2009,10,04, Sunday
『博徒』(1964年・S39)
三組の博徒一家がシマを張る明治の大阪にて、盛大な襲名披露で阿倍野一家の二代目に収まったのは藤松米太郎(東映デビュー:天知茂)。紋付き袴だけでなく洋装や電気マッチ(あとは馬車など)も良く似合う藤松は“関東から流れてきた、御家人崩れの成り上がりモン”としてナニワの古株博徒たちから毛嫌いされるが、彼には市会議員になるという野望があり、目的達成のために財界の大物たちの頼みごとを引きうけて足場を固めてゆく。 博徒を馬鹿にしているくせに彼の資金や組織にちゃっかり頼ってくる連中を見返すため、社会的地位を得ようとしているかのような藤松。しかし昔堅気の任侠道を説く高田一家の伊三郎(主役:鶴田浩二)を筆頭に、血の気の多い子分・卯之吉(松方弘樹)、弟分・安之助(里見浩太朗)たちがなんだかんだと足を引っ張ってくる。 鉄道会社に請われ、貧民窟(あくまで自分のシマ内)の一掃を仕切っていた藤松に「堅気さんを泣かすんかワレー!」と突っかかってきたのが伊三郎。立ち退き拒否のおっさんが死んだせいで子分連中が乱闘となり死者が出るが、両一家の手打ちでとりあえず収まった。「そんな(死なせる)つもりはなかったんだ」と弁解した藤松だが、子分を失った伊三郎は、博徒らしからぬ行動を続ける彼に敵意を抱くようになる。 一方、安之助が属する八軒山一家は親分がヘタレ、その親分を叩き斬って安之助が刑務所入りしている間に、甲斐性の無い代貸が「わしらの賭場、預かってくれまへんか」と藤松に泣きついた(別に藤松がシマを乗っ取ろうとしたわけではない)。だが出所した安之助から事情を聞いた伊三郎がまたしても激怒して阿倍野一家に乗り込み、藤松を泥棒呼ばわりして詰った。 伊三郎なんかやっちまいましょうぜ、と憤る子分たちを前に無言で思案中の藤松のところへ、高田一家を破門になった五郎七(遠藤辰雄)が現れ、高田の親分(月形龍之介)をバラすから女と逃げる資金をくれと持ちかけてきた(別に藤松が親分をバラせとけしかけたわけではない)。ところがその女というのが卯之吉と相思相愛の女郎・小里(藤純子)。小里を返せー!と猟銃持ってなだれこんできた物騒な卯之吉を仕方なく藤松は一発で始末。「卯之さんは阿倍野の親分にブッ殺されたあ~!」と泣き叫ぶ小里の言葉にアンチ藤松度数が上昇する伊三郎、おまけに高田の親分を刺して一家に捕まった五郎七が「(親分殺しは)藤松の差し金だー!」と大ボラ吹いたおかげで完全にブチ切れてしまい、藤松に果たし状を叩きつけた。 多分にお門違いな憎悪を向けられた藤松は果たし状にも動じず、「俺は無駄な喧嘩はしない」と警察に連絡。だが、博徒風情の市政参加を快く思っていなかった警察署長は、相討ちさせる魂胆で馬車で殴り込みをかけた伊三郎と安之助を止めなかった。たった二人にばっさばっさやられて倒れる阿倍野一家の面々。かくして、何発ぶち込んでも向かってくる(主役ですから)伊三郎と彼を捨て身で守った安之助の連携プレーにより、伊三郎のドスをくらってしまった藤松は「貴様、邪魔ばかり…!」と本音を吐いて倒れ伏すのだった(おまけに間抜け呼ばわりされて止めを刺され、足を突っ張らせて絶命)。 *ドス持ちの鶴田さんに拳銃向けてるスチールからどんな悪人なんだと思っていたら、gooあらすじにあるようなイカサマ博打もなく、単に近代的な博徒の道を模索しようとしていただけ(にみえる)藤松。なのになんでそこまで憎むんだ伊三郎!と鶴田さんの暴走ぶりが少々恨めしくなる作品。まあ、大阪で標準語しゃべって済ましてるヤロウってだけでムカつく気持ちは分かるんだが(←そんな問題ではないと思う)。 *初の東映作品なので花を持たせてもらったのかどうか、松方弘樹や里見浩太朗を簡単にやっつける姿がまたカッコいい。 *襲名披露とか、手打ち式とか、博徒の仕来たりが極上のモデル(=天っちゃん)つきで分かる、プロモーション映画としての面白さもある(「博徒 せいたい早わかり表」なるミニ冊子が存在し、そこにも襲名披露の写真なども入っている)
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| 映画::東映 | 12:58 PM | comments (x) | trackback (x) | |