2007,10,30, Tuesday
#80「兇悪の生証人」(1975年・S50・4月10日OA)
弾三郎(通称サブちゃん:北島三郎)は城北署のヤンチャ刑事。情婦・良子(水原麻記)に美人局(=つつもたせ)をさせているチンピラやくざの西山(内田勝正)に正義の鉄拳を振いつつ「もうこんなことやるなよ」と優しく諭してやる人情派でもあるのだが、ある晩、ストライプのシャツにストライプのスーツ(おまけに眉間にも横ストライプ)をまとった見るからにいけすかない男(=会田:天知茂)が強引に西山を引っ張っていってしまった。 良子と後を追った三郎は、彼が特捜の刑事であること、西山がとある代議士の転落死に関わりのある5人のうちの1人であることなどを知る。会田に協力を依頼されてまんざらでもない三郎だったが、西山はふたりの目の前で射殺されてしまう。おまけに残りの証人たちもガス中毒で4人ともぽっくりあの世へ送られてしまい、後手に回りっぱなしの会田たちに矢部部長(山村聡)はたいそうご立腹。 三郎は、証言されてはマズい神崎(富田仲次郎)を長とする城北会の連中が仕組んだと睨んで単独で神崎を拉致、強引に自白させたのだが、死んだヨメさんにそっくりという良子を人質にとられてしまい身動きがとれなくなる。仕方なく神崎を返し、会田たちに沈黙を守る三郎。だが会田が良子を逮捕し取り調べたところ、大金に心が揺れて三郎を騙したのだと涙ながらに真相を打ち明けた。 ホの字だった良子に裏切られたと知りヤケになった三郎は町でチンピラをボコボコにのしたあと(自分もけっこうボコボコになりながら)城北会へと乗り込み、神崎を締め上げた。四方(葉山良二)と共に三郎をずっとマークしていた会田はナンバー2(上野山功一)の銃弾から彼を救い、後日入院先でまだふてくされている三郎に、義兄弟の杯ならぬリンゴ半分を素手でパカッと割って笑顔で差し出すのだった(昭和ブルースは3番) *小粒ながらきびきび動き回る賑やかなサブちゃん(特別出演)が堪能できる回。彼に花をもたせようとするあまりか、珍しく会田たち特捜がヘマの連続で矢部さんに怒られまくるというコメディタッチ。 *あんまり後手に回るのでヤケ酒でも飲んでたのか、酔っ払ってちょっとふらつきながら矢部さんに呼ばれた会田。サブちゃんの暴走をきいてすぐさま後を追い車中で一泊したようなのだが、翌朝あらわれたときは髪の毛ひとつ乱れていなかった(のはともかくとして、飲酒運転だよなあ…)
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2007,10,29, Monday
#79「兇悪の炎」(1975年・S50・4月3日OA)
町屋界隈を見込み捜査中の会田(まだトレンチ着用の天知茂)は偶然、ステージ歌手のジョージ・川井(立花直樹)を刺した直後の主婦・斉藤芳江(原知佐子)と鉢合わせた。ジョージのファンである娘の光子(石川えり子)がそっくり貢いでしまった芳江の大事な両親の遺骨探し・供養のための防空頭巾貯金20万を取り返そうと揉みあってのことだった。 ジョージの傷は浅かったが、芳江はそのまま行方不明に。光子から事情を聞き、“戦争”“空襲”のキーワードで寝てた子が起きてしまった(←橘さん談)会田は、東京大空襲の際に亡くなった両親の遺骨を探しだしたいと思いつめていた、という芳江に思いっきり感情移入、矢部部長(山村聡)に休暇届を出して、戦争を知らない14歳・光子を連れて消えた彼女の足跡を追う。(「お前の過去が過去だけに今度のセンチメンタルジャーニーは辛いぞ」と会田をやんわり心配してあげてる矢部さんがいい感じ)。 慰霊塔を訪問したり、空襲で娘や兄弟を亡くした人々(丹阿弥谷津子さんら)の悲惨な体験を聞いたりするうちに、30年前の真実がいまさら何よ、とうそぶいていた光子も「戦争なんて大嫌い…!」と叫ぶようになる。そこへ、ビルの解体現場から空襲当時のものらしい白骨が2体見つかったとの知らせが舞い込んだ。芳江は必ず来るはずだと確信した会田は光子と共に現場へと向かうと、はたして芳江はそこにいた。 その白骨は別人のものらしかったが、同じく犠牲になった者に変わりはないと供養を申し出る彼女の両親の遺骨への渇望は和らいでおり、涙ながらに光子に謝った。そしてそんな芳江に手錠をはめた後、おそらくこれを言わんがために彼女を追ったのだろう会田は、静かに声を掛けるのだった。 ――私の両親も広島の原爆で死んだんだ。やはり、どこでどうして死んだのか影も形もない。もちろん、骨もね…(昭和ブルースは1番) *非ライの“重さ”は、背後に戦争の影がつきまとうからなのかもしれない。主人公の設定といい、これほどまでに「戦争」の文字が重々しく圧し掛かる刑事ドラマってのは類をみないのではないだろうか(だからその設定が消えた第3シリーズは物足りないのかもなあ…)実際の映像がらみの体験談、「君のような少女がイカのように死んだんだ…!」などの生々しいセリフが胸に迫る。エンディング手前のいつもの泣けるBGMで芳江と光子の涙の抱擁、そして会田の言葉が終わると昭和ブルースのイントロ、あげくに光子の「おかあさーん!」、3段構えで涙腺を刺激されまくった。 *原作にも「兇悪の炎」という作品があるがまったく別モノである(本放映時にはまだこのタイトルの話は無かったのかも)
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2007,10,21, Sunday
#78「兇悪の友情」(1975年・S50・3月27日OA)
矢部部長(山村聡)の仲人で見合い結婚した大門刑事(名は「錠二」:高城丈二)。特捜の面々も集う披露宴に、怪しい暗号電報が届けられた。結婚を呪うその文面に、会田(ぱりっと礼服:天知茂)は式場の隅で大門を恨めしげに見つめていた女(珠めぐみ)がいたのを思い出した。 博多-神戸-横浜の新婚旅行に出かけた大門夫妻の行く先々で、彼らの支払いを先に済ませて去る女(同一人物)がつきまとう。披露宴でもさんざん女性関係について聞かされた新妻・悠子(ひしみゆり子)は当然おもしろくなく(しかもハネムーンの夜だというのに野暮な同僚=会田から電話がかかってくるし)「アタシちっとも幸せな気がしない!」と大門をなじるのだが、そこは特捜きってのレディキラー(らしい)、お前とはこれから愛が始まるんだ、それじゃいけないのかと彼は悪びれる様子もない。 翌朝、悠子に例の女・眉子が近付いてきた。恋仲だった男と行くはずだったというハネムーンルートを聞いて驚く悠子。自分と全く同じ――眉子の相手が大門その人という意味でも、全く同じだったのだ。ヤクザ幹部の情婦だった眉子は、接触を図ってきた大門に本気で惚れて幹部を裏切ったのだが、彼にとってはしょせん囮捜査の一環に過ぎず、すぐに眉子から離れていってしまったのである。 にっくき大門をおびき寄せた眉子は、挙式当日に処刑された幹部の恨みを晴らさんとする子分たちに彼を預けた。拷問を受け「死にたくなければ俺たちの犬になれ!」と迫られた大門だが激しく抵抗、その結果、朝霧の中で無残な磔死体となって発見される憂き目に。 間にあってやれなかった悔恨の念を兇悪な死に顔と共に心に深く刻みつけた会田は執拗に犯人探しを進める。そして大門の墓に参る眉子に遭遇、殺すつもりじゃなかったと嘆く彼女に話を聞こうとしたところを銃弾に襲われた。追い詰めた初老の男は「見逃してくれ、会田くん」と懇願。大門を拷問したメンバーのひとり、彼の名を知るこの男は、会田と同じ元4課(=マル暴担当)で退職した浜崎(浜村純)だった。 腕利きのデカでありながら退職後にヤクザの犬に成り下がった浜崎は、自らの勘の衰えを悟り、大門を後釜に据えようと画策したのだ。真相を知った会田は浜崎にペンと紙、そして拳銃をばんと放り投げ、遺書を書け、さもなくば俺と撃ち合って死ねと銃を突き付ける。その剣幕にかつてのデカ魂が蘇った浜崎は、アジトの場所を“遺書”としてしたためる。 アジトへのガサ入れ当日。わざと慌てたそぶりで銃をぶっぱなし、次々と銃刀器の在り処を暴露していった浜崎はボスの貝山(竜崎一郎)の銃弾に倒れ、会田の腕の中で微笑みながらこと切れた。血が上った会田は逃げる貝山をビル屋上まで追い詰めるのだが、そこで貝山は心臓発作であっけなく昇天。 怒りの矛先を失った会田はだらんと垂れさがる腕に渾身の力で手錠を掛け、空に向かって弾を放つしかなかった――(昭和ブルースは1番) *大門と浜崎、ふたりへの友情が炸裂する回。特に後半の会田の火傷しそうな言動から目が離せなかった。あと一歩というところで相手が頓死、というのは第1シリーズ最終話もそうだったが(親友・タロさんの死に顔が兇悪だったという点も同じか)、「人殺しになってもいいから、生きている内に弾をぶちこみたかった…!」という前回にはない明確な独白が第3シリーズの最終話へと繋がっていくのかもしれない。 *大門さんといえば今まで「おはら餅(#13「兇悪の噴煙」)」「妄想スリーサイズ(#14「兇悪のロマン」)」くらいしか思い浮かばなかったが、あのトラウマになりそうな死に顔だけは忘れないと思う。 *浜崎さんに熱く詰め寄る会田。いろいろもっともなセリフを言ってくれていたのだが、「デカは贅沢をしちゃいけねえんだ!」だけには「アンタに言われてもなあ」と突っ込んでしまった。
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2007,10,20, Saturday
#77「兇悪の霧」(1975年・S50・3月20日OA)
右田(左とん平)・江沢(江波杏子)両刑事が夫婦に扮して(右田刑事、ノリノリ)密かにマークするのは隣家に住む1児の母・宮原俊子(榊ひろみ)。彼女の夫が、政界を牛耳る黒幕参謀・大上則之(殿山泰司)の3千万を持ち逃げして失踪したというタレこみがあったからだ。 そんな俊子にそれとなく近づくもう一人の人物は、大学の先輩・内山明子(クレジットでは内“田”:有沢正子)。会田(今回は黒幕専任:天知茂)の調べで彼女は大上の娘だと判明。大上がプッシュする政治家のライバルと目される大学教授・森京介(クレジットでは“亮”介:久松=スポック=保夫)を出馬させまいという陰謀の匂いを背後に感じ取った会田は、黒い霧を一掃するためにも出馬してほしいと森に談判する。 いっぽう俊子は明子から、いなくなった旦那の代わりに指導教官の森先生に出馬を止めるよう説得しなさい、でないとあのことバラしちゃうから!と脅迫を受けていた。俊子は助手時代、森と不倫関係にあったのだ(しかも息子の本当の父親は森先生)。仕方なく森を呼び出した俊子だが、何も言えずに戻ってきてしまう。そして明子に夫の3千万を返して関わりを避けようとするのだが、俊子と同じく森に恋心を抱いていた(スポック先生、モテモテ)明子のジェラシーの炎はますます燃え上がり、それなら怪文書をバラまくわよ!と息巻き始めた。実は俊子の夫に真相を伝えて金を渡し、タレ込み情報を特捜に流した張本人は明子だった。 ここで右田・江沢コンビが登場、明子に手錠を掛けた。しかしその隙になぜか俊子が逃走、沼で自殺を図ろうとしたところを江沢刑事に止められた。過去をなじる夫をはずみで殺してしまった揚句、何もかもが表沙汰になってしまったことに絶望する俊子に、愛することは苦しむことだ、と江沢刑事はかつての彼女の言葉を静かに返すのだった。 息子を実母に預けて車に乗り込んだ俊子。母を追いかけ叫ぶ息子を、事の顛末を会田から聞き駆け付けた森はしっかりと抱きしめた―(昭和ブルースは2番) *タイトルからすると、殿山さん扮する大上VS会田がメインかと思いきや、過去のアヤマチに苦しむ主婦の俊子VS嫉妬に燃える明子のストーリーが強烈で、会田の影が薄い回。おまけに森教授への言葉が(真相が分かったせいもあるだろうが)最初と最後で正反対なので違和感も残る。(「出馬してくれ!」と言われてその気になっていたら「こんなことになってるのにそれでも出馬するんかお前!」ってな調子で睨まれるセンセイが哀れだ)
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2007,10,13, Saturday
#76「兇悪の献身」(1975年・S50・3月13日OA)
山中湖畔で二重底になっている死体置場が発見された。2時間枠のミステリードラマを十分引っ張れそうなツカミとはいえ、さすがは(?)非ライ、あっという間にタネが明かされた。 数々の会社にインヴェードしながら、師と仰ぐ酒匂(=さかわ)静山(瑳峨善兵)の政治結社へ黒い資金を送り込んでいるヤリ手男・中本徹也(根上淳)が、からくりを知った部下を殺害、たまたま湖行きを目撃していたらしい男も口封じし、ひとつめの死体の上にカモフラージュとして乗っけておいたのだ(オープニング早々バレているのでカモフラージュもなにもあったもんではないのだが)。 被害者を誘い出すなど、ふたつの殺人を間接的に手伝ったのは愛人の華道家・水科あやか(小山明子)。命の恩人である中本に献身的に尽くすあやかは、彼を糾弾しようとする会田(天知茂)ら特捜部の行く手に立ちふさがり、証拠を握らせようとしない。あやかの悲惨な境遇を知り、男にすがるしか生きるすべがなかった彼女に同情を禁じ得ない右田刑事(左とん平)は張り込みを続けながらも複雑な心境だ。 あやかの線から足がつきそうだと踏んだ中本は、彼女に“すべて自分がやった”と書いて自殺するようほのめかす。体のいい厄介払いだが、それでも中本命のあやかは遺書をしたためて薬を飲む。 翌朝、何食わぬ顔で家族と出かけようとしていた中本に、会田は逮捕状をつきつけた。チンピラを雇って殺しに使ったスコップの指紋を改ざんしようとしたことが直接の証拠となったのだが、「あのひと(=中本)はやっていません、そんなひとじゃありません!」というあやかの物狂おしいまでの献身愛が詰まった遺書は、結果として彼の犯罪を激しく肯定していたのだった。 右田の素早い判断で命を取り留めたあやか。格子のある病室でうつろな視線をさまよわせる彼女は今、何を思うのか――(昭和ブルースは1番) *小山明子さん(旧姓は天っちゃんと同じ「臼井」さんだそうで)といえばちょっとプライドの高そうなチークダンスの女医さんのイメージが強いので(#54「兇悪の砂丘」)、今回のように極貧で育ちひたすら男に尽くしてます、ってな役柄は違和感があった。 そういえば根上淳さんだって大田黒(#113「男」)だしなあ。←どちらも放映順序が逆とはいえ先に見てしまったので刷り込まれてしまっている *ラストは会田が政界の黒幕・酒匂静山(このシリーズにおいて、鯉に餌をやっていたり畑を耕していたりするようなネイチャーおやじはたいてい黒幕と相場が決まっている)にがちゃりと手錠をかけておわり。
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2007,10,08, Monday
#75「兇悪の夜の蝶」(1975年・S50・3月6日OA)
産婦人科医が相次いで殺される事件が発生。犯人の目星はすぐについた。階段から落ちた身重の愛妻をたらい回しにした揚句に死に至らしめた医者たちを、夫が血祭りにあげていたのだ。夫・下川(手塚茂夫)の次のターゲットと目される医者・落合(田中明夫)は、モルヒネの密輸疑惑で会田(天知茂)たち特捜部にマークされていた人物。悪徳医者の匂いがぷんぷんする彼には高級クラブのママ・華子(篠ヒロコ)という愛人がいて、下川はまず彼女に接触を図ってくる。 華子は高利貸しへの利子の返済に追われながら、たったひとりの肉親である義理の弟・徹(大石悟郎)のための援助を惜しまない弟想いの女だった。弟に歳が近い下川の訴えに同情を覚えた彼女は、返済金を出し渋るパトロンの落合を「彼(=下川)にあなたの居場所教えちゃうから」と脅しにかかる。 下川逮捕への協力要請を突っぱねる華子に「ハダカにしてやる」と闘志を燃やした会田は(「…どこで?」と右田刑事ナイス突っ込み)、愛する弟が彼女に貰った金をぜんぶ競馬につぎ込んでいる事実に直面させるが逆効果、華子の態度はより頑なに。そこで、愛人を持つ父を苦々しく思っている落合の娘を抱き込んで、落合自身に下川の居場所を聞き出させる計画に出る。 かくして、娘が誘拐されたと慌てる落合に華子は下川の待つ場所を告げた。そこで落合は待ち構えていた下川のナイフに倒れ、会田は下川だけでなく、瀕死の落合にも手錠をかける。驚く華子に、高利貸しの黒幕は落合だったことを告げる会田。羽をもがれた夜の蝶・華子の虚勢は崩れた。しかしその表情にどこかさばさばしたものを認めた会田は静かにその場を後にする。そして、刺された落合は下川の妻同様、いくつかの病院で門前払いされているうちに死亡。因果応報という言葉をかみ締めてか、会田は車中から夜の闇をじっと見詰めていた――(昭和ブルースは1番) *昔のお父さんに戻すために手助けしてくれ、とか言って落合の娘に協力させたのに結果的に見殺しにしちゃった会田、後から娘に恨まれてるんじゃなかろうか。 *「こうでもしないと君はいつまでも夜の蝶の羽をつけたままだからね」「せめて夜露に濡れて羽を痛めぬよう祈っている」など、華子へのムード満点なセリフが印象的な今回の会田。クラブでブランデーグラスをくるくるしている姿も雰囲気良好。 *退職デカの吉田さん(多々良純)経営の居酒屋「吉田署」が今回で閉店。それなのに矢部さん(山村聡)以外は張り込み多忙中とかで姿を見せず「特捜部みんなの分の杯は俺が飲み干す」と部長ひとりが大奮闘。華子さんの歌を2曲も聞いてる場合じゃないだろう会田!
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2007,10,07, Sunday
#74「兇悪の夫婦」(1975年・S50・2月27日OA)
三河社長夫妻(金田龍之介&弓恵子)のひとり娘・君子が誘拐された。身代金3000万を要求され、夫人の葉子が引き渡し場所へ向かうが犯人は現れず(おもむろに後ろ向きで現れたのは会田だったというオチ付き ←ヒールの高さですぐ分かりますがな)、あんたら警察のせいだ!と三河に責められ追い出された会田(天知茂)と坂井(宮口二郎)、南(望月太郎)の特捜部の面々は形無しだ。 夫妻は子会社が提供するTV番組を中断して犯人に切々と訴えかける。それが功を奏したのか、君子が自力で帰宅。その子会社の製品(石鹸)の売上は急増、新しい化粧品も近日発売される、というウハウハな会社の状況を知った会田は、君子の実の両親である三河夫妻に疑いの目を向ける。 彼の読み通り、会社の業績アップを図るために娘の誘拐を計画、金に困る若い小谷夫婦(長谷川明男&京春上)に実行させたのは三河夫妻だった。失明の危機に瀕した画家の夫・昭治の手術代のため、三河の子会社で働いている妻のマキは社長の言う通りに夫と共謀し君子を拉致。しかしふたりに懐き、家に帰りたがらないそぶりすら見せる少女に心を打たれ、金を貰わずに姿をくらましてしまう。 帰宅後、検査入院させられた君子は、昭治に贈る千羽鶴を折り続けていた。新製品の発表前に小谷夫婦に余計なこと(=自首)をされたくない三河は妻に命じて彼らの居場所を娘から聞き出そうとするが、夫妻が大好きになった君子はかたくなに沈黙を守る。だが夜に病室に来た会田が、昭治の手術に間に合わせようとせっせと鶴を折る姿を見て態度を軟化させ、彼らを罰しないという約束で知り得たことをすべて打ち明けた。 翌日。新製品のお披露目を終え満足気な三河の前に、君子がいなくなったと慌てる葉子が駆け込んできた。そこへ君子を連れた会田が現れ、逮捕令状をかざす。何を証拠に、と開き直りかけた三河夫妻の前に、会田の温情で夫の手術を見届けたマキの姿が。 会田は君子の目の前でマキに手錠を掛けた。「おじちゃんの嘘つき! おばちゃん達を許してくれるって言ったじゃない! 悪いのはパパとママなのよ!」泣きながら会田に打ち掛かり、実の両親に目もくれずマキに抱きつく君子。そんな娘の様子に、三河夫妻は肩を落として罪を認めるのだった。 小谷夫婦が釈放されるまで、君子は“吉田署”に預けられることに。朗らかな表情で栄子(大川栄子)と通学する彼女を会田はそっと笑顔で見送った(昭和ブルースは1番)。 *登場する2組の夫婦の兇悪さが逆転する展開。#16 「兇悪の青い鳥」に続いてまたまた少女に憎まれてしまう会田だが、どんな理由があれ罪は償わねばならないのだということをびしっと体現してみせるあたりがイイ。おまけに今回は落ち着きを取り戻した君子ちゃんに「…おじちゃ〜ん」と切ない目つきで縋られてしまう子供キラーぶりも発揮。 *兇悪夫婦の葉子夫人・弓恵子さんはダンナ様(=宮口二郎さん)に手錠をがちゃりとやられていた(って、もう結婚されていたのだろうか?)
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2007,10,06, Saturday
#73「兇悪の白い花」(1975年・S50・2月20日OA)
「俺は女ってものが信じられないんだ」 テーブルに小さな白い花(クチベニスイセン)が置かれたレストラン。 涙目で縋るカノジョに冷たく言い放って席を立ったのは坂井刑事(宮口二郎)。俺は結婚する気はないから見合いでもなんでも勝手にしろ、とつれないセリフを吐く後輩(=弟子)に苦笑しながら、後ろの席で会田(天知茂)はレアのサーロインをぱくついている。 部長(山村聡)の命令で会田と行動を共にすることになった坂井は、さっきの件があるので会田といるのがちょっと気づまりな雰囲気。今回の任務は、銃を奪って銀行強盗を重ね指名手配中の伊佐山努(吉田次昭)の5年前の恋人・窪川恵子(鮎川いづみ)を24時間監視することなのだが、世の女性全体が信用できない坂井には無駄骨に見えて仕方がない。しかも恵子には結婚間近のフィアンセがいるのだ。だが会田は、恵子が毎夜さびしそうに白い花(クチベニスイセン)に水をやっている姿に、彼女がいまだに努を忘れかねていることを見てとる。 集団就職で苦労を重ねつつ愛を育んできた努と恵子は、恵子の妊娠を機に郷里に帰ろうとした矢先に大規模な学生デモに巻き込まれ、努は誤認逮捕、恵子は流産という不幸に見舞われた。クチベニスイセンは、ふたりの郷里の花でもあるのだ。 「女は、正直なんだよ」 過去など忘れ、今の幸せを享受しているかにみえるそんな女に男がのこのこ会いにくるはずがないと決めつける坂井に、会田は言う。「それなら男は、俺は不正直なのか・・・!」張り込みの最中に件のカノジョと見合相手に出くわし心穏やかでない坂井は、後からわざわざカノジョが届けてくれた手紙とマフラーを捨ててしまう。 しかし努は恵子に接触を図ってきた。会田たちに取り押さえられた努は、恵子に子供の金を渡してやりたかっただけなんだと叫ぶ。彼の気持ちを知り、婚約を解消して努をずっと待ち続けたいと言う恵子を見て、坂井はようやく会田の言葉を理解し、カノジョに会いに行くことを決意。そんな坂井に、会田は取っておいたマフラーを渡してやるのだった(昭和ブルースは1番) *メインストーリーと併せて坂井刑事の心の葛藤が手に取るようにわかる、味わい深い作品。会田はもっぱら酸いも甘いも噛み分けたフェミニストの先輩に徹しているが、「じゃあなんで会田さんは独身なんですかあ!」とか突っ込まれたりしないあたりがさすがの師弟関係だ(そうなのか)。しかしこんな顔も衣装も目立ちまくっているコワモテふたり(会田&坂井)に張り込み・尾行させるなんて、矢部さんどういうつもりなんだか。 *朝のラッシュ時の駅、夕方の市場など、人がわんさかいる場所でのゲリラ撮影が多く、天っちゃんが至近距離にいるのを見て皆の目が見ひらいたり顔が微妙にへにゃっと歪んだりするのが結構可笑しい。
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2007,09,27, Thursday
#72「兇悪の純愛」(1975年・S50・2月13日OA)
女優の茜ひとみ(朝丘雪路)はパトロンの金融商会を訪ねようとした際、思いがけず郷里の先輩、英之(山下洵一郎)に再会した。だが英之と数人の仲間が出てきた金融商会の中は血の海、ひとみはビックリ仰天。 彼らが強盗殺人を犯したことを週刊誌で知ったひとみ。彼女の車が現場の近くにあったことから、車の中や自宅マンションの中まで勝手に入り込んで問い詰めるしつこい刑事(=会田:天知茂)が現れるが、彼女は知らぬ存ぜぬを通す。スキャンダル女優として悪名高いひとみだったが、かつて恋仲だった英之への想いだけは清らかなまま保ち続けていたからだ。 その英之がひとみに接触を図ってきた。 ――故郷の金沢にいる両親にひとめ会ってから自首したい、そのためにどうしても君の車が必要なんだ。 その言葉を信じたい彼女は協力を誓う。しかしひとみは、英之が既に仲間のひとりを射殺し、奪った500万円すべてを持ち逃げしようとしている事実を知らなかった。裏切られた仲間の中根(黒部・ハヤタ・進)たちは金を取り返さんと、ひとみから英之の居場所を聞き出そうとするのだが、英之ラブの彼女は彼らの脅しに屈しないばかりか、自分が500万を出そうと持ちかける。 英之にはさらにOL連続殺人犯という余罪もあった。あんな男を庇う必要はないと(またちゃっかりマンションに潜り込んで)諭す会田にさえ、ひとみは自分の肉体と引き換えに英之を見逃してくれと懇願。実はそのときすでに、一課との協力体制(&会田の冗談みたいなガンさばき)によって英之は逮捕されていたのだが、彼女の一方的ながらもひたむきな純愛を目の当たりにした会田は、黙ってマンションを去る。 翌朝、金を下ろしたひとみに近づいた中根たちを、橘(渡辺文雄)ら一課のメンバーが一網打尽にした。呆然とするひとみに英之逮捕を告げる会田。「尾方(秀之)はあなたの夢の中で生きるような男じゃない」 でも美しい思い出だけは大切に、そう言って去った会田の言葉を胸に、ひとみは英之との思い出の“起き上がり”(金沢名産の可愛いダルマ)をじっと見つめるのだった。(昭和ブルースは1番) *相変わらず肩章付きトレンチをぱりっと着こなしている会田だが、やたらと立体感のある黒のごっついネクタイが気になって仕方がなかった。あれは総絞りなのか、それともフリルなのか? *橘班長さんとのアイコンタクトな関係が相変わらずクールでいい。 *英之役の山下さんは『ごろつき犬』『鉄砲犬』で天っちゃんと共演しているが、どちらも幸薄い極道役の山下さんが先に死んでいるので接点はなさそう。 *女性はお手のもの、な大門刑事(高城丈二)登場。週刊誌の新米記者に扮してひとみに接近するも、一課の連中にバラされておしまい。 *自らの夢をひとみに託す付き人・珠子さん(小桜京子)もいい味を出していた。
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2007,09,23, Sunday
#71「兇悪の十字架」(1975年・S50・2月6日OA)
少年院での刑期を終えた後、保護司・中村(名古屋章)のすすめで教会でオルガンを弾く傍ら印刷所に勤める坂崎圭子(竹下景子)。彼女は毎日、女優の滝川江理子(司美智子)に白紙を送りつけている。作曲家だった父を奪い、母をノイローゼに追い込んだ江里子を刺して少年院に送られた彼女の江理子への憎しみは、まだ癒えてはいないのだ。 これ以上圭子に間違いを犯させては可哀想、との矢部部長(山村聡←今回出番無し)の気持ちを汲んで彼女の監視を請け負う会田(天知茂)。手紙の郵送を阻止した結果、再び江理子襲撃を図ろうとした圭子を制した会田は、彼女の心を覆う深い闇を憂うが、そんな圭子を心配し、真摯に慕っている工員・高岡浩二(山下雄三)の存在に希望をみる。 だが、蒸発した圭子の父が冷たい亡骸となって発見されてまもなく、江理子がホテルの一室で殺害されるという事件が発生。一課は圭子を容疑者として取り調べるが、彼女は頑なに否認。会田はマネージャーの望月(穂積隆信)を締め上げて江理子の男性関係を掴み、その夜ホテルにいたという男を連行する。しかし現場に残されていた指紋は彼のものではなかった。 まさかと思いつつ会田はある品を一課に託す。――付いていた指紋は、現場と一致した。彼が渡したのは、高岡にもらった手作りの湯飲み。父の死で暗さを増した圭子を心配するあまり、江理子から謝罪の言葉を引き出そうとホテルに乗り込んだ高岡は、男をしゃぶり尽くす江理子の魔性を目の当たりにし、咄嗟に手をかけたのだった。 教会にいた高岡を連行する会田と一課の刑事たち。そこへ現れた圭子の目の前で、会田は高岡に手錠を掛けた。彼が乗せられた車に追いすがり地面に崩れ落ちた圭子を残し、会田は無言で歩み去る・・・(昭和ブルースは1番) *不幸な境遇の圭子。だがそこから抜け出せずにひたすら憎しみを引きずり続けた結果、高岡に殺人を犯させてしまうその業の深さが重く哀しい。またこの無常のラストに昭和ブルースの切ない調べが似合いすぎるのなんの。 *でも「彼女(=圭子)を見守ってやってほしい」と高岡にわざわざ頼みに行った会田のひと言も彼を殺人に駆り立てた動機のひとつだったりして。 *高岡役の山下雄三さんは必殺シリーズの名曲「荒野の果てに」を歌っている山下さんと同一人物のようだ。 *「ねっとりとした年増好みかと思ったら、案外部長もカワイ子ちゃん好みの出歯亀だな」矢部さんがいないと思って言いたいこと言ってる会田。坂井さん(宮口二郎)聞いてるぞ。
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| TVドラマ(現代劇)::非情のライセンス2 | 03:41 PM | comments (x) | trackback (x) | |