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『二百三高地』
『二百三高地』(1980年・S55)

ロシアとの勝算薄い闘いに挑もうとしていた日本。戦争の長期化・泥沼化を防ぐためにアメリカを抱き込む算段の伊藤博文(森繁久弥)は、時の大統領セオドア・ルーズベルトとハーバード大で同窓だった貴族院議員の金子堅太郎(肩書きとお髭が立派な天知茂)に仲立ちを依頼した。

ところが面相の割には控えめかつ消極的な金子。アメリカはロシアと縁が深く、日本有利に事を運ぶ可能性は、政治上、経済上、社交上非常に低い、せめて半分くらいの見込みがなければ到底無理ですごめんなさい、と顔を伏せる。

しかし、その自信なさげな様子に業を煮やした伊藤博文から「ダメだ! 君はね、成功しようと思うからだめなんだよ。命を賭してやるんだよ、金子く~ん!」とタバコを投げつけられ両肩を3度ほどがしっと掴まれゆさゆさ揺すぶられたおかげで「閣下・・・!」と感極まって(手荒い扱われ方に、ではないはずだが)アメリカ行きを決意。『金子はただちにアメリカに向かって旅立った―』というナレーションと共に映画からも旅立ってしまった金子くんだった(出番短いよ!)

*おそらく『デマカセ紳士』以来の森繁さんとの絡み。25年の月日を経ても、(森繁さんに)良い様にあしらわれる、という力関係はあまりかわっていないようだった

*『デマカセ紳士』並みにショートな出番だったにもかかわらず、DVD表紙ではやたらと目立った位置にいる金子くん(こんな感じ)。これぞネームバリュー?

*天っちゃん出演作で唯一リアルタイムに映画館で観た映画(当時9歳)なのだが、さすがに彼の出番は記憶になかった。途中でこれでもかと畳み掛けるさだまさしの『防人の詩』、今だと気恥ずかしい、というよりむしろ少々あざとさを感じてしまうけれど、当時は心にぐさぐさ突き刺さったのをしっかり覚えている(そして今も条件反射で泣けてきたりする)

| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=32 |
| 映画::東映 | 12:12 AM | comments (x) | trackback (x) |
『太平洋戦争 謎の戦艦陸奥』
『太平洋戦争 謎の戦艦陸奥』(1960年・S35)

戦艦・陸奥(むつ)副長の伏見浩介中佐(天知茂)は、艦長(物静かだがちょっと得たいの知れない沼田曜一)や部下・松本(頭一つ分デカい菅原文太)たちの信望も厚く、陸奥が恋人と公言してはばからない“コチコチの海軍”@叔父さん(=海軍将校)談。

戦争末期、僚友艦がミッドウェイ海域で撃沈されるなか、陸奥だけに帰艦命令が下る。海軍の象徴として、陸奥は無傷でいなければならなかったのだ。しかし、呉に停泊した陸奥を破壊し、日本国民に精神的打撃を与えようと暗躍する組織があった。僚友艦を見殺しにした罪悪感、戦闘に加われない疎外感を抱いた乗組員の心のスキをつき、組織は色々と仕掛けてくるのだが、あわやというところでなぜか突然現われて乗組員の気持ちを和ませる伏見中佐(本人無自覚)のおかげで陸奥は事なきを得ていた(が、乗組員のほうは結局のところ溺死・爆死など悲惨な最期を遂げる羽目に)。

一方、将校クラブのマダム・美佐子(小畑絹子)は、陸奥の技師であった父が設計図盗難の罪を着せられ銃殺されたことから陸奥を憎み、組織に加担する一人だったが、伏見に出会い、愛してしまったことで板ばさみになる。そして伏見もいつのまにか、外泊の多さを艦長が心配して松本に偵察させるほど、美佐子にのめりこんでいた。

陸奥の火薬庫に時限爆弾を数発仕掛けることに成功した組織。伏見を死なせたくない美佐子は、爆破当日に彼を呼び出そうとするのだが、ボス(ドイツ人)にばれて部屋に軟禁される。約束の時間になっても現われない美佐子を伏見は必ず訪ねてくるだろう、そこを射殺してやれというドイツ人の魂胆だったが、部屋に現われたのは、伏見の伝言を携えた部下の松本だった(なんでこんな大事な場面でお前なんだ文太!とツッコミたくなるシーンだ)。銃撃戦となり美佐子は被弾、松本の腕の中で(なんでこんな大事な場面で…以下同)「陸奥が・・・陸奥に・・・」と呟き絶命した。ショックは分かるが、ちゃんと言わなきゃ分からないよ美佐子さん!

予科練たちが実習に乗り込んだその日。歓迎会の途中で席を立ちアンニュイに甲板に佇む伏見に、松本は美佐子の死を告げた。驚愕する伏見に、時限爆弾が見つかったとの知らせが追い討ちを掛ける。タイムリミットが刻々と迫る中、必死に残りの爆弾の捜索を始める乗組員たち。そうそう、その箱の中だ! その棚の一番下! もうちょっと・・・というところで「よし、捜索を止めろ。これ以上は危険だ、全員退避!」って伏見中佐、そりゃないでしょうに(涙)かくして、美佐子が命がけで守りたかった男は、爆弾の至近距離で最愛の陸奥と共に海へと沈んでいった・・・(艦長以下ほぼ全員死亡)

とにかく「いい人」の伏見中佐だが、結果的に何の役にも立っていない(しかも無駄死)あたりが寂しいというか、善人役の天っちゃんってのは物足りないものだなあと実感。

*やはり伏見が美佐子にクラっときたのはこの一言「あなたの後姿、まるで白鳥が悶えているみたいだわ…何か苦しんでいらっしゃるのね」が原因か? (こっちがクラッときた)

「平和のための戦争などありえない」名言を残して去った平和主義の叔父さん(細川俊夫)が素敵。

当時のポスターの下半分は思いっきり誇張(というより詐欺)です

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| 映画::新東宝 | 01:55 PM | comments (x) | trackback (x) |
『黄線地帯(イエローライン)』
『黄線地帯(イエローライン)』(1960年・S35)

刑務所生まれで孤児院育ちのニヒルな殺し屋・衆木(=もろき)一広(黒いレザーコートが決まりまくりの天知茂)は、阿川(大友純)という男から「貧乏人を困らせる血も涙もない奴」を消してくれと依頼を受け、一人の男を射殺するが、礼金代わりにパトカーを呼ばれ窮地に陥る。彼が殺したのは不正取引撲滅に精を出す神戸の善人税関長。阿川に騙されたと知った衆木は、逃亡の際たまたま電話ボックスで見かけた女性・エミ(赤い帽子&靴と白いコートのカラーが映える三原葉子)を拉致、彼女の行き先が神戸と知り、阿川への復讐のため共に駅へと向かう。

一方、エミと電話でいちゃついていた恋人の新聞記者・俊夫(朴訥さが売りのハンサム・タワー吉田輝雄)は電話が途中で切れたことに不審を抱いて駅まで行くが、見つけたのは自分が贈った赤いハイヒール片足分(=エミがわざと落としたもの)。ダンサーの職を探す彼女が応募した芸能社はダミーで、どうやら裏には大掛かりな黄色人種専門の人身売買組織(=イエローライン)が絡んでいるらしいと突き止めた俊夫は、デスク(老けメイクの沼田曜一)の許可を得て神戸へと調査に赴く。

衆木を裏切った阿川と、そのボスで表向きは社会事業家として名のしれた松平(中村虎彦)がイエローラインの総元締めであったことから、衆木・エミ・俊夫の運命は、神戸の裏街(?)・カスバへと収束していくのだった…。

スタイリッシュなギターの音色(音楽:渡辺宙明)に乗って繰り広げられる、無国籍でドライな映像の数々。偶然が偶然を呼び寄せる展開と、三人の際立った違いが面白い。典型的な巻き込まれ型の吉田さん(一動作ごとの指ぱっちんが恥ずかしい)はともかく、

「女の約束と貞操を信じる奴は低脳だ」
「恋愛か・・・そんなものは足の早い食い物みてえなもんだ。ちょっと放っときゃよ・・・ちょっと放っときゃ、すぐ腐っちまうんだ!」

なんていうセリフもクールにこなす、いつもながら情念MAXの目つきの天っちゃんと、人質に捕られてもあっけらかんと楽天的な(でも逃げる算段もちゃんと考えている)葉子ねえさんのコンビが素敵で、ほんのり良い仲になりかけていた矢先のビターかつリアルなクライマックスが忘れがたい印象を残してくれる。そしてやっぱり天知茂には似合うのだ、裏切られ怒りに燃え、束の間の優しさに包まれながらも破滅に突き進む姿が。

*スパニッシュ系のギターも良く似合う天っちゃん。やはりスペインと縁があるのか

*連れ込みホテルのやり手マダムに、若杉嘉津子さん(四谷怪談のお岩さん)

*ドライな映画とはいえ、ちゃんと三原葉子ねえさんのセクシーな踊りを堪能できるあたりが新東宝だ

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| 映画::新東宝 | 01:54 PM | comments (x) | trackback (x) |
『まむしの兄弟 懲役十三回』
『まむしの兄弟 懲役十三回』(1972年・S47)

昭和11年・神戸。刑期を終えたゴロ政(菅原文太)は、彼の帰りを待ちわびていた弟分の不死身の勝(川地民夫)と共に、刑務所で知り合った“金スジをバッサリ斬ったハクい兄弟分”を訪ねて東京は浅草方面へと繰り出した。のだが、単純で騙されやすい(つまりバカ)な二人はスリにあったり殺し屋と間違えられたり、散々な目に遭う(でもバカなのでそれなりに順応して楽しんでいる模様)。

吉原を牛耳っている東竜会の組長・岩淵(goo映画のあらすじでは天津敏となっているが小池朝雄)にひょんなことから見込まれた政は、なさぬ仲の菊村一家の連中を痛めつけてくれと頼まれる。しかし、政がムショ内で兄弟分の盃を交わした男・弥之助(通称ヤノ:渋い和服の天知茂)は、その菊村一家の代貸となっていた。東竜会とうちはもとは一つの組、何の問題も起こっていないと言う弥之助だったが、本家である菊村の親分が病の床に付いているのを良いことに、先代の追善興行の件で分家の東竜会が(自分たちが仕切りたいために)嫌がらせを続けていることを政たちは聞き知る。

兄弟・ヤノの窮地を救おうと政たちはバカなりに頑張るのだが、その行為は、事を荒立てずに済ませたい弥之助の立場を却って悪くするものばかり。面と向かって「オマエら余計なことしすぎなんじゃい!」と怒鳴ったり出来ない、顔は怖いが相当控えめな弥之助は「神戸へ帰ってくれねぇか、兄弟・・・」とオブラートに包んだ物言いをしてみるものの、バカには通じず、「俺らのこと、バカにしてるんやろ!」と逆ギレされてしまう。

政たちは神戸に帰るどころか、馴染みになった子持ちダンサーが男(村井国夫)に捨てられた挙句借金のカタに吉原(=東竜会)へ売られたことを知り、彼女を足抜けさせるという暴挙に出た。その知らせを受けた弥之助の眉間の皺は縦横にMAX。岩淵の元へ赴いて小指をつめるも「おめえの指なんざ何の値打ちもねえ」と撥ね付けられ、興行権を譲れと迫られる。苦痛を堪えつつそれだけはきっぱり断り(カッコ良さからいうとたぶんここらへんが最大の見せ場)、出て行こうとしたその背に、卑怯にも銃弾が。

政と勝が駆けつけたときには満身創痍で瀕死の弥之助だったが、この落とし前は俺がつける、と(たぶんバカ二人に任せたらロクなことにならないと踏んだせいだと思う)最後の力を振り絞って岩淵を道連れに絶命。兄弟分の死にぶちキレた政たちは「皆殺しや~!」と叫んで文字通り東竜会の皆殺しを敢行、警察が来た気配に「サツが怖うてニンジンが食えるか」と迷言を吐きながら底抜けに明るいテーマ曲(皆殺しのときから鳴りっ放し)と共に去っていった。

*このテの映画では悪人・善人役を問わず死亡率が異様に高い天っちゃんなので免疫はついているが、やはり善人役なのに死なれるのは辛い。しかも主役二人に殺されたようなもんだもんなあ。新東宝時代の恩(?)を忘れたのか、文太! タメ口きくとはいい根性しとるな、文太! 赤ん坊(ダンサーに置いてけぼりにされた)なんか手馴れた天っちゃんに任せておけばいいんだ、文太!

*親分は病弱、分家の叔父貴は性悪、そして押しかけ兄弟分はバカ、と辛いことばかりのヤノさんだったが、ひとりだけ強い味方がいた。分家をたしなめ、追善興行を全面的にバックアップしようと申し出てくれた関西の大親分、演じるは嵐寛寿郎。アラカンさんありがとう(でもすぐ大阪に帰ってしまわれた)

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| 映画::東映 | 12:10 AM | comments (x) | trackback (x) |
『森繁のデマカセ紳士』
『森繁のデマカセ紳士』(1955年・S30)

♪おいらのペテンは~芸術ペテン~♪
安っぽい宇宙船内のようなセットで歌い出すペテン師・堀川(森繁久弥)の背後のドアがしゅっと開くと、キャンバスと画材道具を手にし、ベレー帽を斜めに被った画家(スモックも可愛らしい天知茂24歳)が入ってきた。それじゃ僕たち仲間だな!芸術家の心は他人に分かるものじゃない、などとと嬉しそうに言う彼は堀川と握手、一杯やろう・そうしようという話になるのだが、突然ドアから警官が。

警官「こらペテン師!」
堀川「(画家を指して)ほう、あんたはペテン師か」
警官「オマエだ!」

というベタなボケ&ツッコミの後(指差された瞬間の天っちゃんの表情が良い)、警官と画家は画面からフェードアウト。映画開始2分足らずで出番終了(91分もあるのに)。

*天っちゃん的には最初の部分だけを観ておけば事足りるが、実はこの映画、のち(2年後)の奥さま(芸名・森悠子)の名前もクレジットされている。でもどこに出ているのかが分からなかったのでどなたか教えて下さい(女子プロレスのシーン? それとも劇場の観客?)

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| 映画::新東宝 | 01:53 PM | comments (x) | trackback (x) |
『顔役』
『顔役』(1965年・S40)

冒頭、大勢のその筋の皆さんが一同に会する中、半オクターブほど高め(軽め)の声でやおら仕切りだすのが、関東は檜山一家のエリート幹部・花岡章(天知茂)。造成地にまつわる関西ヤクザとのいざこざをスライドを交えて長々と説明する独壇場に、ちょっと目立ちすぎじゃないのかと思ったのは我々だけではなかった(いや私は嬉しいが)。殺人の罪で懲役を終えて出所したばかりの檜山一家の最古参・中神正治(主役:鶴田浩二)を差し置いたふてぶてしい花岡の態度が、中神の舎弟で血の気の多い早見恭一(準主役:高倉健)は面白くない。

組の為に臭い飯を喰ってきた中神がまた組長から損な役回り(=関西勢を牽制し、土地所有者を丸め込んで土地を買い占める)を押し付けられたことも早見にとっては実に面白くないのだが、とにかく中神兄さんはめいっぱい辛い目に遭って(小指まで失くして)も黙って耐える。だがどさくさに紛れて檜山組長が関西のヒットマンに射殺されてしまったせいで、跡目争いが浮上。当然のように後釜に座り、弔い合戦を指揮しようとしたちゃっかり屋の花岡だが、さすがに中神はストップをかけた。だが、舎弟の早見が檜山組長と懇意だった社長を土地のことで脅した件が問題視され、組の相談役たちに「早見をやって(=殺して)落とし前をつけろ」と迫られる。

上の命令には絶対服従の中神だったが、さすがに可愛い舎弟は殺し難く(本人も嫌がっているし)、かくなるうえは相討ちでと思うのだが「バカになって俺と死んでくれ」「俺ぁあんな組のために死ぬのはイヤだ」の平行線、ついでに早見の元カノ(三田佳子)が飛び出してきたりでうまくいかない。とそこへ、「いつまでママゴトやってんだい」クールなセリフと大勢の部下を引っさげて花岡が颯爽と(とはいえ暗いので良く分からないが)登場。二人の死体を関西勢に引き渡そうという魂胆の彼と中神たちは撃ち合いを繰り広げた。

だが「出て来い、花岡!」中神の一声(名づけて鶴の一声)に「なにい!」といきり立ちドラム缶の陰から飛び出した途端、撃たれて絶命。名前呼ばれたからってドンパチの最中に立ち上がるウッカリ者とは知らなかったぞ花岡。周りの部下もびっくりの急逝ぶりに加えて、前のめりに倒れた際、ドラム缶が身体(上半身)の上にがらんごろんと落ちてくるという、いろいろとイタイタしい最期だった(気合入りすぎだ天っちゃん)。

関西VS関東のやーさん達がずらりと睨み合う中、中神と早見は向き合って銃を撃ち合った。(gooのあらすじでは二人とも死んだことになっているが)倒れたのは、最愛の兄貴を撃てなかった早見だけ。彼の死をムダにしないでくれ、ってことで手打ちとなり、完。しかし、もう少し待っていれば跡目の座が転がり込んできたんじゃないのか花岡よ(やはりウッカリ者か)。

*早見が中神の赤ちゃんをあやすシーンがあるのだが、健さんの不器用極まりない抱き方を観ているといかに天っちゃんが手馴れているのかよく分かる(この映画では抱っこシーンはないが)

*中神と行動を共にする部下に待田京介(わんこやホステス絡みのメルヘンなエピソードが秀逸)、江原真二郎(花岡=天っちゃん側のスパイ)ら。

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| 映画::東映 | 12:07 AM | comments (x) | trackback (x) |
『暴圧(大虐殺)』
『暴圧(大虐殺)』(1960年・S35)

大正12年9月1日。アナキスト・古川大次郎(天知茂:前髪下ろした書生風)が牛メシ屋で関東大震災に遭遇していた頃、「朝鮮人たちが放火しているぞ!」と根も葉もないデマが飛び交い、何の罪も無い朝鮮人たちが暴徒と化した群集に襲われていた。それに乗じた軍部は、朝鮮人や社会主義者を一斉に拘束、殺害するという計画を実行。仲間とアジトにいるところをどうやらひとりだけ捕縛された古川は、女子供まで容赦なく銃殺する軍部の非道を目の当たりにして怒りに震えた(自分は川に飛び込んでうまく逃れたが ←さすがの逃げ足)。

さらに古川たち同志の師である左翼の柱・大杉(細川俊夫)が妻や幼い息子ともども軍に拉致され、甘粕大尉(沼田曜一)らの手により抹殺される。古川は打倒・軍部を誓い、同郷の先輩・高松やその妹・京子(古川とほんのり恋仲)の心配をよそに過激テロに走ろうとする。まずは資金繰りをと、大阪の知人を訪ねた際に外回りの中年銀行員を刃物で脅すが、カバンを掴んで離さないので(当然だ)うっかり殺してしまう。東京に戻り仲間と缶詰爆弾を作って軍の幹部暗殺を謀るが胡散臭い挙動でバレて失敗。軍の追及を避け、半ば不貞腐れてカフェの女給さんとはじめての一夜を過ごしたところ、彼女の父は自分が手にかけた銀行員だと判明。ショックで飛び出し、海辺で眉根を寄せていると、高松と京子に遭遇。古川を救いたい一心の京子は彼の居場所を警察にチクってしまい・・・と、進めば進むほど踏んだり蹴ったり。

それでも懲りずに巨頭会議が開かれる陸軍省に忍び込み、部屋の爆破を目論んだ古川たちだったが、張り巡らせたコードを踏まれた拍子に導火線が外れてしまい、あえなく御用に。「朝鮮人や日本人の同胞を虐殺した奴らはどうして処罰されないんだ! こんな不合理が許されていいのか! 俺達こそ民衆のために戦っているのがわからないのか!」などと叫びながら、古川は護送車に消えていった。

実在の人物・事件を題材にしたセミ・ドキュメンタリーなので、主人公の行動に対してとやかく言うことは控えたいが、なんにせよテロはいかんと思うなあ。

*もっとも、怒涛の不幸(不運)の連続に見舞われる天っちゃんを観ていると、本人と話の展開はすこぶるシリアスなのについ顔が綻んでしまうのだが(不合理が似合いすぎてて)

*大杉の通夜の際、「おとうちゃん、おかあちゃん、どうして死んじゃったの。ああんああん」と泣きじゃくる幼い娘・エマちゃんを抱っこして庭先に出た古川、「おじさんと歌をうたおうね」と『月の砂漠』を披露。♪金と~銀との~♪からは彼女とハモるのだが、天っちゃんが低く出すぎてエマちゃんが大変そうだった

*眼鏡で変装とか、仮面をつけてバイオリンを弾くとか、本筋とは関係ないところで楽しめる作品でもある(女給さんとの夜のシーンも必要以上に可憐だ←天っちゃんが)

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| 映画::新東宝 | 01:52 PM | comments (x) | trackback (x) |
『獣(けだもの)の剣』
『獣(けだもの)の剣』(1965年・S40:松竹)
安政四年十月、飯富宿に浪人平木弦之助がやって来た。彼は人材登用藩政改革の藩論を覆えせると判断し、城代家老山岡監物を斬った。だがこれは次席家老星野頼母の策略であった。……
(goo映画あらすじ より)

弦之助(平幹二朗)ら下級武士のいる家屋にふらりと雨宿りに立ち寄り、他所では下積みの若い衆が藩論を改革しているそうだ、うちもお前たちが奮起して城代家老さえ黙らせれば改革が進むだろう、などと暗に家老抹殺をそそのかしたにも関わらず、口車に乗って家老を斬ってしまった弦之助に「馬鹿なことを。城代家老ひとりを殺しても藩論は覆るまい」と無情に言い放つ冷徹な策士・星野頼母(天知茂)。進退窮まっている弦之助とは裏腹に、のんびりお茶など点てながら顔色ひとつ動かさず知らぬ存ぜぬを決め込むあたりの冷血漢ぶりが実に絵になっていて、出番はあっという間なのに妙なインパクトがあった。

監督は五社英雄氏(シナリオも共同執筆)。弦之助メインの話に加え、藩のために働きながら藩に殺される薄幸の武士夫婦(加藤剛&岩下志麻)たちのエピソードも挿入されているのだが、弦之助がピュアな瞳を燃やして彼らの仇を討つあたりなどはどこか「無宿侍」を髣髴させてくれた(あれの原型か?)。主演が天っちゃんでも面白かったかもしれない。

*三原葉子ねえさんも十八番のお色気を取り混ぜながら熱演していた(天っちゃんとの絡みは無い)

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| 映画::松竹・他 | 01:10 PM | comments (x) | trackback (x) |
『陽気な殿様』
『陽気な殿様』(1962年・S37)

名の知れた剣の使い手でありながら、介錯した男の顔が苦痛に満ちていたせいで「生まれたときが悪いのか、それともオレが悪いのか」(違)と己の腕に疑念を抱き、納得いく死に顔に出会えるまで人を斬りまくらずにはおれないという、かなりイッてる素浪人・挙手田(=こてだ)多門(天知茂)。だが自分と同格、あるいは強そうな相手と見るや剣を収めてさっさと通りすぎるあたり、まるっきりの狂人ではないようだ。

国許目指して漫遊中の若殿・隼之介(市川雷蔵)と道中すれ違い、相手の腕を見抜くとあっさり引き下がった多門だが、なぜかストーカーを始めたくなったらしく、隼之介君の行く先々で突如顔を見せ、斬らなくて良い連中を「ここは俺にまかせろ!」と誰も頼んでないのにガシガシ斬って捨てる迷惑千万な行為にはしる。

それもひとつの原因で松平長七郎(宇津井健)の誤解を被り、隼之介は小柄使いの刺客・角右衛門と闘わねばならない羽目に陥る。隼之介に対峙した自信満々の角衛門だが、いきなり呻いて絶命。ススキ野原から現われたのはまたしても多門だった。なんだコイツ、苦しそうな顔も幸せそうな顔もしとらんなーとその場の空気なぞ気にもせず自分の世界に浸っているうちに、とうとうキレた隼之介に決闘を挑まれ、あえなく地に伏し一巻の終わり。どこまでも陽気で軽い作品にシュールな深刻さを振りまき、逆に笑いを誘ってくれた天っちゃんだった。

*原作について
映画ではストーカーじみた狂気の人・挙手田(=こてだ)多門だが、原作では主人公・隼之介君の元・剣術指南の二刀流使い。人斬りオタクな彼をなんとか落ち着かせようと隼之介君が嫁を世話するくだりがあったり(愛する嫁を斬れば狂気が収まるだろう、という鬼畜な理由だが)、多門が隼之介君に忠義を尽くす場面が何度もあったり、得体は知れないがなかなか味のある人物として描かれていた。

映画ほど殿様(=隼之介)や周囲が陽気ではなく、主だった人物がバタバタ死んでいくシリアスな展開。それ故か、多門の存在が大きなウエイトを占めていて読み甲斐があった。が、文章のキレが重いというか、次の行で全く違う話から遠まわしに入っていくような(そういうしているうちにまた違う展開になっていたりもして)まどろっこしい書き方で細切れ時間に読むのは少々ホネだった。

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| 映画::大映with市川雷蔵 | 11:55 PM | comments (x) | trackback (x) |
『女番長(すけばん)ブルース 牝蜂の逆襲』
『女番長(すけばん)ブルース 牝蜂の逆襲』(1971年・S46)

敵対する組の組長をバラしてムショに5年いた、「人斬りマサ」こと土居政也(シガレット・ホルダー使いのおシャレさん:天知茂)が秋本組に戻ってきた。本来なら代貸(=組のナンバー2)として迎えたいところだが今はヤクザも金儲けが出来なきゃなあ、と浦島なオマエは足手まといだと言わんばかりの組長(安部徹)、ほれ兄貴、当座の10万ですぜと札入り封筒を地面にわざと投げ落とす現ナンバー2のやり手男・紺野(林彰太郎)を前にして土居の表情は陰鬱の度合いを増すのだが、昔の女・梨絵(弓恵子)が新しいパトロンを見つけてクラブを開いていること、小さな子供がいることを聞いてますます眉間の皺が深まる。

問題のクラブを訪れ、ピーター(本人)のナマ歌を聴きながらアンニュイに飲酒していると、オレ土居さんのこと尊敬してるんです!と若い衆が寄って来た。いつかは秋本組の傘下に入ることを夢見る、地元の愚連隊ボス・次郎の熱い眼差しに、土居は腕力だけで生きてきた武骨なかつての自分の姿を重ねて苦笑いを浮かべる。とそこへママ・梨絵がパトロンと姿を見せた。「子供は幾つだ」尋ねる土居に梨絵は「あなたの子じゃありません」とにべもない。

だが後日、幼い娘・和子を連れた梨絵は土居を遊園地へ誘った。パトロンの前では口に出来なかった謝りの言葉を紡ぐ彼女を土居は許し、和子に請われて束の間の『親娘』の交流を果たした。黒い丸首シャツ・白い背広&グラサンといういかにもなコワモテの土居(初対面)に「おじちゃん、メリーゴーランド乗せて~」とフレンドリーに駆け寄る和子ちゃん、さすがに血は争えないが、メリーゴーランドだけでなくモノレールやらコーヒーカップやらに和子ちゃん以上の笑顔で興じる土居のニヤケっぷりが微笑ましい(素になりすぎだよ天っちゃん)

腐れきった秋本組に嫌気がさし、また和子が自分の娘だと確信した土居は、カタギになって家族と暮らそうと決心する。それじゃ最後にオマエにしか出来ない仕事をやってくれ、500万やるからと組長が持ちかけてきたのは、製薬会社から覚せい剤の原料を人質(=社長のバカ息子)と交換に譲り受ける役目。指定された場所で無事ヤクを受け取った土居だが、待っていた秋本組組長たちに銃を突きつけられる。証拠隠滅のため、彼は最初から消される運命だったのだ。

「ホームドラマはお前の柄じゃねえと言ったはずだぜ」(←まったくだ)あざわらう組長に「お前らの薄汚ねえ任侠より、俺はホームドラマで結構だ!」とタンカを切り応戦する土居だったが、紺野と相討ちとなる。駆けつけた土居さん命の次郎(=いろいろあって秋本組から見放されヒモ状態)も組長にやられ、これでオレも男が立ちましたよ、と呟き絶命。「大馬鹿野郎だ、お前も俺も・・・」傍らで冷たくなった次郎に手を伸ばし、土居はこときれた。梨絵と和子の写真を血で染めながら・・・。

*トメ位置にクレジットされていた天っちゃん、ダンディーだが不器用なやーさんを映画の本筋とはなんら関係ないところで熱演。え?女番長はどこって? オートバイ○ックスはって? そんな話は知りません(おい)

*梨絵役の弓恵子さんは愛弟子・宮口二朗さん@ゾル大佐の奥さま(だったのかな、もう?)

*音楽は鏑木創@美女シリーズ

*カメラワークか本人の努力の賜物か、普段は作品の中であまり小粒さを感じさせないビッグな天っちゃんだが、今回はあるシーン(取引を終えて車を降りた途端、組の連中に囲まれるシーン)で迂闊にも(?)周りとの身長差を露呈していた(思わず「・・・小さっ!」と突っ込んでしまった←失礼)

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| 映画::東映 | 12:05 AM | comments (x) | trackback (x) |
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