2010,03,04, Thursday
素敵なこの人 (1983・S58・9月19日OA)
([1]の続き) 檀ふみ(以下、檀):ご紹介いただけますでしょうか、防空壕仲間を(笑) 天知茂(以下、天):えー、川瀬くん、長瀬くん、山本くん。 (画像) 檀:この中で、臼井少年を「こっち来いよ」とお呼びになった方はいらっしゃるわけですか? 川瀬さん(以下、川):いや、この中にはいないと思いますよ。 檀:じゃあ、今全然お分かりにならない… 天:思い出せないんですよねえ。 檀:じゃあもしかしたら、天の声かなんかで引っ張られたのかもしれない… 天:なんかそんな気もしないでもないですねえ、今にして思うとねえ。 檀:だって、その時に命が無くなってたかもしれなかったんですもんね。 天:そうなんです、ほんとに。ですからこれだけは、運命の分かれ道なんてよく言いますけどね、まさにその通りですねえ。 檀:学校ではどんな具合だったんですか、この臼井少年は。 川:おとなしかったですね。 檀:おとなしかった、静かだった。 川:文学少年ですよ。 天:ふふ(タバコ吸いながら照れ笑い) 長瀬さん(以下、長):目立たないね。 山本さん(以下、山):非常に真面目な方で、あのー、目立たない… 檀:お体もあんまりお強くなかったし。 山:ええ、そういうことですね。 檀:何か特にお出来になった科目とか、出来なかった科目とかは…? 長:国語がね、得意でね。ま、暗記力はすばらしく、まあできとったですね。 檀:暗記力が抜群。国語が得意。 長:国語の試験のときにね、答案用紙をね、(臼井君は)すべて書いてね、私はやることないからそれを失敬してね、それを出した覚えがあるんですね。 天:(笑) 檀:ちょっと待って下さい(笑)、ちょっと話をよく飲み込めないんですけども…この話は、ひょっとして…大変お出来になる、国語が、天知茂さん…臼井少年は。そして長瀬さんはあまりお出来にならない。皆さんどうだか分からないんですけど、そうすると、元試験用紙だったのかしら? 天:まあつまり、カンニングですよ(笑) 川:だからここ(中央)に臼井君がいるでしょ、この周りに私達が机並べているわけですよ。それでみんなの答案用紙をね、回しちゃって。だからね、この人(臼井君)が間違ってると、みんな間違っちゃうの。 (一同爆笑) 檀:じゃあ皆さん、国語の成績は良かったんだ、きっと。 長:そうですねえ。 檀:でも、当時から暗記力がいいということは、つまり、今は台詞を覚えたりしなきゃいけないから、大変… 長:ま、今日あるのも、国語が出来たせい…暗記力が抜群だからここにいる…まあ、現在の天知さんがあるんじゃないですか。 天:(笑) 檀:そして、戦後になりまして。臼井少年は、松竹に入りまして、大部屋時代を送るわけなんですけれども、その大部屋時代のお話は、お知らせを挟みまして後ほど伺うことにいたします。 + + + 檀:その、松竹に…京都の松竹に…? 天:そうですね、… 檀:松竹の、京都撮影所にお入りになったんでしょ? 天:当時、松竹下加茂撮影所っていったんですね。 檀:昭和24年? 天:うん、24年です。 檀:そして、大部屋時代をお送りになるんですけれども、なんかチョイ役もチョイ役、大変なチョイ役ばかりだったという風に… 天:要するにねえ、役というところまでいかないんですよ。だからチョイまでもいかないわけですけどね(笑)つまり、僕たちの言葉でいうと「仕出し」といいましてね、通行人とかね、そういうのが… 檀:あの、すっと通り過ぎてしまう… 天:そうですそうです。 檀:…(そんな)役をずっとなさっていたわけですね。それが、しかしそういう役に出会ったにも関わらず、お友達に見るようにと、せっせとお手紙を出してたというお話もありますけれども(笑) 天:(笑) 檀:そのへんのところはいかがなんでしょう、山本さん。ご記憶はありますか? 山:ええ、私はよく手紙をいただきましてね、よく見に行きましたんですけど、まばたきしますとね、もう画面から消えてるわけですね。 (一同笑) 檀:どこに出たか分からない…(笑)息が抜けないでしょ、最初から最後までいつ出るか分かんない、まばたきするうちに消えてしまうなんて… 山:だからもう、目をね、開きっぱなしにしとかないといかんものですからね。 長:それもね、2、3回ね、寿司屋の兄さんと見た覚えがあります。 檀:お兄様とご一緒に? 長:はい。 檀:2、3回、まばたきする間に消えてしまうのを… 長:鬘かぶって、こういう(顔を上げる仕草)…2、3カットをね、2、3回みたことがあります。 (一同笑) 檀:でも、馬鹿らしくなってきませんか…? いかがですか、川瀬さんは。 川:そうですね、… 檀:なんか、その、お金を払って… 川:まだ、体全体が映ればいいんですけどね、足だけのときがあるんですよね。 (一同笑) 川:足なんて見たってぜんぜん分からないでしょ。それなのに彼はあの、せっせと…(*聞き取れず)に書いてね、見てくれ見てくれってね、送ってくるんですよ。 檀:そうですか。でもお母様は、献身的にご覧になったっていう… 天:お袋は…なんかね、初めて映ったとき、もうそれなんかはね…お坊さんなんですよね、通行人でね。 *おそらく「森の石松」(1949年) 檀:お坊さんというと、どういう…? 天:あのー、こういう…(頭の周りに手で笠をつくる) 檀:虚無僧? 天:うん、網代笠っていうのかな… 檀:こういうの(同じく笠をつくって)…顔が見えない? 天:そうそう、見えない。なんだけど、なんか10回だかなんかね…見に行ったらしいんですよ。 檀:それは、天知さんがやっぱりお手紙をお書きになって。 天:そうそうそう。もちろんそうですけどね。 檀:どういうお手紙で? あの… 天:うーん、あんまりそのへんは定かじゃないんですけども… 檀:こう、だって、分からないでしょ、こういう役で出ます、こういうシーンで、ここに出てるのが僕ですとか… 天:まあ、そういうようなことでしょうねえ。 檀:その貴重なお手紙がね、ひとつだけここに… 天:ええ!? 檀:…残っているんですよねえ(手紙を取り出す)。これ、山本さんに届いたお手紙なんですけど…臼井登さん、たちばな荘より。 天:よく持ってたねえ!へえー(笑) 檀:すごく達筆というか、素晴らしい字で…まだお若いのに、お上手な。これね、ちょっと先程読ませていただいたんですけれども、ちょっと最初の方だけ読んで、後は掻い摘んでお話いたしますが。 『お手紙有難うございました。その後もお元気にて何よりです。小生も元気いっぱい仕事に…といっても、今撮影中のものは「薔薇合戦」だけで、同時に3本入っている時に比べれば暇なものです。仕事の無い日は読書、映画鑑賞にその日を送っています』 …と書いてありますけども、これも、3本入ってたといっても、やはりそういう、通行人的な役だったわけですよね。 天:もちろんそうですよ。 檀:で、ずーっと後は、日本の…これ、ご興味あったんですか、山本さん? 山:ええ、私もその当時はまだ若うございましたから、はい。 檀:…ご興味あって。もうずーっと日本映画について色々書いてらっしゃるかと思うと、イタリアのリアリズム! 天:あはは(笑) 檀:そして、フランスの映画について。もう、世界的な視野で、映画について最後まで語ってらっしゃいますけれども。『日本映画前進のために、勉強していく決心です』 天:すごいねえ(笑) 檀:ねえ、素晴らしい。 天:後で読まして?これ(笑) 檀:こういう、凄く映画青年でいらして、その当時に苦楽を共にしました、大部屋時代仲間の方を、今日はお一方、お呼びしておりますので。えー、どうぞ、お入り下さい。 (「3」に続く) *同級生が出てくると顔が綻んできて(だいたいこんな感じ)、ひときわ高い声で嬉しそうに笑ってた天っちゃんが微笑ましい中盤部分。山本さん、私にも読ませて下さいその手紙。
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