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『稲妻奉行』
『稲妻奉行』(1958年・S33)

問注所なる手前味噌の取調べ機関を盾に身内を庇い立てる薩摩藩VS南町奉行のバトルは、奉行・坪内駿河守(中村彰)の切腹という事態にまでエスカレート。出張から帰ってきた筆頭与力の大岡忠右衛門(嵐寛寿郎)は、上司の無念を晴らさんと決意を新たにする。おりしも薩摩の名刀・安綱が預け先の相模屋から紛失。薩摩藩の家老・島津頼母(高松政雄)と老中・水野忠信(高田稔)が「安綱が見つからんかったら腹斬れよ」(島津)「見つけたら問注所を廃止しろや」(水野)と一札取り交わしたせいで、島津留守居役の佐藤松太夫(江川宇禮雄)や大岡たちが入り乱れるなか、名刀奪還大レースと相成った。

ところでその騒動の元となる安綱を奪ったのは、薩摩藩ゆかりでも、もちろん町奉行サイドの人間でもなく、金欠のくせにやたらと居丈高な素浪人・秋月典膳(天知茂)。黒白のリバーシブル着物でまんまと町方をかく乱して刀をゲット、ヒモ状態でごろごろしながら、アシがつきそうになると誰彼なしにばっさり斬り捨ててしまう相当な使い手かつ極悪人の典膳(とはいえ、盗んだり斬ったりする肝心の実行シーンがまるでないので想像するしかない)は、刀と引き換えに佐藤松太夫から金を巻き上げようとするのだが、取引の場で松太夫に騙され、手下のヒョットコ面(自分は般若面)と共に逃げ帰る羽目に。しかし台詞の浮つき具合はともかくワルぶりは一枚上手の典膳、渡した刀は偽物。

ところが、ざまあみろと勝ち誇る典膳からちゃっかり本物を持ち去ろうとするヒョットコ。実は彼の正体は鞍馬天狗、じゃなくて大岡忠右衛門だったのである!サシの勝負の末、みね打ちで典膳を倒した大岡様は彼を引きつれ、約束の刻限が迫り切腹寸前の水野の元へ急ぎはせ参じるのだった(めでたしめでたし)。

*政情などまるで関係ない、金がすべての悪人役に体当たりしている(のが丸分かりなのがほほえましい)天っちゃん。台詞や動きはまだ硬いが、ふとした折にみせるクール&鬼畜な表情がブレイクを予感させてくれる。

*物語の鍵を握る重要な役柄なうえ、アラカンさんとの(恐らく初めての?)1対1での対決シーンがあって、さぞ嬉しかったに違いない(なんだかそこだけ、ワルというより普通に真面目な顔で刀を振り回していたような気がする)。

*そうそう、和田桂之助さんと宇治みさ子さんも善人カップリングで出てました(ついでで失礼)

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| 映画::新東宝 | 11:28 PM | comments (x) | trackback (x) |
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