2008,08,06, Wednesday
#156「背任」(1976年・S51・10月28日OA)
暴力団と金銭的繋がりのあった男が、堅固な警備の隙を突いて射殺された。現場を指揮し、銃弾を受け負傷した署長の樫村(金子信雄)は矢部警視(山村総)の20年来の友人。有能な樫村が警備の死角に気付かなかったことに矢部さんは疑問を抱く。 犯人がすぐに自首してきたことから事件は解決したかにみえたが、樫村は男が何者かに頼まれた替え玉であることを看破。ところが釈放した男を秘密裏に尾行中の刑事が襲われ、その間に男はビルから転落してしまった。 警察内部に内通者がいるのではないか、そしてそれは親友の樫村では――。あらくれ者の部下たち(筆頭は会田:天知茂)を使う(巻き込む)なんてもってのほか、とばかりにガンガン自分で調べを進める矢部さんだが、親友への疑惑は深まるばかり。そのうち、樫村の娘・幸子(高橋みどり)から父も自分も誰かに狙われている、との報告を受けた矢部さんは、拳銃を持って樫村の自宅へと向かう。 やはり樫村は、暴力団組長・新藤(伊豆肇)に脅されて殺人を幇助していた。自首をしろ、さもなくば俺の屍を越えてゆけと親友・矢部さんに迫られて肩を落とす樫村。正義感の強いお前がなぜ、その問いに彼は、(矢部さんも密かに惚れていた)亡き妻の名前を挙げた。20年前、ひき逃げにあった妻を迅速に助けてくれた新藤の頼みを断り切れなかったのだと。 かくして、たったひとつの善行をカサにきて父娘を脅した新藤は、出番が短いうえに矢部さんに相談してもらえなくてちょっと拗ねてた(誇張)会田のボコ殴りで撃沈。矢部さんは親友に手錠をかけ、苦いタバコを味わうのだった(昭和ブルースは4番) *矢部部長メインの回。第2シリーズでこれだけ矢部さんが出張っていてしかも会田が完全に脇役、ってのは今まで見たことがなかった。でも“友人を逮捕する”というシチュエーションとしては#38「男のうたは兇悪」の方が好きだなあ(そりゃあやっぱり会田メインだし)。
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2008,07,25, Friday
#155「袋小路」(1976年・S51・10月21日OA)
『内縁の妻が死んだ場所で、純情ヤクザが後追い自殺』 R指定な寝起きの会田(天知茂)は、朝刊で目にしたこの記事に「んなわけないだろ」と朝から所轄署で聞き込みを開始。名うての前科者ヤクザが12も年上の姥桜のあとを追って死んだ、というディテールの胡散臭さに余計興味を惹かれる。 特捜部では、矢部(山村総)が会田の出勤の遅さにカンカンになっていた。患者を安楽死に追いやっているらしい医師・水谷(若林豪)を調べて欲しいという要請をあっさり断ろうとする不肖の部下に、朝から彼が何をしていたのかちゃあんと把握していた矢部さんは、最近の患者の名前が“木島キミ”――当のヤクザの内縁の妻であることを明かしてヤル気を刺激するのだった。 会田が赴いたときR指定な着替えをしていた水谷医師は、木島キミとヤクザの死について何か知っているらしく、ヤーさん連中からも嫌がらせを受けているのだが、「真実ってやつは必ずしも意味があるとは限らない」と、あくまで知らぬ存ぜぬを押し通す。だが「真実に意味があろうとなかろうと、甘かろうが苦かろうが、俺は真実を知りたい!」と真実追究に並々ならぬ意欲を燃やす会田は、彼がキミの長女・景子(水野久美)と浅からぬ関係があることを探りあてた。 「鬼婆」とあだ名されるほどイケズだった母親にこき使われながら、父の違う妹と眼の不自由な弟・駿介(川代家継)を水商売で養ってきた景子。母親の死で8千万が彼女に転がり込んだのだが、なぜか数か月前から名義を異父妹弟に書き換えていた。実は彼女は末期がんに侵されており、遺される彼らの生活のために、鬼婆・キミと連れ合いのヤクザを抹殺しようと計画、それを黙認したのが水谷だったのだ。 景子の最後の幸せを奪うつもりか!と水谷に詰られ(ひっくり返るくらいに殴られ)ながらも、会田は景子逮捕に向かった。この袋小路から出られるのならどこへだって行く、と気丈だった彼女も、娘がガンだと知ったキミが激しく動揺し泣き崩れていたという話を聞かされたとき、初めて母の愛に触れたと涙を流す。一晩だけ時間がほしい――そんな彼女の要請を断り切れずに外に出た会田は、苦い酒を飲んでいた居酒屋で水谷に会い、景子を悪しざまに言った酔客(と店)を彼と二人でボコボコにして拘置所入りとなった。 自殺を繰り返す女を3度助けたという水谷の苦労話を聞いていると、景子が自殺を図ったとの知らせが。その女とは景子のこと。4度目は助けられなかった、俺は人殺しだ――そう嘆く水谷に、君と同様、スイス方式で彼女に“毒薬”を握らせた俺も同罪だ、と静かに会田は呟いた。 後日、会田のもとへ「共犯者」水谷から連絡が入った。「一緒に木島景子に会ってくれ」向かった先には、姉の角膜をもらって眼が見えるようになった駿介の姿があった。窓に「水谷景子」と戯れ書きして逝った景子の眼は、水谷を優しく見つめていた(昭和ブルースは4番) *スイス方式というのは、医者が患者に直接手を下すのではなく、患者に毒薬を渡して決めさせる安楽死の方法なんだとか。かなりデリケートでヘヴィーな内容を扱っていたものの、さりげなくメインを母娘の確執にもっていき無難に締めていた。不幸せという名の 猫がいる〜♪というアンニュイな歌(浅川マキ)がよく似合う話。 *(#35もそうだったが)豪さんとはつい殴りあってしまうらしい(ラストにちゃんとお返しした会田)。でもなにも裸体まで競わなくても。
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2008,07,24, Thursday
#154「自供」(1976年・S51・10月14日OA)
下町の焼鳥屋“一平”。「山岡商事の課長が奥さんと無理心中したらしいよ」「なんでまた奥さんと」客の会話にさりげなく交っていた店主に電話が。「おばちゃん、後は頼むぜ」ハンチングをひょいと被って彼が向かった先は、警視庁特捜部。彼の名は堀一平(財津一郎)、矢部(山村総)に頼み込んで特捜部に志願した、長崎訛りのばってん刑事である。 憧れの先輩・会田(天知茂)と組んで心中事件を担当することになった堀は、一課の捜査に割り込んで生き残った松本課長の妻・良子(谷口香)に接触、なんと彼女とは学生時代からの知り合いだったことから、橘(渡辺文雄)の苦い顔をものともせずに真相を聞き出そうとした。若いころスポーツ(卓球)で汗を流した者は悪いことはしない、という持論から良子を擁護する堀だが、「夫は病弱だった」「拳銃の出所は知らない」など、明らかに周囲とは違う発言を繰り返す彼女を会田は疑う。 良子の背後には白いシガレット・ホルダー使いの部長・松崎(山本清)の影がちらついており、この禁煙パ○ポ(違)が決めてとなって、彼が拳銃を入手したことが判明。子供のためにも“賄賂の運び屋”という汚名を着るよりは消えてもらったほうがいいじゃないか、それに君にはブティック開店の費用を出すよ、などと松崎にそそのかされた良子がその拳銃を夫に渡し、一緒に死んでくれと取り乱した彼に撃たれたのだ。 堀の粘り強いアプローチによりすべてを告白した良子。会田は、会社のために課長夫妻を手玉にとった松崎に激しい憤りを向けるのだった(昭和ブルースは4番) *堀刑事登場編(ファーストネームは右田さんと同じ←投げやりなネーミングだ)。財津さんといえばかなりイッちゃってたトラック運転手(#3)の印象がまだ強いのだが、こちらはおしゃべりが達者で気のいいおじさんである。 *それにしてもオープニングの流れは、元締めに呼び出された仕事人みたいだった(そういう路線を狙っているのか?←ってどんな路線だか) *強烈な個性を発揮させながら容疑者を落とす堀さんの取り調べを聞きながら「取りえはあれだけですか」と先輩風をふかす会田に矢部さん、厳しい一言。「人のことが言えるか!」(そのあと、「…ねぇ、」と小声でセルフツッコミしてる会田が可笑しい)
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2008,07,22, Tuesday
#153「恋心」(1976年・S51・10月7日OA)
麻薬組織に潜入した公安の大和田(井上孝雄)からの定時連絡が途絶え、それ以来警察の動きが筒抜けになっていた。会田(天知茂)の今回の任務は、大和田が寝返ったのかどうかの裏を取ること。香港(天っちゃん的発音ではホン↑コン↑)まで偵察に向かった帰り、とあるCAがヤクの取引らしきことを行っている現場を目撃、その女性・滝悠子(篠ヒロコ)をマークする。 会田に詰問されてもシラを切り通していた悠子は、ある日大和田と遭遇した。彼らは恋人同士で、結婚の約束をしたまま雲隠れした彼の真意を測るために、悠子はあえて組織に近づいたのだった。俺を信じろと言う大和田だが、彼の腕に注射針の痕を認めた彼女はある決心を固める。 大和田との関係がバレて組織に軟禁されていた悠子を救い出し自宅へ匿った会田は、訪ねてきた矢部(山村総)の口から意外な真相を聞かされた。なんと彼女は交通課から転属してきた特捜刑事だというのだ(そんなことはもっと早く言うべきでは矢部さん)。用済みとなった者を警察に始末させるのが組織の常とう手段であり、次のターゲットは大和田である可能性が高い。彼を生きたまま捕らえたい会田に対し、麻薬組織の一員になり下がるくらいなら自分の手で『殉職』させるつもりでいる悠子。 会田が単身向かった組織との取引場所には、やはり大和田が来ていた。ほぼ無傷で手錠を掛けたところへ、銃を構えた悠子が現れる。大和田を自分の体で庇った会田だが、彼に突き飛ばされた隙に、悠子の銃が火を噴いた。「俺は刑事だ…」そう呟いて逝った大和田に悠子は取り縋って涙を流すのだった。 警察を辞めるか、矢部に聞かれて悠子は、(大和田殺しを肩代わりした)会田に借りを返すまでは…と続投を決意した(昭和ブルースは4番) *今回から新機軸。「兇悪」文字が消えたのもだが、タイトルロゴがどう贔屓目にみても以前よりしょぼいのがさびしい。画面いっぱいの毛筆がインパクトあったのになあ。 *江沢さんのとき(#2)のようにクレジットに「刑事」表記がないので悠子さんが新たな特捜仲間だと知ったときは会田並みに驚いた。タレこみ情報の指定時刻を1時間サバ読んだり(おかげで会田はひとりで連中と銃撃戦を繰り広げる羽目に)、今回の矢部さんは少々ブラックだ。
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2008,07,21, Monday
「男たちの詩」(1978年・S53・10月9日OA)
空港特捜部の鯉沼(中村雅俊)の友人・及川(堀之紀)が、政財界の黒幕・脇坂(内田朝雄)のチャーター機にセスナで体当たりしようとして失敗、爆死した。会社秘書だった彼の恋人は、脇坂が仕組んだ会社乗っ取りの犠牲となり、社長との無理心中を偽装され殺された、と及川は信じていたのだ。 無念の死を遂げた友人に代わって脇坂に鉄拳を浴びせようとした鯉沼だが、パリパリスーツの中年にぶっ飛ばされる。有無を言わせず彼を遠ざけて(←クビを救うための親切行為)脇坂に挨拶したその男は特捜部の上司である警察庁の三井係長(天知茂)。心中事件に拘る鯉沼の暴走を懸念した三井は彼を捜査から外そうとするが、加賀チーフ(鶴田浩二)から「捜査には怒りが必要だ。鯉沼を外すんならまず俺を罷免するがいい」などと舎弟キャラの弱みに付け込まれては引き下がるしかない。 事件のカギを握るパートのおばさんを執拗に付け回していた鯉沼は脇坂の罠に陥り、大事な証人を殺されたあげく容疑者に仕立て上げられた。同僚の立野(岡本富士太)と海原(高岡健二)が彼の無実を晴らそうと脇坂子飼いのヤーさん事務所で大乱闘、密かに事件を洗い直していた三井係長の神経(と眉間)を逆なでする。おまけに「自分に事件を預けて欲しい」という彼の切なる願いは、相変わらず頑固な加賀チーフにすげなく断られてしまった。 一方、三井の申し分のない経歴と部下に対するウケの悪さを調べ上げた脇坂は、格好のイヌを見つけたとばかりに彼に接触を図ってきていた。呼び出しに応じた三井は、心中事件の偽装を目撃したカップルの存在を土産代りに漏らすという、脇坂につくかのような言動をとる。早速カップル抹殺に動く脇坂配下の連中。しかし彼らの正体は特捜の梶(緒形拳)と紀子(片平なぎさ)、既に替え玉にすりかわっていたのだ。「裏切ったな!」詰る脇坂秘書(北町嘉朗)を「仲間だと思っていたのか。なめるな!」とキレイにぶっ飛ばした三井は、加賀チーフと共に脇坂逮捕に赴くのだった。 *初回以来の登場、しかもこれで出番はおしまいとはいえ、目立ちまくって存在感をアピールしてくれた三井さん。キレすぎて何を考えているのか分からんだの冷酷非情だのと評されるエリート係長だが、実は正義感が人一倍強くて仁義に篤い(おまけにやたらと手が早い)あたりが実に良い味を出していた。「三井くん」「加賀さん」と呼び合う加賀チーフ(鶴田さん)との名コンビぶりにも磨きがかかっていて(対立しながらも“あなたには勝てませんよ”ってな風に視線がふっと和らぐのが天っちゃんらしいと思った)、ラスト、脇坂逮捕にパリパリスーツ(と高い襟)で並んで歩いてくるカッコいい二人は必見。もっと出てくれたらよかったのに! *しかし非ライの刑事連中の平均年齢の高さに慣れているせいか、ぶーたれてばかりの若い刑事たちがうろちょろするのがちょっとばかり目障りなドラマでもある←所詮おっさん好き
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2008,07,13, Sunday
#152「兇悪の憧憬(あこがれ)」(1976年・S51・9月23日OA)
マンションで女が絞殺された。凶器のネクタイは相思相愛の恋人のもの。 仕組まれた完全犯罪。 彼女は会田(天知茂)に告げていた。 ――私の身に万一のことがあれば、テレビの裏側を見て――。 女の名は幾野純子(范文雀)、暴力団が仕切る銀座の高級クラブ「エンパイア」のNo.1ホステスである(源氏名は「ジュン」←姓がサンダースかは不明)。立て続けに同僚(坂井&右田)を亡くしてメランコリックな会田は、矢部(山村総)から(銀座が似合う云々の理由で)彼女の身辺調査を命じられた。女性の海外進出など問題外の某国出身者であるにも関わらず日本へ来ている彼女は、マスコミや政財界の大物を顧客につけ、取引のため多額の札束を持ち歩いているらしい。 新聞社の経済部長(名前は大久保平三郎)に扮して純子に接近した会田。例のごとくすぐバレるが、ヤーさん連中の厳重な監視をかいくぐり自宅へ押しかけた彼にほだされたのか、純子は海外出国を条件に情報機関のスパイめいた仕事をさせられていることをほのめかす。だが真相をすべて明かすことへのわずかの逡巡の隙に殺されてしまったのだ。 ルポライターの小寺茂(睦五郎)は妻子ある身でありながら、そんな純子を不憫に思い関係を培ってきたのだが、組織に知られ、犯人に仕立て上げられた。そして会田がテレビの裏で見つけたのは、某国の情報機関の重要人物の写真。相手が相手だけに、特捜部の存続を賭けて組織に挑んだ会田たちは、小寺の協力を得て黒幕たちに手錠をかける。 処遇待ちの特捜部屋にて。特捜部が潰れても他でやっていけばいい、と呑気な浮田(松山英太郎)と何も言わないけどそう思ってるっぽい岩田(岩城力也)にふざけんなとばかりに「この部屋を出て二度と戻ってこなかった者たちのためにも、俺は最後までここにいる・・・!」と再び坂井&右田の写真を見ながら眼をうるませる会田。そんな彼を矢部部長は「俺が眼の黒いうちは潰させやしないから安心しろ」と励まし、皆を飲み会に誘うのだった(昭和ブルースは1番) *キリのいい時期の100回記念作品。それゆえ(ではないだろうが)久々にR指定なお休みシーンあり。しかし、二度と戻ってこなかったのは坂井さんや右田さんだけでなくもっといたよ会田!(生きてても戻ってこなかった若い刑事もちらほらいたし)
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2008,07,07, Monday
#151「兇悪の殉職・右田刑事」(1976年・S51・9月16日OA)
背広の新調(強引に)を条件に、広域暴力団壊滅作戦を遂行中の会田(天知茂)のカバーに回ってくれと矢部警視(山村総)に頼まれた右田(左とん平)。祖父江組の高額な上納金が払えず難儀している支部長の梅津(桑山正一)に牙を剥かせろとの命を受けてしぶしぶ梅津と接触するが、病気持ちで気の優しい彼に、組長に楯突く気は毛頭ないと軽くいなされる。 祖父江組が彼への鉄砲玉として村上雅(越村純一)という青年をリクルートしたことが判明してもまったく慌てない梅津、そしてなんとか彼らの間でひと悶着起こし、祖父江組解体を目論もうとする矢部&会田の態度に、梅津に父親のようなシンパシーを感じてしまっている右田は焦燥を隠せない。 会田が組長の祖父江(富田仲次郎)を雇われ者のヒットマンぶって刺激したことで、雅が梅津を狙いに出動。大金を渡し「仕事が済んだら親父に会わせてやるよ」と笑顔で送り出した祖父江は、行方不明の彼の父がターゲットの梅津その人だと知っていた。そして梅津も雅が息子だと気づいており、彼に撃たれるなら本望だと、右田のマークをかわして雅に対峙する。 右田が駆け付けたときには、梅津は銃弾に倒れ、父の証拠だという“男一匹”の刺青を梅津の体に発見し自分の行いに泣き崩れる雅の姿が。おまけに雅は祖父江組の連中に射殺されてしまった。完全に頭にきた右田は、祖父江を逮捕せんと単身で乗り込むのだが、梅津サイドの刺客だと思われて(←たぶん会田のせい)、子分たちに蜂の巣にされてしまう。 一方、雅を追ってホテルまで行ったはいいが雑魚に手こずりまくり、ずいぶん遅れをとって現場へたどり着いた会田は、血まみれの右田をみて逆上、祖父江や部下を一人残らず撃ち殺す(弾丸無尽蔵)。そして祖父江の死体を右田の側まで蹴飛ばしながら運ぶと、彼の手にあった手錠をしっかりと掛け、生前の思いを代行した。部長もそんな会田の行為を静かに黙認、「バカタレ、とんでもねえところではみ出しやがって…!」と部下の死を悼んだ。 さびしくなった特捜部屋で、右田を回想する会田。そんな彼に「これを右田に着せてやってくれ」と矢部は真新しい背広を手渡すのだった(昭和ブルースは1番) *不幸な境遇に生まれ、弱者に優しかった右田さんらしい最期に合掌。矢部さん、いくら会田が心配だからって(←想像)、彼を援護につけるのはどうかと思うなあ。おまけに右田さんのために新調した背広が会田みたいな紺ストライプってのもどうかと思ったぞ矢部さん(ウルッとくるはずのラストで笑いが漏れてしまった)。 *でもって今回の会田、去りゆく人に華を持たせなきゃ〜、という趣旨はわかるが間に合わなさすぎなのがトホホだった。
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2008,07,07, Monday
ありったけの青春(1964年・S39・2月29日OA)CX 20:00-20:56
原作:藤原審爾 出演:天知茂、小坂一也、久保菜穂子、高津住男、中島そのみ、利根はる恵 【にわか役者になった愚連隊】(以上、朝日新聞縮刷版より引用) (以下、ほぼネタバレのあらすじ@週刊TVガイドより) 【ちんぴらヤクザの純情】*原作の主人公は錦之介で、そもそも「三吉」という人物はおらず、松の弟分に「豊」というのがいて、彼が相手のボスを刺して刑事に捕まるエピソードがちょこっと入っているだけだった(劇も「父帰る」ではなく鼠小僧)。朝日とTVガイドではあらすじの書き方がまるで違うので分かり難いが、クレジットからすると、三吉メインで筋を大幅に変更しているようだ。ある意味、舞台初出演(?)がこれかもしれない。 *同名タイトルの映画が1963年に公開されていて、こっちのほうが原作に近い(かなりハッピーエンド気味だが) *ちなみに「ぐれん隊純情派」には「地平線がぎらぎらっ」も収録されている
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2008,06,30, Monday
#150「兇悪の女将」(1976年・S51・9月9日OA)
市民局日照部の山川雄一(西本裕行)が収賄罪で連行された。賄賂受け渡しの場所となった高級料亭「よし美」の女将・田島美沙(弓恵子)は山川の幼馴染だが、賄賂のことなど知らぬ存ぜぬを通すしたたかな女。警視庁きっての猟犬を自認しているらしい会田(天知茂)と右田(左とん平)の今回の任務は、この“女狐”を追い詰めることにあった。 山川は日の差さないアパートで身体を壊した妻や子供達と細々と暮らす、いわば捨てゴマ。美沙と愛人関係にある上司の園田(北原義郎)が彼女と共謀し、彼だけに罪を被せるつもりだった。だがそれを薄々感じていた山川は、取引日時を克明に書き記したメモを武器に彼らから金をせびろうとしたものの、縊死させられてしまった。 会田は綾(岸田今日子)の協力で新聞記者と偽り、直接美沙と顔を合わせる。が、すぐに身分がバレた上、メモの話をすると少し動揺を見せたものの、証拠がありませんわと澄まし顔の美沙にちょっと押され気味。 大事なメモは園田によって焼却されたが、そのコピーを療養中の妻・静子(町田祥子)が所有していることを掴んだ会田らは彼女をマークする。静子は美沙を呼び出し、コピーの存在を告げる。それを売ってくれと札束を差し出す美沙の顔を、夫を奪われた恨みをこめて傷つける静子。そこへ現れ彼女たちを拉致しようとした園田の配下たちを、会田たちは一網打尽にした。 後日。美沙は場末の居酒屋に身を落としたが、それなりにしたたかに生きていた。そして「F」では、綾がクラブを閉めることを決意。会田クンに会って、まだまだ弱い立場の人がいることを知った、今後はまた弁護士として、まずは静子の弁護をしたい――。 「これからは、会田さん、って呼ぶわ」 そう告げる彼女に、会田は笑顔で頷いた(昭和ブルースは1番) *旦那(=宮口さん)が殉職した次の回に奥様登場、やり手の女将を悪女っぽく熱演。 *朝の4時半の銀座をぶらつく綾さんと会田(どんだけ夜更かしさんなんだ)。そらそうと綾さんって、前のママが出所するまで店を預かるんじゃなかったのか?(#75「兇悪のワイン」)
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2008,06,28, Saturday
#149「兇悪の殉職・坂井刑事」(1976年・S51・9月2日OA)
青年実業家・太田(村上幹夫)がライフルで狙撃され死亡した。彼が嫁さんの遠縁に当たることから、メンツに賭けても事件を解決したい捜査一課の橘(渡辺文雄)は、かつてライフル射撃で鳴らした坂井(宮口二郎)に応援を要請するのだが、すげなく断られた上、呼んでないお邪魔虫(=会田:天知茂と浮田:松山英太郎)まで現れて渋い顔。 とある出来事の後、二度とライフルは握らないと心に決め、その手の事件を避けてきた坂井だが、狙撃犯人に心当たりがあった。もしや、大学射撃部の後輩・羽島宏文(和崎俊哉)では――しかも羽島の前妻・光子(二本柳俊衣)は、死んだ太田と再婚しようとしていた。ところが単独で調べを進めるうち、羽島が事件前日にライフルを盗まれ、事件当日から姿をくらましていることが判明、彼の無実を確信する。 犯行に使われたライフルが決め手となり、羽島は指名手配されてしまった。そんな折、坂井あてに彼から電話が掛ってくる。「やっと、あのときの先輩(=坂井)の気持ちが分かりましたよ……」 ――あいつは俺を裏切った女だ。死んだからって許せるものか。 坂井の妻は、彼が射撃大会に行っている合間に男と間違いを犯し、心中を図った挙句に自分だけ命を落としたのだ。そのときに放った坂井の言葉をなぞる羽島。彼は、光子とその父・徳永(増田順司)が邪魔な自分をワナにかけたのだと信じ込んでいた。2〜3日したらすべてを清算します、そう言って電話は切れた。 一方、私情が絡んで危うい状況にある坂井をバックアップしようと、会田たちも行動を開始。光子がライフルを扱えることを調べ上げ、尾行の末に真相を聞き出した。父の命で太田と政略結婚することになっていた光子は、土壇場で太田に拒まれ、家にあったライフルを、羽島の物と知らず持ち出し射殺したのだという(そう仕向けた元凶は父親)。 自白した光子を連行しようとしたその時、ライフルを持った羽島が徳永邸に押し入ったとの知らせが入った。急ぎ駆けつけた会田は、坂井が中に入ったと知り、自暴自棄になった羽島の弾丸を避けながら(1発当たりつつ)自らも侵入する。 「俺は先輩と同じことをしようとしているんです、止めないで下さい!」 光子を呼べと叫ぶ羽島を、自分の過去を見るようで制圧しきれないでいる坂井。だが橘の命令でライフルを持ってきた警官をふっとばした彼は、それなら俺が行くという会田を制すと、拳銃を手渡し、丸腰で羽島に対峙しようとした。そこへ投げ込まれる催涙弾。パニック状態になった羽島のライフル弾は、坂井の胸を貫いた。駆け込んだ会田が見たものは、「(彼女を)許してやれよ…」そう呟いて後輩の胸の中に崩れ落ちる坂井の姿だった。 「ヤツは立派に任務を果たしたよ」坂井の亡骸を前にした矢部(山村聡)の足元に、会田は警察手帳を投げつける。「その代償は何です、何が残りました…? 警視総監賞ですか、特進ですか! ……俺は辞める! こんなもののために、命を捨てる馬鹿はいませんからね!」 ひとり道を歩く傷心の会田の前に、坂井がふと現れた。 ――会田さん、何渋い顔してんですか、気楽にやらなきゃあ、気楽に! 幻は、朗らかに笑って消えた。 あっちへ行きかけそうな会田を呼び止めたのは浮田だった。 「俺は辞めません、絶対に。辞めたら坂井さんに悪いです」 いっちょう仕込んで下さい、そう言って頭を下げる浮田の手から、会田は逡巡の後に手帳を受け取るのだった(昭和ブルースは1番) *これまでも殉職した刑事は何人かいたが(大門・四方・江沢)、これほど丁寧に見送られた果報者は坂井さんが初めてだろう(そもそもタイトルからして気合が入っている)。一番の黒幕(=光子の親父)や実行犯(=光子)は無傷で、弱い立場の人間がいっそう救いようのない悲劇を導く展開もさることながら、ラストの会田の取り乱しっぷりが哀しさを助長していた。でも最後に手帳持ってきたのが(#99で殉職する)右田じゃなくて良かった・・・。 *半泣きになって「俺は辞める!」と駄々(?)をこねた会田に「いいだろう」とあっさり了承し、後からさりげなく使いを遣る矢部さんは懐が深いなあとあらためて実感(そしてあそこで反対されたり殴られたりすることを期待していたのか、肩透かしをくらってちょっと「え?」な感じになっていたような会田もかわいらしい) *一課の橘さんは彼なりにベストを尽くしていた、と思う(いつもは下手に出るのに、珍しく矢部さんとも真っ向対立)。「強硬手段をとったのは、銃声を聞いて君たちが危ないと判断したからだ!」と、アカンというのに飛び込んだ無鉄砲な男(=会田。しかも玄関先で撃たれて派手に倒れてたし)を心配してのライフル渡しや催涙弾作戦だったろうに(←想像)、結局裏目に出てしまい焼き殺されそうな目つきで睨まれていたのがちょっぴり可哀想でもあった。
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