2010,09,27, Monday
『座頭市の歌が聞える』(1966年・S41)
「先生、お願いします」あまり多くなさそうな前金を受け取って旅姿の男(実はいかさま博打がばれて逃亡中)を斬り捨てた浪人・黒部玄八郎(天知茂)。瀕死の男をなぶりものにする連中には目もくれず、前から来た殺人オーラぷんぷんの座頭(勝新太郎)をも黙ってスルーした黒部は、とある町でようやくお蝶という名の女(小川真由美)を宿場の女郎屋で捜し当てた。 彼女の本名はおしの。飲み屋にいた頃に玄八郎と所帯を持ったらしいのだが、酒癖が悪かった彼の自堕落な暮らしが原因で、今は女郎に身を落とし宿場を転々としていた。その彼女を3年ものあいだ捜し続け、ようやく再会を果たした玄八郎はよりを戻そうと言うのだが、今のあんたには武士の心の欠片もない、と冷たく追い払われてしまった。 それでも諦めきれない玄八郎は、身請け金五十両の調達のために、最近町を牛耳り始めた板鼻の権造(佐藤慶)に自らを売り込む。権造が持ちかけたのは、ショバ代回収の邪魔をする居合いのあんま・座頭市を斬ることだった。さっそく斬りに向かう玄八郎。だが市と一緒にいた琵琶法師(浜村純)の音色に圧されてか、その場は立ち去る(仕込みではなく単なる杖しか持っていなくて内心びびっていた市もひと安心)。 その後ショバ代取り立てで再びひと悶着あり、人一倍敏感な聴覚を祭りの太鼓で撹乱するというクレバーな策を思いついた権造に苦戦するものの連中を蹴散らした市の前に、真打ち(=玄八郎)が現れた。お蝶との経緯を知っているだけになんとか穏便に済ませたそうな市に対しあくまで対決を望んだ結果、主役には勝てるはずもなく散って行った玄八郎。市は黙って、かつてお蝶から貰ったかんざしを骸の上に置いてやるのだった。 (それから権造一家で大暴れした市、ショバ代だけでなくお蝶の身請け金まで受け取ると、玄八郎からだと言って女郎屋に置いてきてエンド)。 *市っつぁんのやさぐれ度も円熟味を増している座頭市シリーズ13作目。冒頭から切れ味鋭い殺陣とクールな風貌をカラーで拝める眼福作品、なのだが、どうしても1作目の平手先生と比べてしまうのでちと分が悪い。前作のように市との友情を育む訳ではないくせに、そこはかとなく善い人的挙動が垣間見える(贔屓目?)せいなのか、“昔は相当ワルくて女房売り飛ばしちゃいました、いまじゃ金のために人斬ってます”な落ちぶれ浪人の殺伐さが消えてしまって、立ち位置が中途半端になっていた気がする。ラストの対決も、市のやる気の無さからすると避けようと思えば避けられた感じがするし、そして何がなんでも身請け金が欲しいんだ、という切羽詰まった必死さが表面に出ないので、たいしたカタルシスもなく終わってしまったような…でもまあカッコいいから許す(特にこの年代)。
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| 映画::大映with勝新太郎 | 11:43 PM | comments (x) | trackback (x) | |