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非情のライセンス 第2シリーズ #44
#96「兇悪のヌード」(1975年・S50・8月7日OA)

おねーちゃんとプールでいちゃついている最中に大会社の社長が射殺された。だが犯人は何者かに狙撃され死亡。捜査一課の橘警部(渡辺文雄)らが遺体の弾を調べているところへフラリと現れた会田(天知茂)は、同じライフルの弾をちらつかせて協力を申し出ると思いきや、いつもの調子で物別れ。

右田(左とん平)は狙撃犯がいた疑いのあるマンションでひとりの女に目星をつけていた。だが昼食を奢ってもらおうという下心(?)で会田に報告したせいで先を越され、会田はちゃっかりその女・モデルのエリーゼ堀こと堀内久子(川崎あかね)の部屋を訪れ、見知らぬ男に押し入られたという状況をお色気ムードで再現して(させられて)、剃刀の替刃に残る男の指紋から彼女の嘘を見破った。

死んだ男のムショ仲間・城山(浅見小四郎)に接触し、情報を得ようとする会田のやり方を橘は非難。法の遵守こそが日本の警察を世界一たらしめているのだと力説する未来の警視総監に向かって会田は「日本の警察が世界一である所以は、ひとりひとりのおまわりが命を的に働いているからだ!」とやり返し、タイミングよく城山から掛かってきた決死の電話に反応した橘を咄嗟に殴り倒す

真犯人・星川(今井健二)は城山たちのかつての看守で、お前たちに便宜を図ったせいで職を追われて落ちぶれたのだと脅し、大臣暗殺を持ちかけてきた。特捜部は城山を保護して一芝居打ち、星川をあぶり出すことに成功した。・・・かに見えたのだが、彼がいた屋上に余計なアベックがいたせいで計画は頓挫、橘や矢部警視(山村聡)がなすすべもなく見守る中、やけっぱちの星川は人質にとった女性を脱がせ青空ストリップを敢行。と、そこで無言で一発ぶっぱなして星川を仕留めたのは会田だった。

犯人を射殺したかどで査問会議にかけられる会田だが、上司の矢部警視だけでなく、なさぬ仲の橘警部までもが「会田警部補ほどの勇気と決断力を持ち合わせていたら、おそらく私も犯人を射殺していたでしょう」と彼の行為を正当化してくれた。そんな自分が腹立たしくもありテレくさくもある橘さんはバーで泥酔、やってきた会田を先刻のお返しとばかりに殴り倒しておしぼりで顔を塞ぐ。それでも会田はどこか嬉しそうにされるがままになっていた(昭和ブルースは1番)

*ライバル・橘警部との味わい深い人間関係が炸裂。反目しながらも相手を認めている様子がよく分かって大変いい感じである。

*日本の警察は世界一だ、というところで、かあちゃんは警官のとうちゃんを切り火を切って送り出し、いつ死体になって帰ってくるかもしれない覚悟を抱いているんだ云々と語る会田。あんたにかあちゃんいないじゃん、と出かかった前に「だからって情報屋を使っていいという理由にはならんよ!」との橘さんの突っ込みに頷いた。まったくだ。

*第1シリーズでとん平さん(=竜巻太郎)のヨメさんだった小牧リサさんが城山の妻役で登場。でもとん平さんとの絡みはなし。

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非情のライセンス 第2シリーズ #46
#98「兇悪の閃光」(1975年・S50・8月21日OA)

(朝日新聞「試写室」8月21日付記事引用)
今夜の「兇悪の閃光」ではベテランの会田刑事(天知茂)が広島へ飛ぶ。東京で起こった殺人事件と麻薬ルートの捜査をするためだ。暴力団員になりすましてあるバーのマダム(高田美和)に接近。話していくうちに、この女性が麻薬に、さらには原爆と関係あることがわかってきた。脚本・安藤日出男、監督・松島稔。
美しいマダムは、白血病への不安から麻薬におぼれたのだった。母親(賀原夏子)が娘時代に原爆投下直後の広島市内を歩いているからだ。彼女の不安は、同じ境遇に生まれた親友の死で倍加される。自暴自棄になるが、会田刑事は自分の過去を打ち明ける。父母は原爆で死に、自分も二次放射能を浴びている。しかも、元気に生きているではないか、と。
連続ドラマの1回だ。推理劇という制約を投げ出すわけにもいかない。だから、不満な部分はいろいろある。しかし、映画やテレビのドラマ担当者がそろって「戦争」を忘れてしまった昨今だ。困難な条件の中で、被爆二世という具体的なテーマに取り組んだ熱意は、高く評価してよいだろう。製作費の関係で広島ロケは1日だけだった。賀原夏子が広島弁を広島出身の杉村春子に教えてもらいに出かけた、という話も聞いた。

「俺は広島に帰ってきた。・・・が、帰ってきたのはあの一瞬の閃光で死んだ両親の墓参りのためではない」 原爆ドームでひとしきり(ちょっと泣きそうな感じがしないでもない)まぶしい顔をした後、会田は広島県警の山形さん(田崎潤)を訪ねてさっそく事件の話。どうやって単独捜査を、と心配する山形さんに不敵な笑みを見せた会田はその夜、そのスジの人以上にそのスジっぽいいでたち(ストライプ入りの白スーツにグラサン姿)で街を闊歩、いたいけなヤーさん連中を存分にいたぶっていた。

*高田さん扮するバーのマダム・淑子にはインテリ青年風の恋人・芳男(平井昌一)がいたのだが、結婚しようという段になって初めて、自分が被爆二世であることを母から打ち明けられて大ショック。しかも今までピンピンしていた被爆二世の親友・弘子(松木路子)が急性白血病で倒れ、死への不安と恐れでヤクの世界へ堕ちていったのだ(ちなみに松木路子さんの旦那様は放送作家・永野靖忠氏らしいが、これは監督の永野さんだろうか?)

*当時は広島市外に疎開しており(#9「兇悪の口紅」の“学校に行くときに見た母の顔が最後”云々とは微妙に設定が違ってきている)、原爆投下翌日に市内に入り、足を棒にしながら両親を探したと語る会田。「だからこの身体は二次放射能を全身に浴びている。それでも俺は、歯をくいしばって生きてきた…」だがその俺よりも(白血病で死んだ)弘子さんはずっと立派だった、その彼女を悲しませるのか! と、死にたがる淑子に圧し殺した顔と声で訴えかけ、麻薬ルートの全容を聞き出すことに成功した。

*最後は鳩が飛ぶ平和記念公園で、いまだ愛し合う恋人同士を引き合わせてから会田は機上の人に。ロケお疲れさまでした。

*(2010.7.14追記)機上の人となった会田に被って昭和ブルースは♪見えない鎖が〜♪の4番。

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非情のライセンス 第2シリーズ #43
#95「兇悪の密室」(1975年・S50・7月31日OA)

経営状態が悪化の一途をたどる暁化粧品は、新薬の開発で起死回生を図ろうとしていた。ところが、その新薬を盗み出し会社を潰そうとする圧力にも耐え、明日の株主総会さえ乗り切れば、という段になって社長・五十嵐(野口元夫)が社長室で倒れてしまった。戦時中から五十嵐社長と二人三脚でやってきた副社長・片桐(内田朝雄)は病院よりもまず特捜部に電話をかけ、駆け付けた会田(天知茂)らに「会社を護ってくれ」と懇願する――。

一課の応援で新薬の強盗未遂事件を担当、片桐の非協力的な態度に辟易していた特捜部の面々は、この筋違いの要望に「警察は一企業の利益を守る番犬じゃない」と難色を示しながらも、犯人逮捕の名目でならと密室と化した社長室に張り込んだ。その結果、経理課長(穂積隆信)が怪しげな経済研究所(インターナショナル研究所)の沼田(南道郎)とつるんで会社の解体を狙って強盗を仕組んだことなどが判明、四方(葉山良二)らが実行犯を追う一方、会田は社長室に探りを入れにきた沼田に番犬よろしくヤキをいれ凄む。

極秘裏に連れてきた主治医・金沢(ケーシー高峰)の手当も虚しく、社長の容体は悪くなる一方だった。それでも親族にさえ連絡することを拒む片桐に対し、あんたは血も涙もないのか、そんなに会社が大事か!と会田の堪忍袋の緒が切れる。しかし片桐は、社長との思い出のシャベルを手にとりながら、自分たちにとって会社がどれほどかけがえのないものかを切々と訴えるのだった。

一夜が明けた頃、社長は息を引き取った。片桐は秘書の節子(有吉ひとみ)に命じて会田を遠ざけさせ、その隙に社長を自宅へ運ぼうとするが、片桐の執念に打たれたらしい会田はすべてを承知で見すごし、株主総会まで沈黙を守ることを約束した。

工作の甲斐あって、会社は倒産の危機を脱した。社長の葬儀に出向いた会田と右田(左とん平)は、新社長になるであろう片桐を祝福しようとするも、彼は常務の上野(高田浩太郎)に敗れたと肩を落とした。気力を失い、早く社長の元へ行きたいとしょげ返る片桐だったが、「今までのあんたはどこへいった! 堂々と胸を張るんだ片桐さん!」と会田に熱く励まされたことでようやく笑みを浮かべ、それを見ていた節子(やもめの片桐に想いを抱き続けている)の表情も和らぐのだった(昭和ブルースは4番)

なんでも屋と化していた特捜部だが、ラスト、あれだけ会社のために尽力したのに副社長になれず、おまけに社長の家族にも無視されて意気消沈する片桐さんの姿はシビアな非ライならではの図だった。

*徹夜明けにも関わらず、服も髪もぴっちりかっちりの会田。さすがだ。

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非情のライセンス 第2シリーズ #41
#93「生きてるだけの兇悪」(1975年・S50・7月17日OA)

川に浮かんだ溺死体には、縄で縛られた不自然な跡が。ガイシャは近頃若い女性に人気の『故里の命の会』創立者・北見健一郎(川辺久造)の片腕・岡谷。3年で代理店を任せるというアメで会員を釣り、会費と自己資金を募って民芸品を販売させているこの会が不動産で失敗し資金繰りにあえいでいることを突き止めた会田(天知茂)ら特捜部は、北見が岡谷の金目当てに殺したのではないかとアタリをつけた。

ところが死体を調べた科学警察研究所の石垣(大友柳太朗)は、他殺であるという証拠はどこにもない、と実につれない。事なかれ主義で冷めた目を持つそんな石垣だが、「地味は地味なりの勇気がいるんですよ」と会田にハッパをかけられたせいで少しずつ態度を軟化、死体の肺や衣服から別の場所で殺された可能性を示唆する証拠を発見する。

石垣が本腰を入れたもう一つの理由は、同じ下宿にいて甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる涼子(藤圭子)の存在だ。郷里の父に子牛を買うため『故里の命の会』に入会し、あと少しで自分の店を持てるまでになっている彼女は事件当日、現場近くで偶然北見を目撃、そのために北見に狙われる羽目に陥っていた。第二の故郷にするはずで渡った満州において、戦後の混乱のなか妻と子を一度に失った石垣は、「ふるさと」という言葉を多用する北見の会に激しい憎悪をみなぎらせ、涼子に脱会をうながすのだが、彼女には石垣のそんな思いは理解できない。

会田は石垣の反対を押し切って涼子を囮にして北見を誘い出すと、彼が涼子(に見立てたマネキン)の首を絞めようとしている証拠写真を撮り、岡谷殺害を自供させた。夢破れて♪ただ生きてるだけの〜バカな女さ〜♪と唄う涼子の涙にかける言葉はない会田だが、石垣とはすっかり意気投合、鄙びた居酒屋で共にアルコールの分析(=酒飲み)に精を出すのだった(昭和ブルースは1番)

*タイトル(正しくは「生きているだけの」ではなく「生きてるだけの」だった)は、本編中でも夕陽と会田をバックに流れていた藤圭子さんの歌「生きてるだけの女」より。

*理路整然としていながら心に熱いモノを有している石垣先生を好演した大友さんは、10話ぐらいすると「バカヤロウ、死んじまえ!」と会田に怒鳴りまくる熱血医師・山岸先生として準レギュラーに。

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非情のライセンス 第2シリーズ #42
#94「兇悪の時効」(1975年・S50・7月24日OA)

大富豪と結婚、巨額の富を得て凱旋帰国を果たした緑川俊恵(村田知栄子)の写真を見てひとりの娘が警察へ駆け込んだ。17年前、吉原の赤線「揚巻」で父を殺して指名手配された女主人・近藤まさ子に違いないというのだ。

まさ子=俊恵説を立証するため、会田(天知茂)らは当時店で働いていた売春婦たちの消息を調べるが、分かったのはただ一人・宏子(川口敦子)だけ。だが、過去をひた隠しにして優しい夫と子供に恵まれた今の幸せをつかんだ彼女は、証言するくらいなら死にます!と頑なに拒む。

殺人事件の時効が15年だなどと知っていて余裕を見せる俊恵はクロに違いないと睨んだ会田は再三宏子に証言を促す。精神的に追い詰められた宏子は昔の派手ないでたちで会田のマンションを訪れ、抱いてくれと詰め寄った。そうすれば死ぬ勇気が出るから、と――。しかしこの種の据え膳には絶対手をつけない会田の態度に我に返った彼女は、もし貴方の妻が昔売春婦だったとしたらどうする、貴方は許せるかしら、と涙ながらに訴える。しばらく言葉に窮していた会田は、夫婦の愛に賭けるしかないと諭した。

とはいえ、お前の内助の功のおかげで係長になった、と喜んでいる夫に真実は語れず、単身で俊恵の元へ乗り込んだ宏子は、彼女を銃で負傷させてしまう。やはり俊恵はまさ子だった。海外にいたために時効は成立しておらず、俊恵は逮捕された。そして会田は宏子に無念そうに言う。「あなたの時効は切れていたのに!」 実は17年前の殺人に彼女も加担しており、自分の罪まで暴露されることを恐れて俊恵を撃ってしまったのだ。なぜせめてご主人に打ち明けなかったのかと問い詰める会田の前で、宏子は泣き崩れた。

――男には分からないわ。一度あんなところへ堕ちた女は、どんなに誠実な人でも心から信じられなくなっているのよ…!

宏子の夫は会社を辞めたという。特捜部の面々は思い思いの格好で、今回の事件がもたらしたほろ苦さを噛みしめていた―(昭和ブルースは4番)

*夫や子供を一生騙し続けるんですか!と詰っていた会田だが、打ち明けたら必ずシコリになるであろう過去だけに、こればっかりは言いにくいだろうと思うなあ。

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非情のライセンス 第2シリーズ #40
#92「兇悪の棺桶」(1975年・S50・7月10日OA)

またもや問題を起こし、城北→城東ときて城西署に流されたヤンチャ刑事・弾三郎(北島三郎)。高校時代のGF・ミサ子(水上竜子)がヤク中で収監されているのを知りショックをうけた矢先に彼女は病院で何者かに殺されてしまい、怒りのボルテージは最高潮。ミサ子にヤクを流していたらしい平手栄次(西沢利明)という男を探しにゆく。

そんな鉄砲玉みたいなサブちゃんに「危なっかしくて見ちゃいられねえや!」と一肌脱いでやることにした会田(ストライプ・シャツにグリーンのネクタイが映える天知茂)は、一足先に平手の妹・弓江(田坂都)が切り盛りしている居酒屋に銀ブチメガネの助教授(専門は言語学)に扮して内偵に入り、流しに扮したサブちゃんを迎えてやった。

明け方、店を訪れた栄次を問い詰めるサブちゃんだが、彼がミサ子の口封じを命じられて果たせず、自首するつもりだったと知り態度を和らげる。しかし栄次も組織の手で狙撃され死亡。かくしてサブちゃんは麻薬取引が克明に記された形見の手帳を元に、会田のバックアップで大物退治へと乗り出すことになる。

まずはあてずっぽうで神戸(天津敏)・山寺(浜田寅彦)という男たちに接触、ヤクを売りたい怪しい某国王子(=サブちゃん)と彼を“暗殺”する反体制派の諜報部員(=会田)という寸劇で煙に巻き、彼らの上にいる大貿易会社社長・石坂(大森義夫)を吊り上げることに成功。彼の娘・涼子(小野恵子)とは冒頭で許婚・来宮(佐々木功)から嫌がらせを受けていたところをサブちゃんが助け舟を出した関係であったため、占い老人に扮したサブちゃんが事前に彼女を味方につけ、神父=会田新婦=サブちゃんで結婚式に乱入、麻薬売買の生き証拠・山寺を棺桶に突っ込んで運び込ませ、啖呵を切るのだった。(昭和ブルースは3番)

*「北島三郎ぐらいの歌手になれよ!」「刑事より俳優の方が向いてるんじゃないすか」なんていう楽屋オチ台詞も笑える、サブちゃんとの変装合戦。日本語が達者なグラサン&髭の諜報部員(白スーツにこってりネクタイ付き)が一番似合っていたことはいうまでもない。

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非情のライセンス 第2シリーズ #39
#91「やさしい兇悪」(1975年・S50・7月3日OA)

北海道からフェリーで帰る途中の会田(天知茂)の部屋(特別室)へ逃げ込んできた密航少年・湯山賢治(中井徹)。便りが途絶えた出稼ぎの父(牟田悌三)の身を案じ、母(天地総子)や妹たちに黙って家を出てきたらしい。

珍しくオールキャストが揃った(南刑事=望月太郎はいなかったが、もはや誰も気にしていないのかもしれない)特捜部ではリンチ殺人事件を追う一方、会田の北海道みやげ・賢治少年の父親探しにも皆でひと役買うことに。やがて、失業者たちを騙して強制労働させている暴力団組織の存在が浮上、潜入捜査に向かった会田は男たちの中に身体を壊した賢治の父を発見する。

リンチ事件の犯人でもあった関西ヤクザ(北町嘉郎)らは特捜部により一網打尽、かくして湯山親子はめでたく再会を果たした。「忘れないよ、会田健という名を」「俺も忘れないさ、湯山賢治という名をな」親子の乗った船に向かって、会田は笑顔で手を振った…(昭和ブルースは1番)

…という、非ライにしては甘め(単純?)なストーリーは、交通事故死した実在の賢治くんの名前を拝借して作られたもの(詳細はこちらの記事に)。予告とエンディングにその旨が流れるあたりに少々あざとさを感じてしまうとはいえ、とにかく今回の特記事項は天知茂・初監督作品であること。レギュラー陣がやけに嬉しそうに画面を往来するうえ、ピンポイント・ゲストがやたらと多く、現場でのちょっとしたお祭り騒ぎが想像できるのが楽しい。

そして肝心の演出は、特捜部室の少し変わったアングルの撮影、長回しロードムービー風(水面ショットなど)、スローモーションにコマ劇場(=ぐるぐる)と、これまた天っちゃんの凝り性な面が随所に出ていて興味深かった。ただ凝りすぎて予算オーバー、始末書モノだったそうで(ワイズ出版「天知茂」池田さんの証言より)、それが影響してかどうか、非ライ上、最初で最後の演出作品となってしまった。

*前回の悲しいラスト(#38「男のうたは兇悪」)の後の予告編にて、セカンドLPの表紙みたいな格好(ただしノー金鎖)で「はいカットー」とかやってる天知監督がばっちり映るせいで涙が引っ込んだ。「だめだろ、爪噛むんだろお?」と子役に指導してる監督、けっこう怖い。

*ちなみに賢治君の爪を噛むという癖は天っちゃん本人の癖(ワイズ出版「天知茂」より奥さま談)からきているのかもしれない。ラストで賢治君の「忘れないよ」を思い出し、釣られたように爪を噛んじゃう会田がご愛敬。

*友情出演枠で桜町弘子さん(屋台の女将)・弓恵子さん(だるま船の女)・毒蝮三太夫さん(だるま船の船頭)・倉丘伸太朗さん(船員)。そのほか、天知ファミリーも「傷の男」(北町さん)だの「額際の薄い男」(岡部さん)だの投げやりな役名で(人数多すぎて名前考えられなかったのか?)もちろん出演。

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石の林
土曜劇場「石の林」(1962年・S37年 1月27日OA)フジ 20:00-21:00
原作:樹下太郎
出演:河野秋武(速水竜伍)、瞳麗子(速水麻子)、天知茂(金杉東三)、富岡恵子(高遠万千子)、鬼頭昭夫(年山栄次郎)、早川研吉(時ちゃん)、谷口徹次、西川豊子
(以上、朝日新聞縮刷版より引用)

原作を読んでみた。
順風満帆な人生を送っていたはずの課長・速水は、娘の麻子につきまとうチンピラを巧妙なアリバイ工作の末に撲殺し、そのアリバイに無意識に勘づいた部下をも自殺に見せかけて殺害した。だが死んだチンピラの兄貴分が麻子を脅迫、そのうえ小柄機敏油断のならない部下の金杉(=天っちゃん)がじわじわと真相に肉薄してきたために進退窮まり、家族と自分の尊厳を守るため、最後の賭けに出る…というのがあらすじ。「石の林」というタイトルは、人を殺める場所が石切り場だったり墓場だったりすることから付けられているようだ。

毒舌家だのニヒリストだのと描写されている(おまけに女房は3度も取り換えている)金杉くんは課長とソリが合わないせいで出世を妨げられており、その恨みを晴らしてやろうとの思惑で事件に首を突っ込む。殺された部下の恋人だった万千子に接近、ドンファン気取りでガバッといただいちゃったあとで誠実な面も示すというダーク・ヒーロー的な人物なのだが、速水課長が彼も消してやれと考える前に刑事に目をつけられ自己完結してしまうので、扱いがすこしばかり中途半端になってしまっているのが残念だった(とはいえ殺されてもイヤだが)。

(2013.3.12追記:毎日新聞夕刊より引用)
【三谷は死んだが】
樹下太郎原作。速水の部下三谷は酒におぼれ、ある日死んだ。警察は睡眠薬の飲みすぎ自殺と断定した。しかし三谷とライバルの立場にある金杉には、それが自殺とは割り切れなかった。金杉は三谷の死の一か月半ほど前に、速水の娘麻子につきまとう男が何者かによって殺された事件を思い出した。二つの事件はどこかでつながっているのではないか?

速水=河野秋武、麻子=瞳麗子、金杉=天知茂、万千子=富岡恵子、三谷=志摩晶ほか。
*この記事では、謎解きをしていく金杉が良い人っぽくみえるのだが、果たして…?

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非情のライセンス 第2シリーズ #38
#90「男のうたは兇悪」(1975年・S50・6月24日OA)

産業庁の課長補佐が投身自殺、などという物騒な記事を電車内で読みながら会田(天知茂)が向かった先は北鎌倉の小谷邸。中学からの親友・英明(神山繁)の父の命日なのである。精糖会社の課長になった英明は毎夜忙しい様子とのことだが、母・清子(南美江)は昔と変わらぬ温かさで会田を迎えてくれ、かつて彼と英明が植えた泰山木を見ながら思い出話に花を咲かせる。

本庁へ戻った会田は部長の矢部(山村聡)と二課二係(=汚職などの知能犯罪担当)の伊佐山(渥美国泰)に呼ばれた。「君は親友に対しても部内の秘密を明かさんという約束ができるか?」 特捜部でも警官のはしくれですがね、と憮然とする会田に伊佐山は、先刻の課長補佐・池谷(西本浩行)の投身自殺が“さんずい”(=汚職)絡みだったこと、池谷や政界の黒幕などに金をバラまいていた張本人が神山精糖の小谷英明であることを告げ、捜査への協力を要請する。「せっかくだが出来ません!」 きっぱり断る会田だったがタイミングの悪いことに当の英明から「今夜一杯やらんか」と電話が入り、仕方なく出向く羽目に。

親友の無実を信じたい会田の気持ちとは裏腹に、英明は酒席に上司を呼んだり高価な布地を送りつけてきたりといかにもな行動を取る上、神山精糖の子会社で優遇されている池谷の妻、クラブのママで英明の愛人・紀子(谷口香)らの証言により収賄の容疑は濃厚となる。サシで会い、自首をそれとなく勧める会田を「なぜそう俺を追い詰めるんだ!」となじった英明は、友達だからだ、と諭す彼の言葉に聞く耳を貸さず、話し合いは決裂。

高跳びのためか、英明のブラジル出向が決まったその夜、会田は逮捕状を持って小谷邸へ赴く。事情を薄々察していながら、それでも明るく自分を歓待してくれる清子の心づかいが会田には辛い。帰宅した英明は観念したように黙り込むが、取り調べ室ではあくまでシラを切り通した。やがて空が白み始めた頃、会田の吸いかけの煙草を深々と吸い込んだ英明は、洗いざらい喋ると言いながら看守の目を盗んで窓から身を躍らせて死んだ。

彼の死により汚職事件の捜査は頓挫。葬儀に出向いた会田に愛人の紀子は「あの人を殺したのはあなたよ!」と辛辣な言葉を浴びせかける。だがそれよりも気丈な清子の「いいんですよ会田さん…」の一言がこたえた会田は、満開の泰山木を見上げて涙を流すのだった(男のうたは1番)

*希望に満ち固い友情で結ばれていたふたりの男の悲しい別れ(逮捕状を持っていったシーンと煙草のシーンは泣ける)を彩った泰山木の花言葉は「前途洋々」。

*親友だけあって、頑固さや忠誠心の厚さは似た者同士の英明くんと会田くん。会田がフルネームで呼ばれまくるのはこの回は初めてでは? それにしても、普段の会田なら英明に汚職を実行させていた上司をボコ殴りするくらいはやってのけると思うのだが、それどころではなかったらしい。

*[会田データその1] 広島から横浜のおじさんちに居候して、コウホク(港北?)中学を昭和27年に卒業。
*[会田データその2] 梅桃(ゆすらうめ)が好物で、かつて食べ過ぎてお腹を壊した(清子さん談)
*[会田データその3] 現住所は「渋谷区神宮前2-3-15 パシフィックマンション内 tel:466-3618」(布地の宛名書きより…って、マンションはともかく、この住所実在してるんだ…)

*第1シリーズから続いていた「兇悪(の)…」タイトル頭文字が逆転。

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非情のライセンス 第2シリーズ #37
#89「兇悪の倒産」(1975年・S50・6月19日OA)

働き者のおはな婆さん(村瀬幸子)は、たった一人の肉親である可愛い孫の昌一(大森久綱)の初出勤を祝って大張りきり。ところがうかない顔の昌一は当日になって打ち明ける。「採用取り消しになっちゃったんだよお」

その夜、就職先だったはずの番城電機は炎に包まれた。

現場でおはな婆さんが目撃されたことから、所轄の弾三郎刑事(北島三郎)が聞き込みに。孫の就職先を必死に探すおはな婆さんの姿に打たれ、彼女が犯人であるはずがないと思いたい彼に部長刑事(会田より派手なスーツのディック・ミネ)から朗報が入る。出火の原因は時限爆弾によるものだったのだ。

ところが、中学生レベルのその爆破装置を作った容疑者として、孫の昌一が連行されたと知りびっくり仰天。しかも逮捕したのがあの会田(天知茂)だというので、サブちゃんは早速特捜部へ殴り込み、じゃなくて怒鳴り込みに行く。

会田たちはこの事件を、番城電機のパテントを所有する暴力金融の仕業だと睨んでいた。事実、自らは手を汚さずにひと儲けを企む金融会社社長・田代(北原義郎)は番城電機の人事課長・道原(佐原健二)を手なづけ、採用を取り消されて会社に恨みを持つ者の中から実行犯を選ばせていた。

だが肝心の昌一ががんとして口を割らないため、会田はおはな婆さんに接触。「頼むから昌一逮捕のことは婆さんには言わないでやってくれ!」とサブちゃんからさんざん頼まれたにも関わらず家に出向いておはな婆さんに真実を告げる会田に鼻の穴をふくらませるサブちゃん。しかし婆さんは昌一ではなく自分が道原の言葉に乗じて火をつけたと告白(結局ふたりで火をつけていたことが判明)、そこに道原と田代をつなぐ糸が見えた。

田代の子分(傷メイク付き)に扮した右田(左とん平)&四方(葉山良二)コンビに牢屋で脅された道原はあっさり田代の関与を認め、キレたサブちゃんが大暴れして(会田がさせて)一網打尽。一時は自殺を図ったものの、サブちゃんに激励されたおはな婆さんは昌一の帰りを待って頑張ることを誓うのだった(昭和ブルースは1番)

*サブちゃんが出てくると会田が一歩引いたセンパイ的な態度を取るので(出番的にも一歩引いているのか?)少々物足りないような気がする。とはいえ二人の掛け合いは面白い。

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