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『江戸無情』
『江戸無情』(1963年・S32)

寺社奉行の脇坂様(長谷川一夫)の命により、大奥女中と坊さん連中が愛欲の逢瀬を重ねているという寺に潜入、自分の操と引き換えに証拠を握ったカノジョ(つや:坪内ミキ子)がどうしても許せないカレシ(名越兵馬:津川雅彦)。脇坂様は二人の様子に心を痛めて・・・というのが本筋だが、そこからちょっとズレたところで暗躍しているのが、右のこめかみ付近に赤痣を持つ浪人・近藤辰之助(天知茂)。

寺のからくり部屋を作った大工を坊さん(柳全:沢村宗之助)の依頼で切り殺し追われる身となった辰之助は、彼から金を搾り取りながら「ひとり殺すのもふたり殺すのも一緒だ」と尾行の岡っ引きをばっさり斬り、柳全の女のところへしけこんでよろしくやり、あげくに柳全をも隠し金を掘り出させたあと首をぎゅっと絞めて殺しと、冷たい美貌のマスクを最大限に生かして悪行を重ねていた。

金が手に入ったんだからもう止しても良さそうなものなのに、金づる(=柳全)がいなくなったためか、資金源を間接的に断った脇坂様を狙おうと屋敷を急襲する辰之助。御大相手になかなか良い調子で優勢をキープしていたにも関わらず、さんざんふらふら揺れていた兵馬が善人になって駆けつけたおかげであえなく成敗されてしまうのだった(二人がかりとは卑怯な)。

*クレジット的には地味だが、色悪ぶりが堪能できる作品だった。モノクロで陰翳が美しく、特に柳全を殺す瞬間の氷のような視線にはゾクゾクすること請け合い。ちなみにこの映画のスチール(脇坂様と一騎打ちシーン)は長谷川御大の特集記事などでも良く使われている。オトコマエ同士だからか。

*長谷川御大のくっきり目元メイク、それから時折キュッと眉根に寄る横皺がものすごく天っちゃんに似ていることを実感(って、逆だ、逆!)

| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=6 |
| 映画::大映with長谷川一夫 | 11:35 PM | comments (x) | trackback (x) |
『いも侍・抜き打ち御免』
『いも侍・抜き打ち御免』(1965年・S40:松竹)

「献上牛を巡る地元の権力者と牛飼いたちの争い」「横行する辻斬り」「お姫様誘拐騒動」の三本柱を、岡山弁と自己流剣法でま~るく治めるいも侍・淡島蟹右衛門(長門勇)の武勇伝。

トメの位置にクレジットされていた天知茂の役柄は藩内の検見役・所俊二郎。献上牛に関する上役たちの悪事を薄々察しているが、弟がこともあろうに辻斬り仲間のひとり(真っ先に蟹右衛門に斬られて死亡)だった事実をじわじわ突っ込まれ苦しい立場にいる歌舞伎調メイクのお侍だ。

ただ肝心なところでなかなか登場しないうえ、献上牛争いで殺された鑑定人の久左衛門(細川俊夫)の死に不審を抱き、颯爽と馬に乗り久左衛門宅へ向かうも娘に話をちょこっと聞いてまた颯爽と馬で去って行くとか、颯爽と馬を駈っているときに蟹右衛門と出会い、「お前も辻斬りかなもし」と言われてUターンするふりをして蟹右衛門を鞭でしばきつつまた颯爽と馬で駆けていく、とか、何をしに来たのか(何をしたかったのか)いまひとつ意味不明の馬上のひとイメージばかりが印象に残った。ちなみにクライマックスの、お姫様(18年後には明智センセイを蝋燭で責め立てる鰐淵晴子)を救うための大立ち回りシーンでも最後の最後で馬で颯爽と登場し、ちょっとだけイイトコ取りをしていた(でも相手が弱すぎ)。

*馬には乗れるがギャロップは無理なんじゃないのか、と思っていたが、スタントなしでパカラッパカラッと軽快に馬を走らせていた模様(スマン天っちゃん)。

| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=53 |
| 映画::松竹・他 | 01:19 PM | comments (x) | trackback (x) |
『雪の喪章』
『雪の喪章』(1967年・S42)

金沢の老舗金箔商・狭山家に嫁いだ妙子(若尾文子)は、少しトロそうだが人の良い夫・国夫(福田豊士)や姑に気に入られ、幸せな生活を営んでいた。しかし、実家が没落したという知らせに追い討ちをかけるように、下働きの女中・せい(中村玉緒)と国夫が以前から姑公認で関係を結んでいることが判明。ショックを受け憔悴する彼女に、先代からの番頭・日下群太郎(天知茂)は仕事に専念しているような顔をしつつも気遣わしげな視線を密かに投げかけていた。

せいとは別れると約束した国夫だったが、やがてせいが身籠ったことを知った妙子は、耐え切れずに家を飛び出した。雪山で倒れていた妙子を発見、(彼女の素足を顔にスリスリしたりして)必死に介抱、近くの宿までおぶって行ったのは群太郎だった。持ち直した彼女を前に、自分の身の上話、そして妙子への募る想いを切々と語り、一緒に大阪へでも逃げて欲しい、と真剣に訴える群太郎。彼がせいと結婚したいと言い出し国夫の不興をかった頃から、妙子も彼の気持ちに薄々気づいていた。ところが妙子が頷いた途端、宿の主人から連絡を受けた国夫が慌てて駆け込んできたため、群太郎は涙を堪えて独りいずこともなく去ってしまう。

十数年後。妙子とせい、互いに出産・せいの子が不慮の事故で死亡・家が全焼し姑が焼死・金沢へ残るというせいを残し家族3人で大阪へ、という出来事が怒涛のように押し寄せたあと、国夫に召集令状が届く。息子を抱え途方にくれる妙子に、大阪で軍需会社を経営する羽振りの良い群太郎が救いの手を差し伸べた。久しぶりに会った二人。だが無器用な国夫を心から大切に想うようになっていた妙子は、群太郎が勧める彼の会社での職を断った。

しばらくして胸を患った国夫が帰ってきた。今では旅館を切り盛りしているせいを頼り、家族は再び金沢へ戻る。そこには、以前の狭山家を買い取った群太郎(とその妻子)の姿もあった。そして終戦の喜びに沸く中、妙子は国夫とせいが再び枕を共にしているのを目撃してしまう。まもなく病に伏したせいは、旅館の名義は国夫になっていること、そもそも旅館は群太郎が世話してくれたことを告白し息を引き取った。その後を追うように、国夫もまた喀血し帰らぬ人となった。

義父母。せいの息子。せい。そして国夫。
狭山家ゆかりの人間は、大雪の日にみまかる――。

数年後。ムスコビョウキの電報を妙子が受けたのも大雪の日だった。急いで駆けつけると、彼はすっかり元気になっていた。しかし安堵する妙子の耳元に「若奥様・・・」との声が響く。帰宅した妙子を待っていたのは、群太郎急死の報。 約束の金屏風(狭山家にあったもの)を届けた帰りに倒れた群太郎のため、妙子はせめて華やかな花の数々を手向けるのだった・・・。

*長い年月、ひたすらプラトニックに若奥様・妙子を想い続ける群太郎。妙子の指輪がするっと抜ける気配に「おやつれに・・・なりましたな」と背中を向けたまま呟く冒頭から、雪山で気絶した妙子への懸命の介抱(足をさすっても気が付かないので抱き寄せたら胸元がちらっと見えてしまい、ハッと動揺して取り落とす純情さんぶりがナイス)、そして計3度のふたりきりの(邪魔が入ったり、お互いの気持ちが微妙にズレていたりするせいでプラトニックにならざるを得ない)逢瀬と、しみじみと味わい深いシーンがちりばめられていた(三隅監督ありがとう)。ただ妙子の人物像がいまひとつ掴みきれなかったのと、群太郎サイドの話をもう少し掘り下げて欲しかったなあという思いが残った。

*穏やかに歳を重ねていた矢先に脳出血で急死、ってのはいろいろとコタエる展開だ。

*しかし妙子さんが彼の葬儀用に真っ先に注文した花が「バラ」だったのにはウケた。やっぱりバラが似あうのか!

| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=45 |
| 映画::大映(その他) | 01:00 PM | comments (x) | trackback (x) |
『男の勝負』
『男の勝負』(1966年・S41)

荒れ地だった千日前@大阪。ひょんなことから山田一家の婿養子・重助(村田英雄)を救った香具師の奥田弁次郎(天知茂)は、彼の人柄に惚れ込み、協力し合って千日前開発に精を出すことになった。

二人の尽力、そして弁次郎の愛妻・扶美(南田洋子)のバックアップなどで千日前には客が押し寄せるのだが、千日前を自分のものにしようと企む五十路親分(天津敏)の計略により、弁次郎の子分・銀二郎(北島三郎)と重助サイドの倉吉(=実は山田一家の親分の隠し子:林真一郎)の諍いが、山田VS奥田の一家上げての抗争に発展してしまう。

奥田一家に喧嘩状を送り、子分を連れて指定場所で待機する重助の下へ、弁次郎はたったひとりで現われた。約束が違うと詰問する重助に、着物をバッと脱ぎ捨て背中の観音様(刺青)を見せた弁次郎はこう申し出る:
どうかサシで勝負してほしい、俺たちの血が流れるだけなら観音様も許してくれるだろうから――。
それを重助は受け、ドスを交え始める本当は闘いたくない二人。しかし途中から子分が入り乱れ、さらに弁次郎のかつての親分(弁次郎は彼の元を出て、ヤクザではなく香具師になりたいと諸国を放浪していたのだが、その間もずっと目をかけてくれていた)・中村(中村竹弥)が仲立ちに現われたことで、両一家はめでたく手打ちとなった。

1年後。懲りない五十路親分は倉吉をそそのかして千日前乗っ取りを図っており、身をもって制そうとした病身の山田親分を斬殺、ついでに邪魔になった倉吉もバラして山田一家へ投げ込んだ。二度とドスは抜かないと誓った弁次郎&重助だったが、二人で五十路一家へ乗り込むことを決意。

しかし五十路の屋敷ではすでに、山田一家に病身の妻(藤純子)ともども世話になっていた千住小太郎(高倉健)が一足お先に良いとこ取りをして華々しく命を散らしていた。その後始末のような立ち回りのあとで見事五十路を討ち取り、頼りになる中村親分が再び出てきてくれたことで騒動は終結をみるのだった・・・。

*軽めの大阪弁が二枚目半の仕草によく似合っていた弁次郎。子分(師匠とおんなじ髪型の宮口二郎さんら)に慕われ、嫁さんに好かれ(面と向かって「ええヨメはんやね!」なんて言っちゃうあたりも好感度大か)、おまけにかつての親分さんにもずいぶんと可愛がられ、珍しく周りに人が大勢集まっている人気者だ。良い人だと十中八九死ぬのが東映での天っちゃんの黄金パターンだが、日ごろの十八番を健さんが引き受けてくれたおかげで死ぬのを免れた模様(ありがとう健さん)。ただその健さんが美味しいところをかっさらってしまったので、主題がぼやけてしまった感があるのは残念だった。

*村田英雄、北島三郎(あと藤山寛美とか)と一緒の画面に収まると、天っちゃんは背が高くてやたらと男前に見えてしまうからお得である(いや、そうでなくても男前には違いないが←苦悩しつつも決闘に赴くシーンのカッコよさは必見)。

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| 映画::東映 | 12:53 PM | comments (x) | trackback (x) |
『第三の影武者』
『第三の影武者』(1963年・S38)

家老・篠村(金子信雄)にスカウトされ、軽い気持ちで城へやってきた杏之助(市川雷蔵)は城主・池本安高(雷蔵:二役)にそっくり。安高の三人目の影武者として、歩き方から怒鳴り方、女人の抱き方まで似せるよう、篠村から厳しいトレーニングを受けることになった。しかし安高が戦の最中に左眼を射抜かれると、三人の影武者たちもそれぞれ左眼を潰せと強要され(反抗した一人が斬殺)、間髪を入れずに城が急襲を受けた際には、身代わりに死ねと言われ(また一人死亡)、とうとう杏之助だけが手負いの安高と逃亡する羽目に。さらに右腕を失った安高を見て自分の行く末に恐怖を覚えた杏之助は、安高を殺してしまう。逃げ延びていた篠村は杏之助と落ち合うと、彼を半ば脅迫して安高として扱い、以前から婚儀の話が持ち上がっていた照姫(高千穂ひずる)のいる桜洞城へと向かった。

さてその桜洞城にて。
勢力拡大のため照姫との婚儀を急ぐ篠村に対し、まず城を襲った敵を倒してからですなとやんわりクギを刺したのが、高齢の城主を助ける若き参謀・三木定光(見た目も声も体温すらもぐぐっと冷えてそうな天知茂)。急いで城を奪回せんと戦を始めた杏之助=安高は、傷を負った篠村にこれ幸いとばかり止めを刺し、これで邪魔者はいなくなった・・・かにみえた。

城を取り戻し、意気揚々として照姫との初夜に臨もうとした杏之助=安高の寝所へ、定光が突如ずかずかと上がりこんできた。「お前の役目は終わったのだ、ニセモノめ」定光は瀕死の篠村が握り締めていたという“影の三”と記された幟を持ち出し、杏之助を糾弾(このあたり、犯人を追いつめる明智センセイ風でもある←井上梅次監督だし)、「本来であればノコギリ引きだが・・・」ある条件で命を救ってやろうと持ちかける。実はずっと前から照姫とデキていた定光は、杏之助には彼を慕う小萩(万里昌代)をあてがい、自分は照姫と夜を共にするからそのつもりでいろ、というのだ。
「昼の城主はお前で、夜のあるじは俺だ」

安高ではなく杏之助そのものを愛している小萩は、それでも構わない、静かに暮らしましょうと杏之助を諭すのだが、彼女に自分の子を身籠っていることを知らされた彼は、よせばいいのに定光&照姫の寝所へ駆け込み(さっきの自分を棚に上げて「なにを無粋な!」もないだろう>定光)、俺の子が殿になるんだ、俺は勝ったぞ!と朗らかに勝利宣言。だが定光は薄ら笑いを浮かべて、照姫も身籠っていることを告げるのだった。正室の子しか必要ないのだ、そう言うなり小萩を斬り捨てる定光(クールに鬼畜)。

杏之助は部屋を飛び出した。「俺は安高ではない、杏之助なんだ!」真実を語っても、もはや誰もそれを信じてくれようとはしない・・・・・・。

*物語自体が面白い上、最強の雷蔵キラーが出現する後半は見どころ山盛りだった。クレジット的には控えめな位置だったが、色悪ぶりが際立っていた天っちゃんにウットリだ(同じ年に薄幸浪人@『破れ傘長庵』もこなしていたとは恐れ入る)

*監督だけでなく音楽も後の「美女シリーズ」の鏑木創。

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| 映画::大映with市川雷蔵 | 11:58 PM | comments (x) | trackback (x) |
『剣に賭ける』
『剣に賭ける』(1962年・S37)

北辰一刀流の創始者である千葉周作が剣の道を極める過程を描いた作品。
冒頭で人質の赤ん坊を見殺しにしてしまったことがトラウマになっている青年・周作(市川雷蔵)は、ひたすらお悩みの日々を送っていた。そんなある日、道場の同輩・寺田兵馬が町人を殺めた現場に居合わせ、彼を斬ってしまう。

しばらくして、兵馬の兄・七郎太(平手@座頭市風といおうか、挙手田@陽気な殿様風といおうか、眼光鋭い浪人スタイルの天知茂)が道場に現われた。音無しの構えを得手とする高柳又四郎(浜村純)はひと目で彼を邪剣の使い手と見抜き(そんなに胡散臭い顔だったというわけか)立合いを拒むが、七郎太の強引さに負けて手合わせする。又四郎の木刀を叩き折り、音無しの構えを破ったと狂喜する七郎太(その直後、腕から血を流しているのに気づいてギョッとなるも、負け惜しみのように平然と去るあたりがナイス)。

すっかり自信がついた七郎太は、弟を殺した周作に果たし状を突きつけた。夕陽がまぶしいススキ野原で対峙する二人。夕陽を背に目くらまし戦法に出た七郎太だが、いろいろ経験して悟りの一歩手前まで来ていた周作に腹部をばっさり斬られて地に伏した(・・・と思いきや再び刀を繰り出し、とどめを刺されるしつこさもナイス)。かくして七郎太の死が最後の仕上げとなり、周作は剣の道に開眼したのだ!

*・・・という話だったと思う。年末の鑑賞会の上映作の1本だったため、天っちゃんが出ていない部分はお喋りに夢中でほとんど見てない(聞いてない)状態だから詳細は不明(雷蔵さんすみません)。

*天っちゃんが出てくると画面に違うオーラが見えてくるから不思議(←惚れた弱み)なのだが、雷蔵さんが実につれないもので気合空回りの感がある悲劇のライバルだった。そんなパターン多いなあ。

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| 映画::大映with市川雷蔵 | 11:57 PM | comments (x) | trackback (x) |
『皇室と戦争とわが民族』
『皇室と戦争とわが民族』(1960年・S35)

突如飛来した銀色の怪鳥ロプロス(違)のお蔭で地方の豪族に勝利を収め、若くきれいなお后(三ツ矢歌子)と橿原の山中にいた神武天皇(嵐寛寿郎)があっと云う間に東條英機になっているような(そのWキャストはどうなのかアラカンさん)忙しい展開の天皇陛下バンザイ準ドキュメンタリー映画。

いかに陛下が第二次大戦を回避しようとされたか、また戦争を早く終結させようと尽力なさったかというストーリーが延々と続き、とうとう玉音放送を吹き込む段になったとき、それを阻止せんと近衛師団の青年将校たちが反旗を翻した。師団長(明智十三郎)に熱く迫る畑中少佐(宇津井健)の横にいたのが椎崎少佐(といっても役名はまるで出てこない天知茂)。やがて航空隊の上原大尉(菅原文太)も畑中の誘いに応じて押しかけてきた。叫ぶ宇津井氏、がなる文太の熱血テンションと比べるとかなり低音&低温そうな(そもそも台詞があまり無い)天っちゃんだが、畑中に目配せされるや否や真っ先に刀剣を抜いてズバーッと反対者を斬って捨て、宇津井氏に撃たれて果てた師団長の印鑑を勝手にニセ命令書にポンと押す文字通りの実行犯

だが彼らの反乱は、軍司令官(沼田曜一)によってあっけなく鎮圧された。「お前たちの考えはよおく分かる」と言われて慟哭する3人。頬を涙で濡らしながら唇を噛み締め俯き加減に肩を震わせる天っちゃん、という滅多に見られない姿が拝めるのが貴重。

早まるな、俺と一緒に来い四郎(とは云ってません←そりゃ「地獄」)と沼田さんに諭されたにも関わらず、畑中と椎崎は部下と共に死出の旅路へ。「天皇陛下、バンザーイ!」部下達の叫びと銃声が聞えたのちに周囲に響き渡る2発の銃声。カメラが戻ると、椎崎は畑中(手前)の側でうつ伏せに倒れ絶命していた。

*この事件(宮城事件)に関しては、67年の映画『日本のいちばん長い日』(ここでの椎崎役は中丸忠雄さん)が詳しいようだ。しかし史実によれば椎崎は少佐ではなく中佐。あれで宇津井氏よりワンランク上という設定だったのか?(とてもそうは見えないので同じ「少佐」にしたのだろうか)

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| 映画::新東宝 | 10:21 PM | comments (x) | trackback (x) |
『孤独の賭け』
『孤独の賭け』(1965年・S40)

*ラピュタ阿佐ヶ谷にて鑑賞(2006.11.25)

あらすじはほぼ原作をなぞっているので省略。

資金繰りに奔走しているかと思えば女を口説いてるか抱いてるか脱いでるかな(って女絡みが多いが)実に忙しい千種梯二郎(天知茂)。34歳という天っちゃんの実年齢とルックスは成り上がりの若き野心家を体現するにはまさにうってつけで、新東宝時代の名残のような台詞回しのそこはかとない軽さすらも、詰めの甘さで道を誤まる千種の末路を見越しているかのようだった(うなじの手入れの詰めの甘さもそうか?←それはたぶん違う)

1話の後半でようやく登場したドラマ版とは違って実にサクサクと話が展開するのだが、サクサク進みすぎて百子(佐久間良子)はもとより千種の内面描写やバックグラウンドの掘り下げが浅くなっていたのが勿体無かった(原作好きの弊害か)。もっとこう、最底辺から這いのぼってきたんだぜ!というギラギラした姿も見たかったなあ。

ただ、秘書の中川京子(小林千登勢)と百子の色男・千種を巡る女の争いはビジュアルで見るほうがインパクト大。佐久間さんに百子チックな「毒気」や「執念」をあまり感じなかったせいで(「おんな太閤記」や「細雪」等のふんわかイメージが強いので)、おとなしそうな顔をして私はどこまでも社長にお供しますわオーラをがんがん放出させ、ラストに見事(?)千種をモノにした京子=千登勢さんの手腕が際立っていたように思えた。

*あんなに地味な梅宮辰夫をみたのは初めてかもしれない(メガネ姿の千種の右腕役)。←プレ不良番長時代だからか

*(2006.5.28)原作について
最底辺の生活から這い上がった野望多きひとりの男・千種梯二郎。
自分を不幸に陥れた親類への復讐に燃えるひとりの女・乾百子。

偶然出会った二人は似た境遇と互いの持つ力に本能的に惹かれ合う。男は女の夢に投資し、やがて二人で歩むことを望む。女は男を認め愛しつつ、自立の道を模索する。

借金だらけで突き進む男の夢(=パノラマ島作り)は叶うのか、自立心の強い女はどこまでのし上がれるのか。そして人生の賭けに勝つのはどっちか。メリハリの効いた短文調でなかなか読ませてくれた。

1963年(S38)に本が出るなり天知茂主演でドラマ化され、乾百子には小川(黒蜥蜴)真由美。その後、1965年には映画が作られ、このときの百子は佐久間良子。そして1978年に再度ドラマ化されている。

天っちゃんを念頭に置いているせいでどうしても千種メインで読んでしまっていたのだが、従属を嫌う百子の生き方には共感する部分が多かった。特にラスト(以下ネタバレ失礼)、甘さが抜けなかったというか、うぬぼれが強すぎて千種が自滅し、金の無心のために(それも自分の愛人兼秘書のための金を無心するために!)百子を訪ねるくだりには、彼女でなくても今までの理想像がガラガラと崩壊する気分を味わった。ドラマや映画もこのラスト通りなのだとしたら、かなりカッコ悪いよ天っちゃん(=千種)。

*気になることがひとつ。1978年版キャストをデータベースで調べてみると、

天知茂、五十嵐めぐみ、浅野温子、園まり、白石奈緒美、伊藤雄之助

という面々の名前があるのだが、順番からすると五十嵐さんが百子役だったのだろうか? 78年だからもうすでに初代文代さんと明智センセイだったわけで、その二人の絡み…ってどうなんだろうなあ。

*「首無し島」のときもなんだかなあと思ったものだが<文代さん&センセイ

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| 映画::東映 | 12:51 PM | comments (x) | trackback (x) |
『白昼の死角』
『白昼の死角』(1979年・S54)

立ち上げた金融会社・太陽クラブが失敗し発狂、歌い踊りながら焼死した友人・隅田(学生服姿や白塗り野球小僧姿まで何もかも怪演:岸田森)の二の舞はごめんだと、世間に対して挑戦状を突きつける鶴岡七郎(夏木=現・夏八木=勲)。巧妙かつ大胆に法の目をかいくぐり、次々と企業を騙して大金を手に入れる鶴岡の前に立ちふさがるのが、東大法科の先輩でもあるキレ者検事・福永(天知茂)だった・・・!

騙す側(竜崎勝・中尾彬・千葉真一 etc)、騙される側(長門勇・佐藤慶・成田三樹夫 etc)ともにディープな面々で、おまけにアクセントとして丹波哲郎・内田朝雄なんていう重鎮も拝めてまさに東映オールスター祭り(ちなみに天っちゃんの周辺には室田日出男・伊吹吾郎。こちらも濃い)。普段とは少々異なる役柄を嬉々として演じている方が多い中、天っちゃんは7年の映画出演ブランクの間にTVドラマで培った、「打倒・悪」イメージを踏襲した法の番人役を好演していた。ステロタイプといってしまえばそれまでだが、「判例がなければ、この私がこれから作る!」なんていうキメ台詞を鋭い目つきでビシィッ!と鶴岡に投げつけられるのはやはり彼しかいない(もっとも、マフィアのボスみたいな見た目のシーンもあるとはいえ)。

*のちに村川透監督は井上梅次監督の後を継いで美女シリーズを担当することになる(「天使と悪魔の美女」など)。・・・出世?

*現代の悪を体現する鶴岡役は、もう10年ほど早ければ天っちゃん自身が好んでやっていそうな役だと思った(その場合、隅田は沼田曜一さんでどうだろう←それじゃ「もう20年ほど早ければ」か)

*天っちゃん(特別出演)のクレジット位置は千葉真一と丹波哲郎(トメ:同じく特別出演)の前。出番の多かった千葉ちゃんはともかく、丹波さんには勝てない(たぶん勝つ気もない)天っちゃんだった

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| 映画::東映 | 12:29 AM | comments (x) | trackback (x) |
『傷だらけの人生 古い奴でござんす』
『傷だらけの人生 古い奴でござんす』(1972年・S47)

図らずも敵対する組に分かれてしまった実の兄弟、大西栄次郎(鶴田浩二)・竜三(若山富三郎)の間に立ってひとり気を揉む、竜三サイドの心優しき代貸・神田良吉(天知茂)。若山トミーさんのいるところ必ず背後に控えており、血の気の多い竜三親分の一挙手一投足に黙って付き従いつつもハラハラしている様子が手に取るように分かる忠義者だ(もっともこっちはこっちで、敵地に香典を届けに単身乗り込んだり、出入りに参加したりする度にいつ死んじゃうのかとハラハラしどおしなのだが)。

最初のうちは出番はあってもほとんど目立たない控えめな良吉さんだが、後半、あわや兄弟間で血の雨が!という緊迫したシーンで「待っておくんなはれ! やるならワイを先に・・・!」(←しょぼくれ刑事@犬シリーズより流暢な大阪弁)とドスを持った鶴田アニキの前に半泣きで飛び出し双方の動きを情で止める、といった、ビッグスターの年上のおふたり(鶴田さんが7歳上でトミーさんが2歳上)に平等に可愛がられていたらしい天っちゃんにしか出来なさそうな見どころがあって楽しめた。

しかし、やはりと言うかなんというか、こんな良い人は長生きはしない。黒幕の憲兵(天津敏)に刃向かった竜三親分が撃たれてしまった。それでもまだ捨て台詞を吐く親分に向かって発射された弾を、咄嗟に親分に覆いかぶさって自分の身体で受け止めた忠義者の良吉さんは、乱闘になってバッサバッサ斬られながらも栄次郎に電話を掛け、最後の力を振り絞ってひとりを血祭りに上げてから仰向けに絶命。急行した鶴田アニキとまだ生きていたトミーさんが傷だらけの人生ロードを歩むラストシーンで唐突に死に顔が数秒間アップになるというオマケもついていて、悲しい最期(と遺体の虚ろな瞳)に泣ける作品だった。

*1972年ってのは映画の致死率100%の年(4作全部で死亡)だと判明

| http://www.amachi.info/blog/index.php?e=36 |
| 映画::東映 | 12:27 AM | comments (x) | trackback (x) |
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