2011,06,20, Monday
『「空白の起点」より 女は復讐する』(1966年・S41)
(神保町シアターにて鑑賞) 冬の曇り空のような(原作の描写引用)寡黙な保険調査員・新田純一(天知茂)は、同業のベテラン塚本(美川陽一郎)と新田をライバル視する佐伯初子(原知佐子)と共に顧客の偽装を暴いた帰り道、駅のホームで少々杜撰な髪型をした女性・鮎子(川口小枝)に目を留めた。秘書のくせになんとかならんのかその髪(想像)、とチラ見しているうち、鮎子がおもむろに悲鳴を上げた。崖から人が落ちるのを見たのだという。ところがその被害者、小梶美智雄(加藤嘉)はなんと鮎子の父だった。 ありえない偶然に眉間のセンサーが作動した新田が調査を進めると、保険金の受取人は小梶の長女・美子(富永美沙子)でも長男・裕一郎(露口茂)でもなく(長女の婿・北町さんでも勿論なく)、後妻の子の鮎子ただ一人らしい。仕事上気になるのか、それとも彼女に惹かれるからか…心を持て余しながら深入りしていく新田。 そんな新田の抜け駆けが許せない初子は刑事の高良井(中谷一郎)と共に行動、容疑者・国分(菅井一郎)の存在を突き止めた。意気揚々と新田に対峙する初子だったが、強引に押し倒されてネタをあっさり話してしまう(実は新田にゾッコンの初子、最初からそうなることを望んでいたようだ)。 そんな折、「国分が自殺した」との報が舞い込む。被害者に金を無心しており、遺書まで遺していた国分を警察は犯人と断定。他社が保険金を出す中で、新田だけが釈然としないでいる時、アパートに鮎子が訪ねてきた。好意を露わにして押し倒しにくる彼女に抗いきれず、一線を越えてしまう新田。裏があるのではないか、と疑いながら豊満ボディの虜になっているところへ女の勘が働いた初子が現れ、モテ男はビンタを食らうのだった。 ジェラシー半分、職業意識半分で鮎子の生い立ちを調べた初子は、彼女が小梶の子ではなく、国分の子だったことを知り、新田に告げる。処女ではなかった鮎子の背後に男の存在を嗅ぎ取り、心穏やかでない新田は裕一郎を疑うがシロ。しかし、小梶の愛人・志津(岩崎加根子)の口から衝撃的な事実を知らされる。小梶は血の繋がっていない、愛した女の娘である鮎子と関係を持っていたのだと。 鮎子は(今でいうサスペンスのクライマックス定位置・崖の上で)新田にすべてを打ち明けた。小梶との関係を知った実父・国分を利用して小梶を突き落させたこと。その彼を豊満ボディで圧死、じゃなく溺死させたこと。でも貴方を愛したことだけは本当なの――泣き崩れながらもひとりで去ってゆく彼女の後ろ姿を見送りながら、これが自分の「空白の起点」になることを新田は感じていた…。 *『殺すまで追え 新宿25時』のときもそうだったが、おそらくもっともクール・ビューティな時代の主演映画というだけで脳味噌が溶けてしまい、客観的につっこめないのが痛い。 独白ナレーションで渋く語る天知茂!いつも以上にアンニュイに構える天知茂(実は浮気嫁に殺されかけた過去のせい)!情報を聞き出すために同業者の女性を押し倒す天知茂!葉子ねえさんも脱帽のヒロインの豊満ボディに押し倒される天知茂!そしてどっちのラブシーンも(相変わらず相手のふくらみを律儀に避け)とても礼儀正しくダンディな天知茂!もちろん挿入歌(主題歌)「空白のブルース」を歌うのは天知茂!アップでわかる吹き出物まで微笑ましい天知茂! なにしろ同時上映は眼鏡マスクだ(『悪魔の囁き』参照)、すべてが愛しく見えて当然である。あまり良くないフィルム状態のせいとは言い切れない話のぶち切れ方でも許してしまう。あんな調査員おらへんやろ、でも許してしまう。困ったものだ。 *弥七が山さんを取り調べる、などという面白い場面もある(北町さんをはじめ、池田さんや宮口さんもしっかり脇を固めている) *ヒロインの小枝ちゃん、確かにあっさり脱ぎすぎ(記事より)というか、ちょっと髪の手入れの悪いがさつな女の子、のイメージ。原作では新田の鏡のような存在なだけに、配給元から彼女をあてがわれた時はさぞ困惑しただろうなと思う。ラブシーンや殺人シーンなど、ボリュームを生かした使われ方に苦労がしのばれた。 *加藤嘉さんの方が揉み方が念入り。ああでなくっちゃなあ(どこをみとる)
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| 映画::松竹・他 | 11:36 PM | comments (x) | trackback (x) | |