2006,07,09, Sunday
『賞金首 一瞬八人斬り』(1972年・S47)
消えた幕府の御用金を狙う浪人、と見せかけて実は尾張藩の隠し目付の頭領・薊(=あざみ)弥十郎(天知茂)。メキシコあたりの剛毅な用心棒に見えなくもない主人公(実は医者)・錣(=しころ)市兵衛(若山富三郎)とは出会ったときから張り合っていて、色々対照的な二人の言動も面白い(ホット vs クール、でっかい vs ちっちゃいとか←おい)『六死美人』から16年、おおきくなったものだ。 この弥十郎さん、颯爽と馬で登場するなり、お尋ね者の首をトマホーク片手投げでチョッキンして周囲をびびらせる。金の在り処を知る男・夜叉狼の妹だというので狙われた娘・飛び天童(←兄も兄なら妹も妹な名前)をさりげなく救ってやり、市兵衛さんが彼女の兄貴を牢から連れ出したのをちゃっかり横取りしようと計画するも、失敗すると平気で撃ち殺したり(しかも妹に「アイツ(=市兵衛)は血も涙もない奴だ、お前の兄貴を殺しちまったぜ」とか言っちゃうんだなこれが。そりゃアンタだよ!)、挙句には今まで連れ立っていた飛び天童を荒くれ男の渦に投げ込み、その悲鳴を耳にしても顔色一つ変えなかったり、悪人メイクをしているわけではないのに心底得たいの知れない悪人に見えてしまう、まさに「色悪(いろあく)」の権化。善人も悪人も当たり前のようにこなしていて、観ている方もそんな彼に違和感がないというのは凄いことだなあと思う(そりゃ善人のときでも「わあ怖い顔だよ天っちゃん」とは突っ込んでいるけど) ただ、アダルト一般の扱いはすこぶる悪い彼だが、子供に対してはほんの少しだけ情が動く(というか地が出る?)とみえて、子供の命と引き換えに金持って来い!などと非情なことを口走りつつ、相手が必ず来ることを見越して言ってるし、「ガキの命など、どうでもいい」といいながら子供をなんとなく優しく下ろしてあげてるあたりも見どころのひとつだ。 なんだかんだ言っても日食時にばっさりやられちゃう弥十郎(だって若山トミーさんってば、あの体躯でトンボ切るんだもんな!)だが、彼が一番のワルではなかったことが後から判明、東映らしい不条理な世界が繰り広げられてエンドマークと相成った。(何も子供まで殺さなくてもいいじゃないか>内藤武敏) *この作品を最後に、天っちゃんはしばらく映画から遠ざかる(次の出演作は1979年の『白昼の死角』)。たぶんテレビが忙しくなったんだろう。
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2006,07,03, Monday
『東海道四谷怪談』(1959年・S34)
ワルで、色っぽくて、苦しみ悶える伊右衛門さま。天知茂の真骨頂。 伊右衛門視点で観てしまうからかもしれないが、実は彼、根っからの極悪人ではない。お岩さんの父親を斬ったのだって、一度は交わした婚姻の約束をオマエは浪人だからと反故にされ、面と向かって散々バカにされたせいで衝動的にバッサリやっちゃったのだし(「松の廊下」風)、江戸でお梅さんと出会うきっかけはお岩さんの粘着質な愚痴のせいだし(まあ彼女の言い分は尤もなのだが、伊右衛門でなくても正直「くどい!」と突っ込みたくなる)、殺人計画はすべて直助主導だし。 伊右衛門という男の罪はただひとつ、いざというときの優柔不断さに尽きる。その心の揺れにつけこんだのが直助であり、(亡霊となった)お岩さんだったのではないか。伊右衛門の後半の狂乱は、自分自身の心の闇との闘いとも受け取れ、半・自決と「お岩、許せ」でようやく魂の平安を得たと解釈してもいいのかもしれない(その割には白目向いて死んでたけど)。 とにかく、自分で伊右衛門役に立候補しただけあって、天っちゃんの揺れる演技(前半クールに、後半アツアツ)は極上だと思う。 *1972年にTVでも「四谷怪談」をやっているそうだが、若さ故の狂気が感じられた28歳時と比べて、40過ぎた彼がどういう方向でもう一度伊右衛門を演じたのか気になるところだ *(2008.9.1追記)TV版を見てみた。
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2006,06,03, Saturday
『東支那海の女傑』(1959年・S34)
終戦直後の中国。ダイヤモンドを極秘裏に日本へ持ち帰る任務を帯びた、映画開始10分で3度も着替えた(こじゃれたスーツ・ナゾの中国人風・白の軍服)オシャレな横山大尉(天知茂)は、東シナ海を牛耳る海賊のバックアップを得て日本へ渡ろうとする。海賊の頭目は、以前(こじゃれたスーツのときに)手助けをしてやり、また(ナゾの中国人風のときに)命を救ってもらったことのある梨花(高倉みゆき)だった・・・。 海賊同士の確執、部下の裏切り、中国海軍の追撃と、いろいろ揃った豪勢な展開にも関わらず、いまひとつノリが悪いようにみえたのは、横山大尉の見せ場が初盤のコスプレと海賊との殴り合い以外ほとんど無かったせいかもしれない。彼だけが海賊船に乗り込んで極秘行動をするのかと思いきや、艦長以下乗組員がぞろぞろいる軍艦ごと(軍艦は海賊への貢物だが)日本へ向かうせいで、クライマックスの美味しいシーンを艦長に攫われてしまったし、また行動の動機がその場でころころ変わったりするので(キミはダイヤ運びの任務が最優先じゃないのか!と突っ込むこと数回)、外見ほどは魅力ある人物とは言いがたかった。ミリタリー職のせいで気合が入ったセリフ回しなどは良かったんだけどなあ。まあ、タイトル通り「主役」は女海賊の梨花さんだから、刺身のツマでも仕方がないんだろう。 おまけに横山大尉、名前が付けられていないのか、色っぽいシーンで「梨花・・・!」と抱き寄せたのはいいが「横山!」と呼び捨てされてるのがなんだか悲しかった。せめてサン付けで呼んでくれなきゃ、怒るでしかし!(←横山違い) *美味しいところを持っていった艦長・田木少佐役はgoo映画のキャストでは沼田曜一さんになっているが、別人ではないだろうか?(クレジットに沼田さんの名前は無かったしなあ) *背が高いので東京タワーにちなんで名づけられたという、いわゆる新東宝「ハンサム・タワーズ」(吉田輝雄、高宮敬二、寺島達夫、菅原文太)のひとり、寺島さんのデビュー作(横山大尉の部下役)。文太さんもデビュー作(『女王蜂の怒り』)は天っちゃんの部下だったし、なんか嫌味だな、タワーズ。
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2006,04,23, Sunday
『人形佐七捕物帖 妖艶六死美人』(1956年・S31)
江戸で評判の六人の美女、人呼んで「風流六歌仙」たちが、何者かによって次々に殺されていく。その中のひとり、一番気立ての優しい春太夫(若杉嘉津子:後のお岩さん@『東海道四谷怪談』)と恋仲なのが素浪人・浅香啓之助(天知茂)。 『着流し姿に身をやつしてはいるが、いずれはどこかの若様か』(人物関係図より)とのことだが、どちらかというと若様を殺して成りすましている、いずれはどこかの小悪党かといった風情が漂っている人物である(しかしすこぶる善人だ)。 春太夫の用心棒をかって出ている啓之助、襲い掛かってきた黒装束の集団とやり合い、後を付けて捕らえられるが、同じく窮地に陥りかけた佐七親分(若山富三郎)を助けて活躍する場面もあってなかなかおいしい役どころだった。・・・しかしながら台詞は軽いわ殺陣は軽いわ胡散臭いわで、初々しい、というよりもむしろ貧相という言葉が非常に良く似合う天っちゃん25歳。たった3つくらいしか違わない富三郎さんの貫禄と比べたらちょっと可哀相なくらいだ。昭和31年の作品を見るのはこれが初めてなのだが、『恐怖のカービン銃』(S29)で魅せた「色気」を、自分も(そして周囲も)うまく使いこなせていない感じがした。たぶん、今回は善人役だったからなのかもしれない。中川信夫監督に魅力を引き出してもらうには、あともう2年ほど熟成しなければならないようだ。 *風流六歌仙のひとりにむっちり色っぽい三原葉子ねえさん。 *(2008.3.1追記)久々に見たがやっぱり天っちゃんは実に儚そうな用心棒だった。あと、ネーミングからして元気いっぱいな渦潮太郎(=大ボス:市川小太夫)のケレン味あふれる悪者ぶりにウケた。小太夫さんといえば、「大忠臣蔵」で兄の中車さんにかわって吉良殿を演じて天っちゃん(=一学さん)に守ってもらった人と同一人物なのだろうか? 変われば変わるものだ!←どっちも
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2006,04,16, Sunday
『狼男とサムライ』(1984年・S59)
![]() 製作時の金銭問題のゴタゴタでストレスが溜まった故に寿命を縮めたのではとさえ噂されている問題の遺作映画(日本未公開)を、ようやく鑑賞。 時は16世紀。何世代も続く呪わしい運命に苦悩する狼男・バルデマル(ポール・ナッチィ)を救えるただひとりの賢人として世界に名が知られている医者・貴庵(=きあん)が天知茂。彼だけを頼りに遠くジパングまで来たバルデマルを、貴庵は果たして救えるのか・・・? ものすごくB級かつトホホなものを想像していたら、案外、いやむしろ天っちゃん的にはかなり見どころが多かった。新東宝時代からそうだが、天知茂という人はたとえどんな役であろうと大真面目に取り組み、あくまで限られた状況の中で最大限に自分を生かそうとする。「オレがオレが」の唯我独尊になる一歩手前できちんと枠に収まる、その職人芸がここでも堪能できた。 医者風、というより佐々木小次郎風のりりしい若サマ鬘で、アップになるとソフトフォーカスがかかって美しさに拍車がかかる(←笑ってはいけない)、医者としては正直いって頼りないが剣の腕はすこぶる立つ貴庵さん。詳しいあらすじは下記サイトの的を得たレビューにお任せすることにして、見どころシーンを列挙してみると: *素顔で睨み勝ち* 夜の京都で殺戮の限りを尽くしていたバルデマル(満月で狼男に変身中)と初顔合わせのシーン。口から血を滴らせ、野獣と化したバル氏と睨みあう貴庵さん。やがてすごすごと引き下がったのは、狼男の方だった。そりゃこんな目つきでにらまれたら怖いわな。ちなみにバル氏は別の場面で虎と闘い勝っていたので、虎<狼男<天知茂という強弱関係が成り立っているのがよおく分かった。 *温泉でどっきり* 町の人殺しまくりのバル氏に、まあここはひとつ温泉にでもと呑気に勧めて自分もちゃっかり入ってる貴庵さんに、刺客(くの一その他)が襲い掛かる。ここは素面のバル氏&かいがいしく世話をしている貴庵の妹・茜の二人を襲うのがスジではないのか? と疑問が沸くが、くの一たちにだって好みがあるんだろう。お腹にサラシを巻いた褌姿(いわゆる六尺褌というやつでせうか)で際どい立ち回りを披露する白い素肌の美女・・・もとい貴庵さんには、正直クラクラだ。 *きあんは 銀の刀を てにいれた!* 調合した薬が効かないため、バル氏の病を治すことをあっさり諦めた切り替えの早い貴庵さん、古文書に載っていた「狼男をやっつける方法(=彼を愛する者が銀の刀で胸を貫く)」に基づき、銀の刀探しに化け物屋敷へ白馬に乗ってお出かけ(キラキラのまさに佐々木小次郎ルックで)。襲いくるゾンビやら悪霊やらアマゾネスやら土蜘蛛やらを「なんでこんなバケモノたちと俺が」なんて怨み言(←想像)は微塵も顔に出さず、華麗な殺陣でざっくり打ち倒してゆくさまは、もはや贔屓目でしか物が言えないが実に見事で美しい。ただ、カメラが一定の位置に据えられているらしく、アクションが嵩じてくるとすぐに後ろ向きのアングルになってしまうことが多くて、なるほどこれで天っちゃんがキレたのかもしれないと思った(「Memoirs of a Wolfman」参照)。 その他、足場の悪い河原での一騎打ちやら切腹の介錯人やら、やたらめったら目立っているうちにクライマックス。銀の刀は私が使います、と志願する妹を制止し、「私にはこの銀の刀と強い精神力があるから大丈夫だ」と、白地に南無妙法蓮華経の江戸の牙スタイルで最後の対決に臨む貴庵さん。さっき読んだ古文書の内容をちゃんと理解してるのかどうか疑問である。 もっとも、あわや!というところで現れてくれた茜さんがバルデマルを刀で貫き(それがスジだろう)、討たれたバル氏はとても穏やかな顔であの世へ旅立った。しかし、バルの爪で肩を裂かれてた貴庵さん(狼男に傷つけられたら呪いが移るとかいってなかったか?)、どうやらバルの子を身籠ったらしく、お腹を押さえて妖しげな表情で満月をみつめる茜さん(呪い継承?)の兄妹にこれから何が起こるのかを想像するとうっすらホラーな終わり方といえた。まあ、「狼男のサムライ」なんていう続編が作られなかったのは幸いだろう。 意外と楽しめたものの、フィルムの完成を待たずして天っちゃんが急逝したせいで、貴庵の声が別人の吹き替えなことだけが残念だ。といっても、声を当てているのは彼を良く知る弟子の宮口二朗さん(ゾル大佐@仮面ライダー)なので雰囲気は合っているのだが、あの顔にはやはり、あの押し殺したような低音ボイスでなくちゃ物足りない。 追記:歌は唄っていなかった。それじゃ「映画のために作った歌」@「Memoirs of a Wolfman」というのは一体・・・。 *もしかして、「ふたりづれ」(「江戸の牙」のエンディング)かなにかを唄って、その説明で「牙」とか言ったからナッチィ氏サイドが勝手に狼男を連想したのか? *(2007.1.28追記: 「完全版」あり。そこではがっちり唄ってます)
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2006,04,08, Saturday
『侠客道』(1967年・S42)
石田組と城西会傘下の寺光組との小競り合いが続いている大阪に、東京からやってきた凄腕検事・中上啓介(天知茂)。実は彼、今は石田組の若頭になっている伊吹(安藤昇)と共に組に拾われ世話になっていたことがあるのだが、12年前、組長の娘と恋仲になったことでカタギにも関わらず小指を落とされてしまい(回想シーン有り。モノクロ・無音ながら、むっちゃ痛そう!)、その私怨が暴力団追放の原動力となっている、暗い翳を引きずる非情の男である。 久々に会えて懐かしがる組長(石山健二郎:もろに気のいい大阪のおっちゃん風)を「暴力団は罪人と同じだ、違いますか!」 とドスのきいた低音で冷たくあしらい(「その暴力団のメシ喰うて大学でられたんとちゃうんか!」とつっこまれてもめげる彼ではない)、予科練で同期だった親友の伊吹をも避け続ける中上検事。心痛する妻(=組長の娘:小畑絹子)が「担当を代わってもらったら・・・」と勧めるが、「ヤクザのくだらなさを知っている私でなければ(駄目なんだ)・・・!」と欠けた小指を見つめながら一層瞳に暗い情念を燃やしている。周囲には恩知らずと思われているけれど、検察側が極道と関係していたらマズイもんなあ、普通は。 中上の偏った締め付けのせいかどうか、組長は寺光(渡辺文雄)の謀略で惨殺、遺言により解散した石田組の面々と地元の人々は、のさばってきた寺光組の横暴に窮地に立たされた。組長の死が、子分・北見(小池朝雄)の裏切りによるものと知った伊吹は、一度は捨てた代紋を背負い、北見と寺光の兄弟固めの盃の場に乗り込む。そして中上もまた、事なかれ主義の上司の制止を振り切って現場に急行する・・・。 石田組の若頭・伊吹さんメインの任侠映画。安藤氏はかつてホンモノのそのスジの人だっただけあって、静かな佇まいの中にも(台詞回しもそう上手くないにも関わらず)一味違う迫力が漂っていた。 ただ天っちゃんも負けていない。同じ土俵に立っていたなら多少は分が悪かったかもしれないが、対極の立場にいるが故に個性が強烈に光り、屈折しつつも内に熱い心を宿した男・中上が大変魅力的な人物に仕上がっていた。満員のクラブで他の客そっちのけで大喧嘩&熱く語るシーンや、ラストの和解シーン等、二人の絡みはかなり見ごたえあり(身長的にも小粒さん同士でピッタリ←双方に失礼)。
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2006,04,03, Monday
『女帝』(1983年・S58:にっかつ)
当時世間を騒がせていた三越事件の再現ドラマで、七越百貨店の営業部長から社長に上り詰める山田(大木実)と、愛人の"女帝"・みき(黛ジュン)の栄光と挫折がロマンポルノ風に描かれていた。 前から目をつけていた老舗和菓子屋の女社長・桂子(新藤恵美)に泣きつかれてこれ幸いな山田氏が、和菓子屋の得意先である名古屋の百貨店社長に談判しにいく場面で登場するのが、百貨店に融資している中部銀行頭取・杉浦康義(天知茂)だ。 天下の七越さんが間に入ってくださるならもう少し融資させていただきますよハッハッハと葉巻をスパスパ吸いながら(眉根の皺ナッシング)楽しげに座敷で山田氏らと語らっている杉浦頭取。なるほど今夜は徹底的に宴会ですかそうですか・・・って、出番それだけですか頭取! 大木氏や川地民夫氏(=山田氏の懐刀・青野)もなんだか嬉しそうにハアハアしてた(させてた)のに、どうせなら気兼ねせずに(って誰にだよ)やることやっちゃえよ!と怖いもの見たさでツッコンでいたのだが、お堅い職業ゆえ(?)か、傍系の話だからか、山田氏いわく「徹底的な宴会」が描かれることもなく、舞台は東京に移ってしまった。 しかし、その後のアハンウフンなところはがしがし早回ししていると、山田氏に捨てられ、今は青野とねんごろな桂子さんの「(山田氏の横暴ぶりを)杉浦頭取も見かねておられるわ」発言。うわあ、やはり真打はこれからだったのかーと喜んだのもつかの間、彼らと共に無言で車を降り、有力者の家の玄関をくぐるだけのシーンに登場しておひらき。アップにもならないのにソレと分かってしまうあたり私も成長したものだ(って、髪型とか歩き方とか、ちらっと顔みせたりするところが普通に目立ってはいたが)。 『恐怖のカービン銃』で主演デビューしただけあって、こういうセミ・ドキュメンタリー系には食指が動いたのだろうか。はっきりいって出てこなくても筋にはなんら影響ない役だとは思うが、これも特別出演の醍醐味ということで。
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2006,04,02, Sunday
『恋愛ズバリ講座』(1961年・S36)
![]() 三話構成のオムニバスで、第一話「吝嗇(けちんぼ)」に出演。 ギブ&テイクが信条のリッチマンKKの富田社長(黒縁メガネの天知茂)が、テイク&テイクの大富産業KKの女社長(小畑絹子)と知り合って・・・というコメディで、登場人物がみんな無表情で倍速のしゃべくりかつギクシャクした身振り手振りで動くのがものすごくシュール。実写版「オー!マイキー」、といった風情でとにかく可笑しかった。(二話以降はろくに見てないが、変なのはどうやらこの回だけのようだ)。 生けるマネキンを照れひとつなく演じきっていた天っちゃんはタダモノではないと改めて感服(軽いしゃべくりがまたピッタリ)。後年は判で押したような役柄が多く、なんだか顔も劇画調に固まっちゃってたが、やろうと思えばいろんなことが出来る人だったんだなあ。
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2006,04,02, Sunday
『怒号する巨弾』(1960年・S35)
![]() 第二次大戦中、天田公一(天知茂)は父と共にスパイの濡れ衣を着せられ投獄、拷問の末、父は獄中で死亡した。17年後、宮本公平と名を変え、古美術商を営む公一は自分たち親子を陥れた者たちに復讐を始める。手下を使い、巧妙かつ冷酷に3人を抹殺してゆく公一。彼の最後の標的は、当時の取調べ担当刑事で今は警視総監に登りつめた志賀。だが公一は、復讐のために近づいたはずの志賀の娘・洋子(三ツ矢歌子)を本気で愛してしまい・・・。 実にドラマチックな筋書きに沿って、翳のある謎の青年をこれまたドラマチックに体現する天っちゃんがハマリ役。洋子さんと熱い抱擁を交わしているときでさえ遠くを彷徨っている暗い目つきがいい。射撃場で知り合ったライバル、敏腕警部・宇野(宇津井健)も戦争で家族全員を亡くしたという設定だが、良くも悪くも一本気なキャラの宇津井氏と、屈折を絵にかいたような彼とでは、こういう場合は勝負にならない。おまけに宇野警部、警視総監の覚えはめでたいものの、娘の洋子さんに思いっきり嫌われてるもんだからかなり分が悪い。宇野が勝っていたのは身長と前髪の多さくらいか(暴言) 正体が暴かれ追い詰められた公一は、宇野に一対一の勝負(=銃を手にして車で決闘)を挑む。名残惜しそうに公一を見つめながら、彼のレザージャケット(背広は相変わらずぶかぶかだがこういうのは良く似合う)の胸ポケットに花を一輪そっと挿す洋子さん。犯罪者だと知り、さらに誘拐(&殺害?)目的なのを知りながら公一に付いて来た彼女もまた、彼のために人を殺めてしまえるほどに彼を愛していた。これからいつもの逃避行モードに入ってもおかしくないシチュエーションだったが、愛を得て満足したのか、車から洋子さんを降ろし、ライフルにわざと弾を込めずに宇野(の車)と向き合う公一。 1回目、勝負つかず。下手だな宇野!(←あ、わざとでしたか)。そして2回目、宇野の拳銃が公一のライフルを弾き飛ばした。ハッと色を失くす洋子さん、宇野のことなんかまるでアウトオブ眼中。なんだ止めをさしてくれるんじゃないのかと心で突っ込みながら(想像)、公一は拳銃を取り出してこめかみに当てた。空に響く銃声。自らの手ですべてを終わらせた公一の死に顔は、どこか幸せそうだった(あんまり端整なのでしばし見惚れてしまった)。 追記: goo映画のあらすじにはまた少しばかり騙された(公一は宇野のヘタレな拳銃に倒れるほどヤワじゃない。それに17年前、幼くなかったし←ちょっとムリめの「地獄」の大学生風) 追記その2:足元だけを映す手法や音楽がなんとなく「第三の男」っぽかった(遊園地シーンもある)。
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2006,03,22, Wednesday
『スター毒殺事件』(1958年・S33)
フィアンセの真理(万里昌代)を自分と同じ世界に誘ったばかりにライバルにまんまと奪われてしまう映画スタア・上原城二(天知茂)。真理ちゃんとの幸せシーンでの眉根に締まりのない天っちゃんはその軽いしゃべくりと相まって、良いひとを演じていても胡散臭さがそこはかとなく漂ってしまうのが難点。ご本人は同期の高島氏や宇津井氏のように青春映画で爽やかな二枚目を演じたかったが叶わず、ふてくされたこともあったらしいが、彼のオトコマエ振りというのはそういうシチュエーションでは生まれ得ないということを周りの人たちが分かっていたのは幸いだったかもしれない。最初の胡散臭い存在の軽さはどこへやら、人を殺めてから先がすこぶる活き活きしてくるひとなんてザラにいないだろう。 「真理は僕のものだ・・・いやだ、いやだ、いやだあああ!」泣くわ絶叫するわ、もすこし落ち着けよ城二!と肩を叩きたくなるようなパラノイアぶりにはびっくりだ。とうとう混乱の中で最愛の真理ちゃんを殺してしまい(ネタバレすみません)「僕も真理と一緒に死ぬんだ!」とか言って亡骸をお姫様抱っこ(←またもや)して車に乗せて逃避行を始めたのに、警察に追われるといつのまにか亡骸を置いて「僕は逃げなければ!」とサバイバルモードになってるあたりはらしくて笑えたが。とにかく逃げなくちゃ、は条件反射なのか? とことんまで追い詰められて(ここらへんまた艶っぽさMAX)、最終的にいかにもピストル自殺しそうな状況になったところで、「真理がいないのに逃げたって仕方がない。せめて罪を償おう」と言って自主的に投降するラストは少々肩透かしだった(そういや「自殺する天っちゃん」というのはまだお目にかかったことがないが*1)。真理ちゃんの元に行くんじゃなかったのか君は。 『暁の非常線』はどうでもいい人たち(失礼)のハッピーな様子でエンドマークだったが、虚無感溢れる表情の城二で締められていたのは、後味は悪いとはいえ(別に天っちゃんの顔が後味悪いという意味ではない)満足だった。渡辺宙明氏の音楽も要所要所を盛り上げていて聴き心地がよかった。 追記:好きよ好き好き城二さん、と恋女房よろしく世話を焼いてくれる女優役で、ぐぐっと色っぽくなった三原葉子ねえさんが出ているのだが、彼女には実につれない天っちゃんだった。 追記2:下記DVDのジャケットは良いとして、このポスターはシリアスな雰囲気をぶち壊しじゃないのだろうか(実際こういう格好してたけども) *1:『怒号する巨弾』で見ました(2006.4.1)
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