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「柳生…」ほどはスッキリせず
(1979年7月3日付読売新聞より引用)
試写室
新番組 雲霧仁左衛門
「柳生…」ほどはスッキリせず


非道な武家社会からはじき出された元武士の雲霧仁左衛門(天知茂)が、幕府権力の悪に報復を決意し、その資金作りに大盗賊団を組織して、悪徳商人だけをねらい大金を盗んで行く、という設定である。

池波正太郎原作、五社英雄監督の松竹映画が当たったのでテレビでもという、「柳生一族の陰謀」と同様の企画だが、「柳生―」がテーマがハッキリし、スピーディーな殺陣と工夫を凝らした忍術で面白く見せたのに比べ、こちらは第一回を見た限りではかなり落ちる。

おぼこ娘に化けた雲霧の手下お千代(大谷直子)が、豪商に嫁入りして盗みの手引きをする話だが、権力悪への報復という肝心のテーマは忘れられてしまっている。

雲霧が愛人のお千代を抱きしめるシーンなどはメロドラマ。そして「いずれは配下の者どもを正業につけ(盗んだ金でだろう)、わしもお前と二人で静かに暮らしたい」と言うにいたっては、大盗どころか小市民である。

まず第一に、泥棒の主人公を茶の間の感覚になじませることが難しいのだ。小川真由美がやった“女ねずみ”は金を庶民にばらまき、一応、悪もやっつけた。なのに、こちらは金をふところに入れたまま、悪を倒そうなどという話は全然ないのだから、天知の雲霧が外見いくらかっこよくても立派に見えてこない。土台のテーマからしっかり立てて出直してほしい。(武)

*朝日新聞以上に辛口な初回レビュー。しかし“小市民”的メロドラマな部分も、悪を倒そうという話が全然出てこないのも、すべて原作通りなんだから仕方ないじゃないかあ(この筆者、原作読んでないのか?)…まあ、とりあえず雲霧のお頭、これだけシビアな批評でも「外見だけはかっこいい」ことは認められているようなので良しとしよう。

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| TVドラマ(時代劇)::雲霧仁左衛門 | 12:12 AM | comments (x) | trackback (x) |
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