2006,09,05, Tuesday
『怪談本所七不思議』(1957年・S32)
本所といえば夜な夜な黒装束(帰りはお経柄の白装束か)の物騒な冥土の使者4人が出没する場所だと思っていたが@江戸の牙、それとは別に「片穂の葦」だの「消えずの行灯」だの「足洗い屋敷」だの「置いてけ掘」だのといった七不思議(ぜんぶタヌキの仕業?)があるらしい。 危ないところを優しい老旗本・小宮山左膳(林寛)に救われたタヌキ姫(橘美千子)。恩返しを誓うのだが、左膳は後妻・さわ(山下明子)と、偶然にもかつて彼女とねんごろだった飲む・打つ・買うの極道な甥・権九郎(色悪ぶり炸裂:天知茂)の姦計によって殺されてしまった。屋敷で我が物顔の権九郎、さわさんといちゃいちゃの一方で、修行に出た左膳の一人息子・弓之助(明智十三郎)の帰りを待つ許嫁(松浦浪路)にちょっかい出してみたりと好き放題。と、そこへ弓之助が帰って来た! が、怪しげな祈祷師の力で、その正体はタヌキ姫だと判明、権九郎たちは調伏しにかかる。そこへ本物の弓之助が現われて・・・。 まあ、最後はタヌキ姫の喜びの狸囃子でほんわか終わるような映画なわけだが、こういったノリの作品でいかにも作り物でございな一本足の傘だとか大入道だとかに対峙した時の悪人の妥当な対応としては、腰を抜かすほど驚いてベソをかきながら「許してくれえ、俺が悪かった~」と泣き叫んでこそ調和が取れるんじゃなかろうかと思うのだが(それを望んでいるようなライトなBGMもかかっていたのだが)、「いつかはオレも伊右衛門役を」PRに余念がない彼は、ケレン味たっぷりの狂乱ぶりをこれでもかと見せ付け、周囲の人間を皆殺しにしてくれた(もしかすると「四谷怪談」より長丁場かもしれない)。相手はたかがタヌキだよ、落ち着けよ天っちゃん! ただひとり別方向に情熱を迸らせていた彼のおかげで、笑っていいのか感心していいのか、見終わるとなにやら不思議な気分だった。 *凛々しい顔(睫バチバチ)なのに口元がとにかく悪人。だが、「足洗え~」と妖怪に言われて実際に足(古傷)を洗ったらしく、悪化させて医者に「片足を切らねばならぬかも知れませんなあ」と言われちゃうあたりの素直さ(バカさ)が笑える *「とんだところへ北村大膳!」などの歌舞伎調のセリフにも受けた *映画館でみた生涯2度目(ただし1度目『二百三高地』は出番の記憶なし)の天っちゃん映画。出てきた瞬間に嬉しいやら気恥ずかしいやらで笑いがこみ上げた。 *(2008.7.10追記)たまたま1990年のシネ・ダイアリー(当時愛読していた「スクリーン」製。何を見たのかメモったもの)を読み返していたら、同年8月にこの映画のことが書いてあった。まさか10年以上前に見てたとは! …まったく記憶なかったなあ。 そのときのメモ: どうしてこういう笑えるタヌキ話を見たかというと天知茂が出てるからである。しかし彼は金と女にあけくれる悪役をキワめていた…。時代モノだしメイクは濃いしおまけに若いので誰かわかりにくかった。いい役やってる彼がみたい気がする。・・・まだ天っちゃんといえば明智センセイか左門さまくらいの年代しか知らない頃らしいコメントである
| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=71 |
| 映画::新東宝 | 01:57 PM | comments (x) | trackback (x) | |
2006,09,01, Friday
『桂小五郎と近藤勇 竜虎の決戦』(1957年・S32)
桂小五郎(嵐寛寿郎)と近藤勇(大河内伝次郎)のガチンコ勝負、にみえて実は虚無僧・箱持ち・黒頭巾に謎の老人と、七変化を魅せながら女子供にも優しい桂小五郎を演じるアラカンさんのイイトコ取り映画でもあった。 天っちゃん(当時26歳)は新撰組の永倉新八。当然、近藤さんサイドなので、写楽の浮世絵みたいなメイクの大河内さんと、コワモテの土方歳三(江川宇礼雄)の傍らで画面上好位置をキープ。防具に着られているようなスリムビューティーで、大勢での立ち回りになると遠慮してか後ろに下がってしまっているのが丸判りながらも(永倉が斬られるわけにはいかんからだろうが)長州のスパイに対する態度などで後の冷酷ぶりをも彷彿とさせてくれた。強引に拉致する役なれど、子供とのスキンシップもバッチリだ。 箱持ちに化けて近藤さんの密談を盗み聞きしていた桂小五郎の胸倉を掴んだり、刀を突きつけたりする美味しいシーンもあり、アラカン大ファンの天っちゃん(&ウスイ家の人たち)はさぞや嬉しかったに違いない。アラカンさん、胸倉掴んだ天っちゃんの手をぎゅっと握ってくれてるし(「もう手洗えないよ~」「その手触らせろ~!」とか兄弟でじゃれあってそう)。
| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=70 |
| 映画::新東宝 | 01:56 PM | comments (x) | trackback (x) | |
2006,08,17, Thursday
『太平洋戦争 謎の戦艦陸奥』(1960年・S35)
戦艦・陸奥(むつ)副長の伏見浩介中佐(天知茂)は、艦長(物静かだがちょっと得たいの知れない沼田曜一)や部下・松本(頭一つ分デカい菅原文太)たちの信望も厚く、陸奥が恋人と公言してはばからない“コチコチの海軍”@叔父さん(=海軍将校)談。 戦争末期、僚友艦がミッドウェイ海域で撃沈されるなか、陸奥だけに帰艦命令が下る。海軍の象徴として、陸奥は無傷でいなければならなかったのだ。しかし、呉に停泊した陸奥を破壊し、日本国民に精神的打撃を与えようと暗躍する組織があった。僚友艦を見殺しにした罪悪感、戦闘に加われない疎外感を抱いた乗組員の心のスキをつき、組織は色々と仕掛けてくるのだが、あわやというところでなぜか突然現われて乗組員の気持ちを和ませる伏見中佐(本人無自覚)のおかげで陸奥は事なきを得ていた(が、乗組員のほうは結局のところ溺死・爆死など悲惨な最期を遂げる羽目に)。 一方、将校クラブのマダム・美佐子(小畑絹子)は、陸奥の技師であった父が設計図盗難の罪を着せられ銃殺されたことから陸奥を憎み、組織に加担する一人だったが、伏見に出会い、愛してしまったことで板ばさみになる。そして伏見もいつのまにか、外泊の多さを艦長が心配して松本に偵察させるほど、美佐子にのめりこんでいた。 陸奥の火薬庫に時限爆弾を数発仕掛けることに成功した組織。伏見を死なせたくない美佐子は、爆破当日に彼を呼び出そうとするのだが、ボス(ドイツ人)にばれて部屋に軟禁される。約束の時間になっても現われない美佐子を伏見は必ず訪ねてくるだろう、そこを射殺してやれというドイツ人の魂胆だったが、部屋に現われたのは、伏見の伝言を携えた部下の松本だった(なんでこんな大事な場面でお前なんだ文太!とツッコミたくなるシーンだ)。銃撃戦となり美佐子は被弾、松本の腕の中で(なんでこんな大事な場面で…以下同)「陸奥が・・・陸奥に・・・」と呟き絶命した。ショックは分かるが、ちゃんと言わなきゃ分からないよ美佐子さん! 予科練たちが実習に乗り込んだその日。歓迎会の途中で席を立ちアンニュイに甲板に佇む伏見に、松本は美佐子の死を告げた。驚愕する伏見に、時限爆弾が見つかったとの知らせが追い討ちを掛ける。タイムリミットが刻々と迫る中、必死に残りの爆弾の捜索を始める乗組員たち。そうそう、その箱の中だ! その棚の一番下! もうちょっと・・・というところで「よし、捜索を止めろ。これ以上は危険だ、全員退避!」って伏見中佐、そりゃないでしょうに(涙)かくして、美佐子が命がけで守りたかった男は、爆弾の至近距離で最愛の陸奥と共に海へと沈んでいった・・・(艦長以下ほぼ全員死亡) とにかく「いい人」の伏見中佐だが、結果的に何の役にも立っていない(しかも無駄死)あたりが寂しいというか、善人役の天っちゃんってのは物足りないものだなあと実感。 *やはり伏見が美佐子にクラっときたのはこの一言「あなたの後姿、まるで白鳥が悶えているみたいだわ…何か苦しんでいらっしゃるのね」が原因か? (こっちがクラッときた) *「平和のための戦争などありえない」名言を残して去った平和主義の叔父さん(細川俊夫)が素敵。 *当時のポスターの下半分は思いっきり誇張(というより詐欺)です
| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=69 |
| 映画::新東宝 | 01:55 PM | comments (x) | trackback (x) | |
2006,08,08, Tuesday
『黄線地帯(イエローライン)』(1960年・S35)
刑務所生まれで孤児院育ちのニヒルな殺し屋・衆木(=もろき)一広(黒いレザーコートが決まりまくりの天知茂)は、阿川(大友純)という男から「貧乏人を困らせる血も涙もない奴」を消してくれと依頼を受け、一人の男を射殺するが、礼金代わりにパトカーを呼ばれ窮地に陥る。彼が殺したのは不正取引撲滅に精を出す神戸の善人税関長。阿川に騙されたと知った衆木は、逃亡の際たまたま電話ボックスで見かけた女性・エミ(赤い帽子&靴と白いコートのカラーが映える三原葉子)を拉致、彼女の行き先が神戸と知り、阿川への復讐のため共に駅へと向かう。 一方、エミと電話でいちゃついていた恋人の新聞記者・俊夫(朴訥さが売りのハンサム・タワー吉田輝雄)は電話が途中で切れたことに不審を抱いて駅まで行くが、見つけたのは自分が贈った赤いハイヒール片足分(=エミがわざと落としたもの)。ダンサーの職を探す彼女が応募した芸能社はダミーで、どうやら裏には大掛かりな黄色人種専門の人身売買組織(=イエローライン)が絡んでいるらしいと突き止めた俊夫は、デスク(老けメイクの沼田曜一)の許可を得て神戸へと調査に赴く。 衆木を裏切った阿川と、そのボスで表向きは社会事業家として名のしれた松平(中村虎彦)がイエローラインの総元締めであったことから、衆木・エミ・俊夫の運命は、神戸の裏街(?)・カスバへと収束していくのだった…。 スタイリッシュなギターの音色(音楽:渡辺宙明)に乗って繰り広げられる、無国籍でドライな映像の数々。偶然が偶然を呼び寄せる展開と、三人の際立った違いが面白い。典型的な巻き込まれ型の吉田さん(一動作ごとの指ぱっちんが恥ずかしい)はともかく、 「女の約束と貞操を信じる奴は低脳だ」 「恋愛か・・・そんなものは足の早い食い物みてえなもんだ。ちょっと放っときゃよ・・・ちょっと放っときゃ、すぐ腐っちまうんだ!」 なんていうセリフもクールにこなす、いつもながら情念MAXの目つきの天っちゃんと、人質に捕られてもあっけらかんと楽天的な(でも逃げる算段もちゃんと考えている)葉子ねえさんのコンビが素敵で、ほんのり良い仲になりかけていた矢先のビターかつリアルなクライマックスが忘れがたい印象を残してくれる。そしてやっぱり天知茂には似合うのだ、裏切られ怒りに燃え、束の間の優しさに包まれながらも破滅に突き進む姿が。 *スパニッシュ系のギターも良く似合う天っちゃん。やはりスペインと縁があるのか *連れ込みホテルのやり手マダムに、若杉嘉津子さん(四谷怪談のお岩さん) *ドライな映画とはいえ、ちゃんと三原葉子ねえさんのセクシーな踊りを堪能できるあたりが新東宝だ
| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=68 |
| 映画::新東宝 | 01:54 PM | comments (x) | trackback (x) | |
2006,08,03, Thursday
『森繁のデマカセ紳士』(1955年・S30)
♪おいらのペテンは~芸術ペテン~♪ 安っぽい宇宙船内のようなセットで歌い出すペテン師・堀川(森繁久弥)の背後のドアがしゅっと開くと、キャンバスと画材道具を手にし、ベレー帽を斜めに被った画家(スモックも可愛らしい天知茂24歳)が入ってきた。それじゃ僕たち仲間だな!芸術家の心は他人に分かるものじゃない、などとと嬉しそうに言う彼は堀川と握手、一杯やろう・そうしようという話になるのだが、突然ドアから警官が。 警官「こらペテン師!」 堀川「(画家を指して)ほう、あんたはペテン師か」 警官「オマエだ!」 というベタなボケ&ツッコミの後(指差された瞬間の天っちゃんの表情が良い)、警官と画家は画面からフェードアウト。映画開始2分足らずで出番終了(91分もあるのに)。 *天っちゃん的には最初の部分だけを観ておけば事足りるが、実はこの映画、のち(2年後)の奥さま(芸名・森悠子)の名前もクレジットされている。でもどこに出ているのかが分からなかったのでどなたか教えて下さい(女子プロレスのシーン? それとも劇場の観客?)
| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=67 |
| 映画::新東宝 | 01:53 PM | comments (x) | trackback (x) | |
2006,07,30, Sunday
『暴圧(大虐殺)』(1960年・S35)
大正12年9月1日。アナキスト・古川大次郎(天知茂:前髪下ろした書生風)が牛メシ屋で関東大震災に遭遇していた頃、「朝鮮人たちが放火しているぞ!」と根も葉もないデマが飛び交い、何の罪も無い朝鮮人たちが暴徒と化した群集に襲われていた。それに乗じた軍部は、朝鮮人や社会主義者を一斉に拘束、殺害するという計画を実行。仲間とアジトにいるところをどうやらひとりだけ捕縛された古川は、女子供まで容赦なく銃殺する軍部の非道を目の当たりにして怒りに震えた(自分は川に飛び込んでうまく逃れたが ←さすがの逃げ足)。 さらに古川たち同志の師である左翼の柱・大杉(細川俊夫)が妻や幼い息子ともども軍に拉致され、甘粕大尉(沼田曜一)らの手により抹殺される。古川は打倒・軍部を誓い、同郷の先輩・高松やその妹・京子(古川とほんのり恋仲)の心配をよそに過激テロに走ろうとする。まずは資金繰りをと、大阪の知人を訪ねた際に外回りの中年銀行員を刃物で脅すが、カバンを掴んで離さないので(当然だ)うっかり殺してしまう。東京に戻り仲間と缶詰爆弾を作って軍の幹部暗殺を謀るが胡散臭い挙動でバレて失敗。軍の追及を避け、半ば不貞腐れてカフェの女給さんとはじめての一夜を過ごしたところ、彼女の父は自分が手にかけた銀行員だと判明。ショックで飛び出し、海辺で眉根を寄せていると、高松と京子に遭遇。古川を救いたい一心の京子は彼の居場所を警察にチクってしまい・・・と、進めば進むほど踏んだり蹴ったり。 それでも懲りずに巨頭会議が開かれる陸軍省に忍び込み、部屋の爆破を目論んだ古川たちだったが、張り巡らせたコードを踏まれた拍子に導火線が外れてしまい、あえなく御用に。「朝鮮人や日本人の同胞を虐殺した奴らはどうして処罰されないんだ! こんな不合理が許されていいのか! 俺達こそ民衆のために戦っているのがわからないのか!」などと叫びながら、古川は護送車に消えていった。 実在の人物・事件を題材にしたセミ・ドキュメンタリーなので、主人公の行動に対してとやかく言うことは控えたいが、なんにせよテロはいかんと思うなあ。 *もっとも、怒涛の不幸(不運)の連続に見舞われる天っちゃんを観ていると、本人と話の展開はすこぶるシリアスなのについ顔が綻んでしまうのだが(不合理が似合いすぎてて) *大杉の通夜の際、「おとうちゃん、おかあちゃん、どうして死んじゃったの。ああんああん」と泣きじゃくる幼い娘・エマちゃんを抱っこして庭先に出た古川、「おじさんと歌をうたおうね」と『月の砂漠』を披露。♪金と~銀との~♪からは彼女とハモるのだが、天っちゃんが低く出すぎてエマちゃんが大変そうだった *眼鏡で変装とか、仮面をつけてバイオリンを弾くとか、本筋とは関係ないところで楽しめる作品でもある(女給さんとの夜のシーンも必要以上に可憐だ←天っちゃんが)
| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=66 |
| 映画::新東宝 | 01:52 PM | comments (x) | trackback (x) | |
2006,07,03, Monday
『東海道四谷怪談』(1959年・S34)
ワルで、色っぽくて、苦しみ悶える伊右衛門さま。天知茂の真骨頂。 伊右衛門視点で観てしまうからかもしれないが、実は彼、根っからの極悪人ではない。お岩さんの父親を斬ったのだって、一度は交わした婚姻の約束をオマエは浪人だからと反故にされ、面と向かって散々バカにされたせいで衝動的にバッサリやっちゃったのだし(「松の廊下」風)、江戸でお梅さんと出会うきっかけはお岩さんの粘着質な愚痴のせいだし(まあ彼女の言い分は尤もなのだが、伊右衛門でなくても正直「くどい!」と突っ込みたくなる)、殺人計画はすべて直助主導だし。 伊右衛門という男の罪はただひとつ、いざというときの優柔不断さに尽きる。その心の揺れにつけこんだのが直助であり、(亡霊となった)お岩さんだったのではないか。伊右衛門の後半の狂乱は、自分自身の心の闇との闘いとも受け取れ、半・自決と「お岩、許せ」でようやく魂の平安を得たと解釈してもいいのかもしれない(その割には白目向いて死んでたけど)。 とにかく、自分で伊右衛門役に立候補しただけあって、天っちゃんの揺れる演技(前半クールに、後半アツアツ)は極上だと思う。 *1972年にTVでも「四谷怪談」をやっているそうだが、若さ故の狂気が感じられた28歳時と比べて、40過ぎた彼がどういう方向でもう一度伊右衛門を演じたのか気になるところだ *(2008.9.1追記)TV版を見てみた。
| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=65 |
| 映画::新東宝 | 01:50 PM | comments (x) | trackback (x) | |
2006,06,03, Saturday
『東支那海の女傑』(1959年・S34)
終戦直後の中国。ダイヤモンドを極秘裏に日本へ持ち帰る任務を帯びた、映画開始10分で3度も着替えた(こじゃれたスーツ・ナゾの中国人風・白の軍服)オシャレな横山大尉(天知茂)は、東シナ海を牛耳る海賊のバックアップを得て日本へ渡ろうとする。海賊の頭目は、以前(こじゃれたスーツのときに)手助けをしてやり、また(ナゾの中国人風のときに)命を救ってもらったことのある梨花(高倉みゆき)だった・・・。 海賊同士の確執、部下の裏切り、中国海軍の追撃と、いろいろ揃った豪勢な展開にも関わらず、いまひとつノリが悪いようにみえたのは、横山大尉の見せ場が初盤のコスプレと海賊との殴り合い以外ほとんど無かったせいかもしれない。彼だけが海賊船に乗り込んで極秘行動をするのかと思いきや、艦長以下乗組員がぞろぞろいる軍艦ごと(軍艦は海賊への貢物だが)日本へ向かうせいで、クライマックスの美味しいシーンを艦長に攫われてしまったし、また行動の動機がその場でころころ変わったりするので(キミはダイヤ運びの任務が最優先じゃないのか!と突っ込むこと数回)、外見ほどは魅力ある人物とは言いがたかった。ミリタリー職のせいで気合が入ったセリフ回しなどは良かったんだけどなあ。まあ、タイトル通り「主役」は女海賊の梨花さんだから、刺身のツマでも仕方がないんだろう。 おまけに横山大尉、名前が付けられていないのか、色っぽいシーンで「梨花・・・!」と抱き寄せたのはいいが「横山!」と呼び捨てされてるのがなんだか悲しかった。せめてサン付けで呼んでくれなきゃ、怒るでしかし!(←横山違い) *美味しいところを持っていった艦長・田木少佐役はgoo映画のキャストでは沼田曜一さんになっているが、別人ではないだろうか?(クレジットに沼田さんの名前は無かったしなあ) *背が高いので東京タワーにちなんで名づけられたという、いわゆる新東宝「ハンサム・タワーズ」(吉田輝雄、高宮敬二、寺島達夫、菅原文太)のひとり、寺島さんのデビュー作(横山大尉の部下役)。文太さんもデビュー作(『女王蜂の怒り』)は天っちゃんの部下だったし、なんか嫌味だな、タワーズ。
| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=64 |
| 映画::新東宝 | 01:45 PM | comments (x) | trackback (x) | |
2006,04,23, Sunday
『人形佐七捕物帖 妖艶六死美人』(1956年・S31)
江戸で評判の六人の美女、人呼んで「風流六歌仙」たちが、何者かによって次々に殺されていく。その中のひとり、一番気立ての優しい春太夫(若杉嘉津子:後のお岩さん@『東海道四谷怪談』)と恋仲なのが素浪人・浅香啓之助(天知茂)。 『着流し姿に身をやつしてはいるが、いずれはどこかの若様か』(人物関係図より)とのことだが、どちらかというと若様を殺して成りすましている、いずれはどこかの小悪党かといった風情が漂っている人物である(しかしすこぶる善人だ)。 春太夫の用心棒をかって出ている啓之助、襲い掛かってきた黒装束の集団とやり合い、後を付けて捕らえられるが、同じく窮地に陥りかけた佐七親分(若山富三郎)を助けて活躍する場面もあってなかなかおいしい役どころだった。・・・しかしながら台詞は軽いわ殺陣は軽いわ胡散臭いわで、初々しい、というよりもむしろ貧相という言葉が非常に良く似合う天っちゃん25歳。たった3つくらいしか違わない富三郎さんの貫禄と比べたらちょっと可哀相なくらいだ。昭和31年の作品を見るのはこれが初めてなのだが、『恐怖のカービン銃』(S29)で魅せた「色気」を、自分も(そして周囲も)うまく使いこなせていない感じがした。たぶん、今回は善人役だったからなのかもしれない。中川信夫監督に魅力を引き出してもらうには、あともう2年ほど熟成しなければならないようだ。 *風流六歌仙のひとりにむっちり色っぽい三原葉子ねえさん。 *(2008.3.1追記)久々に見たがやっぱり天っちゃんは実に儚そうな用心棒だった。あと、ネーミングからして元気いっぱいな渦潮太郎(=大ボス:市川小太夫)のケレン味あふれる悪者ぶりにウケた。小太夫さんといえば、「大忠臣蔵」で兄の中車さんにかわって吉良殿を演じて天っちゃん(=一学さん)に守ってもらった人と同一人物なのだろうか? 変われば変わるものだ!←どっちも
| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=63 |
| 映画::新東宝 | 01:39 PM | comments (x) | trackback (x) | |
2006,04,02, Sunday
『恋愛ズバリ講座』(1961年・S36)
![]() 三話構成のオムニバスで、第一話「吝嗇(けちんぼ)」に出演。 ギブ&テイクが信条のリッチマンKKの富田社長(黒縁メガネの天知茂)が、テイク&テイクの大富産業KKの女社長(小畑絹子)と知り合って・・・というコメディで、登場人物がみんな無表情で倍速のしゃべくりかつギクシャクした身振り手振りで動くのがものすごくシュール。実写版「オー!マイキー」、といった風情でとにかく可笑しかった。(二話以降はろくに見てないが、変なのはどうやらこの回だけのようだ)。 生けるマネキンを照れひとつなく演じきっていた天っちゃんはタダモノではないと改めて感服(軽いしゃべくりがまたピッタリ)。後年は判で押したような役柄が多く、なんだか顔も劇画調に固まっちゃってたが、やろうと思えばいろんなことが出来る人だったんだなあ。
| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=62 |
| 映画::新東宝 | 01:38 PM | comments (x) | trackback (x) | |