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『女真珠王の復讐』
『女真珠王の復讐』(1956年・S31)

同僚・木崎(宇津井健)との結婚を間近に控えた香川夏岐(=なつえ:前田通子)は、専務・浅沼(藤田進)のお供で渡米することになった。しかし木崎は社長殺しと1500万強奪の罪で逮捕され、共犯を疑われた夏岐に、親切ごかした浅沼が襲いかかる。すべては浅沼と彼の手下、野口(丹波哲郎)が仕組んだ謀略だった。浅沼の魔手から逃れようとして海に落ちる夏岐。バストも露わに流れついた孤島には、難破したカツオ釣り漁船の乗組員5名がいた。

漂着して1年ものあいだ島で暮らしていた男盛りの乗組員たちは、久々に見る女性(しかも豊満ボディー)に目が血走る一方。「バ、バナナは精がつくだ」「タロイモは盛り盛りくるだよ」と勧めながら自分たちがムラムラきてしまった船長(芝田新)以下3名が夏岐の寝込みを襲おうとする中、良識ある年長者の石塚(沢井三郎)と、彼の娘婿(予定)の山内雄三華奢で少年っぽい天知茂25歳)だけは仲間を敵に回して彼女を守ってくれるのだった。

だがある日、石塚と雄三の隙をついて(というより悠長に沖でぽちゃぽちゃやっていたせいで)夏岐は再び3人に襲われる。ところが男たちは仲間割れを始めてしまい、残った1人も駆け付けた雄三と揉み合う内に崖から転落した。優しいんだか天然なんだか分からない夏岐が海に飛び込み彼を探そうとしたところ、あたりが真珠貝の宝庫であることを発見。かくして2年後、生き残った善人たちはざっくざくの真珠を金に換え、浅沼一味に復讐するために帰国する。

女真珠王・ヘレン南と名を変えて石塚や雄三と凱旋帰国した夏岐は、今や社長と専務に収まっている浅沼と野口に圧力を掛け始めたが、死刑を求刑されていた愛しの木崎が脱獄、夏岐も野口に正体を暴かれる。強欲で口の軽い野口を取り込み浅沼に証拠を突き付ける夏岐。彼の反撃でピンチに陥った彼女を救ったのは木崎だった。嫌疑を晴らして固く抱き合う恋人同士を、雄三たちは温かい目で見守った。

*初の“いい人キャラ”での大役。女性を襲う藤田進さん、ってのも珍しいと思ったが、孤島でギラつく壮年男たちの中で唯一の清純派。まあ、可愛い婚約者のアキちゃん(遠山幸子)が日本で待ってる、いってみれば波平さんと一緒に流れついたマスオさん状態なので悪いことはできなかったのだろうが、「僕はただ、あなた(=夏岐さん)と同じように不正を許せないんです」なんて台詞を邪気のかけらもない真摯な顔つきで言っちゃう役柄にびっくりだ。ワルぶらなくて良い分、見た目も相当に可愛らしいので、キミは孤島で1年間大丈夫だったのかと貞操を案じたくもなった(余計なお世話)

*クレジットの最後のほうで後の奥様・森悠子さんの名前が。水泳部で国体出場経験があるという悠子さん、どうやら前田通子さんが華麗なダイブで海へ潜って真珠採ったりするシーンのスタントをこなしていた可能性が高い。初のヌード女優を担いだ(お姫様抱っこじゃなかったのが残念だが、当時のあの折れそうな体型では無理だろう)初の男優が旦那なら、初のヌード女優のスタントは奥さま、ということになるのかもしれない。だから孤島で前田さんにアタックしなくても事足りていたのか天っちゃん!(これも余計なお世話)

*今回もいかにもな役柄だった丹波さんとの身長差。もっとあるのかと思っていた(暴言)…それにしても、立ち方や着こなしにまだまだ改善の余地がある25歳である。

| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=108 |
| 映画::新東宝 | 10:41 PM | comments (x) | trackback (x) |
非情のライセンス 第1シリーズ #8
#8「兇悪の罠」(1973年・S48・5月24日OA)

会田(天知茂)と四方(葉山良二)は、関東興業の組長逮捕に向けて、城西署の助っ人として拳銃密売やノミ行為などの現場を派手に押さえていた。しかし面が割れてきたのか、捕まるのはザコばかり。どうやら先方には「トクチョウ(=特攻隊長)」と呼ばれるキレ者がおり、こちらの情報を漏れ聞いているらしい。「どうだ、そろそろ突っ込んでみるか」矢部(山村聡)が会田と意味ありげな目配せを交わしている頃、杖にバラの装飾を施した男(=トクチョウ)が会田の盗撮写真を見ながら、狙った獲物は必ず射止めるヒットマンを探せとの指示を出していた。

捕まえたザコの情報により、船での取引現場に急行した会田たち。近付いてきた不審船には、ライフルを手にした殺し屋・黒崎(中田博久)が。会田を狙う銃口――次の瞬間、胸を押さえて会田は海へと真っ逆さまに落ちていった(←落ちたのは高い確率でスタントさん)。

四方の必死の捜索にも関わらず、2日経っても会田の行方は不明のまま。対応を詰る矢部に、全て私の責任です、クビにしてもらいましょうか!と開き直って出て行く四方。矢部は、一緒にいた城西署刑事で四方の同期でもある渋沢(中野誠也)に、四方が密輸組織から多額の借金をしていることなどを密かに告げ、それとなく彼の様子を見守るよう頼んだ。

競馬やら飲酒やらに精を出し、自暴自棄な姿を渋沢に晒す四方だが、それらの行動はすべて、渋沢とトクチョウの闇の繋がりを洗うため、矢部そして会田が仕組んだ計画のうちであった(四方の報告を聞く矢部の傍らにはピンピンしている会田の姿が)。すっかり四方を「同志」だと信じた渋沢は、トクチョウに会いたいという彼に、会田を消した黒崎殺しを持ちかける。誘き出して黒崎を撃ち倒し、車ごと始末に向かう四方。しかし黒崎もまた計画の一員で、大阪府警の警官だった。

長引く不在で心配する竜巻太郎(左とん平)たちをよそに、会田は、渋沢の故郷、仙台まで調査に赴いていた。渋沢には、彼自身の過失で片足が不自由になった弟・武(神太郎)がいた。学生運動のリーダーだった彼こそがトクチョウでは――。やがて四方から、渋沢と共にトクチョウに会うとの連絡が入った。

無人のスタジアムにたたずむ、杖の男。渋沢を兄と呼ぶ彼はやはり、トクチョウと呼ばれる男だった。人を殺して(実際は殺していないが)行き場のない四方を組織に入れてやってほしいと頼む渋沢に、上からの指令でそれはできなくなったと冷たく告げ、その場を去ろうとする武。そこへ「動くな!」と現れた会田と坂井(宮口二郎)、そして自分に銃を向ける四方を見た渋沢は、罠に落ちたことを悟った。身を翻す渋沢を、四方は撃てない。その隙に、渋沢は武を射殺する。「兄さんはとうとう、僕の命まで自分の思い通りにしたんだね……」自らの生き方を持たぬ兄に干渉され続けた弟は、最後に兄を拒絶して死んだ。

弟と一緒に逝かせてほしいと泣き叫ぶ渋沢に手錠をかけた四方は、会田に向き直る。
「さぞかし満足だろうな。たしかにあんたとおやっさん(=矢部)の狙いは間違っていなかった。…だがな、たった一つだけ、あんたたちにも分からなかった事があるんだ。渋沢が、最後までこの俺を、たった一人の友人として扱ってくれたことだ!」

(ここらへんから昭和ブルース1番イントロ開始)
そうしむけたのはこっちでね、とうそぶく会田に、あんたみたいな男にこの気持ちは分からん!と詰め寄る四方。
「わからんね。薄汚ねえ友情なんてやつは、くそっくらえだ」
煽る会田を全力でぶん殴り、四方は肩をいからせ去って行った。その後姿を、会田は苦笑いを浮かべて見送るのだった。

――思ったより気のいい野郎だ。……俺もたった一人、ぶっとばしたい野郎が上役にいるんだがね……。

*交番勤務時代からの友人を欺かねばならない役回りを与えられて悩む四方がメインの回。会田は撃たれたり殴られたり段ボールぶつけられたり(←冒頭)、ろくな出番がないのだが、四方が自責の念にかられないよう、あえて自分に怒りをぶつけさせた(かにみえた)ラストの気のいい野郎ぶりにぐっときた。

*コワモテ殺し屋かと思いきや、「ほんましんどいでんなあ」と微笑ましい大阪弁で明るく去って行った黒崎さん(本名は中山さん)がいい感じ。でもその前に会田がピンピンしていたから、彼のからくりも薄々読めてしまったのがちょっと勿体ない。

*会田のアパートの部屋番号は「402」。お向かいは田中さん。

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| TVドラマ(現代劇)::非情のライセンス1 | 11:40 PM | comments (x) | trackback (x) |
非情のライセンス 第1シリーズ #7
#7「兇悪の土地」(1973年・S48・5月17日OA)

関東系の新鋭会と関西系の毛利組、2つの暴力団がしのぎを削る街にやってきたグラサン男(=会田:天知茂)。所有地を巡って何者かに殺された岩下老人の遺産相続人・佐倉一郎として街に乗り込み、2匹の狼たちをかみ合わせるのが今回の彼の任務である。

子連れの花屋の女主人・光子(葉山葉子)にはフェミニストぶりを発揮する傍ら、“佐倉一郎”として岩下邸入りし、早速ヤクザたちをかき回す会田。だが、いけすかない一課の橘警部(渡辺文雄)が出張ってきている上、岩下老人殺しの報酬をたかる男をボスの命令で殺したばかりの新鋭会の品田(杉江広太郎)に「あいつは確か半年前に…!」と面が割れてしまい、カンカン踊りをさせられる羽目に(…までは至っていないが、サウナの浴槽で危ない目に)。暴走を心配する橘が所轄の刑事を寄こしてくれて事なきを得たが、やられたらやり返す主義の会田は品田を兇悪に嬉しそうにボコ殴って監禁したのち、両方のボス(近藤宏&伊藤豪)を時間差で呼び出して相討ちを仕掛け一網打尽にする。

しかし一番の悪人は、ヤクザたちを手玉に取り、裏で中央の黒幕と共謀して私腹を肥やそうとしていた弁護士・笹森保(川合伸旺)。会田は品田に耳打ちして解放し、笹森を彼の手で抹殺させるのだった。

街を一掃して帰途につく会田の前に、光子の花車が通りかかる。会田の身辺を探れと笹森に強要され、岩下邸で色仕掛けに出てやんわりたしなめられた彼女は眼を合わそうとしなかった(でも所轄刑事が彼女を警護してくれてるのを見て少し安心した表情を浮かべながら、咥えたサングラスを掛けて去ってゆく会田で昭和ブルース4番)

*東京を離れ、別人になりすましての潜入捜査なのに、すぐにヤクザに面は割れるわ班長さんは所轄署で素性をばらしまくるわで分が悪そうな会田。しかし悪い奴の潰し合いに持ち込む知能戦が面白かった。

*サウナで矢部さんに報告しているとき(品田に襲われる直前)、生脚から舐めるように全身(ガウン姿)を映していくといった、お茶の間の奥様がお茶と鼻血を噴きそうなモデル並みのカメラワークが見られたのだが、あれは何のサービスだったのだろう。

| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=137 |
| TVドラマ(現代劇)::非情のライセンス1 | 11:46 PM | comments (x) | trackback (x) |
人生の四季 #66
「つながれた犬」(1962年・S37・9月8日OA)NTV22:45-23:15
【年上の女の愛】
美術館でふと知り合った片山と滝江の愛は、日ごとに深くなっていった。滝江が年上であることも、七歳になる娘があることも片山にとって問題ではなかった。
だが、その片山も重役令嬢と見合いをしたことから、しだいに滝江の存在がうるさくなりはじめた。ある日、片山は滝江に向かってふたりの仲の清算を申し出た。
年上の女の心の動きを、残忍なまでにどん欲な愛の中に描こうとする「つながれた犬」。(脚本)浜ひろし(音楽)宮内国郎(演出)尾崎伊策。

【出演】
片山浩一(天知茂)、沢田滝江(三条美紀)、下田(玉川伊佐男)、玲子(矢代京子)ほか。
(以上、読売新聞より記事引用)

*伊右衛門サマの現代版みたいな役どころだが、女の「残忍なまでにどん欲な愛」ということから、清算を申し出て逆上されてストーカーされるとか殺されるとか、なにかとんでもない目に遭ってそうな気がする。

| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=525 |
| TVドラマ(現代劇)::人生の四季 | 10:26 PM | comments (x) | trackback (x) |
てなもんや三度笠
てなもんや三度笠 東海道超特急シリーズ(1964年・S39・12月31日OA)TBS 22:00-23:45

(以下、週刊TVガイド誌より引用)
【歌と笑いの総決算!特別ワイドコメディー】
大晦日の夜10時、師走のあわただしさから解放された茶の間に贈る超豪華コメディーである。
この特別ワイド番組は、いうなれば“新幹線シリーズ”。超特急ひかり号の停車駅にちなみ、大阪を振り出しに京都(第1部)、名古屋(第2部)をへて江戸(第3部)へゴールインするまで、愉快な物語を続ける。
ABCホールで公開制作する第1部と第3部の中間に「てなもんや」初のスタジオ制作による第2部を組み込んで全編を引きしめ、いっきに見せ切ろうという構想である。
ゲストメンバーは、紅白歌合戦出場の歌手はもちろんのこと、各民放の人気番組主役陣を総出演させている。
脚本:香川登志緒、演出:沢田隆治
出演:高田浩吉、長門勇、島倉千代子、茶川一郎、天野新二、平参平、桜京美、高田夕起夫、天知茂、北原謙二、芦屋雁之助、芦屋小雁、高石かつ枝、人見きよし、藤純子、堺駿二
(以下、朝日新聞縮刷版より引用)
【ゲスト42人の大型喜劇】
藤田まことらのレギュラー・トリオに高田浩吉、村田英雄、鶴田浩二ら42人のゲストを動員した1時間45分の豪華版。
3部構成で第1部「花の京洛」はいま流行の幕末もの。第2部「尾張の月」は“てなもんやシリーズ”初のスタジオドラマで、テンポの早い切り返しを見せ、最後「雪の大江戸」は特殊技術を駆使する。
*大晦日の紅白歌合戦の裏番組。1964年はTBSでは唯一「幕末」にゲスト出演していたのみだが、「各民放の人気番組主役陣」ということ、“てなもんや”が時代劇コメディーだということから、フジ「次郎長三国志」の桶屋の鬼吉として出演した可能性が高い(だとしたら出番は第2部でキマリ?)

| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=470 |
| TVドラマ(時代劇)::その他(ゲスト) | 05:42 PM | comments (x) | trackback (x) |
非情のライセンス 第1シリーズ #5
#5「兇悪の華」(1973年・S48・5月3日OA)

タレ込み情報を元に、小学校から給料600万を奪って逃げた三上(河合絃司)を追う橘警部(渡辺文雄)。三上を尾けてマンションの一室に消える彼、直後の銃声。駆け付けた一課の部下たちは、撃たれて床に横たわる三上を見た。だが600万入りの紙包みが消えている。「こいつが…隠した…」瀕死の三上が指さした人物は、なんと橘だった――。

正当防衛は認められたものの、600万が忽然と消え失せたまま1週間が過ぎ、内外の疑いの目は橘に集中する。捜査から外れろとばかりに一課長・斎藤(岡田英次)から休暇を勧められ、失意の内に帰宅すると家の中は荒らされ放題の上「金返してもらいてぇんだよ!」と男の声で脅迫電話が。肝臓を患い入院中の妻・洋子(谷口香)のもとへ慌てて駆け付けると、今度は女の声で地獄へ引きずり込んでやると穏やかならざる電話が掛かってきた。

捜査権を一課から引き継いだ特捜部は橘をマーク。政治家(=民由党幹事長)の娘である妻を一部屋2万円の病室に入れて朝晩足繁く見舞う彼の様子を見て疑いを濃くし、その苦境を嘲笑う者が多数の中、警視庁の忠実な番犬が飼い主の手を噛むわけはない、腐っても鯛、猫に小判だ、と会田(天知茂)だけはあくまで静観の構えを見せていた。

そんな折、橘の元へ“三上の娘を預かった、600万用意しろ”との電話が入った。同じ頃、三上の幼い娘・典子(細川美恵)の担任教師・辻京子(森秋子)から典子失踪の届けを受けていた会田たちも合流し、取引場所に現れた吉村(佐藤京一)らを逮捕、典子を無事保護した。しかし、事件当初のタレこみ電話が女性からだという事実が気になる会田は橘の過去を調べ、かつて公安にいた彼と関係のあったある女性を割り出した。

その人物とは、典子の担任の京子だった。彼女を訪ねた会田は、三上殺害の現場に落ちていた妙な葉っぱ(=あすなろの葉)が小学校に生えているのを認めた。学生時代の話が聞きたい、そう持ちかけた会田に観念したように過去を語り始める京子。学生運動の女闘士だった10年前に橘と出会って愛したのも束の間、実は彼は同志を逮捕するための公安サイドのアンダーカバーであることが発覚、仲間からはリンチを受け、橘には妊娠を告げられぬまま去られてしまった恨みから、事件は始まっていた。京子は死んだ三上の娘で、典子は彼女自身が産んだ、橘の子供だったのである。

橘への復讐のためだけに生きてきたという京子、そして娘の為に命を賭して偽証した三上。開き直る彼女に会田は、典子や教え子たちの為にも、いい加減許してやったらどうかと諭す。「あんた、子供たちが怖くなるときはないかね。俺はあの穢れを知らない澄んだ眼に立ち竦むことがあるよ。あんたも子供たちをこれ以上、裏切ることはやめるんだな……」その言葉に折れた京子は、当日に三上から預かった600万が入ったロッカーの鍵を会田に託した。

俺が頼まれたのは金を取り戻すことだけで、犯人逮捕は頼まれていない、と京子をそのままにした会田。後日、本庁で大きな紙包みを抱えた橘とすれ違った際、京子逮捕の知らせを聞く。「それから、子供は俺が引き取った」きっぱりと口にした橘に「立派なことだ」と真面目に返した会田は、夕陽の特捜部屋で物想いに耽るのだった。

――遠い昔を忘れて生きている奴、引きずって生きている奴、愛して憎んで消えていく奴。どっちにしても、不幸なことだ……。
(控え目なイントロで昭和ブルース初登場の1番。うまくまとめたと思ったらその後電話が鳴り、「了解!」と銃を手に取り部屋を出る会田でエンド)

*橘さん受難の回。不利な状況に陥りながらも悪を憎む心は消えていない班長さん、「明かりの下で育った虫は、世の中に夜もあるってことを知らねえんだ」とか言いながら彼の潔白を内心信じて冷静に事件を追う会田の、無言での視線の応酬が渋い。

*橘さんの奥さんが登場するのはこの回のみ。妻役の谷口香さんは第2シリーズで3話ほど出演している( #38「男のうたは兇悪」、 #69「兇悪の妻の座」、 #102「自供」)。

*後に太郎さん(左とん平)と結婚するリサさん(小牧リサ)、記者として初登場。どうやら会田とはそこそこ長い付き合いらしく、マンションに酒提げて押しかけて来るような仲だった。

*「あすはひのきになろうって、努力してる木ですわ」あすなろの木の前で呟く京子先生に身も蓋もないセリフを返す会田:「無駄な努力だな」

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| TVドラマ(現代劇)::非情のライセンス1 | 11:51 PM | comments (x) | trackback (x) |
非情のライセンス 第1シリーズ #4
#4「兇悪のサファイア」(1973年・S48・4月26日OA)

冷たい色を放つサファイアを指に、暖炉で何かをひたすら燃やす女。
7年前、新妻の自分を置いて蒸発した夫が遺した物なのか。
自分は何を待っているのか、と自問し続けた月日。
ようやくピリオドを打とうというまさにそのとき、突然、彼女の目の前に――。

町内の防犯会長を自任する竜巻太郎(左とん平)は、クリーニング店の常連・カヤマさん(小笠原弘)がチンピラ(畠山麦)に財布を掏られる現場を双眼鏡で目撃、追い掛けた拍子に美女(江波杏子)にぶつかり取り逃がす。数日後、カヤマさん宅へ服を届けに行くと、件のスリが血を流して倒れていてびっくり仰天、ちょうど血の滴るようなステーキを「キャリオカ」でぱくつきかけていた会田(天知茂)に助けを求めた。

チンピラ・安の死体の側に落ちていたのはブローニング32口径。それは7年前、代議士と暴力団の癒着に絡んだ組長殺しに使われた銃だった。安のボス・田丸(上野山功一)をツツキに行った会田は、安が議員会館の場所を知りたがっていた事実を聞く。7年前、追及を逃れた篠崎代議士(内田朝雄)に関係のある事件なのか――。カヤマさんは実は「香川さん」だったのでは、との太郎の言葉で、篠崎と繋がりのあった開発公団の役人・香川良一の名前が浮上する。彼は7年前に忽然と姿を消していた。もしや香川が、2つの事件の実行犯では……? 彼の妻、冬子に面会を申し込んだ会田は、彼女が「キャリオカ」でよく見かけるサファイアの美女と知り驚いた。

香川は生きているのではないか、と探りを入れる会田に「もうあの人は喋れない。死んでしまっているんですもの」と繰り返す冬子。彼女は失踪宣告を裁判所へ提出し、夫の死を合法化しようとしていた。篠崎いびりのために矢部(山村聡)から貰った猶予は1週間。香川の所在は掴めないまま約束の期間が過ぎたが、会田は薄々察していた。本当は気の弱い男がまっさきに行くのは女房のところ――つまり、香川は冬子を訪ねたはずだと。そして再び会った冬子の指からはサファイアの指輪が消えており、推理は確信に変わる。
「あのサファイアだけははめていてほしかった。喪章の意味としてね……」

香川の葬儀に篠崎の姿はなく、結局事件はうやむやのまま。だが会田はあえて真相を追及しようとはしなかった。空のはずの骨箱を抱く冬子の眼に、涙が浮かぶ――(昭和ブルース3番をバックにすれ違う二人)

*冬子がのこのこ帰って来たダンナを殺したんだと思うが、そのシーンを一切出さず、映像や会話のニュアンスで迫る演出が憎い。

*ダンナ役は新東宝の同期、小笠原さん。セリフ回しが新東宝の頃そのまんま(=あんまり上手くない)なのが少々トホホだが、気弱な感じを効果的に醸し出していた、ともいえる。『潜水艦ろ号未だ浮上せず』で主役級を演じていた彼の傍らでクレジットもなく虫を喰っていた天っちゃんの後の努力をここは大いに称えておこう。

*血の滴るほどレアなステーキが好物、という原作の設定を踏襲、いつも嬉しそうにステーキにナイフを入れている会田だが、実際にぱくついているシーンはまだ見ていないような…実はレアなのが嫌いか天っちゃん?

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| TVドラマ(現代劇)::非情のライセンス1 | 11:58 PM | comments (x) | trackback (x) |
愛するゆえに
愛するゆえに(1964年・S39・3月28日〜7月25日OA:全18回)CX 13:30-14:00
これは、年若い娘が、獄中にある父の無実を晴らそうと、社会の渦の中にとびこみ、さまざまな苦難におそわれながらも、持ち前の明るさと素直さで人々の善意を呼び覚ましてゆくヒューマン・タッチのメロドラマ。
またヒロインまゆみにテレビ連続ドラマ初出演の清水まゆみ、そのおば由岐子に、藤本選手(阪神)と結婚後はじめてテレビ出演する島倉千代子。
物語は……
幼い時両親を失い、叔父の手に引き取られて育ったまゆみにも二十歳の春が来た。子供のなかった叔父叔母は実の子同様にまゆみを可愛がり、まゆみも明るく美しい娘に成長した。
東京、山の手にあるまゆみの家で大学の友人たちを集めてにぎやかに誕生日のパーティーが開かれたその日、明るくはずんでいるまゆみに思いもよらぬ電話がかかった。
見知らぬ男からのその電話は「まゆみの実の父が生きている。しかも大阪の刑務所の中に居る」というのだ。

脚本:結束信二、主題歌:島倉千代子
配役:斉藤まゆみ(清水まゆみ)、斎藤勢津子(丹阿弥谷津子)、斎藤陽三(志摩靖彦)、江藤明夫(沢本忠雄)、松村勝(天知茂)、斎藤(飯沼慧)、正治(山内明)、素子(美杉てい子)、古川(品川隆二)、由岐子(島倉千代子)ほか
(以上、週刊TVガイドから記事引用)

*昼メロ出演作。出ていたことはほぼ間違いなさそうなのだが、次週のあらすじから、“松村(小林勝彦)”という表記があるので、役名は変わったのかもしれない(とはいえ兄弟役かも?)

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| TVドラマ(現代劇)::その他(シリーズ) | 10:23 PM | comments (x) | trackback (x) |
非情のライセンス 第1シリーズ #3
#3「兇悪な夜の匂い」(1973年・S48・4月19日OA)

夜の赤坂を兇悪な目つきで彷徨う会田(天知茂)は挙動不審な若い男を尋問。後ろめたさと会田怖さ(推定)で猛ダッシュして逃げた男を殴りつけて問い詰めようとした矢先、どこからかオリエンタルな紋章入りナイフが飛んできて左腕にずぶりとヒット、その隙に逃げられてしまった。

出血したまま志津(村松英子)の店(「キャリオカ」)で一杯ひっかけて帰宅した会田に、心配した志津ママから電話がかかる。「小さいことは見て見ぬふりしなくちゃ、身体がいくつあっても足りゃしないわよ」しかし、彼にはそう出来ない理由があった。戦後間もなく、進駐軍に暴行された姉の苦境を見て見ぬふりした大人たち(警官含む)と同じにはなりたくない――肘から手首に至るまで深く刻まれた当時の傷痕を前に、彼の瞳は昏く燃え上がるのだった。

外人相手の売春組織を勝手に追っている会田に矢部警視(山村聡)はあきれ顔だが、ある日、車に襲われていた姑娘(クーニャン)を助けた会田は、彼女が組織から逃亡した売春婦ではないかと睨み、英語が堪能(にはあまり見えないがそういう設定)な外事課出の四方刑事(葉山良二)に事情聴取を頼む。

街で再び冒頭の男に出くわして追いかけたところ、ある商事会社に逃げ込み雲隠れした。そこは会田や志津と少なからぬ因縁のある前科者の松尾(今井健二)の会社。松尾は知らぬ存ぜぬを貫くが、会田の眼は床に落ちていた真珠のピアスを目ざとく発見。時を同じくして舞い込んだのが、胴体のない女の死体が出たという知らせだった。一課の佐久間刑事(美川陽一郎)に邪魔者扱いされつつ遺体を調べると、彼女の片耳には件のピアスが光っていた。

四方の協力のおかげで、会田が助けた女性・明香(ミーシャン:本田みちこ)と被害者は共に香港からの出稼ぎ売春婦であることが判明した。そんな折、松尾が昔の女である志津の居場所を突き止め、彼女に暴行を働いたと知って静かにキレた会田は松尾の事務所を急襲、冒頭の男を見つけると問答無用で松尾をしょっぴき、橘(渡辺文雄)の制止を振り切って、松尾と明香を囮に香港側のボス・黄樹英(南原宏治)に接触。多少ピンチに陥りかけるも、銃撃戦で松尾とボスが死亡、部長が寄こしてくれた援軍(=橘さん)が来る前に、明香の仲間たちを無事に保護することができた。

病院の前で会田の姿を認め、嬉しそうに駆け寄る志津。だが彼は松尾の死を知らせ、俺が殺したようなものだ、と背中を向けるのだった(後ろからついてゆく志津さんのバックに昭和ブルース4番)

*兇悪な会田の過去、初登場。30年ほど経ってるのに兇悪に生々しい傷痕が印象的だった(が、徐々になかったことになる模様)。

*四方が会田に「さん」付けするのはまだしも、矢部さんが「会田くん」で、橘さんまで呼び捨てじゃなくて「会田刑事!」と呼んでるあたりが初期だなあ、と思う。しかも会田、班長さんに「他に方法がありますか!」なんて敬語使ってるから驚きである。

*しかしそんな堅苦しい関係とはいえ、会田の行動原理をちゃんと把握して、内緒で一課に掛けあって援軍を要請してやる部長に愛を感じた。

*公私ともにエリートだからか、四方よりも橘さんの方が英語がうまかった。

*時代を感じさせる会田の断言「眉毛を剃っていて手足にマニキュア、耳にイヤリングの穴…水商売ですね

| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=141 |
| TVドラマ(現代劇)::非情のライセンス1 | 12:02 AM | comments (x) | trackback (x) |
メイコのごめん遊ばせ
メイコのごめん遊ばせ(1964年・S39・6月1日OA)NET 21:45-22:00

(読売新聞1964.6.6「放送塔」より記事引用)
【天知茂の役者根性】
一日夜のNET「メイコのごめん遊ばせ」は、天知茂との対談だった。その中で彼は、長女をはじめて幼稚園へ送っていった日は、一日中気持ちがよかったと話していたが、ニヒルな役の多い彼からは、とても想像できないことだった。世の男性の多くは、子どもの世話をすることが恥だぐらいに思っている人もいるだけに、聞いていてとても心温まる思いだった。私生活とは正反対のニヒルな役を、りっぱに演じる彼こそ、ほんとうの役者根性の持ち主ではないかと思われた。最後に、メイコの話しじょうず、聞きじょうずにはいつも感心させられる。東京都八王子市・Sさん(26歳・主婦)

*中村メイコさんがホステスを務める対談番組。何をしゃべっていたのかと思えば!パパの溺愛ぶりがうかがえて微笑ましかった(主婦のSさん有難う!)

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