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『勝利者の復讐』
『勝利者の復讐』(1958年・S33)

タイトルバックからすでに強盗殺人を冷酷に実行中の深沢正夫(タイトルより先に眼元のアップが登場、目立ちまくる天知茂)は、表では国際商事の社長としてふんぞりかえりつつ、裏では再び人相の悪そうな仲間達と宝石店を襲う計画を立てていた。なにしろ彼には、右眉の傷痕までそっくりに整えさせた一卵性双生児の弟・登(名字は「西村」:天知二役)という格好の切り札まである。

おまけに手下のひとり・森田(鮎川浩)の兄貴分で天才的な錠前破りの腕を持つ前島(細川俊夫)が国際商事に入社。ムショ帰りの前島は、美人妻・房江(小畠絹子)と幼い娘のためにも真っ当な職を探すが、世間の冷たい拒絶に遭い、つい森田を頼ってしまったのだ。深沢はさっそく渋る前島を伴って某宝石店へ押し入り、奪うだけ奪った後で店員たちを皆殺しにした。

しかし、逃走途中で前島だけが捕まってしまった。自白を懸念する深沢は、彼の家族の身柄を拘束して口封じを図ろうとする。房江を社長室へ呼び、自慢の銃で散々弄ぶ鬼畜な深沢。だが夫への済まなさと絶望のあまり、房江は一瞬の隙をつき窓から身を投じた。人情派の皆川警部(沼田曜一)の計らいで房江の最期を看取った前島は、沈黙を破って深沢の所業を洗いざらい告白、深沢は警察へ連行された。

ところが彼には、事件当夜だけでなく房江の一件でも鉄壁のアリバイが。彼に扮した弟の登が人目につく場所で別行動をとっていたのである。証拠不十分で不起訴となり勝ち誇る深沢は、裏切り者の前島に復讐を誓う。その前に今まで聞き分けの良かった自分そっくりの弟が「こんな(兄さんの身替りの)役、もうごめんだよお」とぼやき出すが、倉庫へ連れ込みあっさり絞殺、木箱に押し込んでしまった

自分と娘を狙う陰湿な“勝利者(=深沢)の復讐”に対抗するには、深沢を殺人の現行犯で逮捕するしかないと悟り、前島は死を覚悟して彼の呼びかけに応じる。だが抜け目ない深沢は自らの手を汚さず、手下たちに前島の抹殺を命じた。土壇場で森田が前島サイドに付き、内輪で揉めている間に警察が到着。銃撃戦で思わずキレて前島を撃ってしまった深沢は、ニヒルに自殺を試みたものの、前島の決死の一発で銃を弾き飛ばされた。「お前に命を救われるとは皮肉だな」そう呟くと、深沢はヒステリックな笑い声をあげながら連行されていった(前島は一命をとりとめ、皆川警部や娘と歓談してエンドマーク)。

*クレジット上ではいちおう主役は細川さん・小畠さんの二枚看板だが、実は天っちゃん主導のギャング映画。冷酷非道かつスタイリッシュな深沢(兄)と、どこかしらおぼっちゃん気質の登(弟)のギャップが面白い(特に、兄貴に金でカラダを買われたという登クンの従順で素直そうな弟キャラは、ウスイ家の薫兄さんでなくても愛でたくなるラブリーさだ)。そのほか、アブノーマルなキャハハ笑い(by 深沢)というウルトラ・レアなものまでお目にかかれる、かなりのお値打ち作品である。

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| 映画::新東宝 | 10:47 PM | comments (x) | trackback (x) |
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