新幹線殺人事件

新幹線殺人事件(1977年・S52・7月16日OA)

東京着ひかり76号のグリーン車で他殺体が発見された。被害者の山口友彦(新東宝スターレット同期・小笠原弘)は芸能プロダクション・星プロの事務局長で、社長・緑川明美(八並映子)の無くてはならない右腕。警察で知らせを受け動揺した明美は「冬本…あいつが殺ったに違いないわ!」と口走る。

その冬本とは、富士文化産業博覧会(文博)のプロデューサーの座を巡って明美と激しく争っているキク・プロの社長、美村紀久子(大空真弓)の敏腕参謀・冬本信一(天知茂)のことである。「奴の目!顔、自信にあふれた話っぷり!何もかも気に入らん!」明美だけでなく本庁の石原警部(本郷功次郎)にまで当然のごとく犯人だと決めつけられる冬本だったが(まああの面相だからさもありなんだが)、彼は当日、ひかり76号より4分遅く新大阪を発車したこだまに乗車しており、車中から2度も車内電話を掛け(電話の相手は北町嘉朗)、おまけに食堂車のウエイトレスをスカウトしていたという鉄壁のアリバイがあった。完璧すぎるアリバイが余計に怪しいと発奮した石原は執拗に穴を見つけようとする。

一方、邪魔者の出来すぎる死でこちらも当然のごとく冬本を疑った紀久子は彼を切ろうとするが、その動きを見越した冬本は先に退職願を出し、静かに身辺を整理し始める。石原警部は電話のトリックを見破り、ヒーロー俳優の星野俊也(池田駿介)の関与まで突き止めたが、冬本に恩義を感じる星野が口を割る訳がないことまで冬本は読んでいた。

文博のプロデューサーは紀久子に決まった。家財道具を引き払った部屋で寝そべる冬本を訪ねた八方塞がりの石原は、なぜそこまでして紀久子に尽くすのかと尋ねる。「彼女はこの世界の蝶でなければいけない」売れない流しの歌手時代に手を差し伸べてくれた紀久子へのストイックな想いを語る冬本に、山口と紀久子の逢瀬を見ながらグラスを粉々にしていたという目撃証言を持ち出し、嫉妬も動機だと詰め寄る石原。「あんたも普通の男だよ」

スイスへ発つという冬本を昼食に誘う紀久子。だがそこには、横領がばれて紀久子に解雇され、恨みを募らせた風見(早川保)の姿もあった…。

*この作品、かれこれ30年ほど前に再放送を録画し、ラベルまで貼って保管していたものの、視聴することなく別作品を上書きしてしまったのが大層悔やまれて今に至る、という(しかも古すぎるのか、BSやCSでも全く放映されない)因縁の作品だったので、まさかソフト化されていたとは嬉しい驚きだった。ありがとうベストフィールドさん!

*実は原作と犯人は違う…のだが、70分で収めるにはこちらの方がしっくりくるし、自白はしないしそれこそ全部状況証拠なので、「辞めたとしても(文博には)影響あるだろ…」とツッコまなければうまいまとめ方だと思う。

*押し殺した感情が三白眼から滲み出ている冬本と、彼の想いを知ってか知らずか女王然と振る舞う誇り高き紀久子が最高。あと1か月ほどで明智センセイになる天っちゃん、ピアノ弾いたりギター弾き語りしたり(歌っていた曲はEP『非情の街』B面、高島忠夫作曲の「気にかかる」)お姫様抱っこしたりしますよ!

*文博の準備委員会で「第一のテーマは『夢へのいざない』」「第二のテーマは『音と光の乱舞』」「第三のテーマは『花とまぼろし』」などと音楽祭をPRする冬本だが、なんだかパノラマ島をプレゼンしているかのような妖しさがあるのがなんともいえない(言い方)

*石原警部の部下に宮口二郎さん(坂井刑事@非ライ風)