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人気絶頂の天知茂を裸にすれば週刊実話 : 1968(S43)6月18日号:37歳
ズバリ失礼
女性からの人生相談から女中と夫人の二部制などのマル秘生活
人気絶頂の天知茂を裸にすれば

役柄から受ける印象は、ニヒルな一匹狼のようだが、本人はなかなか人間味あふれる好男子だ。アルコールはダメなのに、コーラを飲んでバー遊びの仲間に入るほど気を使うことも、その一例だろう。そして、純子夫人の理解ある支援があるから…

若い女性から人生相談

このところ、天知茂の人気が茶の間で上昇している。評判を呼んだ日本テレビ『一匹狼』に引き続き、7月からは、同じ時間帯で『夜の主役』に主演という売れっ子ぶり。

ブラウン管を通しての“ローンウルフ”ぶりが、人気の原因だが、私生活でも二部制をしくタフな男っぽさを発揮。未婚女性から、身の上相談まで持ち込まれ、「困っているところ」という一面もある。そこで、“ローンウルフ”天知茂のスタミナが気になるところだが。

天知茂の魅力は、一言でいえば「男っぽさあふれるバイタリティーだ」とみる向きが多い。日本テレビの『一匹狼』は、昨年秋から登場、26回で3月末で終わる予定だった。

ところが、視聴率(ニールセン調べ)が20%前後をマークし、茶の間の女性層にうけたため、13回延長。7月からも、彼の主演番組が登場する。しかも、女性ファンにウケているというから、うらやましいかぎりである。

――『一匹狼』で、文字通りのローンウルフぶりが、茶の間で評判を呼んだけど、女性ファンも、幅が広がったのでは?
天知:僕のファン層って、年配の方がいままで多かったんです。こんどは、ピストルをぶっぱなすだけじゃなく、メロ的な要素を取り入れて、女性層の開拓をねらったんだけど、これがよかったんですね。女房が逃げて、それでもほかの女に見向きもしないアクション・メロとしても一風変わった役ですから。

――女性視聴者から、手紙が大部分届くそうだけど、ときには身上相談みたいなのもあるんじゃないかな。
天知:いっていいかな。最近の話なんですけどね、困ったことがあるんですよ。20歳すぎの未婚女性からなんだけれど。「わたしは、政略結婚させられることになりました。きらいな相手ですが、承諾するには、どうしても、一度天知さんにお会いしたい。会う必要があるのです。ゆっくりと時間をさいてほしい。そうすれば、結婚に踏み切れるかもしれないから」っていう手紙でしてね。それも、教養ある感じの分かる筆跡なんです。どうすべきかと、考えちゃいますね。

――どうせ、きらいな男にくれるなら、好きな天知さんにというのかもしれない。
天知:結婚前に会いたいなんて泣かせる話だね。かわいそうな人がいるんだなと思うし、会っていたら、いくつからだがあっても足りない(笑)主婦の人の手紙には、まじめなものが大半。でも、おかげで高校生とか、若い女性ファンが増えた。これはうれしいですね。さっきのようなケースもあるけど。東横劇場へ身に来てくれた舞台のお客でも、テレビを見てというのが、大分あったようです。

(薄いグレーの背広、濃紺のネクタイに紺のスラックス。好みも、なかなかイイ線をいっている。7月2週で『一匹狼』を終えたあと、つづいて、大映テレビ室製作の『夜の主役』。このため、6月半ばから撮影に入る予定だそうだ)

――やはり、ローンウルフ的な男を演じることになると思うが。
天知:一口にいえば、弁護士のライセンスを取り上げられた男。つまり正規の弁護士じゃないが夜の町にころがっている法廷に出せない事件を片付けていく設定。それで、ワナをしかけた奴にも挑戦してゆく話で、尾形修二という役柄なんです。

酒を飲まない『夜の主役』

このドラマは、邦光史郎の書きおろしだが、2年ぐらい前からあたためていたテーマだという。脚本・宮川一郎、監督・鈴木敏郎。やはり26回連続のテレビ映画。彼にいわせると次は、どの局に出演するという浮気はせず、同じ時間帯でずっと勝負していきたい腹らしい。

天知:テレビでやる時は、なにか僕に出来るものを考えようって、邦光さんが約束してくれたんですよ。2年前のことだけど「こんな話はどうだ」って。テレビでやるんですから、展開もテレビ的になるのは当然。僕のカラーを生かしてくれるわけで大変やりがいもあるんです。

――佐藤慶、森雅之と顔ぶれもいいね。佐藤慶は、あなたの希望だって?
天知:現代人のドラマを演じられる貴重な人と思うな。ややこしい世間で生きてゆく中には、正常な形じゃなく、曲がった道を生きることもある。現代のドラマとして表現するには、ピッタリの人ですから、お願いしたんです。

――主題歌も、またドラマに入れるんでしょう。
天知:歌は、結局本職にはなりえない。しかし、やる以上は、ただ吹き込んだということじゃなく、ヒットの要素をねらいたいですね。主題歌は歌うことになると思うけど、どうせやるなら、歌謡曲くさいものをと反省しているんだ。ムードですからね。

ブラウン管から感じる彼のイメージはタフな男の表現が一番ぴったり。30代の男の魅力というべきか。だが、ブラウン管だけではない。私生活も、大変タフなのである。
「スタミナがあるというのか、バイタリティーがあるというのか、とても太刀打ちできない。執念みたいなムードを持っているし」
とは、日本テレビのスタッフの見方。

――その点は、どうなのだろう。たしかに、バイタリティーはあるよ。
天知:自分でもタフな方だと思っている。芸能界はきびしいですからね。役者としてやっていくには、つねに一匹狼ですよ。まじ自分が大切。仕事が将来につながるし、精神的肉体的にもバイタリティーがなければ。そうありたいと思っています。あるとはいわない(笑)やりたいと思ったことは、なんとかしてやり遂げる方だから。

――健康が、絶対的条件になるわけだ。
天知:カゼを引くのは、年に1回ぐらいのもの。寝込むことはまずないですね。ずぼらな点もあるし、ヘンに考えない方なのがいいのかもしれない。忙しい時は、むしろ精神力で持っているような気がする。

――しかし、スタミナの秘訣なんて、どこにあるのかな。ローンウルフとしては。
天知:特技があるんです。どこでも、いつでも眠れること。ロケやセットの合間でも、片隅でひっくり返って寝ちゃう。5分、10分でも完全に眠れるの。特技といえるかどうか分からないけれども、睡眠不足は一番いけないですからねえ。

――特技には違いない。お酒は?
天知:これが、飲めないんですよ。一滴も。体質に合わないんだろうな。お付き合いで、飲む人と一緒にさわぐことはします。バーなんかも出かけます。よく、飲まないのに、といわれることもあるけれど、「酒より高いコーラを飲んでいるんだから」って、笑うんです。

――それで『夜の主役』ね(笑)タバコは何本くらい。
天知:1日に40本ぐらい吸います。ちょっと、こっちは吸いすぎなんだけど、やめられなくて。

最後の最後まで全力投球

――食べものは、どうかしら。これから夏に向かうし、タフな男として、スタミナ法を聞きたいな。
天知:肉と野菜が好きなんですよ。ステーキとか。魚は、好きじゃないから、ロケ先の旅館にいると、からだから油っ気がなくなるような気がする。肉がないと食べた気がしない。太る方でもないし。バロメーターもあります。食べられる限りは、からだが持つけど、食欲がなくなった時はしんどくて。小食で、1日に4回か5回。回数が多いです。朝はパンだけで、ご飯はダメですね。それと、生野菜。キャベツなんか、手でちぎるようにして食べるんです。これがいいんじゃないかなあ。

――なるほど、スタミナ法としては、科学的なもんだ。夜は、遅いことが多いでしょう。
天知:僕は夜中の1時、2時なんですよ、寝るのが。だからうちは二部制なんです。

――二部制っていうと。
天知:女房(純代夫人)が深夜係で、お手伝いさんが早朝係と分けているんです。撮影の時は朝早いし、それでも、夜遅くまで起きているのが、平気なんだ。みんな、僕に付き合っているとバテちゃうらしくて、女房も朝から夜中までじゃもちませんから。外から帰ると、どんなに遅くても夜はうちで食事するためもあり、二部制をしいているんです。本人だけが変わらなくて(笑)だから、子供と会うことはめったにないですよ。娘が千景といって10歳。長男は慶といって4歳ですけど。こっちは、朝寝起きが悪いでしょ。娘がなにかほしいときは、朝をねらってくるんですよ。自分でうまくねだってね。僕はウン、ウン買ってやるとか生返事しちゃうもんだから。あとで、そんなこといった覚えはないのも買わされちゃったりして……敵もさるものですよ。

(いってみれば、ローンウルフ・天知茂も、子供にはかなわない、というところだろう。
「浮気するヒマは」
と聞いたら、
「いや、全くダメですね。ヒマが、まずないでしょ。それに、仕事に追われることもあって、チャンスもないんですよ。ダメだな」
とあっさりした答えが返ってきた。ともに、つらいところかもしれない)

――6月から天知茂プロダクションもスタートを切ったが、番組だけではなく、いろんな点でローンウルフで行こうというわけだろうか。
天知:僕の仕事について、タレント業務だけではなく、企画・製作もやっていく方針。仕事は大切にしたいし、役者の責任に加えて、あるていど別な意味での責任も重くなるでしょうね。いままでのAアンドAを切り離したのもそのためなんです。AアンドAは、美川陽一郎さんとか、中堅クラスの人たち。僕との友情で結ばれた先輩の人たちがいますけど、裏では直結しているようなものですから。

新しい番組もスタートすることから、彼自身のプロダクションも、タイミングを合わせてスタートさせたもののようである。タレント・プロダクションじゃなく、自分自身のプロにしたのは、「天知が、役柄だけでなく、一匹狼としてやってゆける力を持っている現れ」とみる向きもあるようだ。

その一方では、「彼のバイタリティーを支えているのは、本人の力もあるが、奥さんの内助の功も大きいよ」(放送記者氏)
といった声もある。そしていまの地位を不動のものにするのは
「やはり、いいブレーンを持つことが最良の道。よしにつけ、悪しきにつけブレーンは大切だ」
某プロデューサーのアドバイスだ。

天知:最後の最後まで、全力投球ですよ。アイデアも必要だろうし、きびしい世間で自分が生きてゆくには、大変ですからね。まず、自分の仕事を大切にすることだと思いますね。

【写真キャプション】
・一匹狼ムード漂う天知茂の演技(手錠片手に眉間を深くしている写真)
・歌手としても本職顔負けの実力(ラフなシャツ&ジャケットでマイクの前に立つ写真)
・独特のニヒルな役柄が人気の的(手前にいる多々良純さん?を見つめる背広姿)

*新聞記者がマダムと情死しただの、おばさま族に肉体サービスしたセールスマンだのという記事が載ってるそのスジの雑誌だが、いちおう本人へのインタビューなので、天知プロの話など、小ネタ満載で興味深かった。ちなみに、タフさを誇っていたこの直後あたりに過労でぶっ倒れ、1週間の安静を厳命されて「夜の主役」オンエアが伸びている(多分に気張り過ぎ)。

*政略結婚のお嬢さんの話は、同年の「週刊平凡」のインタビューでも話題になっていた(こちら)

(2009年8月6日)
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