2007,07,08, Sunday
『天下の鬼夜叉姫』(1957年・S32)
将軍綱吉のご時世。豊臣方の生き残り・鶴姫(宇治みさ子)たちは曲芸一座に身をやつすかたわら、夜は鬼面をつけて幕府要人を血祭りに挙げる暗躍を繰り広げていた。ところが旅の途中での難儀を救ってくれた編み笠侍・露木丈太郎(明智十三郎)に鶴姫がフォーリン・ラブ。丈太郎が徳川サイドの隠密だったことから、恋と使命の間で板ばさみになる鶴姫、だけど守役の藤蔵(丹波哲郎)以下残党たちは許しちゃくれない、すったもんだの末、結局お姫様はお咎めなしだよってことで、残党は全員討死したにもかかわらずハッピーエンドという、“女剣士スタア・宇治みさ子”を楽しむことのみに意義があるといわんばかりのあっけらかんとした作品だった。 さて我等が天っちゃんの役どころは、反体制派の島津藩お抱え侍・蒲生重之進。曲芸一座(=鶴姫一行)を助けた後、のん気に街道をゆく丈太郎(キャラはなんとなくウツイ系)の目の前に、藩をスパイしていた怪しい鳥追い女(天っちゃんと悲劇の怪談カップルになる2年前の若杉嘉津子)を追って刀を振り上げながら飛び出したはいいが、どうみてもただの鳥追いではなさそうな女を庇った丈太郎に対峙され、腕をばっさり斬られ谷底へまっさかさま。実は彼女・お綱は丈太郎と同じく、松平伊豆守(江川宇礼雄)配下の隠密だったのだ。 だがブレイク寸前の天っちゃん(しかも新婚)がそれしきのこと(?)で死ぬはずがない。右腕を失った重之進は同じく打倒・幕府に燃える鶴姫の曲芸一座に用心棒として雇われ、すっかりニヒルが板についた浪人になりきっていた。例のごとく丹波さんに良いように使われつつもにっくきお綱を捕らえると、天井から吊り下げて歪んだ愛情を滲ませながら粘着質に苛め抜く重之進。しかし、さあこれからというときにまたしても丈太郎が現われて対決、「地獄へ行け!」と叫んで自分が地獄へ旅立ってしまうのだった。 *いつものようにどんな役でも一生懸命こなしている天っちゃん(左手一本での殺陣も見事)のおかげで楽しめた、ともいえるが、ベースが単純明快なヒーロー・ヒロインの活劇映画だけに、サブキャラのお綱さんに執着しまくる彼の場違いに濃厚なオーラがかえってストーリーを散漫にしているかのような印象を受けた。せめて責める相手が鶴姫だったら良かったんだが。
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| 映画::新東宝 | 10:51 PM | comments (x) | trackback (x) | |