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『青春ジャズ娘』
『青春ジャズ娘』(1953年・S43)

ジャズ全盛の時代。大学対抗コンテストで見事優勝した城南大学のジャズバンド「シックス・メロディアンズ」は喜びに沸く一方、ドラマー・青木(フランキー堺)らの引き抜き問題が浮上し、分裂の危機が訪れていた。リーダー格のトランペッター・後藤春彦(片山明彦)も代議士のお父ちゃんの反対を受けながら、なんとかメンバーたちを(というより青木を)引き留めようと奔走する。

青木を引き抜いたのは悪徳ブローカー・山崎(三島雅夫)とその部下の安木(大泉滉)。新聞記者の三上(水島道太郎)や恋人でボーカルの俊子(新倉美子)、そして優勝時の審査員だった江利チエミ(本人役)らの協力により、紆余曲折の後に再び集うことができた6人は、著名ミュージシャンたちとの共演を見事に果たすのだった。

もしかしたらこの映画が初クレジット作かもしれない22歳の天っちゃんはシックス・メロディアンズのピアノマン・石川。片山明彦・フランキー堺・高島忠夫・小笠原弘・島津猛(君島靖二ではなく)といったメンバー中、実年齢が最年少なことも手伝ってか、実に物静かで押しの弱そうな青年だった(際立った台詞は「ハイ」ひとつ)。「青木はどこなんだ」「青木は大丈夫かなあ」など、青木ばっかり気にしているメンバーだが、こっちはさりげなく画面から消えているメロディアン・ミニ(失礼)が心配で仕方がなかった(場末のキャバレーでピアノ弾きになっていた模様)。

【少ない見せ場をキャプチャー】
楽屋でイメージトレーニング(後ろはボン・高島)
コンテストで演奏中(けっこうノリノリ)
・また集まるぜ、と小笠原さん(右)から伝言を受けたところ(この目つきがいい)。そのあとピアノ弾きながら笑顔でOKサインを出す(さわやか系)

*「高英男のシャンソンうまかったわ〜」「東京キューバン・ボーイズ観にいったわ〜」「トニー谷の真似して学校でウケたわ〜」と当時の青春ジャズ娘(=母)に見せると非常に喜んでいた。新東宝の映画でこんなにウケたのはこれが初めてだ(別の意味でウケていたのは『婦系図より 湯島に散る花』だったが) ちなみに天っちゃんに関しては、(痩せすぎてて)服に負けてるどころか椅子にも負けてはると身も蓋もないコメントを残してくれた。

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| 映画::新東宝 | 11:45 PM | comments (x) | trackback (x) |
『殺すまで追え 新宿25時』
『殺すまで追え 新宿25時』(1969年・S44:松竹)

(シネマアートン下北沢にて鑑賞)

水も滴るいい男(←OPから文字通り雨に濡れての張り込み中)、新宿署の桧健作(天知茂)は徹夜明けの空に銃声を聞いた。先輩刑事の安西が拳銃自殺を図ったのだ。未亡人の玲子(原知佐子)の証言や周囲の状況から自殺に間違いないと思われたが、桧は几帳面な安西が遺書も残さずに死ぬはずがない!犯罪の匂いがする!とひとり眉間を険しくして主張、上司の坂上課長(高野真二)と対立する。やがてその一本気な正義感が仇となり、ある朝車に仕掛けられた爆弾で妻を失ってしまう。

自分の手で犯人を殺すことで頭がいっぱいの桧は刑事を辞め、同僚の捜査に割り込んで「生ぬるいぞ!」と会田@非ライばりのバイオレンス(元)刑事ぶりをみせるのだが、いつも惜しいところで犯人サイドに先回りされ証人を消されてしまい、真相までなかなか辿りつけない。それでもようやく大滝(佐藤允)という新宿界隈の顔役を突き止める。

一方、大滝の愛人でクラブのナンバー2歌手(ナンバー1は青江三奈)のさとみ(香山美子)は桧の猪突猛進ぶりにクラッときたらしく、部屋におしかけた挙句に彼を押し倒すのだが、「奴らのものには一切触れたくないんだ」と拒絶される。その潔癖さに完全に参ってしまった彼女は、うっかり大滝の前で桧を贔屓、ジェラシーに燃えた大滝に煮え湯を浴びせられる羽目に。おまけにさとみは桧の元に逃げこんだため、大滝は桧の娘・ジュン(仕事ばかりで遊んでくれない嘘つきのパパが大嫌い)を人質にとり、交換条件としてこれからお前は記憶喪失になれと迫る。

カーチェイスされる桧! 眉剃りヒットマン・天童(でもポスターみたく上半身は脱いでなくて残念:川津祐介)の一発で車は爆発炎上!だが桧は服をちょっと焦がしただけで無事だった!そして砂浜でスローな肉弾戦を繰り広げるふたり! …という新東宝&美女シリーズテイストのアクションに眩暈がしつつも話はクライマックスに突入。

さとみの目撃情報から、坂上課長が大滝とつるんでいることを桧は知った。さらに安西未亡人が遺書を隠して利を貪っていたことに怒り沸騰の彼は、割れた(割った)ビン片手に彼女が泣いて許しを請うまで物凄い形相で脅し、遺書を隠した貸し金庫の鍵をもぎ取った。

岩場でライフルを構える大滝に丸腰で対峙する桧。「俺はお前に惚れたらしい。どうだ一緒に働かんか」とリクルートをすすめる大滝(先刻のジェラシーの出所はそっちか!と思わず邪推しかけた)を鼻であしらい、ライフルの弾はいつか無くなる、それまで俺は死なん!と逃げ回る桧だったが、回り込まれて大ピンチ。とそのとき、桧を追ってきたさとみのライフルが火を噴き、大滝を倒した。だが瀕死の大滝に撃ち返され、さとみは桧の腕の中で死んでいく。またまた怒り沸騰、恐らく天っちゃん史上最強の部類に入る殺気立った顔でさとみのライフルを構えて大滝を睨みつける桧だったが、引き金を引くまでもなく、大滝は動かなくなった。

応援が駆けつけ、救い出されたジュンを抱きしめた桧は(ところどころブツ切れ部分があるのでよくわからないが)今までの熱が冷めたように「いったい何人を殺してしまったのだろう……」と遠い目をするのだった。

*「一匹狼」や「夜の主役」など、もっともスマートでカッコいい時代のテレビ作品がほとんど見られない中、その流れを汲んでいるであろう天っちゃんの男前ぶりが存分に堪能できる作品。映ればいつも正面アップ、という映画ではめったに拝めない至福が味わえる。(やさぐれていても組織の一員なので)行動に限界がある会田よりもアグレッシブ、一方で私生活は理解のある奥さんと娘に囲まれ充実している(いた)桧健作。とにかく、怒らせたら彼の右に出るものはいないだろう。

*ただ、途中までかなりハードな展開だったのに、天童との対決シーンくらいから「いや、それはナイから」と突っ込みたくなるいつものノリが飛び出してくるのと(脚本のひとりは宮川一郎さんだしなあ)、新聞記事などで散々「フォール寸前の天知茂」だのなんだのと、二人の美女相手にラブシーンをこなしたとあるその場面がひとつもなかった(さとみに押し倒されるシーンは、コーデュロイのジャケット着たままだし)のがちょっとばかり期待外れ。眼力で大量殺戮、そのくせ行いは清廉潔白、というあたりが天っちゃんキャラらしいといえばらしいとはいえ、ひと華咲かせるには押しが足りなかったのかもしれない(私は好きだが)

*桧の同僚で家族ぐるみの付き合いをしているらしい杉江刑事に、これが映画デビューの広川太一郎さん。声に聞きほれた(合掌)。そのほか、名無しだけれど桧や杉江刑事に密着してる刑事役に北町嘉朗(史朗)さん。

*原作はウィリアム・マッギヴァーンの「ビッグ・ヒート」。1953年にはグレン・フォード、リー・マービン出演の映画も製作されている(邦題は「復讐は俺に任せろ」)

*音楽はあの美女シリーズの鏑木創さん。Jazzyで映像よりもビートが利いて洗練されている雰囲気(←失礼)

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| 映画::松竹・他 | 01:25 PM | comments (x) | trackback (x) |
『白線秘密地帯』
『白線秘密地帯』(1958年・S33)

トルコ温泉のナンバー1・みどりが客に絞殺され、その客も次の日射殺体で発見された。うだるような暑さの中、田代(宇津井健)ら警察の必死の捜査により、モグリの売春行為が目的の「SSS」と称する秘密会員組織の実態が浮かび上がってくる・・・!

開襟シャツでドロと汗にまみれてアクションを繰り広げる宇津井さんを始め、トルコ嬢のひとり・トミ役の三原葉子ねえさんも屋外での激しいキャットファイト付きという、暑い最中にみんな汗だらだらで頑張っている姿が印象的な映画なのだが、夏物アイテムがおよそ似合わない天っちゃんはというと、地下深くの部屋で背広をかっちり着込んでアンニュイにくすぶっている腺病質な支配人・久保木役。

「SSS」組織の新宿の拠点であるバー・ファンタジアを任されている久保木は、玉ころがしの政子(荒川さつき)が連れてきたウブな娘たちに因果を含める(=強引に手をつけちゃう)役目を担っており、初めは激しく抵抗していた娘さんたちがみる間に彼にイチコロになってしまうテクの持ち主なのだそうだが(生憎そこは映らない)、どうやら心と身体が相当参っているらしく「だから女ってヤツは嫌いなんだ」とニヒルに吐き捨てる男である。

やがてサツの手入れがあり、いきなり起こる銃撃戦。「マスター、頼むから(支配人室に)入れてくれ、お願いだ!」弾を撃ちつくして喚き続ける手下をあっさり見捨たニヒリスト久保木(男ってヤツも嫌いらしい)は、隠し持っていた拳銃をこめかみに当て、組織の掟(多分)を自ら実践してのける。メインストーリーと全然関係のないところで(故に宇津井氏や葉子ねえさんとの絡みも全くなし)いつもながら強烈なオーラを放っての幕引きであった。

*「白線」の読みは「ばいせん(ぱいせん)」かと思ったらDVDケースによれば「はくせん」で良いらしい

*長らく『火線地帯』DVDのジャケットだった(今度のBOXセットでも「火線・・・」の内側に小さく載っていた)写真は、実はこの映画の1シーン(こんな感じ

*拳銃の隠し場所はこんなところ。ゴルフなんかするようには見えなかったけど。

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| 映画::新東宝 | 11:44 PM | comments (x) | trackback (x) |
『女体渦巻島』
『女体渦巻島』(1960年・S35)

闇取引が渦巻く東洋のカサブランカ・対馬に、ひとりの男が復讐に燃えた瞳で降り立った。「俺はあの男を殺すためにここへ来たんだ・・・!」彼・大神信彦(これがデビュー作:吉田輝雄)はとある組織の凄腕ガンマン(ただし人殺しは嫌い)。恋仲だったはずの同じ組織の真山百合(三原葉子)が、唯一人自分の拳銃を恐れない男(=ボス)の情婦になったと聞きつけ、対馬まで真相を糾しに来たのだった。

百合は組織の拠点でクラブのマダムに居座っており、女達を使っての麻薬密輸に手を染める毎日。何も語らず、ただ殺してくれという彼女に「俺のボスは恥知らずで、恋人は貞操のない女だったというわけか」と冷たい言葉を投げかける信彦だったが、彼女がクスリに冒されていることを知り、更にボスへの憎悪を募らせる。彼は麻薬を使い力ずくで百合を奪ったのだ。密輸情報をサツに流して取引をぶっこわし、双方から命を狙われた信彦を百合は助けた。共に逃げようと約束しあう二人。だが、取引の失敗に業を煮やした彼らの宿敵・陳雲竜(ヒゲ&白手袋でダンディーな天知茂)が、満を持して対馬に乗り込んできた・・・!

女達(万里昌代・星輝美など)を無造作に品定めして外国に売り飛ばす手はずを整えた陳雲竜、「百合のことはどうしてくれる、俺たちのぶち壊された青春は!」とまるで反抗期のウブな若者のような信彦の言葉を鼻であしらう大物ぶりを見せ付ける。話し合いの途中で部下によるドンパチ騒ぎ、そして警察乱入と混乱の中、海岸でサシの勝負(肉弾戦)を繰り広げる信彦と陳。体型差もなんのその、といいたいところだが案の定形成不利になったところで洞窟に逃げ込んだ陳は、追いかけてきた信彦に拳銃を向けた。しかし百合の妨害に遭いカッときて彼女を射殺、悪いヤツはこうでなくっちゃ、といわんばかりの態度を取るのだが、突如聞こえる警察隊の声。

地獄の底からお前を呪ってやるぜ。ひゃはははは〜!」とアブナイ笑い声をあげた(『勝利者の復讐』よりは声低め)陳雲竜は脇道にそれた、と思ったら次のシーンで崖から真っ逆さま。もはや運も尽きたと観念した、というよりは、脇の道から逃げるつもりがうっかりそこは断崖でした、ってな風にもとれるあっけない幕切れだった。

*名前ばかりでなかなか出てこないラスボス陳雲竜だが、初登場は♪月の海辺に寝転んで〜ミイラみたいに寝てしまう〜♪という歌詞も踊りもトラウマになりそうなクラブでのシーン。くねくね踊るうちにトランス状態になった百合の眼前に、そこにいないはずの愛しい信彦の姿、だがそれが瞬時に両手を広げて踊っている(のかどうかはナゾ)な口ひげの男(=陳雲竜)に取って代わるのだ(怪しいのでキャプチャーしてみました

*相変わらず長くキレイな指先なので、拳銃をくるくるっとまわす仕草がカッコいい。

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| 映画::新東宝 | 11:43 PM | comments (x) | trackback (x) |
『駿河遊侠伝 賭場荒し』
『駿河遊侠伝 賭場荒し』(1964年・S39)

若くヤンチャで太っ腹な清水の次郎(後の次郎長大親分:勝新太郎)と弱気な相棒・髪常(大辻伺郎)が、イカサマ博打の腕を頼りに様々な親分衆のショバを渡り歩き、ひとかどの侠客に成長していく姿を描いたシリーズ第一作。

気ままに旅を続ける次郎だったが、気がかりなのは自分が放蕩しているうちに心無い義母らに売られてしまった初恋の人・おとき(藤村志保)の消息。どうやら“苦味走ったイイ男”に身請けされたらしいと知り心穏やかではない。

そんな折、次郎たちは恩義を受けた治助親分(山本礼三郎)から、弟分である三好村の吉左衛門(須賀不二男)の助っ人を頼まれた。吉左衛門夫妻の傲慢な態度に、どうもイケすかねえなあとぼやきつつ殴りこみに出向いたところ諍い相手は留守、出てきた女房はなんとおとき(藤村志保)だった。偶然の出会いに驚くふたり。今の主人はかけがえのないひとだと言うおときに、次郎は自分が来た目的を伝えられなかった。

翌日、そのまま帰路についた次郎たちは峠の茶屋で一服するなで肩の三度笠男を発見、彼こそが吉左衛門の敵でおときの亭主・岩村の七蔵(天知茂)であることを見抜く(やはりなで肩が決め手か?←おい)。彼らの襲撃を覚悟していた七蔵は静かに笠を取り向き合った。俺はこの道の先輩だから先にドスを抜くわけにはいかないと言う七蔵の善人オーラに気圧された次郎たちは彼を伴って治助親分の元へ戻り、悪いのは七蔵のシマに色気を出した吉左衛門だと知る。

次郎が仲裁役をかって出て、吉左衛門と七蔵の手打ちが無事に成立した。次郎と帰る道すがら、自分には過ぎた女房だとおときを褒め「いずれ足を洗って、百姓でもして静かに暮らすつもりなんだ」としんみり語る七蔵。だが手打ちが面白くない吉左衛門の子分達がわらわらとふたりに襲い掛かってきた。なんとか七蔵を逃がそうとする次郎だが、七蔵はここで逃げては男が廃るとばかりに奮戦。やはりさっきの台詞は死亡フラグだったのか!と緊張が走る中、再三の逃げろコールに応じる気になった七蔵は「次郎さん、それじゃあ」とすたこら退却。残された次郎はおときの幸せを願いながら、敵に突進してゆくのだった。

*死んで欲しくなかったとはいえ、あの状況で本当に逃げ出した七蔵さんには意表を突かれた。まあ、残すのが次郎長でカツシンさんだから大丈夫極まりないんだが。それに前年の『破れ傘長庵』の恨みはこれしきでは消えないというものである。

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| 映画::大映with勝新太郎 | 11:42 PM | comments (x) | trackback (x) |
『長脇差忠臣蔵』
『長脇差忠臣蔵』(1962年・S37)

一本気な掛川の次郎吉親分(宇津井健)が、ライバルで十手持ちの藤兵衛(上田吉二郎)と老中・本多備前守(名和宏)にイケズされ首を刎ねられた。まもなく一家は離散、親分の長脇差(ドス)を形見に貰った喜三郎(市川雷蔵)は流浪の身となりながらも密かに復讐の機会を狙う。清水の次郎長親分(島田正吾)や大前田英五郎(勝新太郎)たちのバックアップを得た彼らは、有栖川宮(本郷功次郎)率いる長州軍攻撃のどさくさに紛れて浜松城に潜入、見事に備前守を討ち果たす・・・!

大映オールスターが集う本作での天知茂の役どころは、備前守が治める浜松城の城代家老の息子・小松伊織。備前守の行列を見つめる喜三郎に着目、配下のおのぶ(近藤美恵子)に真意を探らせるシーンで初登場(雷蔵さんに悟られて背後の社からおもむろに出てくるところがカッコいい)、備前守の評判があまり良くないことを冷静に観察していながらも「ご主君命」で奮闘している、いわば吉良側の一学さんのような侍で、クライマックスの“討入り”時には槍を振り回して喜三郎と対峙する(当然やられるわけだが)見せ場もあり、クレジットこそ控えめだったものの、かなりの好位置にいてくれて見ごたえ十分だった。

大映での4作目。たとえ敵サイドであれ“自分の信条に従って生きる男”を真摯に演じる天っちゃんからは、同い年スタア(雷蔵さん・勝新さん・宇津井さん)に負けないオーラが滲み出ていた(と思う)。

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| 映画::大映with市川雷蔵 | 12:01 AM | comments (x) | trackback (x) |
『人形佐七捕物帖 腰元刺青死美人』
『人形佐七捕物帖 腰元刺青死美人』(1958年・S33)

新文芸坐にて鑑賞(同時上映は『人形佐七捕物帖 妖艶六死美人』)。

老齢の殿様が女刺青師・お蝶に命じ、腰元4人の背中にとある刺青を施した。その刺青は江戸城攻略の隠し地図の在り処を示す暗号になっているのだが、殿様はまもなくポックリ、腰元たちはお宿下がりで散り散りに。そして帰宅中に襲われたお蝶は記憶を失ってしまった。なんとしても隠し地図の所在を知りたい家老や正体不明の忍者が暗躍する中、刺青を背に持つ女たちが次々と殺されてゆく。女殺しの下手人は誰か・・・? そして地図はどこに・・・? 貫禄十分の佐七親分が事件の真相に迫る!

goo映画のあらすじを読むと誰が下手人なのかがすぐ分かってしまうものの(おまけに「ニヒル 天知茂」のスチールは本編以上にネタバレ)、沼田曜一・中山昭二・天知茂という普段から善悪の狭間をうろちょろする曲者トリオが競って怪しさを振りまいてくれるので、いったい誰が一番悪いヤツなんだよ!とそれなりにハラハラドキドキが楽しめる作品だった。

ねっとりと元・腰元に近づく家老(沼田曜一)、刺青見たさに忍者装束で押し入って手裏剣投げたりしておきながら「私は決して怪しい者ではない!」と言い張る“宮さま”(中山昭二)の向こうを張って、見るからに腹に一物ありそうな顔でトップを切って登場するのが居候浪人・内海新之丞(天知茂)。襲われた彫師のお蝶さん(日比野恵子)を助ける善人ぶりを冒頭で見せ付けてミスリーディングを誘った彼は、居候先の主人に気に入られてそこの娘(刺青腰元の一人)の婿にと懇願され、本人もちょっと欲が出てきた最中、でも半同棲相手のお滝(彼女も背中に刺青が:山村邦子)が離してくれそうにない、という四谷あたりの伊の字のつく人と良く似た状況にある。

しかし四谷の人よりはるかに色悪な新之丞は、刺青ストーカー事件にかこつけて木は森に隠せ作戦に打って出て、ついでに隠し地図もゲットしちゃおっかなーと欲張ったおかげで佐七親分(若山富三郎)のお縄を頂戴する羽目になるのだった。まったく賢いんだかバカなんだか分からないキャラだとはいえ、2年前(『妖艶六死美人』)は文字通り吹けば飛ぶような存在だった天っちゃんが、まだいくぶん危なっかしいとはいえ最後の大立ち回りを任されるまでに成長していたのは感動だ。ところどころでキーンと冷え切った表情を見せてくれるのも眼福。

*原作は人形佐七捕物帳の「女刺青師」(横溝正史)。彫師の姐さんはすでに病死、隠し地図なんていうロマンチックな話はなくて、屍姦する男やら悋気のあまり人を殺める女やらが出てくる濃厚な展開。いちおう下手人は新之丞さんだが、こちらはクールでも狡賢くもないので、ちょっぴり情けない最期を遂げてしまう人だった。

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| 映画::新東宝 | 11:36 PM | comments (x) | trackback (x) |
『女王蜂』
『女王蜂』(1958年・S33)

「女王蜂」といえば横溝正史、つい“口紅にミステリー”のほうを連想してしまうのだが、こちらはさらに20年も前の新東宝の女侠客シリーズ第1弾。

昔気質の侠客・湊一家のお竜(久保菜穂子)は、寄る年波に勝てぬおとっつぁん・鉄太郎(横山運平)に代わって組を切り盛りしている勝気な姐さん。だが近頃は、ムチムチおねーさんが歌い踊る(アクロバットもやる)クラブ経営などで羽振りの良いハマの新興ヤクザ・真崎組がのさばってきて湊一家はおされ気味。「斬った張ったばかりがヤクザの能じゃねぇ!」が口癖のキレ者組長・真崎(サスペンダー&白スーツでクラブのマスターというよりウエイターのようでもある天知茂)は組同士のいざこざも金で収めようとする男だが、鉄太郎にせっかくの好意(?)を無下にされ眉間に怒りを溜め始めており、かなり不穏な雰囲気である。

そんな中、湊一家のシマである下町マーケットが全焼、おとっつぁんも亡くしたお竜さんはマーケット再興のために金策に走り回った。どこも断られる中、救いの手を差し伸べてくれたかに見えた金融商会は真崎の息がかかった会社。工事をわざと遅らせて返済を滞らせようとする真崎組のいやがらせに負けじと博打で稼ごうとするお竜さんだが、いいところで手入れに遭ったりでめどが立たない。お竜さんを幸せにする自信がなくて逃げるように船乗りになり、ちょうど寄港中だった俊介(中山昭二)は見かねて真崎に談判に出かけ、麻薬密売を条件に前借りした現金を、そっくりそのままお竜さんに手渡した(これで二人のラブラブ度は絶好調)。

俊介の金を真崎に叩き返したお竜さん。だが真崎は利息分が不足しているよと不敵に笑い、彼女をその場で押し倒す。それを知った真崎の女・マキ(三原葉子)が「あんな小娘のどこがいいのヨッ!」と激しくジェラシー、火事の真相(=真崎の差し金)を立ち聞きし監禁されていた踊り子・美沙(城実穂)の逃亡を助けたおかげで、湊一家VS真崎組の全面対決が始まった。

皆に迷惑をかけまいと(といっても既に敵味方ぐちゃぐちゃになってるのだがそれはさておき)お竜さんは真崎に決闘を挑む。波止場でにらみ合う和服の彼女と白トレンチの真崎。「お竜さーん!」突如走ってくる俊介に真崎はちょっと気を取られるが、お竜さんは「余所見してんじゃないよっ!」とやる気まんまんだ(あなたの彼氏でしょうに)。そして・・・。ハジキが得意という真崎の銃が先にお竜さんを捉えたものの、近づいたところをバスッとやられて真崎撃沈。お竜さんは俊介の腕の中で幸せそうに息を引き取った。

あらすじ - goo 映画(結末を含め、かなり本筋と差異あり。ちなみに天っちゃんは「助演」となってるが、クレジットでは3人並んでいた)

*コワモテでいかにも強そうな泉田洋志さんたちを引きつれた頭脳派ヤクザの真崎=天っちゃん。ワルには違いないが、クラブを仕切ったり接待ゴルフに付き合ったり、なんだかマメに働いている姿が印象的だった。一方で実に頼りなかったのが俊介。真崎なんか一発でノシちゃえそうな感じだったのに、あのラストの役に立たなさはどうなんだろう。中山昭二さんだからなのか?それとも名前が「政」じゃないからか?(←女王蜂シリーズの“ヒーロー”はたいてい「○○の政」という名前)

*田口哲(さとし)監督は天っちゃん主演デビュー作『恐怖のカービン銃』のメガホンを取った人でもある。

*新東宝・女王蜂シリーズはこの後『女王蜂の怒り』『女王蜂と大学の竜』『女王蜂の逆襲』と続き、『大学の竜』からヒロインが三原葉子ねえさんにバトンタッチされる。それに伴って天っちゃんも悪人から善人へシフト。・・・そういえば今回の葉子ねえさんは出番が短くて(踊りもなくて)残念だった。

*お竜さんを押し倒した後の真崎くん@クリスマスお仕事バージョンをキャプチャーしてみました(前髪の処理の仕方がナイス)

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| 映画::新東宝 | 11:33 PM | comments (x) | trackback (x) |
『稲妻奉行』
『稲妻奉行』(1958年・S33)

問注所なる手前味噌の取調べ機関を盾に身内を庇い立てる薩摩藩VS南町奉行のバトルは、奉行・坪内駿河守(中村彰)の切腹という事態にまでエスカレート。出張から帰ってきた筆頭与力の大岡忠右衛門(嵐寛寿郎)は、上司の無念を晴らさんと決意を新たにする。おりしも薩摩の名刀・安綱が預け先の相模屋から紛失。薩摩藩の家老・島津頼母(高松政雄)と老中・水野忠信(高田稔)が「安綱が見つからんかったら腹斬れよ」(島津)「見つけたら問注所を廃止しろや」(水野)と一札取り交わしたせいで、島津留守居役の佐藤松太夫(江川宇禮雄)や大岡たちが入り乱れるなか、名刀奪還大レースと相成った。

ところでその騒動の元となる安綱を奪ったのは、薩摩藩ゆかりでも、もちろん町奉行サイドの人間でもなく、金欠のくせにやたらと居丈高な素浪人・秋月典膳(天知茂)。黒白のリバーシブル着物でまんまと町方をかく乱して刀をゲット、ヒモ状態でごろごろしながら、アシがつきそうになると誰彼なしにばっさり斬り捨ててしまう相当な使い手かつ極悪人の典膳(とはいえ、盗んだり斬ったりする肝心の実行シーンがまるでないので想像するしかない)は、刀と引き換えに佐藤松太夫から金を巻き上げようとするのだが、取引の場で松太夫に騙され、手下のヒョットコ面(自分は般若面)と共に逃げ帰る羽目に。しかし台詞の浮つき具合はともかくワルぶりは一枚上手の典膳、渡した刀は偽物。

ところが、ざまあみろと勝ち誇る典膳からちゃっかり本物を持ち去ろうとするヒョットコ。実は彼の正体は鞍馬天狗、じゃなくて大岡忠右衛門だったのである!サシの勝負の末、みね打ちで典膳を倒した大岡様は彼を引きつれ、約束の刻限が迫り切腹寸前の水野の元へ急ぎはせ参じるのだった(めでたしめでたし)。

*政情などまるで関係ない、金がすべての悪人役に体当たりしている(のが丸分かりなのがほほえましい)天っちゃん。台詞や動きはまだ硬いが、ふとした折にみせるクール&鬼畜な表情がブレイクを予感させてくれる。

*物語の鍵を握る重要な役柄なうえ、アラカンさんとの(恐らく初めての?)1対1での対決シーンがあって、さぞ嬉しかったに違いない(なんだかそこだけ、ワルというより普通に真面目な顔で刀を振り回していたような気がする)。

*そうそう、和田桂之助さんと宇治みさ子さんも善人カップリングで出てました(ついでで失礼)

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| 映画::新東宝 | 11:28 PM | comments (x) | trackback (x) |
『黒幕』
『黒幕』(1966年・S41:松竹)

おそらく35歳にして初めての、そしてもうあと2~3本ほどしかない単独主演映画をラピュタ阿佐ヶ谷にて鑑賞。(新東宝はアラカンさん以外は主演級は複数クレジットだし、前年の『孤独の賭け』はトメ位置だった)。

東京・赤玉製薬の社長直属の特殊工作員(=プロパー)、利根五郎(天知茂)。他社の製品を倉庫から盗ませ(報酬をケチって喧嘩沙汰になったりしながらも)安く売り飛ばして蹴落としを図る彼は、かつてクラブで用心棒をしていたらしいがバンドをバックにムード歌謡も披露できる、履歴書のない男。ヌケ作の後輩(坂上栄一)や敵か味方かよく分からない“不思議な女(同僚)”・静香(野川由美子)に翻弄されつつ、ライバル社の精力剤(「王精」)をちゃっかり愛飲するような社長にも一宿一飯の恩義とやらでこまめに尽くし、「王精の秘密を探ってこい」「九州で(秘密の材料の)ユリを取ってこい」だのといった厄介払いめいた指令に対しても黙って従う義理堅い奴である。

そんな人柄と切れるルックスに惹かれてかどうか、会社の受付嬢やら事務員さん、オツムの弱い後妻さん(扇町京子)、それから同性の鴨井(@犬シリーズ)チックな運び屋・三次(ハンサムタワーズ:高宮敬二)にまでモテモテの利根。そして、ライバル社の社長(原作者:佐賀潜さん)の囲い者である静香もまた、彼への愛に目覚めてゆくのだった。

あらすじは下記リンクに譲るとして(そもそも天っちゃんが主演というだけで筋なんてどうでもよくなってしまうのがファンの哀しさである)、殴る・蹴る・迫られる・迫る・ヤる・車と格闘する・歌う・ドラム缶に詰められる・などなど、旬ともいえる時期の天知茂プロモーション映像がこれでもかと堪能できるお得な作品であることは間違いない。

ただ、いろんな姿を一度に見られるせいで、意外にセックスアピールに欠ける(恋愛下手である)事実が図らずも露呈。野川さんとのラブシーンはたしかに端麗だったものの、佐賀潜さんに揉まれているときの彼女の方がエロティックだし、扇町さんを愛撫する年長の旦那・殿山泰司さんのテクの巧みさと比べると「兄さん(=利根)、ヨワおますなあ」と扇町さんに言われてしまうのもむべなるかな、であった(“王精”飲まなきゃダメというわけか?)。本人はラブシーンに大いにテレているそうで(「おしゃべりジャーナル」参照)、そのテレが微妙なぎこちなさを生んでいるかにみえた。

ラブシーンよりもむしろ、ドラム缶詰めの直前、後ろ手に縛られ床に転がされながら片膝を立ててキッと相手を睨む表情に強烈な色気を発散させていた天っちゃんは、お色気メインの作品であれなんであれ、常にベストは尽くしていた。その姿は和製ジェームズ・ボンドというよりは、子供向けの特撮ヒーローに近いものがある。スタッフがそれを望んでいたかどうかは別として。

*佐賀潜さんの原作(シリーズになっている模様)はいったいどんな感じなのか、近々読んでみたい。

*そもそも自分は上半身すら脱がないのも色気の無さを助長していたと思う。おっさんになってからの方がしょっちゅう脱いでるってどうなのか。

*殿山さんの息子で「おとうちゃ~ん」とフニャけていたのが左とん平さん。天っちゃんとの絡みはないが、純朴そうな(!)警官を師匠に良く似た真面目っぷりで演じていた宮口二郎さんとのやり取りはあって、のちの右田&坂井両刑事@非ライを想像すると楽しい。

*クレジット時にバックコーラスつきでカッコよく流れる主題歌「影」はファーストLP「昭和ブルース」でも聴ける曲だが、アレンジがかなり違っていた(映画の方が“じっくり聴かせます”系)

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| 映画::松竹・他 | 01:21 PM | comments (x) | trackback (x) |
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