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『アジャパー天国』
『アジャパー天国』(1953年・S28)

貧乏アパートの住民たちの悲喜こもごもが♪あなたはアジャー!で私はパーよ〜♪(歌:伴淳さんと泉友子さん)とほのぼのムードで描かれているこの作品に天っちゃんが出ているとの情報をききつけ、早速DVDを鑑賞。

キャバレーで働きながら代筆に勤しむズンさん(伴淳三郎)のシラノ的恋愛、旦那(田中春男)を待ち続ける子持ち婦人(清川虹子)に惚れているズンさんの兄貴・金さん(柳家金語楼)の恋の顛末、近所の富豪(婿養子で奥さんの尻に敷かれっぱなしの花菱アチャコ)のお嬢様(星美智子)と貧乏学生(高島忠夫)の駆け落ち・キャバレー社長の横槍による誘拐事件、などが繰り広げられるわけだが、さて肝心の天っちゃんはというと、キャバレーの場面でこれか?と思われるボーイを発見(たぶんこっちの方が分かりやすい)。ノークレジットだからこんなにちっちゃくても仕方がないのか、田中春男さんにぶつかられるリーマン風のこの人物もそうか? 自信ないなあ…と心眼全開でチェックしていたら、アパートの住民扮するチンドン屋を眺めるちょっぴりアンニュイな青年に出くわした(全身像はこちら笑顔もあり)。

あとはラスト近くで社長さんに「おいボーイ、ビール持ってこい」と呼ばれた時が画面最大(当然、セリフは一切なし)。ポスターにもでかでかと載っている同期の高島さんを見てさぞ複雑な心境だったろうなあと推察するが、そんな朴訥な学生役なんて似合わないんだから仕方がない。頑張れ天っちゃん、ギャングへの道はもうすぐだ!←あと1年半

*こちらもクレジットには無かったが、奥様・森悠子さんも出演されていた(こちら。中央のバタやん=川端義夫の左にいる黒いワンピースの女性がそうかと)

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| 映画::新東宝 | 11:27 PM | comments (x) | trackback (x) |
『風流交番日記』
『風流交番日記』(1955年・S30)

(ラピュタ阿佐ヶ谷にて鑑賞)

“風流とは、平和を愛する人の心の中に生ずる一種の「あくび」である”――(「大言海」)

中堅巡査の和久井(小林桂樹)は駅前の小さな交番に勤務する4人の巡査のひとり。女にモテモテの花園(宇津井健)、やる気満々の新卒・谷川(御木本伸介)に比べると、元来の人の良さ(トロさ?)ゆえかいまひとつパッとしない和久井だが、同郷で夜の女として働くマツ改めユリ(阿部寿美子)は、そんな彼にすげなくされても憧れのまなざしを注ぎ続けている。

年長巡査の大坪(志村喬)は若い3人だけでなく、新聞売りの孤児やバタ屋のオヤジ(多々良純)にも分け隔てなく接する温厚な人物。長年連れ添った妻とも良い雰囲気で順風満帆にみえる彼にも悩みはあった。2年前に家を出て以来消息不明の息子・一郎(開襟シャツで腕組みしてる爽やか青年風で仏壇横のフレームに収まっている天知茂)のことが気がかりなのだ。

ある時、留置所勤務を命ぜられた和久井は、無銭飲食で捕まったぶかぶか背広の貧相な青年の財布に、大坪夫妻の写真を見つけた。彼こそが大坪が捜している愛息だと悟った和久井は、初めての留置所で自分の弱さにうちひしがれながら膝を抱えている彼に、とある老巡査(=大坪)の悲哀をさりげなく話してきかせる。
――まったく『親の心、子知らず』だよなあ。
一郎は彼の言葉に胸を衝かれたように眼を伏せるのだった。

数日後、新聞売りの少年の父親が交番を訪ねてきた。罪を犯して逃亡中だったという彼は、遠巻きに息子の懸命な姿をみて自首を決意したのだという。今一度しっかり見てきてやりなさいと父親を温かく後押ししてやる大坪の後ろ姿を、一郎が物陰からそっと見つめていた。

指名手配中のギャング(のくせに女といちゃいちゃしている、いつもどおりエラそうな丹波哲郎)の捕物劇などあった後、モテ男・花園は上司の娘とゴールインして出世、和久井に手柄を譲って貰った谷川も1人前になり、相変わらず和久井だけが冴えない毎日なのだが(片思いのお嬢さんが結婚したせいで、自分のために身体をはってギャングを止めてくれたユリちゃんのことは今のところおざなりになっている)、一郎から速達手紙が届いたと駆け込んできた大坪の妻や、その手紙を大事そうに読んでいる大坪の姿を見てほんのり嬉しい気分に。北海道の森林で頑張っている、今が一番幸せだという一郎の手紙には父への謝罪と尊敬の言葉が綴られていた…。

*2年も家出中というからもっとグレまくったチンピラ息子なのかと思っていたら、留置所に入ってくるなり捨てられた仔犬のような眼つきでオドオドしている気弱なぼっちゃんだったので驚いた。ただし、薫兄さんの師匠・土門拳さんがこの映画の天っちゃんを見て「あれは有望だ!」と太鼓判を押してくれたというだけあって、表情の移り変わりがナチュラルで素晴らしい。抑えたセリフ回しもいい感じ。

*とはいえ、無銭飲食で捕まるくらいお財布が切迫している青年がホイホイと北海道なんぞへ行けるんだろうか? そう書いて老親を安心させ、実はまだ交番の物陰にいるんじゃないのかと思ってしまったのも事実だ。

*名前は?と言われて口ごもりながら偽名(「大坪一郎」→「大沢三郎」だったかな)を使った一郎クン。生年月日は?と聞かれるとけっこうスラスラと「昭和5年3月4日」なんて言っていた(でも1年サバよんでるな>天っちゃん)

*クレジットには名前が無かったようだが、事故ったタクシーに乗っていたいちゃいちゃカップルの女性は奥様(森悠子さん)だったと思う(ほんの一瞬)。

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| 映画::新東宝 | 11:25 PM | comments (x) | trackback (x) |
『剣豪相馬武勇伝 檜山大騒動』
『剣豪相馬武勇伝 檜山大騒動』(1956年・S31)

国境の桧山を巡って争う南部藩と津軽藩。あるとき、ココ俺らのもんな、と勝手に看板を立てていた津軽藩に文句を言いに行った南部藩家老が殺された(実はこのとき、家老の背後に天っちゃんの姿が見えるのだが、台詞もなくオタオタしてるだけですぐにフェイドアウト。だがありがたいことに出番はこれだけではない)。

ふたつの藩のいがみ合いのニュースは江戸にも届く。「何、父上が殺された!」と驚いたのは家老の嫡男・秀之助(どっちが父上か分からない五十路の嵐寛寿郎)。老中にうまくとりいって優位に立つ津軽藩に一矢報いて父の敵を討たんと、秀之助は「相馬大作」と名前を変えて津軽藩に馬番として潜入、藩主・土佐守に桧山返還を迫る。だが煮え切らぬ態度を取った彼をばっさり刺殺、それだけに飽き足らず、次の藩主に選ばれた越中守(バカ殿演技もうまい沼田曜一)をも執拗につけ狙うのだった。

津軽藩も黙ってはいない(むしろこっちが被害者のような雰囲気)。忍び(細川俊夫)を使ったりして大作と助手の関(小笠原竜三郎)を追いつめ、関くんは負傷。それを知った恋人・千代さん(日比野恵子)はひとりで恋人の元へ向かった。しかし途中で雲助たちに襲われ大ピンチ。あわや…という場面で突如現れた股旅姿の男、道中合羽を颯爽とひるがえして雲助を蹴散らした! この非常においしい役どころの股旅男・弥太郎(天知茂)は、ちょうど千代さんが頼ろうとしていた伊達の親分の下っ端だったというのも都合の良い話だが、これで千代さんは無事に関くんと再会を果たすことができた。

温泉で傷を癒すため、関くんと千代さんは大作センセイと分かれて出発。ひとりでスタスタ歩いていた大作センセイを、津軽藩の刺客が取り囲む。と、そこへ馬で駆けてくる(…というシーンはなかったが、馬から降りたっぽい)瀕死の弥太郎。関くんたちも襲われているんです、と虫の息で伝えて大作センセイの腕の中でこと切れてしまった。(そのあとまたまた大作センセイ大暴れで大団円)

子供の時からの憧れ・アラカンさんと初の共演。「その日は興奮して寝られなかった」そうなので、しっかりせい弥太郎!と励まされながらパッタリ、という最期が嬉しくてたまらなかったに違いない。

*千代さんを救うシーンも嬉しい役どころだったと思うが、「お嬢さん、どちらまで」と笠を取りながら尋ねる口調がどことなく胡散臭げで、もしやコイツ、今度は自分が襲うのか?と疑ってしまった。ありがちだし。

*スタントなしで水中アクションもこなしたアラカンさん(泳ぎが達者)、さすがである。ちなみに水面にぶすぶす刺さっていたのは実弾らしい(「鞍馬天狗のおじさんは」より)

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| 映画::新東宝 | 11:22 PM | comments (x) | trackback (x) |
『女賭博師 花の切り札』
『女賭博師 花の切り札』(1969年・S44)

さすらいの女賭博師・大滝銀子(江波杏子)は、旧知の三田村組の代理としてシマと代紋を賭けた一戦で無残に敗退。なにしろ相手方の兼松(成田三樹夫)が立てたのは、クールで非情な凄腕賭博師・素走りの浅造(天知茂)だったのだから仕方がない。

師匠兼マネージャーの政吉(船越英二)と共に修行の旅に出た銀子はある晩、賭場荒らしに遭遇した。なんと彼らは三田村組の子分衆。例の一件で親分は自殺、その三回忌にのみ開催を許される「供養盆」の資金すらままならない状況に陥っていると聞かされた銀子は責任を感じて意気消沈。とうとう捕えられ殺されかけた彼らだが、その賭場の胴師だった浅造の配慮で、銀子が彼らの命と利き腕を賭けて再び浅造と手本引き勝負をすることに。結果は銀子が勝利し、子分衆の命は助かった。彼女は勝ちを譲ってくれた浅造に心の中で感謝する。

供養盆の資金捻出のため、銀子は日夜大奮闘。豪快な勝ちっぷりに、イカサマも辞さないと公言する夜泣きの半次(津川雅彦)に絡まれ勝負を挑まれたりもするが、居合わせた浅造に窮地を救われる。だがようやく資金の目処がついた頃、なんと兼松がイケズなことに供養盆当日に自分ちで高額を賭ける「金張り盆」をひらくという知らせが舞い込んだ。談判に向かった銀子は半次得意のイカサマに敗れ、おまけに不慮の事故で右耳の聴力を失ってしまう。

一方、金張り盆の胴師は浅造に決まっていたものの、彼の昔気質な潔癖さに嫌気がさしてきた兼松は、半次を後釜に据えてがっぽり儲けたいと考え、浅造にやんわりと病気にならねえかと提案。先代と生死を共にし、戦場で彼を看取って以来息子(=ミッキー)の支えになってきたつもりの浅造は、浅薄なボンにやりきれなさを感じながらもこれを固辞。同じころ、苦境の銀子を見かねたのか見切りをつけたのか、政吉(通り名は「早見え」)が訪ねてきたのを良いことに、兼松は浅造襲撃を指示。政吉は三田村残党を従えて浅造を襲い利き腕を刺すのだが、直後に兼松の子分たちが現れ返り討ちに遭って絶命した。

政吉を失った銀子は浅造を見舞い、彼から半次の“いかさま返し”のからくりを教わる。そして特訓を重ねること数日、半次が胴師を務める金張り盆に出向いた銀子は、見事彼のイカサマを打ち破った。半次はその場で斬殺され、責任者の兼松もまた親分衆からドスを手渡されて一巻の終わり。後日、晴れて三田村組の供養盆が行われた。後見人の浅造がクールに控える横で、銀子は胴師として盆を取り仕切るのだった。

*セクシーな痩身からバージョン・チェンジしかけている微妙な時期とはいえ(なんだかシーンごとに雰囲気が違ったりもして)、オブザーバー的ないいヒトを演じている天っちゃんに見惚れる作品。東映だったら死んでるキャラだが、大映なので助かったというべきか。…ところで通り名の「素走り」、時代劇ではたまに聞くが、どういう意味なのだろう?

*ひたすらクールでかっこいい浅造さんだが、病院のシーンで「あんた、つくづくいかさまに弱いひとだねえ」と銀子に言ったときに眉が思いっきりハの字になったのがおかしかった。

*兼松の子分のひとりで政吉つぁんを刺してたのが、タロウ前の篠田三郎さん(こんな役もやってたのか)

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| 映画::大映(その他) | 01:04 PM | comments (x) | trackback (x) |
『女吸血鬼』
『女吸血鬼』(1959年・S34)

「女」が付いてますが、ジェントルマンな吸血鬼が天っちゃんです。「彼はどんなことでも照れずにやる」と後に評されるに至ったのはこういう経験があったからでしょう。

[2007.9.1:新文芸坐にて鑑賞]

キリシタン迫害の時代、天草四郎の血を引く勝姫(三原葉子)の重臣・竹中信敬(天知茂)は、姫が城の陥落時に自害した際、愛しさ余って彼女の血を啜ってしまったがために、不老不死の身体を得る。以来彼は、家来のフリークスたちと共に、勝姫の末裔の女性をかっさらっては夜のお供(絵のモデル含む)にし、愛想を尽かす(あるいは尽かされる)とろう人形にして地底城に陳列する、などといったことを繰り返しながら未来永劫の時を生きていた。

ただ、生前から勝姫が嫌っていた月の光、それだけが彼のウィーク・ポイント。月の光を浴びた途端、彼は呪わしい吸血鬼姿に変貌し、手当たり次第に女性に襲いかかる(血を吸う、というよりは噛み付く)、ちょっとばかり美意識に欠けた怪人になってしまうのだ。

20年ほど可愛がっていた勝姫そっくりの末裔・美和子(三原二役)が城を逃げ出したことから、竹中の平穏な生活は急展開を迎える。折しも彼女をモデルにした油絵が特選となりちょこっと得意げなところへ、絵の前で偶然「まあお母様にそっくり」と呟く娘・伊都子(池内淳子)に出会えてさらに気を良くするのだが、おまぬけな手下のせいで月の光を浴びまくり無駄に女性を襲いまくりの失態を重ねる羽目に。

ようやく美和子を奪還、島原の城へ戻るも、20年モノ(=美和子)より若くピチピチな伊都子にちょっぴり触手が動いたせいで家来たちに「親子丼はいけませんぜ〜」とたしなめられムキになっているところを、伊都子のおせっかいなフィアンセ・大木民夫(和田桂之助)らの急襲を受ける。マント&乙女チックなブラウスを翻しながら、ムチやら燭台やらレイピアやらで颯爽と応戦する竹中だったが、ポッと出のコソ泥が城の天井をぶちぬいたおかげで煌々たる月光が身体に突き刺さり、コント紙一重な異様な姿に変化。もはやこれまでと、ちゃっかりろう人形にしておいた美和子に別れを告げた彼は、最後のひと暴れの後で自ら硫酸の池へと身を投じたのだった。

*人間サイドのお気楽ぶり(なかでも和田さんの突き抜けたポジティブさは特筆事項)もなんのその、日本初の吸血鬼役をバタ臭い風貌で熱演。小道具の使い方も堂に入ったもので、ここまでやり切ったらさぞ満足だろうなと、見ていてなにやら痛快な気持ちにもなれる。願わくば普通に血を吸ってほしかったけれど(勝姫以外、だれの血も吸ってないんじゃないのか?)

*新文芸坐のオールナイトで見た際、冒頭の美和子さん受難シーンを「あ、轢いちゃいました」で軽く済ませるタクシー運転手に笑いが漏れていた。同時上映だった「地獄」の同じようなシチュエーションでの四郎(天っちゃん)の苦悩ぶりとのあまりのギャップゆえかも。

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| 映画::新東宝 | 11:19 PM | comments (x) | trackback (x) |
『憲兵と幽霊』
『憲兵と幽霊』(1958年・S35)

鹿島茂著「甦る昭和脇役名画館」(横目な色悪/天知茂)などで絶賛されている作品を、新文芸坐の大スクリーンでようやく鑑賞。かなり“雨降り”がひどく音や映像がばしばし飛ぶのが残念だったが、キーンと耳障りな金属音BGMが不快感を煽り、雰囲気は十二分に掴めた。

ゲットしそこねた女・明子(久保菜穂子)の祝言を、勝負はこれからとばかりに横目で舐めるように見つめる波島憲兵(少尉から中尉へ:天知茂)。彼には中国側のスパイという裏の顔がある。気の毒な旦那・田沢伍長(中山昭二)に自分の濡れ衣を着せ、妻や母ともども激しい拷問にかけた揚句に銃殺刑に処す冷酷非情ぶりを見せた波島は、邪魔な田沢の母を自殺へ追いやり、とうとう明子の体を奪って目的を達成する。

しかし、顔に似合わずえげつない呪いの言葉を吐いて死んだ田沢に瓜二つの弟(中山二役)がなけなしの良心をチクチクと刺激する上、濡れ衣の共犯である部下が造反、思わず刺してしまい行李に突っ込んで海へ投げ込む羽目になる頃から、波島の悪運は尽きようとしていた…。

実はこの映画の不思議な面白さは、『悪いヤツが幽霊におびえて自滅する』という典型的お化け話と並行して、ピカレスク・ロマンというべきもうひとつの物語が展開しているところにある。三原葉子ねえさん演じる紅蘭との儚いラブ・ストーリーがそれだ。

祝言の日、たまたま酔漢から助けた紅蘭は、自分が通じる中国側の取引相手・張覚仁(芝田新)の愛人。父が自殺し云々という不幸な波島の過去を知った上で真摯な同情のまなざしを向けてくる彼女に、明子へのサディスティックな態度とはうって変わった深い愛情を返す波島。そんな二人に張は当然ジェラシーに燃え、こっちでも波島は万事休すと相成る…のだが、一見作品の主題を散漫にしているようなこのサイド・ストーリーがあるが故に、墓地での進退窮まった波島の狂乱ぶりに重みが増しているように思うのだ。

蛇のような粘着質憲兵が似合いすぎていて、紅蘭との絡みではまるで別人にみえるという難点もあれど、単純ではない悪人をいつもながら真剣そのもので演じ切っている天っちゃんに拍手。

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| 映画::新東宝 | 11:17 PM | comments (x) | trackback (x) |
『地獄』
『地獄』(1960年・S35)

教授の娘・ユキコ(三ツ矢歌子)と結婚間近の大学生・清水四郎(前髪が大学生?:天知茂)。勝ち組の割に顔色が冴えないのは、怪友・田村(沼田曜一)と起こした偶然の事故でチンピラ・恭一(泉田洋志)を轢き殺してしまったからだ。良心の呵責に耐えきれずユキコに相談、自首しようとする四郎だが、乗ったタクシーが衝突してユキコが死亡。自暴自棄となって寝た女・洋子(小野彰子)は恭一の情婦で、復讐に燃える恭一の母(津路清子)と彼女に命を狙われる羽目に。

ハハキトクの電報で故郷に帰ってみると、胡散臭い養老院を経営している父(林寛)は病の床に伏せる母の隣で二号(山下明子)とよろしくやっている。絵描きの父と暮らす、ユキコにそっくりなサチコ(三ツ矢さん二役)という娘の存在だけが清涼剤だが、娘の死で狂った妻を抱えた教授、田村、そして洋子たちが乗り込んできて芋蔓式に不幸が四郎に覆いかぶさり、運命が狂い始める……。

……このあと登場人物すべてがばったばったと死んでゆき、めくるめく地獄ツアーへと話が展開していくさまは圧巻かつ強引すぎて笑いがこみあげてくるほど。とりあえずどこの世界にいてもビクつきながら「俺が悪かった、許してくれ〜!」と謝りまくっている四郎は、死んでなお「殺してやる!」と首を絞められる上に「四郎、俺と一緒に来い!」だの「四郎さん、助けてー」「もう離さないわ〜」だのと男女関係なく迫られる人気モノだった。

*地獄で長丁場のキスシーンをやってのけるツワモノでもある<四郎

*この映画のメフィストフェレス・田村を演じた沼田さんの恐るべき怪演はトラウマ必須。

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| 映画::新東宝 | 11:16 PM | comments (x) | trackback (x) |
『花と波濤(波涛)』
『花と波濤(波涛)』(1954年・S29)

職業婦人を目指して岡山から京都へやってきたひとりの女性・紀代子(筑紫あけみ)の“近代人”らしい恋愛模様を描いた作品。

故郷の幼馴染で文学青年の司(山内明)と京都の大学で考古学を研究する大槻(岡田英次)の2人から求婚された紀代子だったが、内気な司に対して積極的すぎる大槻、どちらも彼女には一長一短で決められない。揺れる胸の内を、京都で偶然知り合った年上の彫刻家・真崎(上原謙)に相談するが、彼もまた、離婚寸前の妻(久慈あさみ)と昔の恋人で今はパトロンの夫人(高杉早苗)の間で板挟みになっていた。

こんなラブロマンス映画のどこに天っちゃんが出てくる余地があるんだ、もしや第3のフィアンセ候補なのか? とはかない望みまで持ちつつ(そもそもクレジットで「天茂」となっているあたりから存在の希薄さが出ているとはいえ)1時間30分ほど見進めてみると、紀代子と喧嘩別れしかけている大槻の元へ「先生、文化賞受賞おめでとうございまーす!」云々とうわずった声でわらわらと部屋へ駆け込んでくる詰襟姿の大学生・その1(計3人)として登場。どうやら大槻のゼミ生らしい。誕生日前の22才だから学生姿でもおかしくはないが、老け顔(やつれ顔?)のせいでなんか違うんだよなあ感がそこはかと漂っている役柄ではあった。

*学生クンの出番はこれでおしまい。ストーリーの方は、久慈さんと山内さんが実は知り合いで、ってな唐突な展開を除くと、波乱はあれど予定調和な“二兎(この場合は三兎)を追う者、一兎をも得ず”的な結末を迎えていた(大槻さんはまだ脈アリかもだが)。

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| 映画::新東宝 | 11:15 PM | comments (x) | trackback (x) |
『大東亜戦争と国際裁判』
『大東亜戦争と国際裁判』(1959年・S34)

前半は太平洋戦争のダイジェスト、そして後半は東京裁判の全貌と東条英機(嵐寛寿郎)らの処刑までを描いた作品。例のごとく淡々と流れてはいくものの、連合国側の検事が見るからにイヤミな感じで、アラカンさんはいつも通り説得力に満ち溢れていたりするせいで、理不尽な法廷だったんだなあと心底思ってしまう展開になっていた。絞首刑執行のシーンが胸に重苦しく残る。

さて天っちゃんの役柄はクレジット(4順目)によれば戦艦大和・副長。昭和20年4月、特攻作戦に赴く途中の艦上が映るシーン(本編開始約20分後)に初登場するのだが、副長にしてはなんだか隅に追いやられており画面右端)、アップになっても(画像)激戦地で虫喰ってた一兵士(『潜水艦ろ号未だ浮上せず』)とたいして変わらないような風貌であった。

*この後、一言のセリフも貰えないまま大和はあっけなく撃沈されてしまう。しかし実は大和の副長(能村次郎氏)は生き残っておられ、新東宝の『戦艦大和』の教導もしてらしたそうである。戦争映画での死亡率は意外に低い天っちゃんだ。

*東京裁判シーンなど、基本はカラーだが、太平洋戦争のシーンはすべてモノクロ。

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『明治天皇と日露大戦争』
『明治天皇と日露大戦争』(1957年・S32)

斜陽の会社を(一時的に)救った、初のアラカン天皇物にして大ヒット作。開戦からバルチック艦隊壊滅までの道のりが明治天皇(嵐寛寿郎)を軸にしたドキュメンタリー・タッチで描かれており、悲劇的要素が強い史実を、お涙頂戴ドラマに偏りすぎることなく淡々と映像化しているあたりにリアルさが感じられた。

前回見た日清戦争(『天皇・皇后と日清戦争』←製作年は1年後)同様、宇津井健は海で豪快に、高島忠夫は死亡フラグを立てまくりながら陸で戦死、丹波哲郎はどこかエラそうな海軍将校、細川俊夫はアラカン天皇の忠実な侍従長だったのだが、下関会議の邪魔をしたもみあげ狙撃犯(=天っちゃん)はというと、開始5分ほどで両腕を大きく広げて(長い指先がステキ)「二千年の歴史を守れー!」などと屋外で群集をアジっている背広姿の代議士センセイ(やはり明治なロングもみあげ&お髭付き)のひとりであった。出番がなかなか回ってこないのも困るが、2時間あまりの超大作でこんなに速攻で出てこられても後を見る気力が萎えるので考えモノである。

*代議士センセイが出席していそうな国民大会の様子が途中に何度も挿入されているが、壇上に座っていそうでいないあたりがもどかしかった(それにしても、ものすごい人数が画面にあふれている映画だ!)

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| 映画::新東宝 | 10:55 PM | comments (x) | trackback (x) |
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