の息苦しそうな部屋へと押しやられた回でもある。すだれを張ったウエスタン・ドアがちょっとしたアクセント。 *そしてさりげなく若い新刑事(谷刑事:新倉博)が交通課から配属されていた。伸子が大和田に襲われたとき、会田よりも先に助けに入っていたような気がするんだが、あまりにさりげないゆえに良く分からなかった(この先さりげなく消えているほうに100アマチ) *さすがに暑い時分はとっくりが着られないので、四方さんがブルーの背広&シャツ&赤ネクタイで登場。
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2008,01,28, Monday
『黒幕』(1966年・S41:松竹)
おそらく35歳にして初めての、そしてもうあと2~3本ほどしかない単独主演映画をラピュタ阿佐ヶ谷にて鑑賞。(新東宝はアラカンさん以外は主演級は複数クレジットだし、前年の『孤独の賭け』はトメ位置だった)。 東京・赤玉製薬の社長直属の特殊工作員(=プロパー)、利根五郎(天知茂)。他社の製品を倉庫から盗ませ(報酬をケチって喧嘩沙汰になったりしながらも)安く売り飛ばして蹴落としを図る彼は、かつてクラブで用心棒をしていたらしいがバンドをバックにムード歌謡も披露できる、履歴書のない男。ヌケ作の後輩(坂上栄一)や敵か味方かよく分からない“不思議な女(同僚)”・静香(野川由美子)に翻弄されつつ、ライバル社の精力剤(「王精」)をちゃっかり愛飲するような社長にも一宿一飯の恩義とやらでこまめに尽くし、「王精の秘密を探ってこい」「九州で(秘密の材料の)ユリを取ってこい」だのといった厄介払いめいた指令に対しても黙って従う義理堅い奴である。 そんな人柄と切れるルックスに惹かれてかどうか、会社の受付嬢やら事務員さん、オツムの弱い後妻さん(扇町京子)、それから同性の鴨井(@犬シリーズ)チックな運び屋・三次(ハンサムタワーズ:高宮敬二)にまでモテモテの利根。そして、ライバル社の社長(原作者:佐賀潜さん)の囲い者である静香もまた、彼への愛に目覚めてゆくのだった。 あらすじは下記リンクに譲るとして(そもそも天っちゃんが主演というだけで筋なんてどうでもよくなってしまうのがファンの哀しさである)、殴る・蹴る・迫られる・迫る・ヤる・車と格闘する・歌う・ドラム缶に詰められる・などなど、旬ともいえる時期の天知茂プロモーション映像がこれでもかと堪能できるお得な作品であることは間違いない。 ただ、いろんな姿を一度に見られるせいで、意外にセックスアピールに欠ける(恋愛下手である)事実が図らずも露呈。野川さんとのラブシーンはたしかに端麗だったものの、佐賀潜さんに揉まれているときの彼女の方がエロティックだし、扇町さんを愛撫する年長の旦那・殿山泰司さんのテクの巧みさと比べると「兄さん(=利根)、ヨワおますなあ」と扇町さんに言われてしまうのもむべなるかな、であった(“王精”飲まなきゃダメというわけか?)。本人はラブシーンに大いにテレているそうで(「おしゃべりジャーナル」参照)、そのテレが微妙なぎこちなさを生んでいるかにみえた。 ラブシーンよりもむしろ、ドラム缶詰めの直前、後ろ手に縛られ床に転がされながら片膝を立ててキッと相手を睨む表情に強烈な色気を発散させていた天っちゃんは、お色気メインの作品であれなんであれ、常にベストは尽くしていた。その姿は和製ジェームズ・ボンドというよりは、子供向けの特撮ヒーローに近いものがある。スタッフがそれを望んでいたかどうかは別として。 *佐賀潜さんの原作(シリーズになっている模様)はいったいどんな感じなのか、近々読んでみたい。 *そもそも自分は上半身すら脱がないのも色気の無さを助長していたと思う。おっさんになってからの方がしょっちゅう脱いでるってどうなのか。 *殿山さんの息子で「おとうちゃ~ん」とフニャけていたのが左とん平さん。天っちゃんとの絡みはないが、純朴そうな(!)警官を師匠に良く似た真面目っぷりで演じていた宮口二郎さんとのやり取りはあって、のちの右田&坂井両刑事@非ライを想像すると楽しい。 *クレジット時にバックコーラスつきでカッコよく流れる主題歌「影」はファーストLP「昭和ブルース」でも聴ける曲だが、アレンジがかなり違っていた(映画の方が“じっくり聴かせます”系)
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2008,01,22, Tuesday
#103「優雅な兇悪」(1975年・S50・9月25日OA)
新藤恭子(葉山葉子)29歳、シェルブール化粧品販売員。リッチな2DKマンションに小鳥ちゃん達と暮らす彼女を密かにマークしている会田(天知茂)と江沢刑事(江波杏子)も、彼女が犯罪に関わっているとは半信半疑である。しかしボスの矢部警視(山村聡)によると、新規ルートで入手した拳銃を所持していたヤクザの手帳に、彼女の名前と住所があったらしい。 やがて会田らは、恭子と上司の堂脇(玉川伊佐男)との不倫現場をつきとめる。やはり恭子は吉岡(江幡高志)という男から、不倫をネタに拳銃の運び屋を強要されていた。堂脇の子供を宿している彼女は彼に助けを求めるのだが、彼は関わり合いになりたくないと避ける。 会田が堂脇を揺さぶった直後から、頭上から看板が落ちてきたり部屋のガス管が開かれたりと、恭子の身辺に危険が迫るようになった。彼女を襲った犯人は誰なのか・・・吉岡、それとも?(ちなみに真夜中、ひとり暮らしのレディーの部屋にドアをこじ開けて忍び込んだのは会田) 恭子に付きまとう吉岡の背後にいたのは堂脇だった。彼女を運び屋に仕立て、足がつきそうになったらお腹の子ともども厄介払いして自分はちゃっかり出世しようとしていた堂脇に、会田は皆の面前で逮捕状を突きつけ、明智センセイばりに真相を語り追い詰めるのだった。 騙されていたと知った恭子は子供を堕ろし意気消沈するが、同じ会社で働き続ける勇気を見せた。君(=江沢さん)の言う通り、やっぱり女に悪い奴はいないんだな、とフェミニスト発言をした彼は、恭子に買わされたというオーデコロンをふんわり匂わせつつ(曰く「紳士の身だしなみさ」)、彼女のマンションを後にした(昭和ブルースは4番) *街に流れる音楽が♪港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ〜♪な時代に、月収35万円ってのは相当裕福な恭子さんである。 *実はさしたる確証もなく恭子さんの張り込みを命じていた矢部さんに会田、渋い顔。でも紅一点の江沢さんと張り込めて良かったじゃないか。 *次回からいろいろとテコ入れ(?)があるため、見慣れた特捜部の部屋はこの回でおしまい。
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2008,01,19, Saturday
#102「兇悪の金」(1975年・S50・9月18日OA)
国際的ギタリスト、にしては場末のクラブで細々と演奏中の沖達也(剣持伴紀)の裏の顔は闇ドルをさばく地下銀行組織の運び屋。今日もクラブの歌手・小枝子(鮎川いづみ)を隠れ蓑にラブホテルに向かい現金3千万をギターケースに収めたのだが、帰宅するなり2人組に襲われてあっけなく死亡、彼をずっと張っていた坂井刑事(宮口二郎)は苦労が水の泡となり渋い顔。 2人組の正体はムショ帰りの佐川鉄男(佐々木剛)と金井三郎(山崎猛)。小枝子の幼馴染の鉄男は、彼女の話から犯行を思いついたものの、ボクサーくずれの三郎がうっかり沖を殺してしまったせいで身動きがとれなくなった。組織のボス・岩佐(伊達三郎)から資金強奪の責任を押し付けられた松宮(中田博久)が事情を知る小枝子をつけ狙う一方、右田(左とん平)は彼女を護衛、そして鉄男の動きは会田(天知茂)がつかず離れずマークしていた。 世の中は金がすべてだとふてぶてしく言い切り悪びれる様子のない鉄男だが、紙をこよってバレリーナを作る(某SNSの「紙ナプキンでバレリーナを折る会」とかに入れそうな)繊細さと小枝子への純粋な愛情を垣間見た会田は、そんな彼の良心に賭けるように鉄男を泳がせる。 八方塞がりでイラついた三郎は金を独り占めしようとし、小枝子や鉄男ともみ合いに。ナイフを取り出し暴れる三郎に小枝子が切られ、劣勢になる鉄男。その様子を見て飛び出そうとする右田を会田は制止した。黒幕(=松宮)がおびき寄せられるのを待っていたのだ。かくしてギリギリのところで松宮が到着、地下銀行組織は根絶やしにされた。傷を負いながらも「私が悪いんです!」と必死に自分を庇う小枝子の姿に、金では買えないものの存在に気づいてしまった鉄男は、「金がなんだー!」と3千万を地面にばら撒き慟哭するのだった(昭和ブルースは4番) *#62「兇悪の星」に続き、今回も2号ライダー・佐々木さんはツッパリながらも会田になんだかんだと熱く励まされて(可愛がられて)良心に目覚める役だった。ちなみに宿敵・ゾル大佐(宮口さん)との直接的な絡みは無かったと思う。 *会田と鉄男がいたレーザーライフルの射撃場の名前が「レーザープレー・ゴルゴ」。グラサンかけて余裕ぶっこいている会田がデューク東郷チックではあった。 *右田刑事がさりげなく名セリフ:「あぶく銭は金じゃない。ただの紙っ切れだよ」 *エンディング、昭和ブルースをしょって歩く会田に蛇行するバイク3台が絡んできてなんだか危ないシチュエーションだった(むろん、避けたのはバイクのほうだったが)
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2008,01,17, Thursday
#101「兇悪の射殺命令」(1975年・S50・9月11日OA)
女が砂丘を歩いている。 歩きながら女は思い出す・・・5年前の忌まわしい出来事を。 自分を強姦した脂ぎった男の顔。 その男に銃を向けた夜の事。 多くの血が流れて。堕ちるところまで堕ちて。 ――だけど、あいつは生きていた。 ――だから、あたしは。 5年前に同僚を射殺、輸送中の金を奪って逃走した元警官・加西芳郎(茶川一郎)を追って鳥取に来ていた坂井刑事(宮口二郎)は、タイアップ先=皆生グランドホテルで会田(天知茂)を見つけて驚いた。これは俺のヤマなのに・・・とちょっとご機嫌斜めな後輩を、お前もう素性バレてるだろ、俺は俺で動くからなとさらっとかわす会田だが、部屋に戻ると誰かが彼の荷物を探った形跡が(あんたもバレてるよ)。冒頭の砂丘の女・坊城美和(嵯峨三智子)の差し金である。 元婦警の美和は5年前、自分を強姦した政治家の戸沢浩之助(潮万太郎)の車を狙撃。運転していた加西は、銃声で駆けつけた同僚を撃ち殺し、彼の政治資金を奪って逃げたのである。それ以来ペアを組んで悪事に手を染めてきたが、唯一の後悔は戸沢にとどめをさせなかったこと。戸沢が今度鳥取入りするという情報を聞きつけた二人は、今度こそ彼を殺すつもりでいた。 二人を尾行途中、坂井は加西に撃たれた。彼を見舞った会田は、警官としてのモラルを失った加西に激しい憎悪をたぎらせる。その様子に坂井は、会田が来た真の目的(まあタイトルで激しくネタバレしているとはいえ)を薄々察し、まさか・・・といぶかしむ。 性懲りも無くガードの婦警に色目を使いながらホテルに来た戸沢を、物陰から睨み付ける美和。彼女もここで彼を護衛していたときに襲われたのだ。戸沢の娘を拉致して盾にした加西に坂井は動きを封じられるが、戸沢本人は会田が外へ連れ出していた。戸沢に銃を向ける美和だが、弾は出ない。激しく憎みながらも、もはやこの男のために自分の手を汚すことはできなかった。 会田が俯く美和に手錠を掛けた瞬間、背後に潜んでいた加西の銃が火を噴いた。咄嗟に撃ち返した会田によって加西は絶命。しかし被弾した美和もまた、会田の足元で事切れた。怪我をおして駆けつけた坂井の咎めるような視線を背中に受けながら、会田は言うのだった。 ――これが俺に与えられた命令だ。 (昭和ブルースは1番) *フランス映画みたいな渋い冒頭からぐぐっと惹きつけられる旅情編。しかし、警察の恥部ともいえる極悪警官があの茶ァさん、おまけに色ボケの戸沢は宮口さんの義父・潮さんなので、内輪の宴会のかくし芸みたいな雰囲気もあった(梅八さんもいたしなあ)。 *ショルダーホルスターは誰が付けてもサマになるものだが、会田が付けてた日にはもう理性がどこぞへ吹っ飛ぶかと思った。 *坂井さんを見舞ってから、テトラポットの上で海に向かって銃をぶっぱなす姿もやたらとカッコいい(たとえ弾層が回転してなくても許す)。 *ひたすらイケていたとはいえ、海岸そばを歩く会田(特にED)だけはいつもと比べてえらく歩きにくそうで、やはりあの靴(どれだよ)では砂地はキツイのだなあとしみじみした。
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2008,01,15, Tuesday
#100「兇悪なすずらんの女」(1975年・S50・9月4日OA)
戦時中のモルヒネ密輸事件に絡み、大企業の北川(稲葉義男)を20数年にわたって強請り続けてきた久地(藤原釜足)が死んだ。自分が死ねば北川の悪行の証拠は警察に渡すつもりだと会田(天知茂)に語っていた久地だが、彼の死を看取ったバーのママ・千枝(赤座美代子)は遺言の存在を否定、一人息子を業界記者の倉持(倉岡伸太朗)に任せて北海道へ旅立つ。彼女が証拠を握っているとみた会田たち特捜部、そして北川の子分(北町嘉郎)らも北の大地を目指すことに。 千枝は函館で久地の旧友・大野(浅野進治郎)に面会を求めた。久地の生前の願いは大野に証拠ネガを託すこと。しかし欲に目が眩んだ千枝は、その証拠品をカタに5億相当の土地の半分をもらうつもりでいたのだ。彼女の分不相応な出来心はやがて追ってきた倉持を巻き込み、命を落とさせる結果になる。 「もう終わりよ何もかも。死んだほうがマシだわ・・・!」夢破れて波止場で塞ぎ込む千枝に「じゃあ死ぬんだね」とあっさり言ってのけた会田は、自分の店もかわいい息子もある君が人生のどん底なんて笑わせるな、まあ一度本物の地獄を見物してくるのもいいがね、と地獄ツアーの体験者ならではのセリフを残して背中を向けた(昭和ブルースは4番) *函館には岩田刑事(岩城力也)・坂井刑事(宮口二郎)・右田刑事(左とん平)が同行。いつでもどこでもモテる会田に妬いてる右田、借金の取立て屋に扮した坂井&岩田のなりきりっぷりが笑える。 *千枝の息子役の名前がウスイ姓だったのだが、もしや天っちゃんの親族のひとりか何かか?
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2008,01,12, Saturday
#99「兇悪の警察手帳」(1975年・S50・8月28日OA)
いかにも悪人でございなルックスの殺し屋・真木(山本昌平)に殺された石丸(高野隆志)が握っていたもの、それは江沢刑事(江波杏子)の警察手帳だった。 石丸は20億相当の宝石を海外に売りさばいた窃盗団の一味であり、どうやらそこに女刑事が絡んでいたらしい。矢部警視(山村聡)や一課の橘警部(渡辺文雄)らから厳しい追及を受ける江沢だが、彼女に身に覚えはない。前日にふらりと訪ねてきた、かつて面倒を見てやったハコ師の鉄(木田三千雄)が手帳を盗ったと気づき問い詰めるが、彼もまた真木によって口を封じられてしまい、進退窮まった江沢は辞表を提出。 一方、特捜部は警察手帳をなんだと思ってるんだ!となじる橘を軽く受け流した会田(天知茂)は「こいつがオレの身分証明書でね!」と手帳なんてどこへやら、鉄拳をボカボカ振るいまくりながら窃盗の黒幕・天動(郡司良)までたどり着く。だが天動はすでに腹心・安川(八名信夫)に命じて、江沢の手帳を利用してニセ女刑事に扮した綾子(宗方奈美)を消そうとしていた。 海外へ高飛びしようとしていた綾子を、空港で張っていた江沢が発見。しかし綾子は安川に狙撃された。逃げる安川にさんざん蹴りを入れてノした会田は、江沢に手帳を差し出しがてら無言で頬ビンタ。「重いわ・・・こんなに手帳を重く感じたことはなかった・・・」しみじみと呟く江沢に(分かってくれたか)とばかりに頷く会田、その様子を物陰から見ていた橘も安心したようにその場を去った(昭和ブルースは4番) *矢部さんに指摘されるまで警察手帳の紛失に気づいていなかった江沢さんのうっかりぶりはちょっとありえないなあと思ったが、手帳の重みを知っているからこそ誇示しない会田の生き様と、そんな彼にまた胸キュンな(え?)橘さん、おっさん同士は相変わらず良い味を醸していた。 *海外ドラマなんかでは、洋式トイレにアタマを突っ込んで白状させる、ってのは見たことあるが、和式でそれをやるなんてコワすぎだ>会田 *橘さんが見てるのでわざとハイテンションで江沢さんを怒鳴りまくるという珍しい矢部さんの姿も垣間見られる。珍しい、といえば岩田刑事(岩城力也)の登場シーン、メガネが白っぽくキラキラしていてちょっとびっくりした←白ぶちか?と思ったが光っていただけかも *そしてもうひとつ珍しかったのは「俺は会田健だ!」とフルネームを名乗りながらボカスカやっていたことだ(ボカスカは珍しくないが)
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2008,01,06, Sunday
「コロンボ」型展開で、犯人(待田京介さん)とセンセイとの知恵比べがスリリング。ヒロインの兄(天知氏二役)の八の字眉毛の人情家ぶりや酔っ払い演技は必見です。
【明智先生ファッション劇場】:センセイの服装をキャプチャーしてみました(あまり着替えてくれないのですが、立派な二役ぶりをご堪能下さい)
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2007,12,30, Sunday
#92「天下を占う大姐御!」(1985年・S60・1月26日OA)
甲府藩ではここ最近で年貢の取り立てが急増、農民たちは生活苦にあえぎ、若人たちの藩政への不満は極限に達している。 「この奸賊め、天誅だ!」 甲府城から出てきた裃姿の城代家老・平岡監物(天知茂)はいきなり若侍に襲われ肩を負傷した。藩主・柳沢吉里が病弱で引き籠っているため、監物と大目付の根津主水(北町嘉郎)が増税の元凶と憎まれているのだ。だが、付き添っていた根津たちにメッタ突きに遭う若侍に向かって「愚かな奴だ…」と呟く監物の眼は、なぜか哀しみに満ちていた。 事件を目撃した御庭番の半蔵(荒木ストロンガー茂)は吉宗(松平健)に報告。窮状を知った上様は自分が行くと力強く宣言、爺(有島一郎)や越前(横内正)、それからめ組の人々をも引き連れ、ほぼ慰安旅行のノリで甲府を目指す。甲府へ入った途端、怪しげな占い師の尼僧・妙締(特別出演:淡谷のり子)に呼び止められ「この町に入ってはいけない、命に関わる危険が」云々と諭される上様だが元気よく歩みを進め、若侍・滝沢隼人(大場順)を助けた。隼人は改革派のリーダー的存在で、家老と大目付を排除し、江戸家老の柳沢帯刀(遠藤太津朗)を擁して藩の立て直しを図ろうとしていた。 監物宅に奉公している彼の恋人・香織ちゃん(内山みどり)を送りがてら、上様は問題の監物に会う。なぜ増税で藩民を苦しめるのか、との問いに監物は盆栽をいじりながら、木を助けるためには花も実も落とさねばならん、わしはこの鋏だ、切られる身にとっては憎かろう、だが幹を枯らす訳にはいかんのだとコワモテに似合わぬ落ち着いた(そして意味深な)答えを返すのだった。 御庭番ズの調べによれば、どうやら大目付の根津がボスを裏切って(だめじゃん北町さん)江戸家老の柳沢とつるみ、ある目的のために軍資金を貯め、藩民の恨みを監物に集中させようとしていることが判明。しかしその時には隼人ら若侍と農民たちは踊らされているとも知らずに一揆を決行しかけていた。上様は辰五郎(北島三郎)に頼んで民衆を足止めさせたものの、隼人たちは香織ちゃんの制止を振り切り根津の屋敷を襲い、一網打尽に。 恵林寺にいた監物に会った上様は彼の真意を問う。貴方は根津らの背後にいる人物を知りたいがためにあえて奸賊の汚名を被ったのではないのか、そう図星を指された監物は、黒幕が尾張大納言であること、尾張に甲府藩の実権を握られては幕府存亡の危機に繋がるとみたためだと告白、「だが“心頭滅却すれば、火もまた涼し”とは申せ、凡夫の身には辛い…辛い毎日でござった…!」とただでさえ辛そうな顔をさらに歪めて床に突っ伏す。実は陰腹を切っていたのだ。 吉宗の正体を知っていた監物は、自分の命と引き換えに甲府藩の庇護を懇願、上様の肯きに安心したようにぱたりと倒れ、帰らぬ人となってしまった…(あとは北町っちゃん&エンタツさんが成敗され、監物サマの心を知った隼人たちが仲良く墓参、実は隼人くんの母だったのり子姐さんも現れてめでたしめでたし、上様一行は富士山を見てニッコニコ、のハッピーエンドだがもはやそれはどうでもいい) *淡谷のり子さんとのブルース対決(違)は、タイトルその他で彼女に華を持たせつつ、その実は天っちゃんのワンマンショーだった。殺陣が無く(冒頭もやられっぱなし)ひたすら耐えてる監物さまが最後に見せる決死の覚悟が泣かせる。こういう“静”の人も力みなく演じられるお年頃になってきたのに、数か月経ったらもう…と思うと残念だ。 *香織ちゃんの“ご家老さま”発言を聞いた隼人の台詞「あんな奸物は監物で十分だ!」…もしやこのシャレのために名前が「監物」だったのか? *そういやまた予告編をチェックするの忘れました(泣)…ご覧になった方、どんなだったか御教示下さると嬉しいです。 *(2008.3.23追記:再放送でめでたく予告編チェック。300回記念作品!ということでタイアップ先のホテルや素の格好でロケバスに乗り込むレギュラー陣が映ったりしていたが、果たして天っちゃんは甲府まで行ってるんだろうか?)
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| TVドラマ(時代劇)::暴れん坊将軍 | 12:33 AM | comments (x) | trackback (x) | |