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『青春ジャズ娘』
『青春ジャズ娘』(1953年・S43)

ジャズ全盛の時代。大学対抗コンテストで見事優勝した城南大学のジャズバンド「シックス・メロディアンズ」は喜びに沸く一方、ドラマー・青木(フランキー堺)らの引き抜き問題が浮上し、分裂の危機が訪れていた。リーダー格のトランペッター・後藤春彦(片山明彦)も代議士のお父ちゃんの反対を受けながら、なんとかメンバーたちを(というより青木を)引き留めようと奔走する。

青木を引き抜いたのは悪徳ブローカー・山崎(三島雅夫)とその部下の安木(大泉滉)。新聞記者の三上(水島道太郎)や恋人でボーカルの俊子(新倉美子)、そして優勝時の審査員だった江利チエミ(本人役)らの協力により、紆余曲折の後に再び集うことができた6人は、著名ミュージシャンたちとの共演を見事に果たすのだった。

もしかしたらこの映画が初クレジット作かもしれない22歳の天っちゃんはシックス・メロディアンズのピアノマン・石川。片山明彦・フランキー堺・高島忠夫・小笠原弘・島津猛(君島靖二ではなく)といったメンバー中、実年齢が最年少なことも手伝ってか、実に物静かで押しの弱そうな青年だった(際立った台詞は「ハイ」ひとつ)。「青木はどこなんだ」「青木は大丈夫かなあ」など、青木ばっかり気にしているメンバーだが、こっちはさりげなく画面から消えているメロディアン・ミニ(失礼)が心配で仕方がなかった(場末のキャバレーでピアノ弾きになっていた模様)。

【少ない見せ場をキャプチャー】
楽屋でイメージトレーニング(後ろはボン・高島)
コンテストで演奏中(けっこうノリノリ)
・また集まるぜ、と小笠原さん(右)から伝言を受けたところ(この目つきがいい)。そのあとピアノ弾きながら笑顔でOKサインを出す(さわやか系)

*「高英男のシャンソンうまかったわ〜」「東京キューバン・ボーイズ観にいったわ〜」「トニー谷の真似して学校でウケたわ〜」と当時の青春ジャズ娘(=母)に見せると非常に喜んでいた。新東宝の映画でこんなにウケたのはこれが初めてだ(別の意味でウケていたのは『婦系図より 湯島に散る花』だったが) ちなみに天っちゃんに関しては、(痩せすぎてて)服に負けてるどころか椅子にも負けてはると身も蓋もないコメントを残してくれた。

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| 映画::新東宝 | 11:45 PM | comments (x) | trackback (x) |
『白線秘密地帯』
『白線秘密地帯』(1958年・S33)

トルコ温泉のナンバー1・みどりが客に絞殺され、その客も次の日射殺体で発見された。うだるような暑さの中、田代(宇津井健)ら警察の必死の捜査により、モグリの売春行為が目的の「SSS」と称する秘密会員組織の実態が浮かび上がってくる・・・!

開襟シャツでドロと汗にまみれてアクションを繰り広げる宇津井さんを始め、トルコ嬢のひとり・トミ役の三原葉子ねえさんも屋外での激しいキャットファイト付きという、暑い最中にみんな汗だらだらで頑張っている姿が印象的な映画なのだが、夏物アイテムがおよそ似合わない天っちゃんはというと、地下深くの部屋で背広をかっちり着込んでアンニュイにくすぶっている腺病質な支配人・久保木役。

「SSS」組織の新宿の拠点であるバー・ファンタジアを任されている久保木は、玉ころがしの政子(荒川さつき)が連れてきたウブな娘たちに因果を含める(=強引に手をつけちゃう)役目を担っており、初めは激しく抵抗していた娘さんたちがみる間に彼にイチコロになってしまうテクの持ち主なのだそうだが(生憎そこは映らない)、どうやら心と身体が相当参っているらしく「だから女ってヤツは嫌いなんだ」とニヒルに吐き捨てる男である。

やがてサツの手入れがあり、いきなり起こる銃撃戦。「マスター、頼むから(支配人室に)入れてくれ、お願いだ!」弾を撃ちつくして喚き続ける手下をあっさり見捨たニヒリスト久保木(男ってヤツも嫌いらしい)は、隠し持っていた拳銃をこめかみに当て、組織の掟(多分)を自ら実践してのける。メインストーリーと全然関係のないところで(故に宇津井氏や葉子ねえさんとの絡みも全くなし)いつもながら強烈なオーラを放っての幕引きであった。

*「白線」の読みは「ばいせん(ぱいせん)」かと思ったらDVDケースによれば「はくせん」で良いらしい

*長らく『火線地帯』DVDのジャケットだった(今度のBOXセットでも「火線・・・」の内側に小さく載っていた)写真は、実はこの映画の1シーン(こんな感じ

*拳銃の隠し場所はこんなところ。ゴルフなんかするようには見えなかったけど。

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| 映画::新東宝 | 11:44 PM | comments (x) | trackback (x) |
『女体渦巻島』
『女体渦巻島』(1960年・S35)

闇取引が渦巻く東洋のカサブランカ・対馬に、ひとりの男が復讐に燃えた瞳で降り立った。「俺はあの男を殺すためにここへ来たんだ・・・!」彼・大神信彦(これがデビュー作:吉田輝雄)はとある組織の凄腕ガンマン(ただし人殺しは嫌い)。恋仲だったはずの同じ組織の真山百合(三原葉子)が、唯一人自分の拳銃を恐れない男(=ボス)の情婦になったと聞きつけ、対馬まで真相を糾しに来たのだった。

百合は組織の拠点でクラブのマダムに居座っており、女達を使っての麻薬密輸に手を染める毎日。何も語らず、ただ殺してくれという彼女に「俺のボスは恥知らずで、恋人は貞操のない女だったというわけか」と冷たい言葉を投げかける信彦だったが、彼女がクスリに冒されていることを知り、更にボスへの憎悪を募らせる。彼は麻薬を使い力ずくで百合を奪ったのだ。密輸情報をサツに流して取引をぶっこわし、双方から命を狙われた信彦を百合は助けた。共に逃げようと約束しあう二人。だが、取引の失敗に業を煮やした彼らの宿敵・陳雲竜(ヒゲ&白手袋でダンディーな天知茂)が、満を持して対馬に乗り込んできた・・・!

女達(万里昌代・星輝美など)を無造作に品定めして外国に売り飛ばす手はずを整えた陳雲竜、「百合のことはどうしてくれる、俺たちのぶち壊された青春は!」とまるで反抗期のウブな若者のような信彦の言葉を鼻であしらう大物ぶりを見せ付ける。話し合いの途中で部下によるドンパチ騒ぎ、そして警察乱入と混乱の中、海岸でサシの勝負(肉弾戦)を繰り広げる信彦と陳。体型差もなんのその、といいたいところだが案の定形成不利になったところで洞窟に逃げ込んだ陳は、追いかけてきた信彦に拳銃を向けた。しかし百合の妨害に遭いカッときて彼女を射殺、悪いヤツはこうでなくっちゃ、といわんばかりの態度を取るのだが、突如聞こえる警察隊の声。

地獄の底からお前を呪ってやるぜ。ひゃはははは〜!」とアブナイ笑い声をあげた(『勝利者の復讐』よりは声低め)陳雲竜は脇道にそれた、と思ったら次のシーンで崖から真っ逆さま。もはや運も尽きたと観念した、というよりは、脇の道から逃げるつもりがうっかりそこは断崖でした、ってな風にもとれるあっけない幕切れだった。

*名前ばかりでなかなか出てこないラスボス陳雲竜だが、初登場は♪月の海辺に寝転んで〜ミイラみたいに寝てしまう〜♪という歌詞も踊りもトラウマになりそうなクラブでのシーン。くねくね踊るうちにトランス状態になった百合の眼前に、そこにいないはずの愛しい信彦の姿、だがそれが瞬時に両手を広げて踊っている(のかどうかはナゾ)な口ひげの男(=陳雲竜)に取って代わるのだ(怪しいのでキャプチャーしてみました

*相変わらず長くキレイな指先なので、拳銃をくるくるっとまわす仕草がカッコいい。

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| 映画::新東宝 | 11:43 PM | comments (x) | trackback (x) |
『人形佐七捕物帖 腰元刺青死美人』
『人形佐七捕物帖 腰元刺青死美人』(1958年・S33)

新文芸坐にて鑑賞(同時上映は『人形佐七捕物帖 妖艶六死美人』)。

老齢の殿様が女刺青師・お蝶に命じ、腰元4人の背中にとある刺青を施した。その刺青は江戸城攻略の隠し地図の在り処を示す暗号になっているのだが、殿様はまもなくポックリ、腰元たちはお宿下がりで散り散りに。そして帰宅中に襲われたお蝶は記憶を失ってしまった。なんとしても隠し地図の所在を知りたい家老や正体不明の忍者が暗躍する中、刺青を背に持つ女たちが次々と殺されてゆく。女殺しの下手人は誰か・・・? そして地図はどこに・・・? 貫禄十分の佐七親分が事件の真相に迫る!

goo映画のあらすじを読むと誰が下手人なのかがすぐ分かってしまうものの(おまけに「ニヒル 天知茂」のスチールは本編以上にネタバレ)、沼田曜一・中山昭二・天知茂という普段から善悪の狭間をうろちょろする曲者トリオが競って怪しさを振りまいてくれるので、いったい誰が一番悪いヤツなんだよ!とそれなりにハラハラドキドキが楽しめる作品だった。

ねっとりと元・腰元に近づく家老(沼田曜一)、刺青見たさに忍者装束で押し入って手裏剣投げたりしておきながら「私は決して怪しい者ではない!」と言い張る“宮さま”(中山昭二)の向こうを張って、見るからに腹に一物ありそうな顔でトップを切って登場するのが居候浪人・内海新之丞(天知茂)。襲われた彫師のお蝶さん(日比野恵子)を助ける善人ぶりを冒頭で見せ付けてミスリーディングを誘った彼は、居候先の主人に気に入られてそこの娘(刺青腰元の一人)の婿にと懇願され、本人もちょっと欲が出てきた最中、でも半同棲相手のお滝(彼女も背中に刺青が:山村邦子)が離してくれそうにない、という四谷あたりの伊の字のつく人と良く似た状況にある。

しかし四谷の人よりはるかに色悪な新之丞は、刺青ストーカー事件にかこつけて木は森に隠せ作戦に打って出て、ついでに隠し地図もゲットしちゃおっかなーと欲張ったおかげで佐七親分(若山富三郎)のお縄を頂戴する羽目になるのだった。まったく賢いんだかバカなんだか分からないキャラだとはいえ、2年前(『妖艶六死美人』)は文字通り吹けば飛ぶような存在だった天っちゃんが、まだいくぶん危なっかしいとはいえ最後の大立ち回りを任されるまでに成長していたのは感動だ。ところどころでキーンと冷え切った表情を見せてくれるのも眼福。

*原作は人形佐七捕物帳の「女刺青師」(横溝正史)。彫師の姐さんはすでに病死、隠し地図なんていうロマンチックな話はなくて、屍姦する男やら悋気のあまり人を殺める女やらが出てくる濃厚な展開。いちおう下手人は新之丞さんだが、こちらはクールでも狡賢くもないので、ちょっぴり情けない最期を遂げてしまう人だった。

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| 映画::新東宝 | 11:36 PM | comments (x) | trackback (x) |
『女王蜂』
『女王蜂』(1958年・S33)

「女王蜂」といえば横溝正史、つい“口紅にミステリー”のほうを連想してしまうのだが、こちらはさらに20年も前の新東宝の女侠客シリーズ第1弾。

昔気質の侠客・湊一家のお竜(久保菜穂子)は、寄る年波に勝てぬおとっつぁん・鉄太郎(横山運平)に代わって組を切り盛りしている勝気な姐さん。だが近頃は、ムチムチおねーさんが歌い踊る(アクロバットもやる)クラブ経営などで羽振りの良いハマの新興ヤクザ・真崎組がのさばってきて湊一家はおされ気味。「斬った張ったばかりがヤクザの能じゃねぇ!」が口癖のキレ者組長・真崎(サスペンダー&白スーツでクラブのマスターというよりウエイターのようでもある天知茂)は組同士のいざこざも金で収めようとする男だが、鉄太郎にせっかくの好意(?)を無下にされ眉間に怒りを溜め始めており、かなり不穏な雰囲気である。

そんな中、湊一家のシマである下町マーケットが全焼、おとっつぁんも亡くしたお竜さんはマーケット再興のために金策に走り回った。どこも断られる中、救いの手を差し伸べてくれたかに見えた金融商会は真崎の息がかかった会社。工事をわざと遅らせて返済を滞らせようとする真崎組のいやがらせに負けじと博打で稼ごうとするお竜さんだが、いいところで手入れに遭ったりでめどが立たない。お竜さんを幸せにする自信がなくて逃げるように船乗りになり、ちょうど寄港中だった俊介(中山昭二)は見かねて真崎に談判に出かけ、麻薬密売を条件に前借りした現金を、そっくりそのままお竜さんに手渡した(これで二人のラブラブ度は絶好調)。

俊介の金を真崎に叩き返したお竜さん。だが真崎は利息分が不足しているよと不敵に笑い、彼女をその場で押し倒す。それを知った真崎の女・マキ(三原葉子)が「あんな小娘のどこがいいのヨッ!」と激しくジェラシー、火事の真相(=真崎の差し金)を立ち聞きし監禁されていた踊り子・美沙(城実穂)の逃亡を助けたおかげで、湊一家VS真崎組の全面対決が始まった。

皆に迷惑をかけまいと(といっても既に敵味方ぐちゃぐちゃになってるのだがそれはさておき)お竜さんは真崎に決闘を挑む。波止場でにらみ合う和服の彼女と白トレンチの真崎。「お竜さーん!」突如走ってくる俊介に真崎はちょっと気を取られるが、お竜さんは「余所見してんじゃないよっ!」とやる気まんまんだ(あなたの彼氏でしょうに)。そして・・・。ハジキが得意という真崎の銃が先にお竜さんを捉えたものの、近づいたところをバスッとやられて真崎撃沈。お竜さんは俊介の腕の中で幸せそうに息を引き取った。

あらすじ - goo 映画(結末を含め、かなり本筋と差異あり。ちなみに天っちゃんは「助演」となってるが、クレジットでは3人並んでいた)

*コワモテでいかにも強そうな泉田洋志さんたちを引きつれた頭脳派ヤクザの真崎=天っちゃん。ワルには違いないが、クラブを仕切ったり接待ゴルフに付き合ったり、なんだかマメに働いている姿が印象的だった。一方で実に頼りなかったのが俊介。真崎なんか一発でノシちゃえそうな感じだったのに、あのラストの役に立たなさはどうなんだろう。中山昭二さんだからなのか?それとも名前が「政」じゃないからか?(←女王蜂シリーズの“ヒーロー”はたいてい「○○の政」という名前)

*田口哲(さとし)監督は天っちゃん主演デビュー作『恐怖のカービン銃』のメガホンを取った人でもある。

*新東宝・女王蜂シリーズはこの後『女王蜂の怒り』『女王蜂と大学の竜』『女王蜂の逆襲』と続き、『大学の竜』からヒロインが三原葉子ねえさんにバトンタッチされる。それに伴って天っちゃんも悪人から善人へシフト。・・・そういえば今回の葉子ねえさんは出番が短くて(踊りもなくて)残念だった。

*お竜さんを押し倒した後の真崎くん@クリスマスお仕事バージョンをキャプチャーしてみました(前髪の処理の仕方がナイス)

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| 映画::新東宝 | 11:33 PM | comments (x) | trackback (x) |
『稲妻奉行』
『稲妻奉行』(1958年・S33)

問注所なる手前味噌の取調べ機関を盾に身内を庇い立てる薩摩藩VS南町奉行のバトルは、奉行・坪内駿河守(中村彰)の切腹という事態にまでエスカレート。出張から帰ってきた筆頭与力の大岡忠右衛門(嵐寛寿郎)は、上司の無念を晴らさんと決意を新たにする。おりしも薩摩の名刀・安綱が預け先の相模屋から紛失。薩摩藩の家老・島津頼母(高松政雄)と老中・水野忠信(高田稔)が「安綱が見つからんかったら腹斬れよ」(島津)「見つけたら問注所を廃止しろや」(水野)と一札取り交わしたせいで、島津留守居役の佐藤松太夫(江川宇禮雄)や大岡たちが入り乱れるなか、名刀奪還大レースと相成った。

ところでその騒動の元となる安綱を奪ったのは、薩摩藩ゆかりでも、もちろん町奉行サイドの人間でもなく、金欠のくせにやたらと居丈高な素浪人・秋月典膳(天知茂)。黒白のリバーシブル着物でまんまと町方をかく乱して刀をゲット、ヒモ状態でごろごろしながら、アシがつきそうになると誰彼なしにばっさり斬り捨ててしまう相当な使い手かつ極悪人の典膳(とはいえ、盗んだり斬ったりする肝心の実行シーンがまるでないので想像するしかない)は、刀と引き換えに佐藤松太夫から金を巻き上げようとするのだが、取引の場で松太夫に騙され、手下のヒョットコ面(自分は般若面)と共に逃げ帰る羽目に。しかし台詞の浮つき具合はともかくワルぶりは一枚上手の典膳、渡した刀は偽物。

ところが、ざまあみろと勝ち誇る典膳からちゃっかり本物を持ち去ろうとするヒョットコ。実は彼の正体は鞍馬天狗、じゃなくて大岡忠右衛門だったのである!サシの勝負の末、みね打ちで典膳を倒した大岡様は彼を引きつれ、約束の刻限が迫り切腹寸前の水野の元へ急ぎはせ参じるのだった(めでたしめでたし)。

*政情などまるで関係ない、金がすべての悪人役に体当たりしている(のが丸分かりなのがほほえましい)天っちゃん。台詞や動きはまだ硬いが、ふとした折にみせるクール&鬼畜な表情がブレイクを予感させてくれる。

*物語の鍵を握る重要な役柄なうえ、アラカンさんとの(恐らく初めての?)1対1での対決シーンがあって、さぞ嬉しかったに違いない(なんだかそこだけ、ワルというより普通に真面目な顔で刀を振り回していたような気がする)。

*そうそう、和田桂之助さんと宇治みさ子さんも善人カップリングで出てました(ついでで失礼)

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| 映画::新東宝 | 11:28 PM | comments (x) | trackback (x) |
『アジャパー天国』
『アジャパー天国』(1953年・S28)

貧乏アパートの住民たちの悲喜こもごもが♪あなたはアジャー!で私はパーよ〜♪(歌:伴淳さんと泉友子さん)とほのぼのムードで描かれているこの作品に天っちゃんが出ているとの情報をききつけ、早速DVDを鑑賞。

キャバレーで働きながら代筆に勤しむズンさん(伴淳三郎)のシラノ的恋愛、旦那(田中春男)を待ち続ける子持ち婦人(清川虹子)に惚れているズンさんの兄貴・金さん(柳家金語楼)の恋の顛末、近所の富豪(婿養子で奥さんの尻に敷かれっぱなしの花菱アチャコ)のお嬢様(星美智子)と貧乏学生(高島忠夫)の駆け落ち・キャバレー社長の横槍による誘拐事件、などが繰り広げられるわけだが、さて肝心の天っちゃんはというと、キャバレーの場面でこれか?と思われるボーイを発見(たぶんこっちの方が分かりやすい)。ノークレジットだからこんなにちっちゃくても仕方がないのか、田中春男さんにぶつかられるリーマン風のこの人物もそうか? 自信ないなあ…と心眼全開でチェックしていたら、アパートの住民扮するチンドン屋を眺めるちょっぴりアンニュイな青年に出くわした(全身像はこちら笑顔もあり)。

あとはラスト近くで社長さんに「おいボーイ、ビール持ってこい」と呼ばれた時が画面最大(当然、セリフは一切なし)。ポスターにもでかでかと載っている同期の高島さんを見てさぞ複雑な心境だったろうなあと推察するが、そんな朴訥な学生役なんて似合わないんだから仕方がない。頑張れ天っちゃん、ギャングへの道はもうすぐだ!←あと1年半

*こちらもクレジットには無かったが、奥様・森悠子さんも出演されていた(こちら。中央のバタやん=川端義夫の左にいる黒いワンピースの女性がそうかと)

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| 映画::新東宝 | 11:27 PM | comments (x) | trackback (x) |
『風流交番日記』
『風流交番日記』(1955年・S30)

(ラピュタ阿佐ヶ谷にて鑑賞)

“風流とは、平和を愛する人の心の中に生ずる一種の「あくび」である”――(「大言海」)

中堅巡査の和久井(小林桂樹)は駅前の小さな交番に勤務する4人の巡査のひとり。女にモテモテの花園(宇津井健)、やる気満々の新卒・谷川(御木本伸介)に比べると、元来の人の良さ(トロさ?)ゆえかいまひとつパッとしない和久井だが、同郷で夜の女として働くマツ改めユリ(阿部寿美子)は、そんな彼にすげなくされても憧れのまなざしを注ぎ続けている。

年長巡査の大坪(志村喬)は若い3人だけでなく、新聞売りの孤児やバタ屋のオヤジ(多々良純)にも分け隔てなく接する温厚な人物。長年連れ添った妻とも良い雰囲気で順風満帆にみえる彼にも悩みはあった。2年前に家を出て以来消息不明の息子・一郎(開襟シャツで腕組みしてる爽やか青年風で仏壇横のフレームに収まっている天知茂)のことが気がかりなのだ。

ある時、留置所勤務を命ぜられた和久井は、無銭飲食で捕まったぶかぶか背広の貧相な青年の財布に、大坪夫妻の写真を見つけた。彼こそが大坪が捜している愛息だと悟った和久井は、初めての留置所で自分の弱さにうちひしがれながら膝を抱えている彼に、とある老巡査(=大坪)の悲哀をさりげなく話してきかせる。
――まったく『親の心、子知らず』だよなあ。
一郎は彼の言葉に胸を衝かれたように眼を伏せるのだった。

数日後、新聞売りの少年の父親が交番を訪ねてきた。罪を犯して逃亡中だったという彼は、遠巻きに息子の懸命な姿をみて自首を決意したのだという。今一度しっかり見てきてやりなさいと父親を温かく後押ししてやる大坪の後ろ姿を、一郎が物陰からそっと見つめていた。

指名手配中のギャング(のくせに女といちゃいちゃしている、いつもどおりエラそうな丹波哲郎)の捕物劇などあった後、モテ男・花園は上司の娘とゴールインして出世、和久井に手柄を譲って貰った谷川も1人前になり、相変わらず和久井だけが冴えない毎日なのだが(片思いのお嬢さんが結婚したせいで、自分のために身体をはってギャングを止めてくれたユリちゃんのことは今のところおざなりになっている)、一郎から速達手紙が届いたと駆け込んできた大坪の妻や、その手紙を大事そうに読んでいる大坪の姿を見てほんのり嬉しい気分に。北海道の森林で頑張っている、今が一番幸せだという一郎の手紙には父への謝罪と尊敬の言葉が綴られていた…。

*2年も家出中というからもっとグレまくったチンピラ息子なのかと思っていたら、留置所に入ってくるなり捨てられた仔犬のような眼つきでオドオドしている気弱なぼっちゃんだったので驚いた。ただし、薫兄さんの師匠・土門拳さんがこの映画の天っちゃんを見て「あれは有望だ!」と太鼓判を押してくれたというだけあって、表情の移り変わりがナチュラルで素晴らしい。抑えたセリフ回しもいい感じ。

*とはいえ、無銭飲食で捕まるくらいお財布が切迫している青年がホイホイと北海道なんぞへ行けるんだろうか? そう書いて老親を安心させ、実はまだ交番の物陰にいるんじゃないのかと思ってしまったのも事実だ。

*名前は?と言われて口ごもりながら偽名(「大坪一郎」→「大沢三郎」だったかな)を使った一郎クン。生年月日は?と聞かれるとけっこうスラスラと「昭和5年3月4日」なんて言っていた(でも1年サバよんでるな>天っちゃん)

*クレジットには名前が無かったようだが、事故ったタクシーに乗っていたいちゃいちゃカップルの女性は奥様(森悠子さん)だったと思う(ほんの一瞬)。

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| 映画::新東宝 | 11:25 PM | comments (x) | trackback (x) |
『剣豪相馬武勇伝 檜山大騒動』
『剣豪相馬武勇伝 檜山大騒動』(1956年・S31)

国境の桧山を巡って争う南部藩と津軽藩。あるとき、ココ俺らのもんな、と勝手に看板を立てていた津軽藩に文句を言いに行った南部藩家老が殺された(実はこのとき、家老の背後に天っちゃんの姿が見えるのだが、台詞もなくオタオタしてるだけですぐにフェイドアウト。だがありがたいことに出番はこれだけではない)。

ふたつの藩のいがみ合いのニュースは江戸にも届く。「何、父上が殺された!」と驚いたのは家老の嫡男・秀之助(どっちが父上か分からない五十路の嵐寛寿郎)。老中にうまくとりいって優位に立つ津軽藩に一矢報いて父の敵を討たんと、秀之助は「相馬大作」と名前を変えて津軽藩に馬番として潜入、藩主・土佐守に桧山返還を迫る。だが煮え切らぬ態度を取った彼をばっさり刺殺、それだけに飽き足らず、次の藩主に選ばれた越中守(バカ殿演技もうまい沼田曜一)をも執拗につけ狙うのだった。

津軽藩も黙ってはいない(むしろこっちが被害者のような雰囲気)。忍び(細川俊夫)を使ったりして大作と助手の関(小笠原竜三郎)を追いつめ、関くんは負傷。それを知った恋人・千代さん(日比野恵子)はひとりで恋人の元へ向かった。しかし途中で雲助たちに襲われ大ピンチ。あわや…という場面で突如現れた股旅姿の男、道中合羽を颯爽とひるがえして雲助を蹴散らした! この非常においしい役どころの股旅男・弥太郎(天知茂)は、ちょうど千代さんが頼ろうとしていた伊達の親分の下っ端だったというのも都合の良い話だが、これで千代さんは無事に関くんと再会を果たすことができた。

温泉で傷を癒すため、関くんと千代さんは大作センセイと分かれて出発。ひとりでスタスタ歩いていた大作センセイを、津軽藩の刺客が取り囲む。と、そこへ馬で駆けてくる(…というシーンはなかったが、馬から降りたっぽい)瀕死の弥太郎。関くんたちも襲われているんです、と虫の息で伝えて大作センセイの腕の中でこと切れてしまった。(そのあとまたまた大作センセイ大暴れで大団円)

子供の時からの憧れ・アラカンさんと初の共演。「その日は興奮して寝られなかった」そうなので、しっかりせい弥太郎!と励まされながらパッタリ、という最期が嬉しくてたまらなかったに違いない。

*千代さんを救うシーンも嬉しい役どころだったと思うが、「お嬢さん、どちらまで」と笠を取りながら尋ねる口調がどことなく胡散臭げで、もしやコイツ、今度は自分が襲うのか?と疑ってしまった。ありがちだし。

*スタントなしで水中アクションもこなしたアラカンさん(泳ぎが達者)、さすがである。ちなみに水面にぶすぶす刺さっていたのは実弾らしい(「鞍馬天狗のおじさんは」より)

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| 映画::新東宝 | 11:22 PM | comments (x) | trackback (x) |
『女吸血鬼』
『女吸血鬼』(1959年・S34)

「女」が付いてますが、ジェントルマンな吸血鬼が天っちゃんです。「彼はどんなことでも照れずにやる」と後に評されるに至ったのはこういう経験があったからでしょう。

[2007.9.1:新文芸坐にて鑑賞]

キリシタン迫害の時代、天草四郎の血を引く勝姫(三原葉子)の重臣・竹中信敬(天知茂)は、姫が城の陥落時に自害した際、愛しさ余って彼女の血を啜ってしまったがために、不老不死の身体を得る。以来彼は、家来のフリークスたちと共に、勝姫の末裔の女性をかっさらっては夜のお供(絵のモデル含む)にし、愛想を尽かす(あるいは尽かされる)とろう人形にして地底城に陳列する、などといったことを繰り返しながら未来永劫の時を生きていた。

ただ、生前から勝姫が嫌っていた月の光、それだけが彼のウィーク・ポイント。月の光を浴びた途端、彼は呪わしい吸血鬼姿に変貌し、手当たり次第に女性に襲いかかる(血を吸う、というよりは噛み付く)、ちょっとばかり美意識に欠けた怪人になってしまうのだ。

20年ほど可愛がっていた勝姫そっくりの末裔・美和子(三原二役)が城を逃げ出したことから、竹中の平穏な生活は急展開を迎える。折しも彼女をモデルにした油絵が特選となりちょこっと得意げなところへ、絵の前で偶然「まあお母様にそっくり」と呟く娘・伊都子(池内淳子)に出会えてさらに気を良くするのだが、おまぬけな手下のせいで月の光を浴びまくり無駄に女性を襲いまくりの失態を重ねる羽目に。

ようやく美和子を奪還、島原の城へ戻るも、20年モノ(=美和子)より若くピチピチな伊都子にちょっぴり触手が動いたせいで家来たちに「親子丼はいけませんぜ〜」とたしなめられムキになっているところを、伊都子のおせっかいなフィアンセ・大木民夫(和田桂之助)らの急襲を受ける。マント&乙女チックなブラウスを翻しながら、ムチやら燭台やらレイピアやらで颯爽と応戦する竹中だったが、ポッと出のコソ泥が城の天井をぶちぬいたおかげで煌々たる月光が身体に突き刺さり、コント紙一重な異様な姿に変化。もはやこれまでと、ちゃっかりろう人形にしておいた美和子に別れを告げた彼は、最後のひと暴れの後で自ら硫酸の池へと身を投じたのだった。

*人間サイドのお気楽ぶり(なかでも和田さんの突き抜けたポジティブさは特筆事項)もなんのその、日本初の吸血鬼役をバタ臭い風貌で熱演。小道具の使い方も堂に入ったもので、ここまでやり切ったらさぞ満足だろうなと、見ていてなにやら痛快な気持ちにもなれる。願わくば普通に血を吸ってほしかったけれど(勝姫以外、だれの血も吸ってないんじゃないのか?)

*新文芸坐のオールナイトで見た際、冒頭の美和子さん受難シーンを「あ、轢いちゃいました」で軽く済ませるタクシー運転手に笑いが漏れていた。同時上映だった「地獄」の同じようなシチュエーションでの四郎(天っちゃん)の苦悩ぶりとのあまりのギャップゆえかも。

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| 映画::新東宝 | 11:19 PM | comments (x) | trackback (x) |
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