2006,06,10, Saturday
「暮坂峠への疾走」(1972年・S47・3月18日OA)
「竜が舞うほど足が速い」のでその名がついたという、竜舞(=りゅうまい)の銀次(天知茂)。渡世人にしては人が善すぎるのか、受けた頼みは断り切れないタイプの彼は、通りすがりの旅人やら村の衆やらに良い様に使われたり騙されたり散々な目に遭っていて、とうとう相棒まで亡くしてしまった。 可哀相な相棒の墓を作ってやっているところへ、「国定忠治の首を盗んできてくれ」と頼みに来た男が二人。さすがに懲りた銀次は二人を追い返すが、ちょっと好奇心に駆られて(それが彼のイカンところだと思うわけだが)処刑場近くまで足を伸ばし、泊まった農家で相部屋になったいかにもワケありげな若い女性・おしず(梶芽衣子)が親の遺言とかで忠治の首を切望していることを知ると、やる気モード全開になってしまう。 処刑場から首をかっさらい、待ち合わせの峠まで猛ダッシュしてきた銀次を待っていたのは、物騒な手下をしたがえた先の男たちと、小奇麗な衣装に身を纏ったおしずさん。実は彼らはグルだったのだ。やっぱり騙され利用されたと知った銀次は、おしずさんに哀しい瞳を向けながら、口封じに襲いかかる男たちに対峙するのだった・・・。 原作とは違う展開なのが救いといえば救いだが、なにやら昭和ブルースが聞こえてきそうなラストではあった。 忠治の首を背負った銀次、待ち合わせ場所の暮坂峠までとにかく走る、走る、走る。・・・しかし、竜が舞うのは観たことがないとはいえ、ああいう走りをいうのかどうかは正直微妙だ。おまけにどうやらスタントさんっぽい疾走シーンもあって、一番の見せ所(だってタイトルがそうだから)がえらくあっさりしていたのが難点か。だいたい、「足速そう」なんていう形容は、「爽やかそう」と同じでどの時代の天っちゃんにも当てはまらないのではないだろうか?(失礼) しかし、気が良いせいで頼みごとはつい引き受けてしまうあたりは「素」でいけそうで、合っているといえば合っていた。 *原作について (主人公の描写) 長身で、大柄な身体である。表情を引き締めると、端正な顔に凄みが漂う。後半はともかく前半はどうよといったところだが、ドラマはほぼ原作通り。 ただラストが決定的に違っていた。そこが改変されていたからこそ、ドラマの方はいまひとつしっくりこなかったのかもしれない。しかし50年〜60年代の死ぬか逃げるか捕まるかな天っちゃんならともかく、(前に「ダーク」がつきそうでも)ヒーロー役者に変貌していた彼にはちょっと似合わないかもなあ、原作は。 *それにしても、70年代以降で、天っちゃんが劇中で死んでしまうような作品ってあるのだろうか?(あっ、ネタバレ)
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2006,04,12, Wednesday
密偵(1983年・S58・12月22日OA)
のっけから身に覚えのない収賄罪で切腹を言い渡される旗本・榊原主計(=かずえ:天知茂)。裃姿をじっくり愛でる間もなく切腹シーンに突入。怖い表情だが(それはいつものこと)さして悔しさも見せず、主計さんは腹に刀を突き立てんとする。おいおい、抵抗しないのか? 身の潔白を明かさないのか? あまりに平静なのでこっちがそれなりにハラハラしかけた瞬間、「まあ待て待て、お主は無実だ」と実にのんびりとした調子の止めが入った。やってきたのはなんだか緊張感のない、事務方っぽいお侍(ここは山村聡or三船敏郎レベルの大御所タイプに来て欲しかった気がする)。幕府転覆の陰謀を防ぐために、名前を捨てて密偵として生きてくれと頼まれた主計さんはにやりと不敵に笑って承知する。さっきまで死ぬ気マンマン(?)だった人がそんな簡単にアンタ、と突っ込みたくなるが、2時間弱で事を収めようとするといろいろ忙しいのだ。 娘ともども拉致され、大砲を作らされている柳原氏の救出任務を遂行するため、飾り職人の卯之吉(森川正太)と医者の平野(岡本冨士太)をヘッドハンティングする主計さん。危ないところを助けたというより、仲間に引き入れんがために罪をでっちあげてるようにもとれる展開だが、なにしろ2時間弱だ、そこも目を瞑ろう。 揃って任務地・高松へ向かうがすぐに刺客に襲われ、結局別々に高松入りすることになる三人。主計さんは板前・佐吉と称して助格ルックで高松入りし、前の密偵(任務失敗で死亡?)が目をつけていた小料理屋の女将(范文雀)に接近する。小粋な遊び人を気取り、ちゃっちゃと刺身を作ったりするとても器用な主計さんだが、会った瞬間から女将に密偵だとバレてしまうくらいお里が出ているあたり、さすが天っちゃんだ(褒めてるのか)。 最初は非常に頼りなかった他の二人(コワモテのお侍にいきなり密偵になれといわれてもそりゃ困るわなあ)だが、それぞれ自分の能力を生かして活躍。彼らが無事柳原親子を救出すると、主計さんは廻船問屋(川合伸旺)& 代官(高松英郎)のゴールデン悪役コンビたちを相手にばっさばっさと旗本姿で立ち回り独壇場。 任務完了後、江戸に戻った主計さんは例の事務方お侍(いやきっと偉い人なんだろうけど)から新たな名前とお庭番としての仕事を与えられるが、小判だけ貰ってあっさり断り、江戸まで付いて来た女将さんと仲良く旅に出る。一匹狼(そして女運の悪い)キャラの多い天知氏にしては、かなり珍しい部類のラストだった。 脚本は美女シリーズ等でお馴染みの、天っちゃん御用達ともいえる宮川一郎氏。唐突な切腹シーンや板前シーンなどのコスプレ(といっちゃイカンか)もさることながら、単発物のくせにやたらと気合の入ったアイキャッチ(赤いバックで、おもむろに編み笠をバッと取る天っちゃんの怖い顔のアップ)のインパクトの強さも印象深い作品である。
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