2008,03,02, Sunday
『人形佐七捕物帖 腰元刺青死美人』(1958年・S33)
新文芸坐にて鑑賞(同時上映は『人形佐七捕物帖 妖艶六死美人』)。 老齢の殿様が女刺青師・お蝶に命じ、腰元4人の背中にとある刺青を施した。その刺青は江戸城攻略の隠し地図の在り処を示す暗号になっているのだが、殿様はまもなくポックリ、腰元たちはお宿下がりで散り散りに。そして帰宅中に襲われたお蝶は記憶を失ってしまった。なんとしても隠し地図の所在を知りたい家老や正体不明の忍者が暗躍する中、刺青を背に持つ女たちが次々と殺されてゆく。女殺しの下手人は誰か・・・? そして地図はどこに・・・? 貫禄十分の佐七親分が事件の真相に迫る! goo映画のあらすじを読むと誰が下手人なのかがすぐ分かってしまうものの(おまけに「ニヒル 天知茂」のスチールは本編以上にネタバレ)、沼田曜一・中山昭二・天知茂という普段から善悪の狭間をうろちょろする曲者トリオが競って怪しさを振りまいてくれるので、いったい誰が一番悪いヤツなんだよ!とそれなりにハラハラドキドキが楽しめる作品だった。 ねっとりと元・腰元に近づく家老(沼田曜一)、刺青見たさに忍者装束で押し入って手裏剣投げたりしておきながら「私は決して怪しい者ではない!」と言い張る“宮さま”(中山昭二)の向こうを張って、見るからに腹に一物ありそうな顔でトップを切って登場するのが居候浪人・内海新之丞(天知茂)。襲われた彫師のお蝶さん(日比野恵子)を助ける善人ぶりを冒頭で見せ付けてミスリーディングを誘った彼は、居候先の主人に気に入られてそこの娘(刺青腰元の一人)の婿にと懇願され、本人もちょっと欲が出てきた最中、でも半同棲相手のお滝(彼女も背中に刺青が:山村邦子)が離してくれそうにない、という四谷あたりの伊の字のつく人と良く似た状況にある。 しかし四谷の人よりはるかに色悪な新之丞は、刺青ストーカー事件にかこつけて木は森に隠せ作戦に打って出て、ついでに隠し地図もゲットしちゃおっかなーと欲張ったおかげで佐七親分(若山富三郎)のお縄を頂戴する羽目になるのだった。まったく賢いんだかバカなんだか分からないキャラだとはいえ、2年前(『妖艶六死美人』)は文字通り吹けば飛ぶような存在だった天っちゃんが、まだいくぶん危なっかしいとはいえ最後の大立ち回りを任されるまでに成長していたのは感動だ。ところどころでキーンと冷え切った表情を見せてくれるのも眼福。 *原作は人形佐七捕物帳の「女刺青師」(横溝正史)。彫師の姐さんはすでに病死、隠し地図なんていうロマンチックな話はなくて、屍姦する男やら悋気のあまり人を殺める女やらが出てくる濃厚な展開。いちおう下手人は新之丞さんだが、こちらはクールでも狡賢くもないので、ちょっぴり情けない最期を遂げてしまう人だった。
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| 映画::新東宝 | 11:36 PM | comments (x) | trackback (x) | |