2009,10,18, Sunday
#35「兇悪な密の香り」(1973年・S48・11月29日OA)
「警視庁の会田というものです」 岩下圭子(水野久美)の経営するブティック・エルに現れた一人の刑事。おたくの2階を張り込みに使わせてほしい、そう言って昼夜問わず隣のビルを見張り、圭子の運ぶ食事や本庁への電話代などを律儀に机に置くストイックな男に、いつしか惹かれてゆく圭子。警視庁の独身寮に住んでいるという男の言葉に「まあ、独身なのだわ」と心をさらにときめかせる彼女だったが、冒頭からその男は天知茂ではないことに気付かされている我々視聴者は不安が募る一方だ。 特捜部屋で銃を解体していたほんまもんの会田(天知茂)の元へ、井上と名乗る地味な女性(=井上和子:丹羽たかね)が面会に訪れた。やつれ顔の婦人は彼の顔をみるなり「あなたが、本当に会田さんとおっしゃるんですか…」とショックを受けて帰っていった。まるで訳の分からない会田。ところがしばらくして、商売女に様変わりした彼女の溺死体が発見される。「結婚詐欺に遭ったんですよ」男に貢ぐだけ貢ぎ、教師を辞めてホステスになったという彼女の結婚相手が、“警視庁に勤めている会田とかいう刑事さん”だと遺族から聞かされた会田はびっくり。そしてホステス仲間は、彼女がその男を脅迫していたと語った。一課の苦情もなんのその、このホシだけは俺が挙げねばと、会田は眉間をことさら険しくする。 その頃、圭子は“会田”(=和子の口を封じたばかりの会田吾郎:和崎俊也)から、実は別居中の妻子がいることを告げられていた。生さぬ仲ゆえ慰謝料を払えば離婚できるが、高額すぎて刑事の給料では…そう苦悩する男に「そのお金、あたしが出しちゃダメ?」と持ちかけた圭子は、彼との新しい生活を夢見てマンションをも購入した。たまたま圭子のブティックの常連だったリサ(タロさんと新婚ほやほや:小牧リサ)が結婚話を聞きつけ、太郎(左とん平)が会田の祝いの席を設けたことから、話はようやく会田の耳に入る。 「警視庁の会田です。ほんもののね」 本物の来訪を受けた圭子は激しく動揺したが、「人を知るってことは住所や名前を知ることじゃないわ。その人を信じられるかどうかよ!」となおも“会田”を弁護。そのとき会田は圭子の部屋で、被害者の部屋にあったのと同じタッチの肖像画を見つけた。スクラップ魔の鈴木刑事(梅津栄)のお蔭で会田吾郎の名前と実家を知った彼は、秋田の山中にある小さな村を訪れた。だが立ち寄った駐在所で吾郎が殺されたことを聞かされ、葬式にまで出くわす。 急ぎ帰京するとブティック・エルには売店舗の貼り紙、空っぽの部屋には、憔悴した圭子の姿があった。和子の仲間の金欲しさのタレこみ電話で吾郎の郷里に向かった圭子は、そこで家族団欒を満喫している彼を見てしまう。信じていたものが崩れ去ったのを感じた彼女だが、それでも「もしかしたらあの親子も騙されているのかもしれない…」と、東京で待とうとしていた。しかし翌朝、二人は偶然駅で再会。慌てて人気のない川岸に彼女を引っ張っていった吾郎は、金は返すから家族に言わないでくれ、すまなかったと怯えたように泣きじゃくった。そのみじめな姿を目の当たりにした瞬間、吾郎を突き飛ばして棒で激しく殴りかかる圭子――殺したのは、彼女だった。 ――謝るあの人が憎かった。 最後の最後まで騙してくれたら…待ってたのに、信じたのに…! 両手を差し出す圭子。だが会田は動けなかった(圭子の回想シーンに被さる昭和ブルース1番&4番) *身につまされるというかなんというか、寂しい女の自尊心と愛憎にガツンとやられた回。出稼ぎで結婚詐欺やってた吾郎(和崎さん)がそんなに憎たらしい奴に見えないせいで、余計にラストの圭子の行動がこたえる。 *溺死した和子さん、面会に来たときとまるっきり雰囲気が違うので2度ほど見るまで同じ人だと分からなかったのだが、会田よく分かったなあ。 *ともすれば会田の添え物的要素の強い特捜刑事の面々だが、鈴木さんは特技があるから素晴らしい。それに会田がピンチ、ってときには鬼のように相手に喰ってかかったりするあたりもいい感じである。
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2009,10,12, Monday
#34「兇悪の遊戯」(1973年・S48・11月22日OA)
山道を走るトラック。 荷台には3人の男と1人の女、そして手錠に繋がれ意識のない会田(天知茂)の姿があった。 午後2時過ぎ、特捜部の矢部警視(山村聡)宛に男の声で電話が入る。「おたくの刑事さん(=会田)をひとり預かってる。人質として」工場の給料1億8千万を強奪したメンバーのひとりとして5日前に拘留された石堀辰也(小林勝彦)の釈放を、男は交換条件に持ち出した。どうやら奪った金の隠し場所を石堀だけが知っているためらしい。 その頃ようやく目覚めた会田は、拉致された経緯を思い出していた。石堀の店のレジ係、笠原真知(弓恵子)のアパートを訪れ尋問中、入ってきた男=電話の男・小説家の克見大介(睦五郎)と揉み合う内に真知に殴られ昏倒したのだった。荷台にいたのは真知のほか、罪悪感に怯える工場のガードマン・黒田公平(稲葉義男)、会田の拳銃を弄びながら強がる西城邦男(佐藤京一)、サイレンサーを手にした玄人風の河津竜次(上野山功一)。河津以外は初仕事で緊張していると踏んだ会田は、沸点が低そうな西城を怒らせ銃を奪い返そうとするが、冷静な河津に阻まれうまくいかない。 しかし、矢部の時間引き延ばし作戦に焦れてきた彼らは仲間割れを起こし始め、西城が発砲、弾が真知の左腕に命中した。銃声が外に漏れ、会田を探す坂井刑事(宮口二郎)らは検問所を設けて道路を封鎖。ライターで炙ったナイフで弾丸摘出(当然麻酔なし)というワイルドな手当てを真知に施した際に付いた血を拭ったハンカチで合図をしようとする会田だが、河津に殴られ再び失神、ハンカチは検問所のはるか前方に落ちてしまった。検問所を難なく通過するトラック。ところが坂井刑事を追ってきた竜巻クリーニングの太郎(左とん平)のおかげでハンカチは無事発見され、トラック確定に繋がった。 夜になり、矢部が石堀釈放に応じたとの知らせが舞い込む。用済みだとばかりに会田を消そうとした西城は逆に反撃をくらい、おまけに河津に射殺された。分け前一人占めのために石堀も殺すつもりだと本性を露わにする河津。会田に銃を向けることを拒んだ黒田も消され、河津の銃が会田に迫る。だが真知の土壇場での協力を得て、会田は鮮やかなナイフ投げで河津を倒した。 引き渡し現場に矢部と降り立った石堀は狙撃された(防弾チョッキで無事)。撃った克見が帰宅すると、真知と会田が待っていた。真知との間に娘をもうけながら、恋愛も犯罪も遊戯(ゲーム)にすぎないとうそぶく克見。小説だけではなく、本当のコマを動かし、この身体で裏切りの快感を味わいたかった――「その主人公の結末は決まったようだな」そう言った会田の手錠を素直に受ける克見に、真知は最後に子供の声を聞かせたいと電話に駆け寄る。しかし、電話口に娘が出た頃には二人の姿は消えていた(「女は逃げちまった」と坂井に報告して車に乗り込む会田を窓から見送る真知がうつって昭和ブルース1番) *いきなり人質になってる会田、何が起こったんだ! その怪しげな男女は誰だ!とぐいぐいストーリーに引き込まれていく回。 *弓さん・宮口さん夫婦の絡みは1シーンのみ(会田を助けに来たとき、真知さんの腕を取っていた程度か) *わざと克見からの電話になかなか出ず、彼をじらせる矢部さん。「洋服の仮縫いをしていてね」かなり無理目の言い訳です(そうか会田が心配なんだ)。
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2009,09,29, Tuesday
#33「兇悪の肌」(1973年・S48・11月15日OA)
オツムの少々弱いパー子こと水沢純子(左時枝)は、知人の結婚式で見かけた男をアパートに連れ帰った。寡黙な男にマジ惚れしてしまったパー子は、50万貸してくれ、その金があったらキミと一生暮らせるんだと迫られ、10日待ってくれと頼む。 「あんただけには、きれいな体で抱いてほしいの」 10日間男を断てばきれいな身体になれる、そう彼女は信じていた。無心にお百度参りまで始めたパー子には、その男が財界の黒幕を拉致・射殺した犯人グループの一人だなどという事実は知る由もない。 殺された黒幕は外国(シャルダン共和国)との合弁会社設立を画策しており、かの国の秘密組織の暗躍が背景にあると睨んだ会田(天知茂)と一課の橘警部(渡辺文雄)は、今回ばかりは無言の協力体制を敷いて捜査に当たっていた。やがて新婚夫婦の見送り連中にまぎれて現場から逃走した男・青井登(長谷川明男)の名前が浮上する。 鈴木刑事(梅津栄)が聞き込みに向かった先はパー子の勤める居酒屋。青井と一緒に暮らしていることを嬉しそうに打ち明けた彼女は鈴木をアパートへ連れてゆくが、気付いた青井は逃走した。さすがにいぶかしみ始めたパー子だが、会社の金を使い込んだという言葉を信じ、せめて5万でも、と要求する青井のために金を工面しようとする。 「10日間の誓い」を先延ばしすることにして、シンパの浅川(大泉滉)から身体と引き換えに5万円を借りたパー子だが、待ち合わせた場所に青井の姿は見えなかった。秘密組織の一人に見つかった青井はその頃、土手で死骸になっていた。保険金のもつれなどというとってつけた動機で自首する犯人。青井をスケープゴートに、すべてをうやむやにしようとする上層部より捜査打ち切りの命令をうけて憤る橘は、取り調べ室で自首した男を半殺しレベルでボコ殴っている会田に自分と同じ思いをみた。 あきらめつつも待っているのか、居酒屋で客とから騒ぎするパー子。そんな彼女に、青井の死を告げられぬまま鈴木は店を出るのだった(そして真っ暗な特捜部屋で、鳴り響く電話にも反応せずにやり切れなさ全開で座り込んでいる会田と橘がうつって昭和ブルース4番) *国家主権がおびやかされる重大事というのに、上からの圧力で身動きがとれなくなる中間管理職のふたり(会田&橘)がメインというよりは、いわば捨て駒として働かされ殺された男と、彼を純粋に愛してしまった白痴娘の哀しさが強調されている。 *それでかどうか、会田の出番が普段の矢部さんレベルに少なかった。ただ、橘さんとは無言で見つめあうシーンが2〜3度あって、その都度会田の眼の表情の色っぽさにちょっとドキドキできる。(ぐっと睨んでるようで、あんたのことは分かってるよ、ってな雰囲気をも漂わせるのだ)
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2009,09,02, Wednesday
#32「兇悪の指」(1973年・S48・11月8日OA)
排水汚染ろ過装置の設計図を3人組の暴力スリ団に盗まれて落ち込む研究員・守口(上田忠好)。スリ組織のボスと見られる山根(藤岡重慶)の事務所付近で痛む足をさすりつつ地道な張り込みを続ける吉田刑事(多々良純)は、企業スパイの線から捜査に割り込んできた会田(天知茂)に少々おかんむりの様子である。 そんな折、会田は守口の住まいの近くで少年(=夫婦喧嘩のとばっちりを受けた守口の息子)を慰める老ハコ師の関根勘市(有島一郎)に遭遇した。設計図を盗んだスリの一人、前川(三角八郎)に接近、わざとボコられ強請られて組織に近づこうとしている彼の真意を会田は図りかねる。 山根を雇い設計図を奪わせたのは、ライバル会社の佐々(佐々木功)だった。ところが山根が報酬金を吊り上げ出したために、佐々に命じた当の部長(加賀邦男)は渋い顔、「私は暴力スリを使えといった覚えはないよ」と佐々に依願退職を勧め、結果的に彼を投身自殺に追いやってしまった。 新しい金づると取引を始めようとする山根の行動を探る勘市の前に、再び会田が姿を現した。観念したように勘市は打ち明けた。守口の妻・由紀(青柳三枝子)は幼い頃養女に出した実の娘だから、彼女や孫のためにも自分が設計図を取り返したいのだ、と。会田は死に花を咲かせたいという彼の訴えにあえて耳を貸さず、手を引けと命じる。 しかし本庁に戻った会田に吉田は衝撃的な事実を告げた。「あいつの娘は死んでるはずだよ」 由紀は、勘市の娘が病死した後で産まれた養子先の実子だったのだ。何も知らないまま、勘市は取引現場で山根の書類を奪い、非常階段でもみ合った拍子に地面に落下。来ていることを知りながら見逃してくれた会田に「死に花を咲かせてくれたんですね」とほほ笑んだ勘市は「娘さんが喜ぶぜ」との言葉に安心したように息を引き取った。 設計図が戻って幸せいっぱいの守口一家。協力してくれた男(=勘市)の埋葬につきあってくれないか、そう切り出した会田に由紀は言う。「あら困ったわ、これから箱根に行きますの。帰ったらお墓に参らせてもらいます」 佐々の上司は関与を否定して会社にはお咎めなし、佐々の身重の妻は流産したという。 ――世の中ってこんなもんだよ。 吉田の呟きを背中で重く受け止めながら、去りゆく車を見送る会田だった(昭和ブルースは4番) *最後の一捻りがなんとも非ライ的。でも知らされずに逝ったから勘市っつぁんは幸せか。 *前川を取調室に押し込み、無言を貫いて相手をびびらせた会田がカッコいい。
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2009,08,20, Thursday
#12「兇悪の空」(1973年・S48・6月21日OA)
冒頭から会田(天知茂)がさりげなくマークしている男の名前は桐正人(佐藤允)、旅客機とテスト中の戦闘機が衝突、153人の命が犠牲になった事件で戦闘機の1機を操縦していた元テストパイロットである。事件は死亡したパイロット・香川の操縦ミスで片付けられたが、桐は会社が旅客機を仮想敵機とみなして計画を立てていたのを知っていた。その事情を知るが故に何者かに3か月もの間尾行され続けている桐は、競馬場に来ても賭けるわけでなく、彼を慕う香川の妹・晴美(奈美悦子)をも遠ざけ、過去の重さに押し潰されているかのような生活を送っていた。 会田が桐の尾行者・梅本(高島稔)に脅しをかけて追い払っている頃、桐はかつての同僚・和島(北真知史郎=現・北町嘉朗)と、テストパイロット会社の元社長・佐田(加賀邦男)の訪問を受けた。パイロットへの復帰を断られた彼らは、桐が持ち出した事件の際の飛行計画書を渡せとジワリと脅す。桐の身柄と共に飛行計画書を確保するのが会田の任務でもあったが、桐は会田にも計画書を渡そうとはしなかった。 警察の介入を恐れる佐田と平建設の光田(入江正徳)は会田抹殺に動く。平建設社員(26歳)だった梅本はリベンジとばかりに会田を拉致、古傷が残る左腕に注射器を突き刺してピストンを引っこ抜き失血を促すという実にマニアックな責め方でピンチに陥れるが、浴びせるはずの熱湯を浴びせられ撃沈。会田は何事もなかったように桐のアパートを訪れ、酔いつぶれて死にたがっている桐の臆病さを突くと「死にたければ本当に死んでみろ!」と重苦しい過去を乗り越えてきた彼らしい力技で説得、あとを晴美に任せて去る。 しかし帰宅するなり、晴美が誘拐されたとの桐からの電話が。二人でお台場に来いという指示に従う会田と桐だったが、晴美を連れて現れた和島たちに計画書の引き渡しを拒否、銃撃戦の最中に晴美を守って被弾した桐は会田に計画書の在り処を告げると「勝負はこれからだ」と呟いて事切れた。 「大物はいつも姿を見せない…!」 テストパイロットの会社は壊滅したが、せっかくの桐の書類は上層部の判断で秘密裏に処理されてしまったことに空しさを覚える会田。だが、死んだ桐のアパートで暮らすことを選んだ晴美(「女というものは、一度見た夢をいつまでも見続けられることだってありますわ」)に女の強さを見る。 (見えない鎖が重い昭和ブルース4番をバックに、道行く人々を車中から眺める会田) ――この中に、第二第三の桐が、香川が、そして佐田も、和島も光田もいる。 羊と狼が一緒にいるようなものだ――。 *大きな悪はうやむやになってしまったようで後味が悪いが、それよりなにより本筋に関係ないシーンがやたらと印象に残ってしまう話だった(梅本……)。 *会田の拳銃のさばき方(クルクルッと回してから収めたり)も印象的ではある。
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2009,08,04, Tuesday
#11「兇悪の腕」(1973年・S48・6月14日OA)
事件の容疑者(でも雑魚)をボコ殴って半殺しにし、10日間の懲戒処分を言い渡された特捜刑事の黒木(黒木憲)。クサっている最中に遭遇した先輩の会田(天知茂)を尾けてみるがすぐにバレ、「退屈な時は草鞋を編むもんだ」などと言われる始末だが、意外と親切な会田から、不審な融資を受けている篠原興業の計理士・宮崎(渥美国泰)を見張る仕事を割り当てられた。だが会田に連絡を入れずに直接宮崎にアタックした彼は、またしても宮崎と女秘書をヤクザまがいで脅迫、怪我を負わせてしまう。 そんな血の気の多い黒木にも、両親を亡くした娘の仕事を世話してやるといった優しい一面があった。『人間は誰だってひとりぼっちなんだ』――黒木の口癖や人柄をその娘、三富圭子(沢久美子)から聞くにつけ、会田は彼の孤独な境遇に他人とは思えぬシンパシーを抱く。それでもはみだし刑事は俺一人で充分だ(←予告より)と篠原興業に匿われた宮崎の元へ単身で乗り込み、力負けしそうなごつい用心棒を金庫でノして、組に融資した元代議士の名前を聞き出すが、当の人物は撲殺されて死体になっていた。殴ったのはサウスポー。用心棒、そして黒木も左利きだった。 現場には、元代議士に金を流していた銀行の出納課課長・村上(加藤和夫)がいたことが判明。二度と余計なことはするな!と会田にボコられたにも関わらず、村上を尾けてまた腕力に物を言わせようとする黒木。そこへすっ飛んできた会田は黒木を制止し、篠原組のヒットマンが放った銃弾で被弾した村上の妻・信子(浅茅しのぶ)と村上を庇う。自らも負傷しながら村上達を護り、結果的に彼を自首へと導いた会田のやり方に戸惑う黒木だが、一番の悪人である篠原(高木均)をこれでもかとボコ殴る姿を見て、初めて何かを掴みかける。 しかし、町で偶然見かけたチンピラ同志の喧嘩に「こいつ(=拳)は使いませんよ」と颯爽と仲裁に入った黒木は、チンピラの改造銃にあっけなく倒れた。 「俺、やっと刑事って仕事が分かってきた、って気がしてたのに……」 そう言って事切れた黒木の代わりに信子の待つ公園に向かう会田。彼女は会田の表情を見た瞬間、黒木の身に起こったことを悟り泣き崩れた。 (昭和ブルース3番のイントロ開始) 「思いっきり泣いてやるんだな」 会田に言えたのはそれだけだった。 ――ひとりの刑事が死んだ。 だが、俺は遺された者への慰めの言葉も知らない。 今の俺にわかるのは、あの男のように、 ある日突然俺にも死が訪れるかもしれないということだ。 俺が死んだら、涙を流してくれる者は、いるだろうか――。 *自分の若い頃を彷彿させる黒木に、刑事としての在り方を身をもって教える会田。だが唐突に訪れる空しい結末がなんとも非ライ的。まあ、若手が成長してゆくドラマじゃないからなあ(若手は死ぬか知らん間に消えるかどちらかだ、っていうかそもそも若手自体いないんだが) *黒木役の黒木さんの本職は歌手なので、演技に突っ込んでは失礼かもしれないが、正直もうちょっとなんとかならんかったのか、なレベルでそこが少し残念だった。 *雑誌ヌードを見ていて侵入に気づかなかったチンピラをあっさりボコった会田、床に落ちた雑誌に向かって「かわいこちゃん、礼を言うよ」とウインク。天っちゃんのウインクなんて初めて見たような気が(ちょっとぎこちないあたりが微笑ましい)。
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2009,06,03, Wednesday
#10「兇悪の骨」(1973年・S48・6月7日OA)
仕事の待ち合わせ相手が30分以上経っても現れないのでちょっとイライラ気味の会田(天知茂)。ったく、どんな野郎だか知らないが…!とぶーたれていたら現れたのは女性(赤座美代子)だったことからコロッと態度を変えるも、自分はあくまで繋ぎ役だと彼女はつれない。 彼女の案内でようやく会えた麻薬Gメンの乃木(西沢利明)は、近頃ヤクの出回りが少なくなっている横浜近辺で今度大掛かりな取り引きがあるのだと言った。早速暴力団事務所そばのアパートで張り込みを開始した二人の前に麻薬ブローカーが現れた。だが肝心なところで乃木がトイレに籠ったまま出てこず、仕方なく会田一人で尾行するのだが、男は別の連中に連れ去られてしまった揚句に翌日死体になっていた。 こんな奴とはやってられんと変装(いけてない労働者風)して単身で調査を進めた会田は、取引の割符の半分を見事にゲット。部長(山村聡)の前で得意げに自慢して帰宅しようとした彼を、冒頭の女性Gメン・麻鳥マスミが待っていた。「いやよ、今日はひとりにしては……」彼女の色っぽい誘いに堂々と応じてベッドインした会田だが、家に帰ると部屋は割符狙いの何者かに酷く荒らされていた。 乃木に割符を渡し、外国船の船長との取引に同行する会田。ところが船長が持参したスーツケースには、麻薬(隠語でシュガー)ではなく本物のシュガーが入っていた。乃木は意気消沈し、ケースを持ってすごすご帰宅するが、実はすべてヤクザの矢場(日尾孝司)との共謀であり、二重底のケースの中には麻薬がどっさり。最後にGメンとしてのプライドを燃やそうとした乃木だが、すでに麻薬に侵されていた身体は言う事を効かない。と、そこへ会田が飛び込んできて矢場と2人の手下たちと格闘、だが肉弾戦に苦戦している隙に乃木は矢場に刺されてしまった。 「麻薬捜査官の“獅子身中の虫”を探し出せ」それが今回の会田の任務だった。麻薬の末期症状および負傷で、虫=乃木は、会田に看取られながら明け方に息を引き取った。病院の前にはマスミがいた。乃木に家探しさせるためにマスミが自分とベッドを共にしたことに会田は気付いていた。そして、特捜部に情報をタレ込んだのは彼女だということも。行ってやらないのか、との問いに「死んだの、あの人……」そう呟いただけで踵を返す彼女を、会田はただ黙って見つめるしかなかった(昭和ブルースは4番) *麻薬で恋人を失い、今また上司兼恋人を同じ麻薬で失う羽目になったマスミの悲哀がにじみ出る回。第3シリーズ#12「兇悪の骨・肌を売る捜査官」よりも原作(「兇悪の骨」)に近いハードボイルドなテイストが印象的だった。…まあ、第3のアレは乃木とマスミよりも兇悪のモチ肌だけが異様に印象に残るサービス過剰な話ではあったが。 *会田、10話目にして初のベッドシーン。雰囲気は第2シリーズ#57「兇悪の壁」チック。 *割符の件で矢部さんに褒められて「俺の頭はダテにここに乗ってるわけじゃないんでね」と得意がってる会田がかわいらしい。 *取引のとき、白い粉の袋を口で豪快に噛み破って中身なめてる会田、本物だったらえらいことじゃないのか?
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2009,05,27, Wednesday
#9「兇悪の道」(1973年・S48・5月31日OA)
捜査一課のベテラン刑事・佐久間(美川陽一郎)は勇退を迫られ、鬱屈した日々を送っていた。幼い男の子が団地の屋上から不審な転落死を遂げ、母親の京子(市原悦子)に事情聴取に向かった際、先に特捜部のいけすかない会田(天知茂)が来ていたことで日頃のイライラが爆発。会田なんかに邪魔はさせんぞお、負けんぞお、会田のばかやろー、と地球が丸いことさえ会田のせいにしかねないほど彼に対抗意識を燃やし、酔いつぶれて同僚や娘の鈴子(真屋順子)に愚痴るのだった。 そんな父親を心配した鈴子は、苦しんでいる父の気持ちを察してほしい(つまり事件を譲ってほしい)と会田に直談判する。「無駄だな。そんな話をきいても俺には何の役にもたたない」会田は冷たく言い放ち、もっと父親を信じてやれ、今の彼には信じてくれる人が必要なんだと娘を返した。 会田が京子に接触したのは、道路開発局のタイプ課にいた彼女が道路拡張工事の不正に関わる文書を何者かに流している疑いがあったからである。京子のマンションにあった人形に着目した彼は、それがラブスナックの開店記念品であることを突き止め、このいかがわしい店に京子が南条(石井宏明)という男と頻繁にきていたこと、そして南条はすでに別の女と関係を持っているらしいことを聞き込んだ。 ホシは邪魔になった京子の口をふさぐかもしれない――。会田の懸念通り、ガス栓が何者かに故意に開かれ、就寝中の京子の身に危険が迫った。張り込み中の鈴木刑事(梅津栄)によって救い出された彼女だったが、「あたしが栓を閉め忘れた」の一点張り、あなたは女の気持ちなんか分かりません、と会田の言葉に耳を貸そうとしない。 会田は件のラブスナックへ足を運び、人待ち顔の道路開発局の封筒を持った女・かおり(森みつる)を尾行。南条と待ち合わせているらしいマンションに先に乗り込み、次に殺されるのはあんただ、とかおりを諭すのだが、彼女は土壇場で南条を逃がしてしまった。彼女を殴って外へ追う会田。しかしそこへ病院から逃走した京子が現れ、会田の前に立ちふさがる。「刑事さん、あたしを捕まえて下さい。あたしはあの人と一緒になるために……」自分の息子を殺したことを告白しようとする京子を、会田は止めた。「君を捕まえるのは、俺の役じゃない」 京子は佐久間の元で自白。なぜ私に、と驚く佐久間に京子は言う。「会田という刑事さんに言われたとき、あなたのところへこなければと思ったんです」それは父親のような気がしたからなのではないか――佐久間は一課を辞して小料理屋を経営している先輩・徳田(柳家小さん)の引き際を感じた状況と同じであることを悟った。「いくら日のあたる場所にいても、老木に花を求めるのは無理のようですなあ…」寂しそうに呟く佐久間に、橘(渡辺文雄)は何も言えなかった。 かおりを連れて張り込む会田の前に、南条が姿を見せた。だが会田は彼を駆け付けた佐久間に託し、そのまま背を向けて去るのだった(昭和ブルースは1番) *寂しい未亡人とハイミスが陥った迷路と、老刑事の引退間際の悲哀と執念。どちらにも非情を装いながら人情味あふれるフォローを忘れない会田がいい感じ。 *初登場時(#3)からなぜか会田を目の敵にしていた佐久間刑事役の美川さんは天知プロ(A&Aプロ)創設時のメンバーなので、実はとても仲が良かったのかもしれない。 *愛くるしい体型の女の子が口をチュッととがらせてるラブスナック(凄いネーミングだ)の人形、たしかうちにもあった…。 *ためになる(?)会田語録「男が女に優しくするときは、それなりの理由があるもんだ」 …そうなんですか男性の皆様。
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2009,05,20, Wednesday
#8「兇悪の罠」(1973年・S48・5月24日OA)
会田(天知茂)と四方(葉山良二)は、関東興業の組長逮捕に向けて、城西署の助っ人として拳銃密売やノミ行為などの現場を派手に押さえていた。しかし面が割れてきたのか、捕まるのはザコばかり。どうやら先方には「トクチョウ(=特攻隊長)」と呼ばれるキレ者がおり、こちらの情報を漏れ聞いているらしい。「どうだ、そろそろ突っ込んでみるか」矢部(山村聡)が会田と意味ありげな目配せを交わしている頃、杖にバラの装飾を施した男(=トクチョウ)が会田の盗撮写真を見ながら、狙った獲物は必ず射止めるヒットマンを探せとの指示を出していた。 捕まえたザコの情報により、船での取引現場に急行した会田たち。近付いてきた不審船には、ライフルを手にした殺し屋・黒崎(中田博久)が。会田を狙う銃口――次の瞬間、胸を押さえて会田は海へと真っ逆さまに落ちていった(←落ちたのは高い確率でスタントさん)。 四方の必死の捜索にも関わらず、2日経っても会田の行方は不明のまま。対応を詰る矢部に、全て私の責任です、クビにしてもらいましょうか!と開き直って出て行く四方。矢部は、一緒にいた城西署刑事で四方の同期でもある渋沢(中野誠也)に、四方が密輸組織から多額の借金をしていることなどを密かに告げ、それとなく彼の様子を見守るよう頼んだ。 競馬やら飲酒やらに精を出し、自暴自棄な姿を渋沢に晒す四方だが、それらの行動はすべて、渋沢とトクチョウの闇の繋がりを洗うため、矢部そして会田が仕組んだ計画のうちであった(四方の報告を聞く矢部の傍らにはピンピンしている会田の姿が)。すっかり四方を「同志」だと信じた渋沢は、トクチョウに会いたいという彼に、会田を消した黒崎殺しを持ちかける。誘き出して黒崎を撃ち倒し、車ごと始末に向かう四方。しかし黒崎もまた計画の一員で、大阪府警の警官だった。 長引く不在で心配する竜巻太郎(左とん平)たちをよそに、会田は、渋沢の故郷、仙台まで調査に赴いていた。渋沢には、彼自身の過失で片足が不自由になった弟・武(神太郎)がいた。学生運動のリーダーだった彼こそがトクチョウでは――。やがて四方から、渋沢と共にトクチョウに会うとの連絡が入った。 無人のスタジアムにたたずむ、杖の男。渋沢を兄と呼ぶ彼はやはり、トクチョウと呼ばれる男だった。人を殺して(実際は殺していないが)行き場のない四方を組織に入れてやってほしいと頼む渋沢に、上からの指令でそれはできなくなったと冷たく告げ、その場を去ろうとする武。そこへ「動くな!」と現れた会田と坂井(宮口二郎)、そして自分に銃を向ける四方を見た渋沢は、罠に落ちたことを悟った。身を翻す渋沢を、四方は撃てない。その隙に、渋沢は武を射殺する。「兄さんはとうとう、僕の命まで自分の思い通りにしたんだね……」自らの生き方を持たぬ兄に干渉され続けた弟は、最後に兄を拒絶して死んだ。 弟と一緒に逝かせてほしいと泣き叫ぶ渋沢に手錠をかけた四方は、会田に向き直る。 「さぞかし満足だろうな。たしかにあんたとおやっさん(=矢部)の狙いは間違っていなかった。…だがな、たった一つだけ、あんたたちにも分からなかった事があるんだ。渋沢が、最後までこの俺を、たった一人の友人として扱ってくれたことだ!」 (ここらへんから昭和ブルース1番イントロ開始) そうしむけたのはこっちでね、とうそぶく会田に、あんたみたいな男にこの気持ちは分からん!と詰め寄る四方。 「わからんね。薄汚ねえ友情なんてやつは、くそっくらえだ」 煽る会田を全力でぶん殴り、四方は肩をいからせ去って行った。その後姿を、会田は苦笑いを浮かべて見送るのだった。 ――思ったより気のいい野郎だ。……俺もたった一人、ぶっとばしたい野郎が上役にいるんだがね……。 *交番勤務時代からの友人を欺かねばならない役回りを与えられて悩む四方がメインの回。会田は撃たれたり殴られたり段ボールぶつけられたり(←冒頭)、ろくな出番がないのだが、四方が自責の念にかられないよう、あえて自分に怒りをぶつけさせた(かにみえた)ラストの気のいい野郎ぶりにぐっときた。 *コワモテ殺し屋かと思いきや、「ほんましんどいでんなあ」と微笑ましい大阪弁で明るく去って行った黒崎さん(本名は中山さん)がいい感じ。でもその前に会田がピンピンしていたから、彼のからくりも薄々読めてしまったのがちょっと勿体ない。 *会田のアパートの部屋番号は「402」。お向かいは田中さん。
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2009,05,13, Wednesday
#7「兇悪の土地」(1973年・S48・5月17日OA)
関東系の新鋭会と関西系の毛利組、2つの暴力団がしのぎを削る街にやってきたグラサン男(=会田:天知茂)。所有地を巡って何者かに殺された岩下老人の遺産相続人・佐倉一郎として街に乗り込み、2匹の狼たちをかみ合わせるのが今回の彼の任務である。 子連れの花屋の女主人・光子(葉山葉子)にはフェミニストぶりを発揮する傍ら、“佐倉一郎”として岩下邸入りし、早速ヤクザたちをかき回す会田。だが、いけすかない一課の橘警部(渡辺文雄)が出張ってきている上、岩下老人殺しの報酬をたかる男をボスの命令で殺したばかりの新鋭会の品田(杉江広太郎)に「あいつは確か半年前に…!」と面が割れてしまい、カンカン踊りをさせられる羽目に(…までは至っていないが、サウナの浴槽で危ない目に)。暴走を心配する橘が所轄の刑事を寄こしてくれて事なきを得たが、やられたらやり返す主義の会田は品田を兇悪に嬉しそうにボコ殴って監禁したのち、両方のボス(近藤宏&伊藤豪)を時間差で呼び出して相討ちを仕掛け一網打尽にする。 しかし一番の悪人は、ヤクザたちを手玉に取り、裏で中央の黒幕と共謀して私腹を肥やそうとしていた弁護士・笹森保(川合伸旺)。会田は品田に耳打ちして解放し、笹森を彼の手で抹殺させるのだった。 街を一掃して帰途につく会田の前に、光子の花車が通りかかる。会田の身辺を探れと笹森に強要され、岩下邸で色仕掛けに出てやんわりたしなめられた彼女は眼を合わそうとしなかった(でも所轄刑事が彼女を警護してくれてるのを見て少し安心した表情を浮かべながら、咥えたサングラスを掛けて去ってゆく会田で昭和ブルース4番) *東京を離れ、別人になりすましての潜入捜査なのに、すぐにヤクザに面は割れるわ班長さんは所轄署で素性をばらしまくるわで分が悪そうな会田。しかし悪い奴の潰し合いに持ち込む知能戦が面白かった。 *サウナで矢部さんに報告しているとき(品田に襲われる直前)、生脚から舐めるように全身(ガウン姿)を映していくといった、お茶の間の奥様がお茶と鼻血を噴きそうなモデル並みのカメラワークが見られたのだが、あれは何のサービスだったのだろう。
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