2006,03,22, Wednesday
『スター毒殺事件』(1958年・S33)
フィアンセの真理(万里昌代)を自分と同じ世界に誘ったばかりにライバルにまんまと奪われてしまう映画スタア・上原城二(天知茂)。真理ちゃんとの幸せシーンでの眉根に締まりのない天っちゃんはその軽いしゃべくりと相まって、良いひとを演じていても胡散臭さがそこはかとなく漂ってしまうのが難点。ご本人は同期の高島氏や宇津井氏のように青春映画で爽やかな二枚目を演じたかったが叶わず、ふてくされたこともあったらしいが、彼のオトコマエ振りというのはそういうシチュエーションでは生まれ得ないということを周りの人たちが分かっていたのは幸いだったかもしれない。最初の胡散臭い存在の軽さはどこへやら、人を殺めてから先がすこぶる活き活きしてくるひとなんてザラにいないだろう。 「真理は僕のものだ・・・いやだ、いやだ、いやだあああ!」泣くわ絶叫するわ、もすこし落ち着けよ城二!と肩を叩きたくなるようなパラノイアぶりにはびっくりだ。とうとう混乱の中で最愛の真理ちゃんを殺してしまい(ネタバレすみません)「僕も真理と一緒に死ぬんだ!」とか言って亡骸をお姫様抱っこ(←またもや)して車に乗せて逃避行を始めたのに、警察に追われるといつのまにか亡骸を置いて「僕は逃げなければ!」とサバイバルモードになってるあたりはらしくて笑えたが。とにかく逃げなくちゃ、は条件反射なのか? とことんまで追い詰められて(ここらへんまた艶っぽさMAX)、最終的にいかにもピストル自殺しそうな状況になったところで、「真理がいないのに逃げたって仕方がない。せめて罪を償おう」と言って自主的に投降するラストは少々肩透かしだった(そういや「自殺する天っちゃん」というのはまだお目にかかったことがないが*1)。真理ちゃんの元に行くんじゃなかったのか君は。 『暁の非常線』はどうでもいい人たち(失礼)のハッピーな様子でエンドマークだったが、虚無感溢れる表情の城二で締められていたのは、後味は悪いとはいえ(別に天っちゃんの顔が後味悪いという意味ではない)満足だった。渡辺宙明氏の音楽も要所要所を盛り上げていて聴き心地がよかった。 追記:好きよ好き好き城二さん、と恋女房よろしく世話を焼いてくれる女優役で、ぐぐっと色っぽくなった三原葉子ねえさんが出ているのだが、彼女には実につれない天っちゃんだった。 追記2:下記DVDのジャケットは良いとして、このポスターはシリアスな雰囲気をぶち壊しじゃないのだろうか(実際こういう格好してたけども) *1:『怒号する巨弾』で見ました(2006.4.1)
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| 映画::新東宝 | 01:34 PM | comments (x) | trackback (x) | |