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無宿侍#13 (終)
「ふたり幻之介」(1973年・S48・12月29日OA)

側室の子か、部屋住みの若衆か。相続争いかまびすしい城下で、ご丁寧に「斬 幻之介」と書いた紙を残す、幻之介(=ゲン:天知茂)の名を騙った仮面の辻斬りが発生していた。息子を擁立せんとする側室・お松の方が家老と共謀し、兵馬(千波丈太郎)という男に実行させていたのだ。

実はお松と兵馬は陰の里からの抜け忍。お松を逃す際に額に抜け忍の烙印を捺された兵馬は、抜け忍でありながら自由に表を闊歩しているゲンに激しい憎悪を抱いていた。一方ゲンは、ニセ・幻之介を追う途中、辻斬りで亡くなった者の屋敷の前で祈りを捧げる女・おふゆと出会う。彼女は兵馬の恋人で、隠れキリシタンでもあった。

事が成就すれば、領内の小島を貰い受け、同じく里から連れて来た恋人(=おふゆ)と静かに過ごしたいと願う兵馬。だがお松は秘密を知る彼の排除を望んでいて、捕らえたゲンに兵馬暗殺をもちかける。

闘いたくないというゲンに刀を向ける兵馬。それを止めようとしたおふゆが、現われた家老の凶弾に倒れた。お松をも抹殺した家老に襲い掛かり、相討ちで倒れた兵馬にゲンは駆け寄る。

馬鹿な奴だ・・・忍び崩れという奴は
人より早く走り
人より隠れるのが上手かろうと
それが何ほどのことがあろう・・・


虫の息の兵馬を目にし、抜け忍の哀れに思いを馳せるゲン。
お前だけは逃げ抜いてくれ、そう言って兵馬はゲンの腕の中で息絶えた。

空しさを噛み締めながら、ゲンは城下を後にした。朝焼けに向かって・・・。

*宮川一郎さん脚本第3作目にして、シリーズ最終話(製作順も同じ)。
・・・あらすじを追うとたいそうシリアスな感じがするかもしれないが、とにかくツッコミどころ満載というか、(これが最終話なんて、色んな意味で)もったいない!としみじみ思う回だ。

のっけから仮面の辻斬りが笑わせてくれる。ふつう、こういう状況でヒョットコなんか被るか? しかもゲンまでヒョットコお面被って出てくるし。兵馬の恋人と遭遇して問い詰めるくだりもヒョットコのまま。最後に兵馬と対峙するときはさすがに般若面に変えていたが、ヒョットコと般若の対決ってのもどうかと(最後のセリフのときは素顔です念のため)。

その他、幻之介の人相書きの似てなさ(どこのおっさんだよ)にも苦笑したが、一番のディープ・インパクトは兵馬の抜け忍の烙印。眉間にでっかく、○に「抜」の字。あんたは筋肉マンか? たしかにこんな間抜け(文字通り)な烙印を捺されてしまってはヒョットコでも被るほかなかったのかもしれない。

これが仮に、雲十郎の死からずいぶん経過し、裏で操ってた怪しい爺さん連中もぽっくり逝っちゃっていて、「陰」たちもゲンひとりに構ってる場合じゃなくなった、というずうっと後の話だというなら別として、ゲンが分別臭くなってしまっているのも悲しい。彼はやっぱり「おのれ陰公方!」とピュアな瞳を燃やしながらびしばし追っ手を蹴散らしていて欲しかった(あれじゃあ眠狂四郎と変わらんじゃないか)。

宮川一郎さんは天っちゃんの魅せ方が滅法上手い脚本家ではあるのだが、エンタメ路線というか、土曜ワイド的というか、やっぱり根は新東宝なんだなあと思わせるある種の「クサミ」が滲み出てしまう場合があるような気がする。それはそれで好きなんだが、「無宿侍」でそんなテイストは出してほしくなかった。このシリーズで(しかも最終話で)「いやそれってどうよ!」と突っ込み笑いなんかしたくなかったもの。

ともあれ、他のシリーズと比べれば格段にハイレベルなテンションを保った13回だったことは確かだ。見られてよかった!

*ゲンが出会った鳥追いの女(正体は公儀隠密)の存在理由がいまひとつよくわからなかった。今回の事件の証人、ということなのか?

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| TVドラマ(時代劇)::無宿侍 | 12:19 AM | comments (x) | trackback (x) |
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