2007,04,03, Tuesday
『剣聖 暁の三十六番斬り』(1957年・S32)
柳生十兵衛(辰巳柳太郎)から秘伝を授かった荒木又右衛門(嵐寛寿郎)。弱きを助け強きをくじく天狗のおじさんならぬ又右衛門さんは、河合又五郎(丹波哲郎)に父を殺された義弟の渡辺数馬(和田孝)の助太刀をして伊賀・鍵屋の辻で大暴れする。無声映画のチャンバラもどきのBGMが盛り上げてくれるクライマックスの三十六人斬りは、観客が彼に求めたものに堂々と答えてみせるアラカンさんの役者魂も垣間見られて圧巻だった。 長い間“伊賀モノ”だった身にとっては『荒木又右衛門』やら『鍵屋の辻』やらはすこぶる身近な言葉なのだが、又右衛門&数馬の他にあとふたり味方がいたというのは恥ずかしながら知らなかった。若いほうの岩本孫右衛門、それが今回の天知茂の役柄である。 又右衛門さまの中間(ちゅうげん)らしい孫右衛門は、廊下に控える年長の武右衛門(討ち入り仲間:広瀬康治)とは違い、庭先からタタタと駆け寄り「旦那様! ○○様がお越しになりました!」と声をかける下っ端くんとして登場。又五郎を追って4人で旅を続ける途中も、店の主人に聞き込む(ウソをつかれてるのに正直に信じる)・宴会に興じる又五郎一行の様子を探る・橋の上で見張るなど、旦那(=アラカン)様の完全なるパシリ仕様で、「ハイッ!」と軽やかに返事をしてタタタと駆け出す姿だけがやけに印象深かった。 実はこの映画の撮影が結婚式/新婚旅行とかぶっており、本人は奥様よりアラカンさんを選びそうな勢いだったようだが、撮影所のほうで調整してくれて事なきを得たらしいので(「奥さんこんにちは」参照)、ひとりだけ偵察その他で姿が見えないシーンが増えたのかもしれない。 しかしそのせいで、鍵屋の辻の茶屋(のちの『数馬茶屋』←今でもある)に着くなり「そこの先の長田橋で(見張っておれ)、いいな」とアラカンさんに命じられまたしてもタタタと走っていったのはいいが、味方の3人の末期の酒盛りに混ぜてもらえず、又五郎が来たのを大急ぎで知らせに戻ったらすぐさま「行け!」と追い出されるという、ちょっと可哀相な扱いも見られた。しかも戦闘になるとあっという間に怪我して戦線離脱。二刀流でばっさばっさ斬りまくる(@江戸の牙)のはあと22年も先のことだから仕方が無い。 *武右衛門は死亡したが、孫右衛門くんは生き残り70余歳まで長生きした模様( 青空文庫「鍵屋の辻」直木三十五より)
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| 映画::新東宝 | 10:28 PM | comments (x) | trackback (x) | |